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金属コバルトナノ粒子の

生成機構解明

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3-1. 目的

第二章では、ポリオール法で合成した板状FeCo前駆体を還元雰囲気で焼成することで、形 状を維持したままFeCo合金粒子を得ることができた。これとは別に、FeCo 前駆体粒子のサ イズや厚さを減少させる目的で、反応温度やOHイオン濃度、溶媒の種類、添加剤の添加など、

様々な実験パラメータを変化させて実験を行った。このような試行錯誤を繰り返した理由は、

反応条件と生成物の特性とが関連づけられていないためである。ポリオール法における反応機 構の理解は未だ十分ではなく、実験操作と得られる結果との関係が明確ではない課題がある。

一方、金属塩側から見たポリオール法の反応機構の研究は少なく1,2、まだ解明されていない 部分が多い。また、粒子径の制御方法についてもポリオール法全体に適用可能な手法は未だに 確立されていない。よって、目的とする特性を持つナノ粒子を合成するためには、反応機構の 解明は必要不可欠である。反応機構を解析する試みはまだ初期段階であり、最初からFeCo合 金の生成機構を求めることは難しいと考えられる。そこで、本研究ではエチレングリコール

(EG)中でのCo原料の反応機構について検討した。

3-2. 実験手順

3-2-1. 試薬

本章で用いた試薬の一覧をTable3-1にまとめた。

Table Table Table

Table 3333----1111 List of reagents.List of reagents.List of reagents.List of reagents.

Reagent Abbreviation Purity FW Maker

Ethylene glycol EG min.99.5%(GC) 62.07 Wako Chemical

Ethanol min.99.5%(mass/mass) 46.07 Wako Chemical

Cobalt(II) acetate tetrahydrate Co(OAc)2 min.99.0% 249.08 Wako Chemical Cobalt(II) chloride hexahydrate CoCl2 min.99.0% 237.93 Wako Chemical Cobalt(II) hydroxide Co(OH)2 abt. 60% 92.95 Wako Chemical Sodium hydroxide NaOH min.97%(mass/mass) 40.00 Wako Chemical

3-2-2. 実験方法

3-2-2-1. Co粒子生成におけるCo塩の影響

本章ではCo塩としてCo(OAc)2、CoCl2、Co(OH)2の三種類のCo塩を使用した。Co塩によ る反応経路の違いを比較するため、溶媒はEGに固定して実験を行った。また、OHイオン源 としてNaOHを用いた。以下に実験手順を示す。

(1) 実験装置の準備

セパラブルフラスコに200 mLのEGを量りとり、添加剤としてNaOHを20 mmol、Co試 薬を2 mmol投入した。Co試薬はCo(OAc)2、CoCl2、Co(OH)2の三種類を用いた。セパラブ ルフラスコに攪拌棒とパスツールピペットを取り付け、蓋をしてオイルバスに設置した。連結 管を用いて還流器を取り付け、N2ガスを200 mL/minでパスツールピペット経由で流入させ ながらスターラーを200 rpmで回転させた。

54 (2) 加熱

加温中の溶液の色の変化を観察できるよう、無色透明のシリコンオイルで満たしたオイルバ スにガラス製の反応容器を入れた。熱電対で反応溶液の温度を観測しながら、卓上型プログラ ム温度調節器を用いて4°C/min の昇温速度で195°Cまで加熱した。昇温中に反応溶液の色が 変化した場合は、メスピペットで反応溶液を約10 mLサンプリングした。溶媒の蒸発を防ぐ ため、温度が195°Cに達した時点で冷却水を用いて還流を始めた。195°Cで30 min保持した 後、室温まで空冷した。

(3) 生成物の洗浄・回収

合成後の分散液に磁石を近づけ、粒子が集積した場合は上澄み液をデカンテーションにより 除去した後、約10 mLのエタノールを添加した。次に超音波を約10 min照射して粒子を分散 させた。以上の洗浄、回収操作を3 回繰り返した。洗浄後の粒子はエタノール中に保存した。

一方、生成物が磁石に応答しない場合は2-2-1と同様の手法で粒子を回収した。洗浄後の粒子 はエタノール中に保存した。粉体粒子を特性評価する際は、ホットプレートを用いてエタノー ルを蒸発させ、試料を得た。

