︱
4 企 ね 鉄 単
基本協約 の締結
本 社
こ所
交渉・ 協議 中 央 労 使 協 議 会
交渉 。協議 所 労 使 協 議 会
折 衝
│
事 亭
︲
︱
コ ー
生 産
・管 理 本の 社 集中 化
.
f加盟単位)
tの変更 リ
工場 (課 長)
│
係長
支部 (「組合運営の単位」)
職 場 生 産 委 員 会
(第2次査定者)一
(第1次査定者)一――――――――
̲̲̲■
作業長(支部役員の給源)
出所:鉄鋼労連 。労働調査協議会編 〔1980〕
前掲書、457ページ。
図
4
労働条件の決定機構 と組合組織職 場 懇談会
一般工 (組合員)
工
長
‖
るのである。(55)
第四に
,長
期賃金政策が もつ意義 についての解明である。第1期
長期賃金 政策 (69年 決定,70〜
75年)は ,鉄
鋼労働運動 における鉄鋼労連,中
央 本部 の リーダー シップの拡大 を可能 に し,そ
れが また中央集権化 を促 した。「『労働 組合主義』 による最初の大規模 な実践」 と指摘す るように,組
織政策 として具 体化 した ものである。(56)この鉄鋼労連 の中央集権化 は,ま
た企業連 の比 重 を 高め,72年
の新 日鉄労連 による鉄鋼労連への一括加盟の条件 を整備 した とみることがで きる。
次に
,1975年
決定の第2期
長期賃金政策 は,賃
金要求 と不可分 な もの とし て政策制度要求 を打 ち出 した。 これは,同
盟,JCに
強い影響 を及ぼ し,「労働 組合主義」の他分野への波及 を促す テコとな る。 さらに,「労働組合主義」の 政治化へ と展開 してい く。(57)この ように
,長
期賃金政策が促 した鉄鋼労働運動の上部機 関化 は,単
組の交 渉力,機
能 を制限 し萎縮 させ ることによって,他
方では職場 を基礎 とす る組合 運動の空洞化,危
機 を もた らしている。本書 は,こ
の点 を鋭 くえ ぐり,警
鐘 を 鳴 らしている。第五 に,「産業 レベルの労使関係の成熟」の内実 をみると
,産
業 レベルの「団 体交渉」 に不可欠な「集団交渉」が実現 されていない点 に注 目す る。 これが経 営優位 とさまざまな組合機能の形骸化 を招 いていることを指摘 し,「集団交渉」の実現 は「一発回答」体制の打破 と密接 につながっていることを明 らかに して いる。(58)
本書は
,以
上 にみ るように,こ
れ までの調査 。研究が もっていた分析対象や 論点の限定性 を大 きく踏 み越 えてお り,労
働組合の組織 と機能のフォーマルな 側面 について,
きわめて リアル に, また深 く解明 した ものである。その点で,機 能主義的アプ ローチの一つの到達点
,集
約的成果 と位置づ けるこ とが で き る。73ベー ジ。
70〜471ペー ジ。
72ペー ジ。
13,116ペー ジ。
上 L ll L 同 同 同 同
88 名古屋学院大学研究年報
②
組合民主主義的アプローチ とその今 日的意義
I
鉄鋼労使関係分析の今 日的視角労働組合の組織 と機能 を対象 とす る機能主義的アプ ローチによる調査。研究 は
,こ
れ までみて きた ように鉄鋼労使関係のフ ォーマルな側面 を中心 に して, その実態 とさまざまな問題 にメスをいれ,多
面的な解明 を行なって きた。しか しなが ら
,こ
うしたアプ ローチだけでは,現
代の鉄鋼労使関係のインフ ォーマルな側面,お
よびそれ らを合めての全体像 に迫 ることは難 しくなってい る。長沢寿良氏 は
,機
能主義的なアプ ローチに とどまる傾向に対 して,根
底的な 疑 間 を投 げか けている。「外部か らの介入 を排」す とい う「労働組合主義」の 理念に もかかわ らず,「労働組合主義」が大企業労組 に浸透 し主導権 を確立す る中で,会
社・ インフ ォーマル組織 による組合への介入が本格化 し,労
働組合 の機能 に とどまらず,労
働組合その ものが存立の危機 に瀕 しているという現実 に注意 を促 している。長沢氏は,今
