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第 3 章
135 第一部 [自己ドープ型ポリマーの合成及び合成検討とその性質]
3-1 ポリマーの合成検討
3-1-1 4H-cyclopenta-[2,1-b:3,4-b’]dithiophen (6) の合成
全ての開始物質である()の合成検討を行った。全4段階の反応ステップにおいて、1段階目 のBis(2-iodo-3-thienyl)methanol (3)を合成する際、収率が30~40%と、非
常に低かった。そこで、反応に用いるn-BuLiの滴下を、1滴ずつゆっく りと加え、室温に戻す際も、十分に時間を取ることで収率が50~60%と向 上した。その他 3 ステップの反応は、いずれも高収率で合成することが
でき、目的物である(6)を白色版状結晶として得ることができた。構造は1H NMR、13C NMR、
IRで確認した。
3-1-2 4,4-bis(2-(4-sulfobutoxy)ethyl)cyclopenta[2,1-b:3,4-b’]dithiophene disodium salt (10)の合 成
スルホン酸ナトリウムを側鎖に有するモノマー(10)の合成をおこなった。まず、開始物質(6) に 2-(2-bromoethoxy)tetrahydro-4H-pyran (7)を 塩 基 性 条 件 下 で 側 鎖 に 導 入 し 、pyridinium p-toluenesulfonate (PPTS)による酸脱保護反応を行った。以前までは、酢酸エチルでシリカゲ ルカラムを行い、精製をしていたが、Crudeの状態でも次の反応に十分用いることができる ので、今回は精製を行わなかった。そのため、収率が向上した。
その後、1,4-butane sultoneとNaH存在下、THF中で反応を行った。反応は不均一系で進行 し、アセトン→H2O の順で再沈殿を行うことにより精製した。これによりスルホン酸ナト リウム含有のモノマー(10)を白色固体として得た。どの実験においても比較的高収率でモノ マーを合成することができた。
3-1-3 PCPDT-SO3Na (11)の合成
チオフェン系に良く用いられる塩化鉄(Ⅲ)用いた化学酸化重合を溶媒に H2O を用いて行っ た。均一系で反応は進行し、ポリマー(11)を金色フィルム状固体として得た。
しかし、1H NMRによる構造の確認はできなかった。おそらく重合に用いた塩化鉄(Ⅲ)が残
存していたか、ポリマーの側鎖の末端のNaが部分的に(Fe)1/2になったままであると考えら れる。つまり、常磁物質が残存しているために NMR でロックがかからない状態になって いるためであると考えられる。
CH3CN→H2Oの順でソックスレー抽出を行い、塩化鉄の除去を試みたが、NMRの測定はで きなかった。
構造は、UV-visスペクトルで行った。GPCによる分子量測定は、ポリマーの溶解性が非常
S (6) S
136 に悪く、H2Oにしか溶けないため、測定はできなかった。
3-1-4 PCPDT-SO3H (12)の合成
化学酸化重合で合成したポリマー(11)のイオン交換反応を行った。反応の経過を色の変化・
pH の変化・UV-vis スペクトルで確認した。色は、濃紫色から黒色へと変化し、pH は中性 から酸性になり、UV-vis スペクトルにおいて最大吸収波長が長波長側にシフトしたことか らイオン交換が起こったことを確認した。最終的な目的物であるスルホン酸基含有ポリマ ー(12)を、黒色フィルム状固体として得た。
ポリマー(12)は、H2Oに非常によく溶け、DMSO、MeOHにも高い溶解性を示した。しかし、
CHCl3、THF、Acetonなどの有機溶媒には溶解しなかった。
3-1-5 2,6-dibromo-4,4-bis(6-(2-tetrahydropyranyloxy)hexyl)cyclopenta[2,1-b:3,4-b’]
dithiophene (15)の合成
ヒドロキシル基の保護基であるピラニル基含有モノマーの合成を検討した。まず開始物質 (6)に 2-2tetrahydropranlyoxyhexylcloride (13) を 塩 基 性 条 件 下 で 側 鎖 に 導 入 し 、
N-Bromosuccinimide(NBS)でモノマー前駆体の両端の臭素化を行った。精製は、シリカゲル
カラム(酢酸エチル/ヘキサン=9/1)で行ったが、黄色粘性液体と、淡黄色固体が混ざったも のが得られたため、さらにエタノールで再結晶を行い、目的物(15)を白色固体として得るこ とができた。構造は1H NMR、13C NMR、IRで確認した。
3-1-6 2,6-dibromo-4,4- dihexyl-cyclopenta[2,1-b:3,4-b’]dithiophene (17)の合成
水酸基含有CPDTモノマーと共重合を行う側鎖にhexyl鎖を有するCPDTモノマーの合成を 行った。全 2 ステップの合成であり、どの反応も高収率で合成することが可能であり、目 的物(17)を淡黄色粘性液体として得ることができた。構造は1H NMR、13C NMR、IRで確認 した。
