これから述べる内容は,計算に慣れるまではピンと来ないと思うので,まず次節の 基本例題をこなしてから,必要に応じて読みかえしてほしい.
例えば,6.4節(p.44)で議論した,長さLの両端支持はりの荷重分布関数は w(x) =−P
2δ(x) +P δ(x−L/2)−P
2δ(x−L)
であったが,算法6(p.61)の(B1)およびG(x) = 0よりせん断力は F(x) =
∫ x 0
−w(x)dx=
∫ x 0
(P
2δ(x)−P δ(x−L/2) +P
2δ(x−L) )
dx である.ということは,はりの長さ一杯まで積分すると
∫ L 0
(P
2δ(x)−P δ(x−L/2) +P
2δ(x−L) )
dx=P
2 −P+P 2 = 0
9.2. 終端の積分値0を利用した検算法 63
となる.せっかくx=Lの直前までF(x)の値が出ていたのに,最後にF(L) = 0に なってしまっては水の泡ではないか,と感じる諸君は下図を見てほしい.
宇宙に浮ぶ はり
x
虚無 虚無
F(x)
0 0
スリットは累積積分の上限 x
L
図中のグレイの縦スリットは,積分∫⃝x
0 −w(x)dxの上限⃝x を表す.まず,はりは 静的につり合っているので,はりの存在領域0≤x≤Lの外は虚無の宇宙空間であ る.さもないと,行き先不明の力学作用が空間のどこかに残留していることになる.こ こで,もし∫L
0 −w(x)dx̸= 0なら,上限⃝x がはりの存在範囲を超えても(L < x⃝),
空間は虚無に戻らない.静的なつり合い条件にあるはりは,あくまで自らの存在範囲の なかで力学作用をひき起し,終らせる.ゆえに∫L
0 −w(x)dx= 0でなければならない.
色々くどくど述べたが,結論をいうと,手順(B1)の途上で現れる
• ∫L
0 −w(x)dx= 0は,力のつり合い式
なのである.ゆえに0になる.左辺は,はりに作用する並進性荷重−w(x)の総和で あり,それが0なのだから「力のつり合い式」に他ならない.力のつり合い式では,
集中せん断力G(x)は無視できる.なぜなら,前章で議論したように,G(x)は無限小 幅の偶力から形成されており,偶力とは対向する同じ大きさの力のペアだから,偶力の 並進力は無限小のスペースで相殺され,外界に影響を与えないからである1).
全く同様にして,
• M(L) =∫L
0 F(x)dx= 0は,トルクのつり合い式 である.なぜなら,積分のF(x)dxは,せん断力がひき起す偶力
dx F(x)
F(x) で
ある2).その総和が0だといっているのだからM(l) = 0は「トルクのつり合い式」
に他ならない.
以上の考察から,手順(B1)において∫L
0 −w(x)dx= 0にならなければ,そして手 順(B2)において∫L
0 F(x)dx= 0にならなければ,何らかの計算間違いである.あ
るいは発想を逆にして,手順(A1)の代りに,(B1)の段階で力のつり合い式を,(B2) の段階でトルクのつり合い式を,積分計算で算˙出することもできる.˙
1)ゆえに回転作用のみ発生する.
2)力×微小動径dx.詳細は12.3節(p.95)参照.
9.3 4 つの基本例題
4つの基本例題で必要な全ての算術が体験できる.設問だけを白紙に移し,何も見な いで答が合えば本書の第I部は卒業である.
例題1 (分布荷重—最低レベルの問題): 次のはりのたわみ曲線y(x)を求めよ.
L ρ
両端は自由端支持,ρは等分布荷重とする. □
課題34 (1)設問を紙に写せ.(2)何も見ないで全ての計算を実行せよ.
例題2 (集中荷重—はりをつなげる問題): 次のはりのたわみ曲線y(x)を求めよ.
L a P
両端は自由端支持とする. □
課題35 (1)設問だけ白紙に写せ.(2)何も見ないで全ての計算を実行せよ.
例題3 (トルク荷重—G(x)̸= 0の問題): 次のはりのたわみ曲線y(x)を求めよ.
L
a MC
両端は自由端とする. □
課題36 (1)設問だけ白紙に写せ.(2)何も見ないで全ての計算を実行せよ.
例題4 (不静定—未知数を持ち越す問題): 次のはりのたわみ曲線y(x)を求めよ.
L ρ
壁際の右端は固定端支持,左端は自由端支持とする. □ 課題37 (1)設問だけ白紙に写せ.(2)何も見ないで全ての計算を実行せよ.
※ 方程式を見つける感覚を体得せよ!
課題38 標準的な材料力学の教科書や演習書にある計算問題を5問程度選び,本書の方法 で実際に解いてみて,計算結果が一致することを確かめよ.