日の大企業労組 について考察す る場合に,「会社・ インフ ォーマル組織 の介入の事実 を抜 きに」,また「彼 らの理念 と運動 抜 きに」は
,
もはや語れない とい う。(59)鉄鋼労使関係 における「非公式」な部分の拡大 については
,石
田英夫[1976]や鉄鋼労連 。労働調査協議会編 [1980]等にみ られ るように
,機
能主義的アプ ローチによって も指摘 されている。しか し
,鉄
鋼労使関係 における「非公式」すなわちインフ ォーマルな側面 は
,は
るかに大 きな広が りと深 ま りを今 日見せ てお り,そ
れ らを対象に した本格的な調査・ 分析が不可欠 となっている。 これ らの調査・分析 は表層にあ らわれに くく資料 も少ない故 にきわめて困難 をとも なうし,研
究成果 も多 くはない。しか しなが ら
,そ
うした成果 をふ まえて,フ
ォーマルな側面の調査 。分析 とインフォーマルな側面の調査・分析 を総合的 に 再構成す ることが求め られているといえよう。
(59)長 沢孝司 [1986]「
3‑1
会社・ インフォーマル組織 による組合介人」大本一訓 。愛 知労働問題研究会編前掲書,204ページ。
II
平野浩一 [1976]「日本鋼管京浜製鉄所における労働組合運動」― 鉄鋼におけるインフォーマル組織の先駆的分析 一
京浜製鉄所のインフォーマル組織である「京浜労働創友会」 と「京浜青年研 修会」の分析 を行なってお り
,鉄
鋼 におけるこの分野の先駆的な研究 とみ られる。
組合役員選挙において
,イ
ンフォーマル組織 と一体 となった会社の介入が行 なわれているという実態の分析 にメスを入れている。すなわち,「個別支配の 仕組み と方法が きめ細か く徹底的に確立 され」た「労務支配の機構 を総動員」し
,イ
ンフォーマル組織 と協力 して,「水 ももらさぬ介入 と交渉 を行なってい る」 という実態をとりあげ分析 している。(60)HI
吉崎俊一・山村信吾編[1980]『京浜の高炉一大企業 に革新の旗 を一』― 会社・ インフ ォーマル組織 に よる組合介入 と左派の闘 いを リア ル に分析 一
本書は
,京
浜製鉄所共産党委員会の監修 となってお り,少
数派 グループの共 産党員活動家の体験 と視点か ら,鉄
鋼労使関係 におけるインフ ォーマルな側面に切 り込んだ ものである。
労組 に対す る経営側の干渉・ 介 入は
,70年
代後半 に形態変化 した。す なわ ち,「ス ト権投票や組合役選な どの際に職制組織 を使 った直接的な干渉・ 介入」はそれ以前 によ くみ られたが,「インフ ォーマル組織 を使 った干渉・ 介入 にか えて きている」 とい う。(61)この指摘 は
,組
合役員選挙 における「公正 な選挙」とい う宮田氏の うたい文句に対 し
,会
社の介入によって以前 より侵 されている 事実 をとりあげて反論す るものであ り,さ
らにその形態変化 に注 目す るもので ある。こう した変化の背景 には
,60年
代後半以降における鉄鋼大手の労務管理の 変化があ り,そ
れ と密接 に結びついていることを指摘す る。(60)平 野浩一 [1976]「 日本鋼管京浜製鉄所における労働組合運動」大月書店編集部編 『現 代の労働組合運動
第7集』大月書店。
(61)日 本共産党京浜製鉄委員会監修
吉崎俊―・山村信吾編 [1980]『京浜の高炉―大経営 に革新の旗を一』新 日本出版社,27ページ。
90 名 占屋学院大学研究年報
まず
,66年
の新社員 (資格)制
度の導 入 を契機 に,少
数派 (左派)の
活動 家 に対 して,人
事考課 を軸 に した「差別」攻撃が強 まる。活動家や一般労働者 に対す るそれ までの「アカになるな」「アカに近づ くな」といった「直接的攻撃」か ら,「活動家 に対す る 人権侵害''と差別 をみせ じめに し」 なが ら
,他
方で は「役付工 に格段 によい待遇 を与 える」 という「間接的攻撃」に変化 した といぅ。(62)
