だし圧縮予ひずみが25 %より大きい場合、 くびれ部の形状変化は処女材と異な るため、 くびれの進行に伴うR/ρ(ρはくびれ部の曲率半径、 Rはその最小断
面半径)を求めておく必要がある。
2 ) 供試材に銅を用い、 弾塑性域から大変形域までバウシンガ曲線を求め、 引張 りと圧縮の負荷順序の影響について検討することにより逆変形機構の考えを示し た。 また、 広い範囲までひずみを変化させた圧縮予ひずみ材の破断延性値を求め、
他の予ひずみ材と比較することにより予ひずみ材の延性低下機械を明らかにした。
得られた要点をまとめると次のようになる。
( 1 ) 蝉塑性域における逆変形は逆変形直前の加工硬化状態が支配する。 負
荷}I頂序を逆にし、 異なるバウシンガ曲線が得られても逆変形機構は変わらない。
( 2 ) 大変形域における逆変形は逆変形方向の変形特性が支配する。 二つの
曲線の間にはひずみ差が一定値に漸近する傾向がみられるが、 負荷}I国序を逆に してもこの関係は変わらない。
( 3 ) 予ひずみ材を引張る場合、 二つの加工硬化系が存在する。 一つはあと
の変形によって加わる本来の加工硬化であり、 もう一つは変形の可逆性により 転位の消滅を伴う加工軟化である。 予ひずみ材の延性低下はそれら二つの差で 表わされる加工硬化が主因であることから、 本質的には加工軟化度だけで変化 する現象だといえる。
3 ) 引猿圧縮を受ける銅の結果をもとに提示した逆変形機構(予ひずみ材の延性 低下機械を含む)は、 材料および負荷方法に関係なく成り立つことを示した。 また、
内部欠陥を含む材料では負荷}I国序を変えるとバウシンガ曲線が異なるが、 欠陥材 の単純変形曲線をそれぞれ基準に考えれば、 これらの逆変形機構は内部欠陥の有
無に関係なく適用できることを示した。
4 ) バウシンガ効果の本質が転位の合体 ・ 消滅にあることを明らかにした。 これ
は逆変形に伴う転位消滅の原因が予ひずみ時と逆変形11寺のすべり系の相互関係に 依存することならびに材料のもつ積層欠陥エネルギの大小関係が関係するとの根 拠に立っており、 次に示す実験結果からそれが裏づけられる。
( 1 ) 予ひずみは大変形域まで影響を及ぼしている。
( 2 ) 予ひずみ材の破断延性値では圧縮の場合に値が最も大きい。
( 3 ) 引猿圧縮におけるパウシンガ効果の大きさは銅より炭素鋼の方が大き
く、 炭素鋼では炭素量の多い方が大きい。 この傾向は弾塑性域から大変形域、
さらには圧縮予ひずみ材の破断延性値の増加量まで共通している。
( 4 ) 圧縮予ひずみの小さい範囲では炭素鋼の破断延性値は与えた予ひずみ
分だけ増加する。 この傾向は炭素量の多いもので著しい。 またこれは球状黒鉛 鋳鉄においても同様にみられ、 この傾向はFDIよりP D 1で著しい。
( 5 ) 銅では引暖圧縮よりねじりの逆変形でバウシンガ効果が大きい。
(6) 20,...,25%以上の圧縮予ひずみを与えた銅では逆変形直後にくびれを生 じるが、 そこでは破断延性値が大きく低下している。
5 ) 圧縮予ひずみ材の逆変形試験をかなり広範囲にわたって精度よく行ったこと により、 これまで知られていなかった特徴的な変形特性をいくつか見いだした。
( 1 ) 圧縮予ひずみ銅の引張変形曲線には二つのくびれ発生点が存在する。
一つは処女材のものであり、 他の一つはひずみが4 %近傍の位置にある。
( 2 ) 圧縮予ひずみ銅では20,...,25%の予ひずみを与えたところで遷移現象が みられ、 破断延性値が大きく低下する。
( 3 ) くびれの進行に伴うR/ρ(ρはくびれ部の曲率半径、 Rはその最小断
面半径)の曲線には傾向の変化する点がみられる。 このような点は処女材を含む すべての圧縮予ひずみ銅に存在する。 このとき、 ρ/R 0 (R。は変形前の試験片 半径)は圧縮予ひずみに関係なくほぼ2となっており、 くびれ部の中央で交差す る巨視的なせん断変形帯の発生に対応するものと考えられる。
( 4 ) 銅中に散在している酸化物には与えた圧縮方向と平行に割れがみられ
る。 これは、 大変形を受けた軟らかい基地材料と硬い介在物の聞にひずみの不 整合が生じる結果、 圧縮とは垂直な方向に引猿力が生じるためだと考えられる。
( 5 ) 球状黒鉛鋳鉄に含まれる黒鉛は、 単純変形ばかりではなく逆変形にお
いても引張変形時には空孔として作用する。 また、 基地の材料より黒鉛の方が 変形度が大きい。 このことが、 圧縮予ひずみを与えた球状黒鉛鋳鉄の破断延性 値が基地材料のものより減少度が大きくなる原因であろうと思われる。
低サイクル疲労挙動に関して
6 ) 引暖圧縮低サイクル疲労に用いられている試験片形状の問題点を指摘し、 正 確な疲労挙動を得るために必要な試験片形状を求めるとともに、 その対策につい ても明らかにした。 主な留意点は次のとおりである。
