最後に、笑いの起こったタイミングについて表にまとめた結果を示していく。
ただし今回サンドウィッチマンのネタの対象は、漫才5ネタとコント5ネタの計10ネ タとしている。
まず、サンドウィッチマンとしゃべり漫才の結果について以下に表す。
ツッコミ ボケ サンドウィッチマン 総数 766 472
笑い 482 67 しゃべくり漫才 総数 180 113 笑い 120 46
また、割合を表すグラフを以下に示す。
富 あ、段差気を付けてください
伊 どこに段差あんだよ。全然ねーけどな、段差
35
サンドウィッチマンのネタにおいてツッコミで笑いが起こった割合が88%、ボケで笑い が起こった割合が12%となった。サンドウィッチマンのネタでは、ツッコミの後に少し
「間」をとることが多く、笑いどころを作っていた。また、ボケの発言の途中でツッコミ が入ることが多くあった。サンドウィッチマンは著書『復活力』でも、笑いの「間」やテ ンポやリズムを徹底的に研究したことが述べられており、笑いを誘発するための「間」が 設定されている。つまり、ボケが観客に認識されるや否やツッコミを入れることでおかし みを笑いに変換し、笑いを誘発・増幅させていると考えられる。
一方しゃべくり漫才では、ツッコミで72%、ボケで28%の割合で笑いが起こってい た。しゃべくり漫才では、ボケの発言を遮ってツッコミを入れることが比較的少なく、
「間」もボケの後に作られていることが多かったことがこの結果につながっていると考え られた。
さらにツッコミ・ボケの内、笑いに繋がったものの割合を見ていく。
サンドウィッチマンは、ツッコミの63%、ボケの14%が笑いに直結していた。それに 対し、しゃべくり漫才はツッコミの67%、ボケの41%で笑いが生じており、しゃべくり 漫才の方が高確率で笑いに直接起因していることが判明した。
その理由について、まずツッコミから考える。サンドウィッチマンは1つのネタにおい て平均76回ツッコミがあったのに対し、しゃべくり漫才は平均36回とサンドウィッチマ ンのツッコミが多いことが分かる。つまり、直接笑いには繋がっていないツッコミの存在 が多いと考えられる。詳しくは後程見てきたい。
ボケの確率が低い理由は先述したように、ボケの発言の途中でツッコミを入れツッコミ で笑いを起こしている場面が多いためだと考えられる。
0% 20% 40% 60% 80% 100%
サンドウィッチマン
しゃべくり漫才
ツッコミ ボケ
36
次に、ツッコミに着目し、13種類に分類した中での結果を見ていく。
結果は以下の通りである。
否 定
オ ウ ム 返 し
流 し
訂 正
訂 正
+ 否 定 感 想
否 定 感 想
ノ リ ツ ッ コ ミ
意 味 指 摘
比 喩
情 報 再 提 示
訂 正
+ 情 報 再 提 示
否 定 感 想
+ 情 報 再 提 示
そ の 他
サンド ウィッ チマン
総数 161 73 1 45 55 172 8 49 50 8 57 86 1 笑い 121 48 0 35 8 107 8 37 46 8 10 53 1 しゃべ
くり 漫才
総数 50 11 0 7 4 32 3 14 8 15 9 21 6 笑い 40 3 0 6 1 21 2 10 8 10 1 15 3
また、割合を表すグラフを以下に示す。
それぞれ割合が一番大きいツッコミが、「否定」型でサンドウィッチマン25%、しゃべ
くり漫才33%となった。次いで「否定感想」型が多く、サンドウィッチマン22%、しゃ
べくり漫才17%となった。「否定」型と「否定感想」型のみでツッコミの笑いの約50%を 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%
サンドウィッチマン
しゃべくり漫才
否定 オウム返し 流し
訂正 訂正+否定感想 否定感想
ノリツッコミ 意味指摘 比喩
情報再提示 訂正+情報再提示 否定感想+情報再提示 その他
37
占める結果となった。また、ここには数値としては記していないが、ツッコミで笑いが起 こった場所における大笑い全体の個数が76個であり、このうち「否定」型と「否定感 想」型を足したものは32個であった。これは全体の42%を占め、「否定」型と「否定感 想」型でいかに大きな笑いが起こっているかを如実に表している。これらの結果から、
「否定」型と「否定感想」型のツッコミは笑いに繋がりやすくまた大きな笑いが起きやす いと言え、ネタにおいて使用される頻度が高いのも納得される。
次に、コンビごとに個別集計したものを見ていく。
結果は以下の通りになった。
ツッコミ ボケ サンドウィッチマン 総数 766 472
笑い 482 67 夢路いとし・喜美こいし 総数 19 24 笑い 11 14 オール阪神・巨人 総数 45 33 笑い 28 19 中川家 総数 65 21 笑い 46 7 銀シャリ 総数 51 35 笑い 35 6 チュートリアル 総数 55 89 笑い 22 40
また、割合を表すグラフを以下に示す。
0% 20% 40% 60% 80% 100%
サンドウィッチマン 夢路いとし・喜美こいし オール阪神・巨人 中川家 銀シャリ チュートリアル
ツッコミ ボケ
38
ツッコミで笑いが起こった割合が大きい順に並べると、サンドウィッチマン88%、中川
家87%、銀シャリ85%、オール阪神巨人60%、夢路いとし・喜美こいし44%、チュート
リアル35%となった。
