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全微分の公式

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全微分の公式

よく見かける論法として,微小量∆x≪1で議論を始めて,途中で

∆xを無限小と仮定して∆x→dxとする.ゆえに(dx)2= 0である.

とするものがある.多くの場合,∆xが突然dxに変身するので,なにが「ゆえに」な のか,著者などは学生のころ完全に思考停止に追い込まれた.この論法の正体に思いを はせながら,少しずつ議論を精密化していくことにしよう.

11.1 独立変数の微分 (dx)

2

= 0

まず問題提起として,直観的には,例えば

∆x (∆x)2

1 1

0.1 0.01

0.01 0.0001 0.001 0.000001 0.0001 0.00000001 0.00001 0.0000000001

であるから,∆xが十分に小なら近似(∆x)2 ≑0は納得できる.しかし,どんどん

∆xを小さくしていくと,そもそも∆x≑0になりはしないか?

この問題を解明するために,1次関数y=∆xと2次関数y= (∆x)2 の原点付近 の振舞いを10倍ずつ拡大しながら観察してみる.

11.1. 独立変数の微分— (dx)2= 0 87

0 1

0 1

0 0.1

0 0.1

0 0.01

0 0.01

∆x y

y=x y=(∆x)2

y=∆x

y=x y=(x)2

y=(∆x)2

∆x y

∆x y

このように原点付近を拡大していくと,直線y=∆x の形状は全く変化しないが,

2次曲線y= (∆x)2 のグラフは猛スピードで水平線y= 0に近づく.

ところで,微分dxとは,小さくないと文句を言われたら相手が納得するまで小さ くなれる変数のことであった.これを踏まえて上述の∆xdxで置きかえると,2 次関数y= (dx)2は定数関数y= 0と見なせる.なぜなら「その程度のdxの小ささ ではy= (dx)2y= 0に見えない」と文句を言われたら,y= 0に見えるまでdx を小さくすればよい.そうできる約束である.一方で1次関数y=dxの方は,dxを いくら小さくしても1次関数のままである.すなわち,dxも(dx)2も共に無限小で はあるが,両者の性質は明らかに異なる.

以上の観察結果を踏まえて,これ以降は次の算法を認めることにする.

(d3) 無限小dxを基準長さとみなす世界では,(dx)2= 0.

専門用語的には,dxを1位の無限小,(dx)22位の無限小と呼ぶ.以上の議論か ら,1位の無限小を基準に寸法を測るときは,2位の無限小は0とみなせる.ようす るに,まっすぐなdxはそのままだが,曲った(dx)2はいくらでも平らになる.ゆえ に,曲ったもの(dx)2は無視(dx)2= 0できる.

2位の無限小の例をもう1つだけ挙げる.曲面z=∆x∆yを考え,先ほどと同様 に,原点(∆x, ∆y) = (0,0)付近を10倍ずつ拡大していく.

-1.

0

∆x 1.

-1.

0

∆y 1.

-1.

0 1.

z

1.

0 1.

0

-0.1

0

x 0.1 -0.1

0

y 0.1

-0.1 0 0.1

z

0.1

0 0.1

0

-0.01

0

x 0.01 -0.01

0

y 0.01

-0.01 0 0.01

z

0.01

0 0.01

0

このように原点付近を拡大していくと,曲面z=∆x∆yは猛スピードで水平面z= 0に近づく.したがって,∆x, ∆yをdx, dyで置きかえ,dxとdyがともに無限小 であると仮定すると,dxdy= 0と見なせる.なぜなら「その程度のdxdyの小さ さでは曲面z=dxdyは水平面z= 0に見えない」と言われたら,平面z= 0に見え

るまでdx, dyを(独立に)どんどん小さくすればよい.したがって,次の規約も認め

ざるを得ない.

(d4) 無限小dxdyを基準長さとみなす世界では,dxdy= 0.

以上,(d1)から(d4)までの議論を認めると,

算法8 (独立変数の微分): x, yを独立変数とする.このとき,x, yの微分dx, dyに ついて,次の算法が成立する.

(dx)2= 0, (dy)2= 0, dxdy= 0

この他,従属変数の微分は算法9(p.90)に従う. □ Note (2位の無限小が基準の場合その1): 本書には出てこないが,2辺の長さ dxdyであるような長方形の面積dxdyの大きさを基準に考える場合もある.

こんどはdxdyが基準なのでdxdy= 0だと何も議論できない.そこでdxdy̸= 0 して議論を進めるのだが,すると歪(わい)対称性

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