さらに
,73年
以降,小
集団活動が全社的 に導入・推進 され るようになると,もう一つの新 たな様相 が付 け加わ る。すなわち,「数人の工 長単位の小 さな集 団」 ご とに管理が強 まり
,こ
の小集団に「工長のほか,イ
ンフ ォーマル組織の メンバーが配置 され」,個々の労働者の よりきめ細かな把握 と対応が可能になっ た としている。(63)この人権侵害・ 差別 をめ ぐって
,73年
4月 に 35名 の活動家が横浜地裁 に提 訴 しさらに,74年
12月には川崎南労働基準監督署 に申告 した。これに対 して,76年6月 に労働基準監督署 より改善勧告の行政指導が行 なわれ てい る。大企 業 に対 しては
,全
国的 に も初めてのケースであ る。( )さ らに,裁
判 闘争 の件 については,88年
3月 に会社 と活動家 34名 は8,000万円の解決金や資格 。賃 金の是正 な どで和解 した。(65)人権侵害 と差別が現 実 にこの ように大規模 で行 なわれていたことを会社側 も認め,是
正の措置に踏 み切 ったことは,
きわめて 注 目され る。インフ ォーマル組織 は
,い
ずれ も会社の労務の指導で設立 された ものであ り 作業長会 な ど職制の援助の下 に活動 し,就
業時 間中 も活動 してい る。(66)こ の インフ ォーマル組織 か ら送 り込 まれたメ ンバーが独 占す る組合役員の選挙 につ いて,本
書はその非民主的な実態 を詳細 に分析 している。例 えば
,選
挙規定の改訂によって,立
候補資格が制限され,
また信任投票の や り方が改訂 されて不信任の印が付 けに くくなっている。選'i多公報以外の選挙(62)同上,22ペー ジ。
(63)同上,25ペー ジ。
(64)同上,278,290〜291ペー ジ。
(65)労働者調査研究会編 [1990]前掲書,38ペー ジ。
(66)吉崎俊―・ 山村信吾編 [1980]前掲書,29ペー ジ。
活動 について も事実上禁止 されている。(67)
さらに
,投
票 。開票時 における極端 な非民主的な運営について も指摘 されて いる。64年の選挙規定の改訂 に よって,「半数連記」か ら「定数 (不完全)連
記」に変 えられ少数派の完全な締め出 しが可能 となった。支部選挙 においては,
職制の介入による (投票用紙の
)筆
跡鑑定や投票結果の数字の改貨な ど,不
正 や介入の実態が え ぐれ出 されてい る。(68)少数派 は投票時の立 合 。参観 も認められていない。
こうした組合役員選挙の非民主的運営 について
,組
合員有志が求めていた訴 えに対 し,横
浜地裁川崎支部 は88年 7月,投
票の秘密 を確保す る命令 を出 し ている。(69)少数派の活動家 グループによる証言 によって
,活
動家に対す る企業の攻撃, インフ ォーマル組織や職制 を利用 しての組合活動への干渉 。介入,さ
らには組 合役員選挙の非民主的実態な どの全体像 を浮 き彫 りに している点で,本
書 は き わめて注 目され る。こうした実態の詳細な分析は
,宮
田氏等が自賛する「公正な選挙」の内容を えぐり出 し,現
実 と乖離するものであることを明 らかに している。「公正」の 内実は,少
数派を締め出すためのさまざまな「不公正」を内包 した ものに他な らない。 しか も,職
制やインフォーマル組織 を使っての会社の介人によって, そうしたシステムが支えられている。これは, まさに「外部の介入を排」するという「労働組合主義」が
,会
社 と いう (組合にとっては最 も重視すべ きはずの)「外部」の介入に目をつぶ り,
じ か もそれによって支えられていることに他ならない。それ らの点を裁判所 も認 めたことに,組
合民主主義の深刻な様相が示 されている。(67)同上,35〜 36ペー ジ。
(68)同上,37〜 39ペー ジ。
(69)労働者調査研究会編 [1990]前掲書,38ペー ジ。