中川家は一部コントインしたネタをしており、サンドウィッチマン同様ボケに被せるか のようにツッコミを入れるシーンが多く見られ、銀シャリはツッコミ役の橋本が鰻のボケ を展開することで笑いを生み出す特徴があるため、このような結果になったと考えられ る。
それに対して、夢路いとし・喜美こいし、チュートリアルはボケで笑いが起こった割合 の方が大きい結果となっている。夢路いとし・喜美こいしはボケの後に笑いの「間」をと っていることが多く、ボケで直接笑いを生んでいることが分かった。チュートリアルは、
ボケ役の徳井の行き過ぎた妄想による暴走が軸であり、その異質さがおかしみを生んでい ることが再確認された。
また、オール阪神巨人はおおよそ半々の割合であり、ネタごとやネタの最中にツッコミ 役とボケ役が入れ替わることや両者の台詞量などからも、ツッコミ役とボケ役のバランス の良いコンビと言える。
次に、ツッコミ13種類で個別集計したものを見ていく。
分類した結果は以下の通りになった。
否 定
オ ウ ム 返 し
流 し
訂 正
訂 正
+ 否 定 感 想
否 定 感 想
ノ リ ツ ッ コ ミ
意 味 指 摘
比 喩
情 報 再 提 示
訂 正
+ 情 報 再 提 示
否 定 感 想
+ 情 報 再 提 示
そ の 他
サン ド
総 161 73 1 45 55 172 8 49 50 8 57 86 1 笑 121 48 0 35 8 107 8 37 46 8 10 53 1 夢路
喜美
総 5 3 0 0 0 2 1 4 0 3 0 1 0 笑 4 1 0 0 0 1 0 3 0 2 0 0 0 阪神
巨人
総 16 1 0 1 0 6 1 1 4 1 3 5 6 笑 11 0 0 1 0 3 1 0 4 1 0 4 3
39 中川
家
総 22 4 0 2 4 11 0 3 1 6 5 7 0 笑 20 1 0 2 1 9 0 3 1 4 0 5 0 銀シ
ャリ
総 7 3 0 4 0 13 1 6 3 5 1 8 0 笑 5 1 0 3 0 8 1 4 3 3 1 6 0 チュ
ート
総 8 6 8 1 1 22 0 2 1 0 3 2 1 笑 4 2 0 0 0 10 0 2 1 0 1 1 1
上記を参考に、15ネタ(サンドウィッチマン10ネタ+比較対象5ネタ)合計で各ツッ コミが確認された総数とその中で笑いが生じていたものの総数、さらに笑いに繋がった割 合を以下に示す。
否 定
オ ウ ム 返 し
流 し
訂 正
訂 正
+ 否 定 感 想
否 定 感 想
ノ リ ツ ッ コ ミ
意 味 指 摘
比 喩
情 報 再 提 示
訂 正
+ 情 報 再 提 示
否 定 感 想
+ 情 報 再 提 示
そ の 他
総数 219 90 9 53 60 226 11 65 59 23 69 109 8 笑い 165 53 0 41 9 138 10 49 55 18 12 69 5 割合 75
% 59
% 0
% 77
% 15
% 61
% 91
% 75
% 93
% 78
% 17
% 63
% 63
%
「訂正+否定感想」型、「訂正+情報再提示」型のツッコミは、第2章第1節「ツッコ ミ」に関する分析でもふれたが、ボケに対して行動や発言を促したりするものが多く含ま れている。これは、ボケに着目させたりおかしみを伝達するというよりも、話を筋に戻す ことや正しい情報を再確認することに重きが置かれている。このことは、笑いが「訂正+
否定感想」型全体中15%、「訂正+情報再提示」型全体中17%でしか笑いが生じていない ことからも明らかである。そしてこの「訂正+否定感想」型、「訂正+情報再提示」型が 一番使われていたのがサンドウィッチマンであったことが分かっている。
先ほど、しゃべくり漫才に比較してサンドウィッチマンがツッコミで笑いに直結してい る確率が低くなっていることが分かった。また、サンドウィッチマンはひとつのネタにお
40
けるツッコミが平均76回と断トツで多いことが分かった。つまりその中には、コントの 中のストーリーを進行するためにボケ単体に向けたツッコミがあったり、おかしみを様々 な方法で伝達しようとするため、直接笑いには繋がらないがネタ全体には不可欠なものが 多く存在していることが考えられた。
それに対してしゃべくり漫才では、少ない言葉で確実に笑いに繋げるために、ツッコミ はボケのおかしみの発話を引き出しそれをたしなめるというように、おかしみ自体はボケ で9割方完結させ、ツッコミで「ここで笑ってくださいね」という合図を出すことで、ボ ケそのものに焦点をより当てていると考えられる。
またツッコミやボケの発せられるタイミングと異なるタイミングで笑いが起こる場面が 幾つか見られたため、紹介しておく。
まず、ボケの前に観客がボケを予測して笑う事例についてである。
夢路いとし・喜美こいしのネタにおいて以下のやりとりがある。
:
:
いとし 瓦葺き言うたらね。昔は角角に鬼瓦ちゅうのがあって こいし あれ魔除けっちゅうやつや
いとし 怖い顔したやつがあんねん こいし そうそうそう
いとし 鬼瓦で思い出したけど嫁はんどないしてんねん?
こいし おかしなことで嫁はん思い出すな!
いとし 僕はねあの、怖いものとか汚いもの見る時、君の嫁はん思い出すねん
いとし 土砂崩れであの川ん中いろんなもの捨てるから、川が汚染されて こいし なんかあのブツブツな
いとし ヘドロちゅうやつや こいし あ、ヘドロヘドロ
いとし ヘドロで思い出したけど、嫁はんどないしてる?
こいし こら!なんでウチの嫁はんがヘドロで出てくんねん いとし つい思い出したもんやから