各国は国として経済自立を目的に、それぞれの自然環境、天 然資源条件を基本として生産活動が行われている。その際、産 業に必要な原材料の不足分は輸入により補われている。その供 給は天然資源の量とそれを利用する人的資源の需給関係に大き く関係している。その時国際的な生活水準の差と生産効率に過 度な差が出ると、収奪感や不公平感が生じて国際紛争が起こる。
そのため各国の政治経済的安定性と国際関係を把握して、自国 の置かれている経済環境と外交関係も含めたグローバルな理解 を基に経済活動を行う事が求められる。この章では地球上に存 在する人間として経済活動するため、地球の自然と経済環境の 評価基準と議論の一般的根拠を、経済的議論のバランス感覚養 成の土台として再確認しておきたい。
§2.1.経済活動の場の認識
【地球が育てた人社会と企業環境】
生物種は地球誕生後今までの40億年間に、著しい変化を繰 り返して生まれて来たと言って良い。この間に生物活動が参加 して生み出した地球上の全物質が関係した状態変化の結果をグ ローバルに見ると、明確な特徴が見いだされる。特に生物の誕 生と寿命が尽きた後の生体処理までの関係は、地表を巨大な生 物反応場として広く一つのまとまった生分解物質システムの現 象(簡単に生物系ともいう)と見る事ができる。そのアクティ ブ な 反 応 場は 太 陽 光 と地 球 内 部 から の 熱 と 物質 と い う エネ ル ギー・天然資源供給を駆動力とした継続的化学反応システムと 考えてよいであろう。
第1章で概観したように、このシステムは広い意味の比較的
安定な個体の集団運動と化学反応全体が組み合わさって自律的 に動作し続けるシステムと見る事が出来る。それが第1章で概 観した、オートマトンと定義されるものと言ってよい。それは 生物系と大陸移動や造山運動などに伴う幾つかの自然物質系が エネルギー源を共有し、お互いの機能を制御しあうシステムと 見てよい。本章はこの立場で地球と経済活動の関係を改めて認 識しておきたい。
約40億年間の生物システムの歴史では、極く短い寿命を持 つ生物個体の集団が継続的に生死を繰り返し、進化を遂げなが ら、生物ファミリーという物質反応システムを形成して来た。
この現象は特に地球誕生後46億年の間に約10億年前後の時 間幅で数回の大きな天体変動と地質変化に適応する形として育 てられたと見る事もできる。人間の国家社会形成はその長い歴 史の中でもここ1万年位で、それ以前数億年の歴史をもつ生物 進化の過程ではごく最近生まれたもので、完全に生物論理の産 物と言ってよい。人間社会が他の生物システムと異なる最も特 徴的な点は、色々なコミュニケーションの方法を基礎とした社 会的協調行動であり、その代表的なものが経済活動である。本 書ではこの立場から、生物現象の一般的な法則を、複雑な経済 活動に対する妥当な判断基準として利用する。
特に生物化学反応系としての最大の特徴は、生体有機物質の 組み合わせによる種々の有機物質の創出と死後の後始末と再利 用のメカニズムである食物連鎖の現象と、生分解性をキー反応 とする生分解物質のネットワークが出来あがっている所にある。
その反応の結果として創造された人間は、地球の歴史の中で自 我意識と知性をもつという点で最も特徴を発揮する生物種とし て登場した。その生体反応ネットワークに含まれない物質系が 人工物であり、本質的に生物反応システムとは馴染まない。本
書ではこの前提で経済活動を見ていく。本章は経済活動の立場 を、「人が経済活動の判断基準を持つためのバランス感覚を育て るための基準を得る事」を目的として議論する。
いうまでもなく、経済活動は地球表面という自然条件の制限 下で行われている。そして人間の経済行動は、海面から上下ほ ぼ数キロメーターの範囲内に限られていると言って良い。背景 となっている地球上の経済活動に舞台を与えている条件は何か という事を再認識する事は企業活動の感覚としても当然意義の ある事である。まず地球が活動の源として受けている恵みの大 きさが、どの程度のものであるかをまとめておきたい。
§ 2.2. 地球環境下の企業活動
2.2-1. 経済活動を支える地球の環境
経済活動は人間社会の活動として、当然その生物学的法則の 頚木から逃れられないものと言って良い。その歴史上の生物種 の劇的転換が起こった瞬間の現象はカオスと言って良いほど大 きい地球現象の変化である。カオス独特の特徴は、一見目立た ない小さな条件でも、それが引き金となって予想外の大きな変 化が起こることである。カオス現象が存在するという事はどの 生物種が地球上の主役となるかの一つの論理的必然性を言う事 は難しく、幾つか並立すると思われる論理が確率的に変動し得 る事も意味する。しかもそれは天体としての非常に大きな現象 だけによる訳ではないという事である。たとえば環境ホルモン のように、経済活動によって生じたごく僅かな量の物質でも、
