その上で等式1については,例えばf=x3なら高校流にdf /dx=f′= 3x2 となる わけだ.等式2が見慣れないかも知れないが,こう書いてよい.というよりむしろ,
df=adxと書いたときの係数aを微分係数と呼ぶのである.
Note (微小量と無限小): 多くの教科書では,微小な数を∆xなどと表記する.こ
のいわゆる微小量∆xと,無限小dxとの違いは
• 微小量∆xは小さいだけの単なる数値.
• 無限小dxは「相手に合せてどんどん小さくなれる」知能を有する自動変数.
である.ようするに,∆xは数値だから具体的に∆x= 0.001などと書けるが,dx は数値では書けない.なぜなら,もしdx= 0.000001などと固定してしまったら「俺
的には0.000001は小さくない」という人が現れたときに無限小でないことがバレて
しまう.ようするに,どんな微小量∆xを持ってきても勝手にdx < ∆xとなって くれるようなオートマチックな変数dxを微分または無限小と呼び,単なる微小量と 区別するわけだ.
∆x dx
0 0.0001 0.0005
10.2. 曲率(3.3)の導出 83
普通の変数でも成立する関係式である.弧度法であるからグラフ用紙は極座標系である (細い点線).これより曲率1/ρは
1 ρ =dθ
ds
と測られる.とはいえ,上式にはxもy=f(x)も無いので,このままでは曲線y= f(x)と曲率1/ρの関係は不明である.上式をx方向とy方向の無限小dy, dxのみ で書きたい.
STEP 2 dθ, dx, dsは普通の変数として扱えるから,上式は次のように変形できる.
1 ρ = dθ
dx dx ds
ここでようやくdxが出てきた.あとはdsとdθを消せればよい.
STEP 3 そこでいったん,グラフ用紙を直交座標系に切り換え,次のようなx方向 とy方向の微分dx, dyを考える.
x d y d
x y
s d
これに基づき,3本の直線で直角三角形を構成する(下図の右).曲りを無視する無限 小世界のなせる技である.
x d
y d s
d θ θ
θ ds
グラフ用紙 の切り換え
まず,三平方の定理より
(ds)2 = (dx)2+ (dy)2 であるが,ds, dx, dyを普通の変数と考えて
(ds dx
)2
= 1 + (dy
dx )2
同じく普通の変数として逆数の平方根を取り dx
ds= 1
√ 1 +(dy
dx
)2
これで1個片付いた.なぜなら,右辺に含まれるdy/dxはy=f(x)を微分すれば 求まる.次に,図の三角形についてtanの定義より次式が成立する.
tanθ=dy dx 同じことを逆関数tan−1で書くと
θ= tan−1 dy dx
である.tan−1の微分公式と,合成関数の微分公式を使うと (tan−1g(x))′=g′(x) 1
1 +g2(x) なので,したがって
dθ dx= d2y
dx2 1 1 +(dy
dx
)2
となり,全部片付いた.
曲率(3.3) 以上から 1 ρ = dθ
dx dx
ds = 1
√ 1 +(dy
dx
)2 d2y dx2
1 +(dy
dx
)2 =
d2y dx2
( 1 +(dy
dx
)2)3/2
を得る.以上,曲線の曲率(3.3)の導出が完了した.
無限小の論理で曲りを無視したら「曲線自体の曲り」まで無視されそうだが,そう ならない理由を述べよう.曲率(3.3)の導出過程をよく吟味すると,次の性質を用い ていたことが分かる.
1) 直交座標系の無限小世界では,曲線は直線で近似される.
2) 極座標系の無限小世界では,曲線は円弧で近似される.
すなわち,どんな曲線であっても,その一部を拡大していくと,いつかは直線で近似
できる(直交座標系),または円弧で近似できる(極座標系)と仮定して曲率(3.3)を
求めたことになる.
さて,性質1)は直観的によいとして,性質2)に違和感があるかも知れない.これ は次のように考えるとよい.まず性質2)の必要性について,もし性質1)だけを使っ て全ての曲線を直線近似してしまうと,曲線の「曲っている」という性質が扱えなく なる.その対策として,直交座標系に描いた曲線をいったん極座標変換し,この極座 標系で直線近似してから元にもどすという作戦をとる.極座標系における直線(に相当 するもの)は,元の直交座標系では円になる.(下図)
r θ
0 2π
r
θ r θ
0 2π
r
θ
円=直線