第 4 章 塗膜と素地金属の界面に形成された腐食生成物が耐食性におよぼす影響
4.3 結果
4.3.2 組成分析
CCT 222 サイクル後における各塗装試料の傷部に対して直角に切断した.切断後の
試験片の大きさは約20 mm × 20 mm × 3 mmとし,樹脂埋め,研磨後,断面観察を行 った.Figure 4.4~Figure 4.6にCCT 222 サイクル実施した塗装試料A,B,Cの断面 方向からの SEM-EDX 分析結果を示す.各 EDX マップ画像では各元素濃度が高いほ ど明るいコントラストで表示されており,各EDXマップ画像の横にあるカラーバーと 対比することで各元素の分布状態がわかる.たとえば,Figure 4.4に示したFeマップ 画像におけるカラーバーをみると元素濃度が高い部分は白色~赤色,元素濃度が低く なるにしたがい黄色~緑色~青色と変化し,元素濃度がほぼゼロとなる箇所は濃紺色
~黒色で表示されている.したがって,Figure 4.4のFeマップ画像で白色~赤色~緑 色の表示されている部分では Fe が検出されており,濃紺色~黒色で表示されている 部分ではFeがほとんど検出されていない.各塗装試料におけるEDXマップ画像にお いてClの挙動に着目すると,いずれの試料も,塗膜下腐食生成物中にClが濃縮して いる.なお,塗装試料BのSEM画像の中央やや左部分では,腐食生成物の脱落にと もなう凹部が生じている.これは,断面観察用試料作製時における研磨工程で生じた と考える.また,凹部においてZnのみ検出されており,ClやOは検出されていない ようにみえる.SEM-EDX 分析では電子線を試料に照射した際に,試料表面から励起 される特性 X 線を検出することで元素を同定する.元素の同定は各元素の特性 X 線 エネルギーに差があることを利用しているが,軽元素では特性X線の自己吸収が大き いことが知られている.このため,凹部等の深い位置で発生した特性X線の検出信号 強度の低下が,Znよりも軽元素であるOやClにおいて,顕著にあらわれたためであ ると考える.
塗膜下腐食生成物層と残存めっき層の状態を詳細に解析するため,CCT 222 サイク ル後の塗装試料A,B,Cについて,集束イオンビーム((株)日立ハイテクノロジーズ
製 FB2200,Focused ion beam;
FIB)により腐食生成物層の断面を加工した後,SEM-EDX分析を行った.Figure 4.7のFIB加工の模式図に示すとおり3 mm × 10 mm × 10 mmに切断した試料のA面(120 µm × 120 µm × 10 µm)をFIBにて加工した.
Figure 4.8~Figure 4.10にFIB 加工した試料の断面SEM-EDX分析結果を示す.塗 装試料Aでは,残存めっき層にAlリッチな領域がある.塗装試料Bでは,腐食生成 物中にSnリッチな領域があるとともに,残存めっき層においてSnリッチな領域が約 3 µmの層状に存在している.CCT前の溶融60 mass%Zn-40 mass%Sn合金めっき層は 約60 μmであり,このめっき層の内部には初期状態において約3 µmのSn層があった
79
ことを意味している.塗装試料Cでは,腐食生成物層と残存めっき層の境界は特徴的 な形状を示しており,組織形状から類推すると,Zn-Fe 合金層の一つである ζ 層の可 能性がある8).以上の断面SEM-EDX分析結果を模式図にまとめると,Figure 4.11と なる.
次に,塗膜下に生じた腐食生成物を同定するため,CCT 222 サイクル試験後の各塗 装試料に対して,その一部を切断後,塗膜を剥離剤により除去し,母材表面に固着し ていた腐食生成物をXRDにより分析した.Figure 4.12に塗膜下に生じていた腐食生 成物の XRD 結果を示す.いずれの塗装試料も,主要なピークは塩基性塩化亜鉛 Zn5(OH)8Cl2・H2Oであった.
80
Figure 4.4 SEM-EDX analysis of corrosion products formed on the sample A after combined cyclic corrosion test for 222 cycles.
81
Figure 4.5 SEM-EDX analysis of corrosion products formed on the sample B after combined cyclic corrosion test for 222 cycles.
82
Figure 4.6 SEM-EDX analysis of corrosion products formed on the sample C after combined cyclic corrosion test for 222 cycles.
83
Figure 4.7 Schematic diagram of the FIB processing.
84
Figure 4.8 SEM-EDX analysis of corrosion products formed on the sample A by the FIB processing.
85
Figure 4.9 SEM-EDX analysis of corrosion products formed on the sample B by the FIB processing.
86
Figure 4.10 SEM-EDX analysis of corrosion products formed on the sample C by the FIB processing.
87
Figure 4.11 Schematic Figure ures of under paint film corrosion of Hot-dip Zn alloy coated steel sheet.
Scratch
Paint film
Coating layer (94 mass%Zn-5 mass%Al-1 mass%Mg)
Steel substrate
Scratch
Scratch
Paint film
Paint film
Corrosion products (Zn,Cl,O) Al rich area
Coating layer (60 mass%Zn-40 mass%Sn) Steel substrate
Corrosion products (Zn,Cl,O) Sn rich area
Steel substrate
Corrosion products (Zn,Cl,O) Coating layer (100 mass%Zn) Coating layer (Zn, O)
Sample A
Sample B
Sample C
88
Figure 4.12 XRD pattern of the samples after combined cyclic corrosion test for 222 cycles