175 総括
○PCPDT(SO3H)の合成
スルホ基含有PCPDTを合成した。得られたポリマーはH2O、DMSO、MeOHなどの極性溶 媒に対する溶解性が高く、縮重したチオフェン環に起因して広いπ共役構造を有している ことから、スルホ基がドーパントとなる自己ドープ型電導性高分子の中では、比較的高い 電気導電性を示した。重合にFeCl3を用いたため、透析により精製を行ったものの、ポリマ ー中に微量のFeが残留している可能性があり、1H NMRが測定できなかった。今後構造解 析のためにFeの完全な除去が課題となってくると思われる。
○PCPDT(SO3H)とシリカとのハイブリット
PCPDT(SO3H)とシリカとのハイブリットはポリマー中にスルホ基が導入されているため、
ポリマー自身が触媒となり、外部から酸を加えることなく、共加水分解重縮合(ゾル-ゲ ル反応)が進行した。また、ポリマーとシリカ間の相互作用(水素結合)により、目視で はポリマーの析出が観測されない、均一なハイブリットを得ることができた。プレゲル溶 液をガラス基板上にスピンコートすることで得られたハイブリットは薄膜状態でも導電性 を示した。
薄膜の伝導度を向上させるために、プレゲル溶液中に外部ドーパントとして PSS を添加し ハイブリットを行ったところ、添加していないものと比較し高い伝導度を示した。しかし PSSの添加量や、ポリマー含有量を増加させると薄膜の色が黒くなり、伝導度が向上するに つれて透明性が低下した。このことから、PCPDT(SO3H)を用いたシリカハイブリット薄膜 は、透明電導薄膜としては適切ではないという結果となった。
一方で、PCPDT(SO3H)に特徴的な強い近赤外領域の吸収を利用することで、得られるハイ ブリッド薄膜は、その電導性を利用する電磁遮蔽シールドや帯電防止コーティング剤とし ての利用に加え、熱吸収ガラスを含む様々な耐候性に優れる赤外線吸収材料としても興味 深いことがわかった。
○PCPDT(OH)の合成
ヒドロキシル基含有PCPDTを合成した。GRIM重合を用いたため、ポリマー中にヒドロキ シル基を任意の比率で導入可能であった。今回はヒドロキシル基とHexyl基をそれぞれ1/4, 1/9で導入し比較を行った。1/4に比べ1/9のポリマーは高い溶解性を示し、ヒドロキシル基 の含量が溶解性に大きな影響を与えていることがわかった。
○PCPDT(OH)とシリカとのハイブリット
PCPDT(OH)とシリカとのハイブリット化条件の探索実験を行った。様々な溶媒とシリカ条
件を探索したが、均一なハイブリット薄膜を得ることができなかった。これはポリマーの
176 溶解性がそれほど高くないため、シリカの加水分解重縮合の過程でポリマーが析出してし
まうことに由来する。今後ハイブリット条件や、ポリマー自身の溶解性を改善する必要が あると考えられる。
○PCPDT[PO(OH)2]の合成
PCPDT[PO(OH)2]の合成を行った。化学酸化重合を用いた単独重合、SUZUKI Couplingを用
いた交互共重合を行ったがいずれも溶解性が悪く、目的のポリマーを得ることができなか った。しかし、ポリマー中のHexyl基の含有量を増やすことで、低い溶解性を改善しホスホ ン酸基含有PCPDTを合成することができた。
○PCPDT[PO(OH)2]とシリカとのハイブリット
PCPDT[PO(OH)2]とシリカとのハイブリットは、ポリマーの溶解性が非常に低いため適切な
条件を見出すことができず、ハイブリットを行うことができなかった。今後ポリマーのさ らなる溶解性の向上が必要である。
○PCPDT[N(CH3)3Br]の合成
PCPDT[N(CH3)3Br]の合成を行った。GRIM重合を用いて重合を行い、4級アンモニウム塩基
の導入も高い添加率であった。得られたポリマーはMeOHに高い溶解性を示した。
○PCPDT[N(CH3)3Br] とシリカとのハイブリット
PCPDT[N(CH3)3Br]とシリカとのハイブリットはポリマー中に自己触媒となる官能基が導入
されていないため酸触媒を加えないと加水分解重縮合が進行しなかった。酸触媒として硝 酸水溶液を添加し、ハイブリットを行うことで均一なハイブリットを得ることができた。
プレゲル溶液をガラス基板上にスピンコートすることで得られたハイブリットは薄膜状態 において導電性を示さなかった。これは、4 級アンモニウム塩部位が、主鎖構造の PCPDT へドープするためのドーピング能力が低いことに起因する。
薄膜の伝導度を向上させるために、プレゲル溶液中に外部ドーパントとしてDDQを添加し ハイブリットを行い、得られたハイブリット薄膜は透明性の高いものであった。しかし外 部ドーパントを添加してもテスターによる導電性の発現は観測されなかった。今後さらな るハイブリット条件や外部ドーパントの探索実験が必要であると考えられる。
177 参考文献
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