( 1 ) 正確な疲労挙動を得るためには円柱形試験片を用いる必要がある。 こ のとき、 平行部長さと直径との比1 0/ d。は1.5以上にとればよい。 したがって、
l 0/ d。に関するASTM 推奨値は多少大きめに見積りすぎている。
( 2 ) 砂時計形試験片を用いた場合、 一般的には疲労寿命が延びるが、 その
増加率は中央部形状により変化する。 最も寿命が延びるのは中央部曲率半径と 最小直径との比ρ。/d。がASTM推奨値の範囲にある場合であり、 その主因は 砂H寺計底近傍における引張車111方向応力が同じ塑性ひずみ幅(円柱形試験片では車111 方向ひずみ制御で与え、 砂11寺計形試験片では直径方向ひずみ制御で与えるもの とする)を与えた場合の円柱形の値より小さ くなるためである。
( 3 ) 直径方向ひずみ制御で低サイクル疲労試験を行う場合、 塑性ポアソン
比にはo. 50を用いても十分な精度をもった疲労挙動が得られる。
( 4 ) 砂11寺計形試験片を用いて低サイクル疲労試験を行う場合、 ρ。/d。がA
STM 推奨値の範囲にある試験片を用いれば実用上はさしっかえない。
7 ) 正確な疲労挙動が得られる形状の試験片を用い、 欠陥を含む材料でまだ評価 の定まっていないパーライト系球状黒鉛鋳鉄( P D 1 )の低サイクル疲労挙動を明 らかにした。 得られた要点をまとめると次のようになる。
( 1) P D 1の破断寿命に影響を及ぼす欠陥は穴径でO. 4m mを越す場合に限
られる。 欠陥がそれより小さい場合、 �皮断の起点の大部分は黒鉛であるが、 最 大寸法のものが起点にはなっていない。
( 2) P D 1では繰返しのごく初期にき裂が発生し、 主き裂が支配因子とな
り、 微小き裂の伝ぱ過程が全寿命の大半を占める。 これは、 欠陥を含まない基 地だけの材料と同じである。
( 3 ) 疲労寿命曲線はP D 1でもM anson- C offin 型の関係を満足している
が、 疲労寿命は基地材料よりひとけたほど短い。 これは、 初期き裂長さが長く 限界き裂長さが短いことに加え、 縦弾性係数が減少することでき裂の開口変位 が増大することによりき裂の伝ぱ速度が加速されることが主因である。
謝 辞
本研究を遂行するにあたり、 終始懇篤なご指導とご鞭縫をJI易りました九州大学 工学部教授 西谷弘信先生に心から感謝申し上げます。
また、 本論文の内容に関して多くの有益なご教示をJ!易りました九州大学工学部 村上敬宜教授、 尾崎龍夫教授ならびに市丸和徳教授に厚くお礼申し上げます。
徳山工業高等専門学校別府 忠教授には、 本研究の当初から絶えず有益なご助 言とご鞭縫をJI易りました。 深く感謝申し上げます。
また、 徳山工業高等専門学校西村太志講師には実験および図面の清書に熱心な ご助力をいただきました。 厚く感謝申し上げます。
さらに、 実験あるいは数値計算などにご協力いただきました徳山工業高等専門 学校機械電気工学科材料力学研究室の卒業研究生ならびに実習工場の諸氏をはじ め、 本論文をまとめるにあたりご支媛いただきました多くの方々に心からお礼申 し上げます。
参 考 文 献
1 ) 石橋, 金属の疲労と破壊の防止(増訂改版), (1967), 養賢堂.
2) Forsyth, P. J. E.. The Physical Basis of Metal Fatigue, (1969),
Blackie & Son, (中沢 ・ 小林訳, 金属疲労の基礎, (1975). 養賢堂) .
3) Kocanda,S.. Fatigue Failure of Metals, (1978), Sijthoff & Noordhoff 1n t. Pub.. (石井 ・ 田中訳, 金属疲労の解析と応用, (1981), 現代工学社)•
4) Klesnil. M. and Lukas. P., Fatigue of Metallic Materials. (1980).
E1sevier Scientific Pub.. (荒木 ・ 堀部訳, 金属疲労の力学と組織学,
(1984), 養賢堂)•
5)西谷編, 疲労強度学, (1985), オーム社.
6)西谷, 強度評価における基本的考え方, 日本機械学会材料力学部門講習会 教材, No.910-14 (1991-2). 1.
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1 1 )大路, 低繰返し数疲れにおける累積煩傷の仮説の検討, 機誌, 70-576 (1967), 36.
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