分光実験を行うには、X線を発生させるX線ジェネレータ、X線ジェネレータから結晶までを高真空で つなぐことができるビームライン、結晶と検出器を数秒角の誤差内で回転させることができる回転テーブ ルなど、かなり大がかりな実験システムが必要である。我々は常深研実験室の、21mビームラインを中心 としたシステムで実験を行った。
本章では、分光実験に使用した実験装置の説明を行う。
4.1 実験装置概要
ビームラインの概略図を、図4.1に示す。
µ m
35.2644
sin35.26 b=4µ m/
=6.928µm 4
TiK
(100)
(111)
TiKα
TiKα1 α 2
Si(100)
µ Ti 20 m
Filter Slit
µ m
CCD
X-Ray Generator Ti Target
X-Ray 235mm
θ θ
21m
Si Crystal -2 Table
100
図 4.1: 実験装置
実験で使用するX線ビームには、理学電気株式会社の対陰極型X線発生装置、UltraX-18で発生させ たX線を使用した。これは、陰極ターゲットに、高電圧で加速した熱電子を衝突させてX線を発生させる 仕組みになっている。X線発生装置からは、陰極ターゲット固有の特性X線と、制動輻射による連続X線 が発生する。今回は陰極ターゲットとして、AgとTiを用いた。
ビームライン途中には、X線発生装置による可視光を遮り、かつその吸収端により輝線を強調できるよ うな材質のフィルター(ターゲットがTiの時は厚さ20mのTi、ターゲットがAgの時は厚さ1500Aの
Al)入れ、また入射X線をスリットで約100mに絞った。
スリットから下流は真空チャンバー内にあり、スリットから下流200mmを回転軸とする2軸回転
(-2 )テーブルを設置した。その軸上を通るようにシリコンの薄膜結晶をステンレスホルダーで固定しX-Y 駆動テーブルに乗せ、回転台に設置しX線を照射した。そして2台の上、回転軸から235mmのとこ ろに設けたCCDカメラで反射X線の像を取得した。
4.1.1 真空チャンバー内テーブル
真空チャンバー内には同軸の回転テーブルと回転アームからなる02テーブルが設置してある。さら に、02テーブル上にはX-Y駆動テーブルが設置してあり、その上に専用のホルダーに取り付けた結晶 を回転テーブルに固定し乗せる(図4.2)。
結晶ホルダーはステンレス製で、サイズは60mm295mmである。結晶の取り付け方は、まずホルダー の表面に厚さ8mのポリプロピレンを張り、その上に結晶を載せ、結晶の上からもう一枚のポリプロピレ ンで挟む。ここで、できるだけポリプロピレンをぴんと張って、結晶を挟んだ時に結晶がゆがまないよう にしなければならない。図4.2は真空チャンバー内の様子を示す。
θ−
φ
X-Y
テーブル テーブル
CCD
結晶
回転テーブル
結晶ホルダー2θ テーブル
図 4.2: チャンバー内テーブル
次に、回転テーブルを上から見た図を示す。
θ− テーブル 2θ−
Y X
回転テーブル
φ
結晶
CCD 21mビームライン
テーブル
図4.3: 回転テーブルを上から見た図
21mビームラインと、CCDの方向は矢印で示した通りである。したがって、図4.3の状態では、CCD は21mビームラインの方向(ダイレクトX線の方向)を向いており、結晶の表面(100)がダイレクトX線 に対して、ほぼ平行になっている。
回転テーブル、つまり結晶は、-テーブルを回転させることによって、ビームに対して角度を変え ることができる。また、CCDは2 -テーブルを回転させることによって位置を変えることができる。
回転テーブルは、X-Y駆動テーブルに乗っており、図中X方向、Y方向に移動させることができる。今 後、-テーブルを回転させることを、を動かすと表現する。同様に、2-テーブル回転させることを、
2を動かすと表現する。
0テーブル、2-テーブルのの最小駆動角は1秒角である。また、ステッピングモータ1ドライバに よりパルスを送り駆動させるが、-テーブルは正のパルスで時計周り、2 -テーブルは負のパルスで時計 周りに回転する。X-Y駆動テーブルの可動範囲は図中のX方向(ダイレクトX線に水平方向)、Y方向(ダ イレクトX線に垂直方向)にともに50mmである。また、最小駆動距離は1mである。回転テーブル の最小駆動角は2.16秒角である。
4.1.2 回転テーブル
図4.4に回転テーブルを真上から見た概略図を示す。図4.3は、回転テーブルを幾分斜めから見た 図であるが、図4.4を見る時に参考にできる。
結晶 ο
ビームライン
CCD
mm
mm
mm
mm
45
25.5 10 29.5 ο 70mm
4.5
3.678
図4.4: 回転テーブルを真上から見た概略図
図4.4は回転テーブルを上から見た図である。X線を結晶の真中に入射する場合、入射角が3:672 より小さい場合、もしくは回折角が29:5より大きい場合はX線が回転テーブルにより切られてしまう ので、別の結晶面を用いる必要がある。たとえば、Si(111)を使用する場合、約70:52はなれた位置にも う一つの(111)面があるので、その面を使用すれば良い(図4.5)。