◇諏[.邊
第2節 第2回実験の概要と結果
(1)概要
ここでは、第1節で行った実験の確かめとして、新たな実験を 行う。それは生花と造花の部屋で行った実験の被験者の中から7 人を選び、部屋を入れ替えて行うということである(装飾物なし の実験は省略する)。しかし前の実験と同じ内容では、同様の結果 になってしまう可能性がある。そこで、改めて調査用紙を作成し た。また、計算問題にっいては、同じものを用いた。
以下は、実際に使用した調査用紙である。
性別( ) 年齢( )
1、次の言葉のイメージから受ける印象を一言でお答えください。
ただし、赤ちゃん=おしゃぶりのように具体物をあげてはいけません。
男( ) 女( ) 赤ちゃん( )
老人( ) 芸能人( )
2、次の色のイメージから受ける印象を一言でお答えください。
ただし、赤=りんごのように具体物をあげてはいけません。
黄色( ) 紫( )
黄緑( ) 茶色( ) 銀色( )
3、下の絵が今のこの空間にいるあなただと仮定し、あなたの心理状態をこ の少年の表情(目、鼻、ロ、まゆ毛)に表してください。
4、少年の表情はどのようなあなたの表情ですか。
また、どのような心理状態で描かれましたか。
( )
(2)結果
① 計算問題 生花の場合
平均131文字まで回答 43問中34問正解 正答率79%
造花の場合
平均123文字まで回答 40問中29問正解 正答率72.5%
改めて計算問題を行った結果である。今回の実験では大きな差 は生まれなかったが、前の実験で正答率の高かった生花の部屋の 人たちは正答率が下がり、それとは反対に、正答率の低かった造 花の部屋の人たちが、正答率が上がるという結果になった。この ことから、生花と造花の違いが計算の効率に大きな影響を与えた といっても過言ではないだろう。文字数にはあまり差がなく、正 答率に違いがでるということは、生花には作業効率をあげさせる 作用があるということが改めて言える。3分という限られた時間の 中で、焦らず間違えずに計算していくことは容易ではない。その ような状態で、生花からは落着きのような精神的な安らぎを受け ることにより、造花の時よりも正答率が上がったのではないだろ
うか。
先の意識調査からも、生花を飾る目的として「気持ちを安定さ せる」、r精神的な安らぎを得る」という要素があげられたが、実 際にも、そのような効果が得られ、正答率の上昇につながったも のと考えられる。
② 言葉、色の印象
生花の場合 1
男 力強い6 たくましい
女 優しい3 やま)らかい2 おおらか 髪が長い 赤ちゃん か才)いい6 小さい
老人 賢い2 弱い2 かたい ゆっくり 包み込む 芸能人 派手2 楽しい 面白い 頭が悪い うるさい
ぶしい 25
2
黄色 明るい4 テンションが高い 元気 まぶしい 紫 暗い2 美し、い しなびている オシャレ
が高い 神秘的
黄緑 芽生え どこまでも続く さわやか 若々しさ 優しい 秘的 明るい
茶色 落ち着いている3 汚い2 渋い 暗い
銀色 まぶしい2 鋭い2 さみしい 渋い
高い 23
造花の場合 1
男 強い3 たくましい 大きい がっちり 頭が悪い
女 やわらかい3 かわいい 丸い 弱い 計算高い 赤ちゃん かわいい4 あったかい ほがらか 純粋
老人
一 一 一 一 一 一 一 一 一
大変 笑顔 ゆっくり やわらかい 子どもっぽい
賢い 弱い塵 一 − 盧 一 甲 一 一 一 一 一 辱 一 一 一 一 一 層 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 曹 一 一 臼 一 臼 薗 一 甲 一 一 一 − 一 一 一 一 − 一 一 甲 一 一 − 一 響 一 − 一 一 一 一 一 一 一 一
一 一 陣 o 一 申 一 層 一 層
能人
一 一 一 需 一 響 − 一 一 一 一 一 一 昂 噛 画 薗 一 一 r 齢 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 昌 網 輔 噂 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 q 一 甲 一 一 一 − 一 q r 剛
忙しい うるさい 遠い 憧れ 力強い
嘘つき 華やか 23
2
黄色 明るい2 あったかい 輝いている 向日葵
しくなる 華やか
紫 派手 謎 不思議 おばさん 落ち着いている 艶な 気高い
黄緑 明るい2 若い2 優しい 草原 爽快 茶色 暗い2 落ち着く 秋 木 渋い 汚い 銀色 さわやか まぶしい かたい アクセサリー
い 輝き 冷たい 18
前回の実験で聞いたことを、今回は面談ではなく、紙面上で言 葉・色を変え、改めて聞いてみた。今回は、前の実験であまりに も具体物が多かったので、具体物は禁止し、言葉・色の印象だけ を調査することにした。
生花と造花のそれぞれの問いに対し、プラスイメージの回答数 を比べてみると、多少ではあるが生花のほうが多い結果となった。
しかし最も注目すぺき点は、造花の2の回答である。前回と同様、
r向日葵」r木」rおばさん」のような具体物を答えた被験者が今 回も多く見られた。特に今回の実験では、具体物は挙げないよう に断っており、色の印象を聞いているにもかかわらず、色から連 想する具体物を答えているのである。生花の場合では、具体物を 答えたものは見られなかった。
前回実験においても考察したように、生花は、造花よりも想像 を豊かにさせ、逆に造花は、想像の幅を狭めると解釈することが できるのではないだろうか。
③ 絵
今回は、今部屋にいる自分を、紙面上の少年の表情に表しても らうという作業を行った。また、その理由を挙げてもらった。
以下に、実際の絵を4点ずつ挙げる。
生花の場合
3 笑顔4 無表情2 普段の表情
4 リラックスしていたので3 無心だから3 前よりも落ち着いていたから
嘆.