3-1-7 PCPDT-OTHP (18)の合成
ピラニル基含有CPDTモノマー(15)と側鎖にHexyl基を有するCPDTモノマー(17)との共重 合をグリニャールメタセシス重合(GRIM重合)を用いて行った。(17)と(15)の仕込み比は1/4, 1/9とした。始めにt-Butyl magnesium chlorideを系内に添加し、2時間加熱還流することで 反応溶液は赤色に変化し、その後Ni触媒を加えると加えた瞬間に青紫色に変化した。反応 は均一系で進行し、目的物(18)を金色フィルム状固体として得ることができた。構造は 1H
NMR、UV-visスペクトル、IR、GPCで確認した。
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得られたPCPDT(Pry)は、CHCl3, THFなどの有機溶媒に対する溶解性が非常に高かった。
3-1-8 PCPDT-OH(19)の合成
ピラニル基含有 PCPDT の脱保護反応を行った。脱保護には HClaqを用いた。反応は均一 系で進行し、目的物(19)を金属光沢を有する茶褐色固体として得た。ヒドロキシル基の含有
率が1/4, 1/9のものと比較すると、PCPDT(OH)[1/4]は、THFに一部溶け残りがあるのに
対し、PCPDT(OH)[1/9]は、溶け残りもなく、高い溶解性を示した。
3-1-9 4,4-bis(6-bromohexyl)cyclopenta[2,1-b:3,4-b’]dithiophene (20)の合成
ホスホン酸エステル基含有 CPDT 前駆体の合成検討を行った。開始物質である CPDT に
bromohexyl基の導入を行うための合成ルートとして以下の2つの方法で検討した。
Route Aは、過去文献で報告されている方法9)であり、Dry THF中、-0 oCでn-BuLiを用いて
行う反応である。反応終了後、シリカゲルカラム(Hexane→CH2Cl2 / Hexane =1/9)で精製を行
い、70%~75%で、目的物を得ることができたが、1H NMR から、わずかながら不純物のピ
ークが観測され、完全に単離することができなかった。
Route Bも過去文献で報告されている塩基条件下での側鎖導入反応を用いて行った6)。開始
物質のCPDTに対して、6等量の1,6-dibromohexxaneを加えた。Route Bも同様に反応終了
S S
S S
Br Br
Br Br
n-BuLi Route A
S S
S S
Br Br
Br Br
KOH / KI Route B
138 後、シリカゲルカラム(Hexane→CH2Cl2 / Hexane =1/9)で精製を行い、50%~60%で目的物を得
ることができた。1H NMRからも不純物のピークが観測されなかった。
以上のことから、Route Bの方法で合成を行い、(20)を淡黄色粘性液体として得た。構造は
1H NMR、13C NMR、IRで確認した。
3-1-10 4,4-bis(6-diethoxyphosphorylhexyl)cyclopenta[2,1-b:3,4-b’]dithiophene (21)の合成
(20)とTriethyl phosphiteとの反応により、側鎖にホスホン酸エステル基導入条件の探索実験
を行った。反応溶媒としてTHF、Tolueneをそれぞれ用い、Triethyl phosphiteと共に加熱還 流することで導入を試みたが反応は全く進行しなかった。そこで過去報告されている
thiopheneに関するホスホン酸基導入反応7)を参考にし、(20)とTriethyl phosphiteをバルク条
件下150 oCで反応させることにした。24時間でコンバージョンが99%以上になり、反応の 進行を確認した。これにより目的物を淡黄色粘性液体として得た。構造は1H NMR、13C NMR、
IRで確認した。
3-1-11 PCPDT-PO(OEt)2 (A) の合成
ホスホン酸エステル含有CPDTモノマー重合を、チオフェン系に良く用いられる塩化鉄(Ⅲ) 用いた化学酸化重合3)を溶媒にCHCl3を用いて行った。
時間経過と共に、不均一系へと変化し、不溶性の黒色固体が得られ、目的物の合成には至 らなかった。重合の進行と共に、溶解性が低くなり、不溶性固体が析出してしまったと考 えられ、単独重合では目的物の合成が困難であることが示唆された。
そこで、ポリマーの溶解性の向上を目指し、側鎖にアルキル鎖を有する CPDT モノマーと
のSUZUKI Couplingによる共重合を行った。
S S
PO(OEt)2 (EtO)2OP
S S
PO(OEt)2 (EtO)2OP
FeCl3 in CHCl3
n
139 3-1-12 2,6-dibromo-4,4-bis(6-diethoxyphosphorylhexyl)cyclopenta[2,1-b:3,4-b’]dithiophene (22)
の合成
