5.5 考察
5.5.3 管理者への負荷
本提案方式では,これまで管理者が有していた各種メディアの性能・コスト,仮 想サーバやストレージの構成情報といった知識を使い実施していたデータの配置 計画に関し,5.3.3節のデータ適正配置アルゴリズムにて実現した.また,本アル ゴリズムの実現にあたり,従来の管理者が製品仕様書や運用実績により知り得て いた知識については,性能・メディアコスト比(表5.3),移動にかかる計算処理へ
の影響度(表5.4),管理者の性能要件を満たすか否かの判定条件(式5.4)を測定に より求めた.これにより,管理者がユーザの性能要件をサービスの初期構築時に 設定するだけで,データセンター全体で一貫性をもった性能・メディアコストを 考慮したデータの配置計画を行うデータ適正配置の自動化を実現した.
本提案方式の効果について,5.2.2節で示した式5.1,式5.2に当てはめ算出する.
本提案方式では,データ配置の計画をアルゴリズム化し自動化を実現したことで,
管理者による1サービスあたりのデータ配置計画時間Ptを0とすることができる.
これは,式5.2のWtが0となること意味し,式5.5に示すサービスを開始する始 めの月の作業時間(W0)のみとなる.
W0 = ItS/A (5.5)
これを2015年に予測されるストレージが100台以上,VMが50,000台以上とな る大規模なデータセンターでの作業を,5.2.2節の仮定に加え,1サービスの初期構 築にかかる時間のみ提案方式の管理者の性能要件を設定する時間5分を加算した 65分として算出すると,従来の方法ではサービスを開始する月の作業負荷は174%
であったのに対し,113%に低減し,翌月からの作業負荷は70% が0%となる.本 提案方式により,サービスを開始する月の作業負荷は61%,その翌月からの作業
負荷は100%削減の効果がある.
また,サービスを開始する月の作業負荷に関しては,依然100%を超えているも のの,サービスを開始する月のみのため,一時期のみの増員や開始するサービス
数を2ヶ月に分割するなどの対策が可能である.また,1サービスの初期構築にか
かる時間を短縮させる技術として,近年,VMのクローニング技術や一括デプロ イ技術が進展しているため,65分よりも短縮され管理者の負荷が削減されると予 測する.
次に.管理者の運用担当の範囲より管理者の負荷について述べる.大規模・複雑 化するデータセンターでは,2.2節で述べたように水平分業管理が行われることが 多い.本提案方式では,ストレージに関する情報を知識データ化したことで,要 求性能を入力するだけで,ストレージの担当でない他レイヤの管理者でも,スト レージとサーバの両方を考慮したデータ移動の運用ができる目処がついた.また,
5.4節の実験により,本測定環境においては6.2%以下の要求性能と実性能の性能差 であり,各種ストレージの特性を生かしたデータ移動が実現できたと言える.こ
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図 5.9: 本研究の適用により進化した運用
れにより,図5.9に示すように,サーバ・ネットワーク・ストレージの各レイヤに 分かれていた管理者の一部を,データセンター全体で一貫した運用を行うことが できる垂直統合管理者へとシフトできる可能性が生まれた.この管理者のシフト は,ストレージ管理者の負荷を軽減に留まらず,サーバ管理者とストレージ管理 者が情報交換しつつデータ配置を決めざるをなかった運用から,垂直統合管理者 のみで運用できるようになり管理者全体の負荷の削減につながると考える.
このように,本提案方式を大規模・複雑化するデータセンターに適用すること で,3.1節で述べた「ノウハウが属人化している(75.8%)」「特定の管理者に業務が
偏りがち(61.4%)」「管理者が多忙で十分な管理ができていない((53.1%))」の課題
解決につながると考える.