し ロ { 上、轟
図19 表情1 図20 表情2
じア へ 〆 \ − 』、
も
図21 表情3 図22 表情4 造花の場合
3 笑顔2 少し笑顔2 無表情 驚き 泣き顔
4 楽しかったから2 何も考えていない2 絵を描くのは苦手なので2 少し焦りがあったので
6
一 L 凶
図23表情5
デ ず
Q O
じ
.ノぐ
図24 表情6
=︶〆
驚 〇
Ll1…
図25 表情7
婁コ ,き,
図26表情8
問4の理由を見てみると、rリラックスしていた」、r無心だから」
という回答が生花では多く、造花では「楽しかった」、「何も考え ていない」、「絵を描くのは苦手」など、回答にばらつきが見られ た。生花、造花ともに様々な表情が見られたが、生花では大体の 人が笑顔を描き、理由に「無心」と書かれていても笑顔を描いて いるものもいる。逆に造花では、おおむね無表情であり、なかに は驚きの表情や泣いている顔まで描いている被験者がみられた。
実験の空間にいる自分の表情を描いてもらったのに、泣いている 顔や驚きの表情を描くということは、その空間における自分のあ り方が安定していない状態にあると感じているからではないだろ
うか。
このように、実際に描いてもらった表情に違いが見られるとい うことは、その空間に飾られている装飾物の影響を無視すること はできないだろう。生花には、気持ちを安定させる作用があると 述べてきたが、笑顔表現が多数見られたということは、やはりそ の効果なのではないだろうか。その反面、造花においては生花の ような影響を得ることができず、無表情な表情やマイナスイメー ジの表情となったものと考える。
第3節 考察
ここでは第1回の実験、第2回の実験を総合して考察する。さ らに、第1章で行った意識調査の結果を踏まえ、生花と造花を飾 る目的意識と実際の効果という観点からまとめたい。
意識調査では、生花や造花を飾る目的、そして2回の実験では、
実際にそれらから得る心理的な影響にどのような違いがあるのか
を調べた。
意識調査の結果から、生花は「気持ちを静める」「気持ちを明る くさせる」などといった、精神面に安らぎを求める目的で飾ると いうことが理解できた。しかし、造花を飾ることにそのような目 的はなく、ただ装飾目的で飾っているということが伺えた。つま り、あくまでも造花は生花の装飾性の代用品であり、それ以上の ものは期待されていないのである。
実験においても、実際に生花は精神的な安らぎの効果を及ぼす が、造花にはそのような効果はないということが明らかになった。
しかし、何も飾られていない空間よりも造花があることで多少の 安らぎを得ることも確認できた。
意識調査および実験によって明らかになったことを、表7にま
とめた。
表7意識調査および実験で明らかになったこと
目的意識︵意識調査︶実際の効果︵実験︶
生花
精神の安定、気持ちの変化
選ばれた選択肢
成長をみたい、気持ちが安ら ぐ、気持ちが落ち着く、気持ち が明るくなる、気持ちが楽しく なる
飾る場所
面談より
・空間の雰囲気を変える ・プラスイメージを 想像させやすい
・将来に希望を持たせる ・周囲との調和を求める
作業より
・気持ちを落ち着かせる
・生きることについて、プラス の印象を持つ
・生命力を抽象的に想像させる
造花
装飾目的、生花の代用
選ばれた選択肢
部屋の装飾品、部屋が明るくなる 目の保養になる、部屋が落ち着く 部屋がきれいになる
飾る場所
翻ような りにく〕
面談より
・空間の変化に気付かれにくい ・想像力が充分に働きにくい ・具体物を想像させやすい ・現在の自分から将来を想像 する
・自分でやり遂げようとする 作業より
・気持ちに余裕を持たせる効果は
ない
・生命力を抽象的に想像させる