サンプル名は、金属塩としてCo(OAc)2を使用した試料をCo(OAc)2−EG−OH、CoCl2を使用し た試料をCoCl2−EG−OH、Co(OH)2を使用した試料をCo(OH)2−EG−OHとした。反応中にサ ンプリングした試料は室温まで冷却した後、3-2-3に述べる手法で特性を評価した。

3-2-2-2. CoCl2を用いたCo中間体の合成

結果から、CoCl2と Co(OAc)2を用いた場合では反応中に溶液の色が段階的に変化した後、

淡桃色の中間体が析出した。そこで、3-2-2-1と同じ合成方法で淡桃色中間体を全量回収した。

反応温度が沸点近傍であると中間体が再溶解してしまうため、中間体が生成し、かつ再溶解が 起こらない低温の170°Cで反応した。以下に実験条件を示す。

・ Co源の濃度:0.010 mol/L

・ EG:200 mL

・ NaOH濃度:0.100 mol/L

・ 反応温度:170 °C

・ 反応時間:30 min

・ 昇温速度:4 °C /min

3-2-2-3. Co(OAc)2を用いたCo中間体の合成

基本的な実験は3-2-2-1と同様であるが、3-2-2-2と同様に淡桃色中間体の全量回収を試みた。

Co(OAc)2を EG に投入した系を Co(OAc)2−EG、それに NaOH を添加した系を Co(OAc)2

−EG−OHとした。反応温度は3-2-2-2で記したように170°Cで実験を行った。以下に実験条

55 件を示す。

・ Co源の濃度:0.010 mol/L

・ EG:200 mL

・ NaOH濃度:0.10 mol/L

・ 反応温度:170 °C

・ 反応時間:30 min

・ 昇温速度:4 °C /min

Co 中間体の特性評価はCo(OAc)2−EG−OH系を中心に行った。合成1回あたりの収量を増 加させるため、Co 塩の投入量を3倍にして合成した。その際、物質の組成に変化が無いこと を確認するため、Co濃度が0.010、0.030 mol/Lの条件で実験を行い、組成を調べた。反応温

度は3-2-2-2で記したように170°Cで実験を行った。以下に実験条件を示す。

・Co(OAc)2:0.010、0.030 mol/L

・EG:200 mL

・反応温度:170°C

・反応時間:30 min

・昇温速度:4°C /min

3-2-3. 試料の評価方法

作製した試料について、以下の装置を用いて評価を行った。

3-2-3-1. 走査型電子顕微鏡 (Scanning Electron Microscope, SEM) SEMについての基本的な情報は2-2-5-4に示した。

***** 測定条件 *****

測定装置:日立製作所製 HITACHI S-4100 加速電圧:1.0 kV

3-2-3-2. 紫外・可視吸光光度計(Ultraviolet and Visible spectrophotometer, UV-vis)

UV-vis を使用して溶液試料の吸収スペクトルを測定した。特定の軌道上にある電子が光エ

ネルギーを吸収すると、基底状態から高エネルギー状態へと励起される。励起状態になるため に必要な波長は測定試料の電子状態によって異なるため、測定する物質によって異なる光の波 長でエネルギー吸収が最大値となる。そのため、測定試料に様々な波長の光を連続的に照射し て最大吸収を示す波長を調べることで、試料の電子状態を知ることができ、物質の化学構造を 決定する上での重要な手がかりが得られる。

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吸光度EはLambert-Beerの法則より以下の式で表せる3

10 0

log I

I KCL

 

  = −

 

Eq. 3-1

(I0:入射光の強さ、I:透過後の光の強さ、L:光が透過するセルの長さ、C:試料の濃度、

K:C=1 mol/L, L=1 cmのときのモル吸光係数)

また、試料が溶液の場合には光エネルギーの吸収の強さが溶液の濃度に比例するため、溶液 の濃度を定量化できる。一方、固体試料の測定は積分球(U-3000/U-3300 分光光度計用 150 積分球付属装置)を用いた。積分球の内面には反射率の高い硫酸バリウムが塗布されており、

積分球に入射した光は内部で反射を繰り返し、最後に検知器用の穴部に入射する。

***** 仕様 *****

測定装置:日立製作所 U-3010 測定範囲:200~800 nm

サンプリング幅:0.2 nm

スキャンスピード:120 nm/min 用いたセルの種類:石英セル

検体の作製方法

溶液試料については、サンプリングした溶液をマイクロピペットを用いて石英セルに約 4 mL入れ、測定用サンプルホルダにセットして測定を行った。固体試料については測定用試料 をXRD測定用ガラス板に充填し、積分球付属装置の中のSAMPLE 側にセットした。固体試 料のレファレンスは硫酸バリウムを用いた。