共重合を行うために、NBS を用いたホスホン酸エステル含有CPCTモノマーの両末端の臭 素化を行った。反応は均一系で反応し、目的物である(22)を淡黄色粘性液体として高収率で 得ることができた。
構造は1H NMR、13C NMR、IRで確認した。
3-1-13 2,6-bis(4,4,5,5,-tetramethyl-1,3,2-dioxaborolan-2-yl)-4,4-dihexylcyclopenta[2,1-b:3,4-b’]
dithiophene(23)の合成
S S
S S Br S S Br
S S B
B
O O O
O n-BuLi
B O O O
Route A
S S
PO(OEt)2
(EtO)2OP
Br
Br B S S B
O O O
O S S
PO(OEt)2
(EtO)2OP
n
S S
SUZUKI Coupling
140 ホスホン酸エステル基含有CPDT モノマーと共重合を行うアルキル鎖含有CPDT モノマー
の合成を、過去当研究室で行われていたRoute A6)に従い行った。塩基条件下でのアルキル 鎖 の 導 入 に 続 き 、 NBS に よ る 両 末 端 の 臭 素 化 を 行 っ た 。 最 後 に 2-isopropoxy,4,4,5,5,-tetramethyl-1,3,2-dioxaborolanを用いた両端をボロン酸への変換を試みた が、反応中に系内が黒色に変化してしまった。シリカゲルカラムによる精製を行い、褐色 粘性液体を得たが不純物を多く含んでおり目的物の単離には至らなかった。おそらく、合 成の際、系内に水分が入ってしまい、予期しない反応が起こってしまっているか、不純物 の構造が似ているため、シリカゲルカラムによる精製が困難であることが示唆された。
そこで、両端の臭素化を経由しないRoute Bでの合成を検討した。Route Aと同様にアルキ ル鎖を導入してから 2-isopropoxy,4,4,5,5,-tetramethyl-1,3,2-dioxaborolan との反応により両端 のボロン酸化を行った。反応系内は均一の黄色液体であり、反応終了後、シリカゲルカラ ムによる精製を行い、淡黄色粘性液体を得た。静置しておくと、一部結晶化してきたので EtOH で再結晶をすることで目的物(23)を淡黄色版状結晶として得ることができた。また、
過去合成が報告されているRoute Aよりもより高収率であった。構造は1H NMR、13C NMR、 IRで確認した。
3-1-14 PCPDT-PO(OEt)2(A’)の合成
ホスホン酸エステル基含有CPDTモノマーとアルキル鎖含有CPDTモノマーとの共重合は、
THF中、Pd触媒を用いて行った。反応の進行と共に系内が黄色から青紫色に変化した。ソ ックスレー抽出により精製し、目的物(A’)を金色フィルム状固体として得ることができた。
構造は1H NMR、UV-visスペクトル、IR、GPCで確認した。得られたPCPDT[PO(OEt)]は、
CHCl3, THFなどの有機溶媒に対する溶解性が高かった。
3-1-15 PCPDT-PO(OH)2(A”)の合成
PCPDT[PO(OEt)]の脱保護反応を Trimethylsilylbromide (TMSB)と MeOH を用いて行った。
S S
S S B S S B
O O O
O n-BuLi
B O O O
Route B
141 TMSB との反応は均一系で進行したが、MeOH を加えると不均一系に変化し、得られた金
色固体も溶媒に不溶で構造の確認をすることができなかった。IRにより、Siに由来するピ ークを観測したため、反応の進行を確認したが、溶解性の問題を改善することができなか った。
そこで、さらなる溶解性の向上を目指し、ポリマー構造内のアルキル鎖の含有量を増やし たポリマーの合成を検討した。
3-1-16 PCPDT-PO(OEt)2 (24)の合成
ホスホン酸エステル基含有CPDT モノマーと二つのアルキル鎖含有 CPDTモノマーとの共 重合は、THF中、Pd触媒を用いて行った。反応の進行と共に系内が黄色から青紫色に変化 した。ソックスレー抽出により精製し、目的物(24)を金色フィルム状固体として得ることが できた。構造は1H NMR、UV-visスペクトル、IR、GPCで確認した。得られたPCPDT[PO(OEt)]
(1/9)は、CHCl3, THFなどの有機溶媒に対する溶解性が非常に高かった。
3-1-17 PCPDT-PO(OH)2(25)の合成
PCPDT[PO(OEt)](1/9)の脱保護反応をTMSBとMeOHを用いて行った。TMSBとの反応は均
一系で進行し、MeOHを加えると不均一系に変化した。得られた固体は、CHCl3に一部可溶 であり、THFには高い溶解性を示した。1H NMRにより保護基であるOEt基に由来するピ
S S
B B
O O O
S S O
Br Br
S S
PO(OEt)2 (EtO)2OP
Br Br
SUZUKI Coupling
S S n
S S
S S m
S S
PO(OEt)2 (EtO)2OP