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空間的視点取得能力の生涯発達モデル

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本研究の結果から得られた新たな認識に基づくと、これまでとは大きく異なる視点 取得のイメージが描かれる。視点とは空間内を仮想的自己が移動する絵画的イメージ に近いものであるようだが、かといって心的回転能力と同様の発達的変化をとるとは 限らない。特に、高齢期の発達変化については、従来の常識を覆すような示唆が得ら れた。

発達研究では、日常行動や課題への反応などで示されるパフォーマンスレベルと、子ど もたち(あるいは成人)の内に潜在的に存在するコンビテンスとしての能力とを見分ける ことの重要性がしばしば指摘される。これを本研究に当てはめてみよう。一般的な空間的 視点取得課題である f3つの山問題」に対する反応は、幼児期から児童期にかけて正答へ と向かい、長い安定期を経た後に、高齢期に入って再び低下すると指摘されてきた。しか し、こうしたパフォーマンスレベルの背景に、これまで十分に知られていなかったコンピ テンスレベルでの発達が隠されている。空間的視点取得の場合それは、「視点移動j能力 と「みえの情報処理J能力とに相当するようだ。そして、空間的視点取得の本質は仮想的 な自己の「視点移動」操作であり、一方の「みえの情報処理」は使用された課題によって 異なる空間的視点取得にとっては付加的な操作であると考えることができる。

本研究の成果を振り返ってみると、児童と高齢者の正答率はほぼ同程度であったが、彼 らのエラーパターンは非常に異なっていた。児童にみられた左右逆転エラーの比の高さか ら、空間的視点取得における彼らの困難さは、仮想的自己の移動機能における不安定さに 由来すると解釈された。一方高齢者は、隣接エラーなど他のエラーの比率が高く、仮想的 自己の移動よりもむしろ一般的な情報処理過程に問題があるのだろうと考察した。また視 点位置ごとの平均反応時間に基づいて算出した回帰式の傾きも、統計的に有意ではなかっ たが、児童が最大で高齢者が最小であった。こうした結果からは、次のような発達モデル が考えられるだろう。

視点移動能力は幼児期前期には可能となり、その後少なくとも高齢前期に至るまで維持 されるようだ。しかし、一度獲得された仮想的自己に対する操作能力が生涯を通じて不変 であるという保証はない。むしろ本研究の結果は、その能力が加齢に伴って変化している らしいことを示していた。この仮想的な自己視点の移動操作能力は、幼児期より連続的に 上昇し、高齢期に至るまで緩やかな上昇が続くと思われる。これを図示すると Figure8の ようになる。

乳児 青年 高齢者 乳児 青年 高齢者

視点移動能力 みえの情報処理能力

乳 児 青 年 高齢者

課題成績

Figure 8 空間的視点取得能力におけるコンピテンスとパフォーマンス

このような生涯発達曲線は珍しく、この仮説の検証が待望される。さらに、仮想的自己 の移動機能の特徴を明らかにすることも非常に重要だ。その知見は、身体性の観点からみ たイメージ研究を深めることに役立つであろうし、同時にイメージ操作と脳機能との関連 に関する生涯発達研究という新たな領域を開くことにもなるだろう。こうした成果が結実

し始めたとき、空間的視点取得研究はかつての輝きを取り戻すに違いない。

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参考文献

※  本冊子中にすでに引用された文献を除く

渡部雅之 1995  わかる:他視点の理解 『空周に生き Q~ 空間認知の発達研究会編 北大路書房

渡部雅之 1995  注視点移動を用いた空間的他視点取得能力の測定に及ぼす諸要因の効果 主主賀大学教育学部:だ要,44,169‑176.

渡部雅之 2002   "[3つの山問題」研究の動向と展望 一空間的視点取得の生涯発達理論 構築に向けて一 躍賀大学教育学部紅要,52,101116.

渡部雅之 2003 

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カに席ずる芳若心理学的研究大阪大学博士論文

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