バックグラウンドの引き方

溶液試料の場合は、以下のようにバックグラウンドを差し引いた。2つの石英セルにEGを 約4 mL入れ、試料室の中の測定用、リファレンス用サンプルホルダにセットし、バックグラ ウンド測定を行った。これに対して、固体試料ではレファレンス側とサンプル側の両方に硫酸 バリウムのプレートをセットし、バックグラウンドとなる吸収スペクトルを測定した。未知試 料の測定後に得られたスペクトルカーブからバックグラウンドのスペクトルを差し引くこと で、試料のUVスペクトルとした。

3-2-3-3. X線吸収微細構造(X-ray Absorption Fine Spectroscopy, XAFS)4

イオン化エネルギーよりも高いエネルギーを持つX線を原子が吸収すると、光電子放出を伴 った吸収係数の急激な増大が観測される。この吸収端より高いエネルギー側にはX線吸収微細 構造(X-ray absorption fine structure :XAFS)という微細構造が現れる。元素の種類によっ

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ても、また同じ元素でも価数によってもエネルギー吸収端の位置が異なる。そのため、既知の 物質を用いることで未知の物質の種類、価数を知ることができる。これはX線吸収端近傍構造 (X-ray absorption near edge structure, XANES)と呼ばれている。また、エネルギー吸収端か ら高エネルギー側十~数百 eV に表れる構造は広域 X 線吸収微細構造(extended X-ray absorption fine structure : EXAFS)とよび、物質の局所構造解析に用いられる(Fig.3-1)。

本研究では、Co原子周りの局所構造を調べるため、EXAFSを測定した。EXAFSについて 少し説明を加える。対象となる元素の内殻電子の結合エネルギーよりも大きなエネルギーを持 つX線が照射されると、電子は励起されて外殻の非占有軌道に遷移する。空いた内殻軌道には、

外殻から電子が移ってくる。そのエネルギー差が蛍光X線として放出される。しかし、電子の 結合エネルギーに対して十分大きなエネルギーを持つX線が入射すると、励起された内殻電子 は外殻に収まることなく光電子として外へ放出される。放出された光電子波(放射波)は、周り に他の原子があると散乱された光電子波が放射波と干渉を起こす。周りの原子の種類や距離に よって、干渉波は強めあったり弱めあったりする。これにより、対象原子の周りの局所的な原 子配列の情報が得られる。

解析方法

解析にはRex2000 (Rigaku)を用いた。得られるデータは横軸がエネルギー、縦軸が吸収係 数のエネルギープロファイルであるので、まず、吸収端のエネルギーを決定し、波数へ変換す る。次にバックグラウンドを除去する。こうして得られたEXAFS振動χ(k)は、通常kが高波 数側では減衰するので、kないしk3の重みをかける。χ(k)はsinカーブの形を持つので、Fourier 変換後は縦軸がFourier変換振幅強度、横軸が原子間距離に変換される。

次にカーブフィッティングを行う。Fourier変換後に得られる動径分布関数は、真の動径分 布関数と比較して位相シフトの分だけ横軸の値が移動している。また、ピーク強度も散乱原子 固有の後方散乱強度を含んでいる。したがって、配位数や結合距離、配位原子の種類を見積も る際には、Fourier変換後のピーク位置からでは議論できない場合がある。更に、有限Fourier 変換であるから、異なる結合が分離できずに一本のピークになって現れたり、2つの配位子間 の干渉効果でピークが2本に割れたりする。よって、構造因子を求めるには、予め求めてある 後方散乱強度(Fi(ki))や位相シフト(φi(ki))を以下の式に代入してEXAFS振動χ(k)を計算する。

+

− =

=

i

i i i i k

i i

i i i

s

e k r k

r k

k F S N

E E

k E ( )

ii

sin( 2 ( ))

) (

) ( ) ) (

(

02 2 2 2 2

0

µ φ µ

χ µ

σ Eq. 3-2

χ(k):EXAFSの振動、µ(E):吸収係数、µs(E):吸収係数のうちの滑らかな成分、

µ0(E):エッジジャンプ、Ni:配位数、:Fi(ki):後方散乱強度、ki:i番目の配位圏の波数、

ri:結合距離、σi:Debye-Waller因子、φi(ki):位相シフト、E:入射X線のエネルギー、

i:配位圏の番号

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