地球環境の変化に合わせて生物種のバランスを崩して生物世界 の主役の転換が起こり得る事を強調したい。そして結果的に一 つの生物種や民族を消滅させるほどの影響を与え得るものがあ り得る事を強く意識すべきであろう。[ 脚 註 ]
このような背景で、ここではまず地球の大きさが有限という 認識に由来する諸問題を再確認することから始める。そして経 済活動が置かれている立場と自然から受ける制限を経済のリー ダー達が認識する事は、企業の基本としても重要で、企業家が まず判断の基準に入れておくべき必須条件であり、企業をリー ドする人としての資格の基本条件と考える[1]。
2.2-2. 地球のサイズ有限性とその反作用
人間の経済活動の場である地球にとって、現在はあまりにも 人口が多くなりすぎたというのが誰しもの実感であろう。それ は食料生産を支える自然条件の変化や、人間活動に伴うエネル ギー消費増大を見てのことと思われる。その結果は地球本来の 自然の変化から逸脱した人工的変化を起こしていると考える以 外説明がつかないというのが実情である。特に規模の小さな企 業といえども最近は世界規模で活躍する時代になっている事を 考えると、地球規模の自然環境を意識してビジネスする事の重 要性は益々大きくなっていると言って良い。つまり経済発展の 面だけから人口増加を賛美すれば、当然極めて深刻な矛盾を生
[脚註]カオス的変化について 自然科学に不案内と思う人でも環境ホルモン 問題を見ることで容易にカオス現象の特徴が理解できる:環境ホルモンは実 際に複数種存在し、それぞれの環境ホルモンが1万分の1%前後あるいはそ れ以下の物質濃度でも安定的に存在することによって、それに生物個体が接 触の機会をあたえられる。それが微量でも生体に大きな影響を与えるのは生 体制御の信号伝達の役割りのために必要とされる量が微量であるからだと思 われる。その生物化学反応の結果、生殖能力に深刻な影響を与える可能性が 高いと考えられる現象が環境問題の一つとなっている。その現象は人間の存 在自体にも直接関わる問題であり、自然がその原因を作り出している人間の 数を縮小する方向に作用する物質の現象と言える。従ってこの問題は当然基 礎となる人間の人口制御と関係するため、経済活動より重視すべき問題であ る。厳密な証明であるかどうかは別にしても、実際に発見されている例が非 常に説得性をもっており、無視できない結果と言ってよい。もし正しいと証 明された場合や重大さに気が付いた時には既に致命傷と言えるほどの負担を 生じる可能性もある。
じ、生物系のなかで強烈な生死をかけた生物種再編問題が突き 付けられる。むしろ21世紀はいずれその矛盾を受け入れざる を得ず、自国だけの利益に立って行動している現状は、いずれ 生物種再編を求める行動の延長として、世界大戦を招く結果に なる可能性が非常に高い。経済活動を行うリーダー達はこの観 点に立って企業をリードせざるを得ない環境にあると認識すべ きであろう。
21世紀初頭の地球は全体的に見て、生物系の大きな変化を 起こさない範囲の、相対的に安定した自然条件のもとにあると 思われている。その安定性という事が意味する重要な点は、人 工的で急激な変化に対して安定性を平滑化するための自然から の反作用(フィードバック)が強く働いている事を意味する。
例えば、「大量化石燃料の使用が過剰に行われている周辺では、
地 球 環 境 平滑 化 の 作 用と し て 局 所的 に 強 い 異常 気 象 が 起こ る 事」を意味し、その激しさは化石燃料の使用量と直接関係して いると考えてよいであろう。
局所的な気象異常は、経済活動に対しても当然大きな影響を 与えるはずである。異常気温の程度は、裸の人間がその生存条 件である体温36±1℃を維持できる環境を作り出す条件をも とに判断される。例えば人工的な防寒や高温対策によって、人 間が生存できる気温の範囲は、±50℃の範囲内であると考え てよい。経済活動だけの事を考えれば、この生存条件を維持す るための経済的負担が小さい所ほど効率の高い活動が可能なは ずである。一般に自然に対する大きな負荷を無視した理不尽で わがままな経済活動をする事も局所的には可能である。しかし そのような行動は、自然に負担をかけ続けるため、企業の永続 性の観点から見ると、その不自然な点を修正する反作用がかか り企業の寿命は短いと認識しておくべきであろう。実際には、