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空間の建築的再考

ドキュメント内 論文要旨 (ページ 35-50)

第4章 空間の建築的再考

「夜」の視点から考察する都市空間の研究及び設計提案

4−1 仮説

 3 章の分析から都市空間のもう一つのあり方と位置付けた「夜」の都市空間は、

実在して都市空間に現れることから現在の都市において秘められた意味を有するの ではないかと考えられる。

第4章 空間の建築的再考

第4章 空間の建築的再考

「夜」の視点から考察する都市空間の研究及び設計提案

4−2 「夜」の都市空間の建築化

 仮説を実証するため 3 章の中で特に多く体験することのできた「夜」の都市空間 を建築を介在させモデル化することで空間を捉える視点とする。

①コンビニの前の滞在空間

 本来通路の機能を持った街路に多様な人が店の前で特定の領域を作りながら、集 合体が都市空間に滞在している。昼の都市では流動性の高い通過動線の街路が夜の 都市で街路が滞在性のある空間になり、滞在している周囲には一定の条件が存在し ていることが確認できた。滞在には恒常的な場合とある断続的な祝祭性を持ったコ ンテンツ(今回の調査ではラグビーワールドカップの視聴)に参加する場合に確認 できた。祝祭的な集合は昼よりも熱量を持ったものではあるが恒常的なものではな いため「夜」の都市に見られる特性とは言い難い。一方で常に夜の都市で視認でき る街路での集合体はコンビニの前であることが確認できた。コンビニの前の集合体 は無秩序に広がりを見せるわけではなくある一定の塊で領域を作りながら、エント ランスや壁際の通路を塞ぐことなく形成されている。(図 19)

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図 19 コンビニ前の滞在空間

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②隠れたプライベート空間

 公共空間の一部を個人の部屋のように休憩スペースとして扱う様子が見られる。

路上に寝転がる人や建物の陰で喫煙や恋人同士の喧嘩を行う姿は夜の都市に無秩序 に発生しているのではなく一定の構造がある。公共的な路上をプライベートな空間 に変えてしまう前者は路上の全体ではなく建物の壁際に多く位置していることがわ かる。またその多くの場合は建物が街路からセットバックしてピロティができてた り、庇が付いている構成が確認できた。後者は用途がなく通常では立ち入らない建 物の裏側や、建物と建物の間の空間で人目につかない、本質的な夜の暗さがある空 間であることが確認できた。(図 20)

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図 20 隠れたプライベート空間

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③内外空間の反転

 昼は太陽光により内部空間が外部空間より暗いため透過性の高いガラス面や開口 部が透過性を失い外部から遮断した様相になる。一方で夜の都市空間では内部空間 が外部空間よりも明るくなることで室内を縁取る構築物が視認の変化により最小限 となり透過性の高い面が強調されることで内部空間の活動が都市に表出される。(図 21)

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図 21 内外空間の反転

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④演出的な裏動線

 建物の外部に接続された階段室やエレベーターなどの特に縦動線の機能を持つ空  間は周囲の建物と切り離され独立したような見え方になる。避難階段などの裏動線 は昼は裏に隠れて存在しているが、夜は周囲の構築物は光が当たらないため、安全 上照らしていなければいけない避難動線はその中でもっともスポットが当てられ周 囲で一番目立つ部分となる。昼の建築での立ち位置とヒエラルキーが変わる構図に なっている。(図 22)

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図 22 演出的な裏動線

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⑤立体的な街並み

 照明が都市空間において三次元方向に連なって機能している。昼の都市空間では 色彩が派手な袖看板などの建物の付属物がお互いに強調し合い一体感を持たないが、

「夜」になると照明の同質の体系を持つことで街並みに一体感を得ている。( 図 23)

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図 23 立体的な街並み

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⑥地下空間の表出

 視覚的に都市に本質的な姿を表出せず、五感により存在を感じ取ることができる 空間が「夜」の都市空間で確認できた。暗渠や地下空間は昼の都市では本来確認す ることができず、地上から閉ざされた構造になっている。しかし夜の都市では静寂 や暗闇により潜在的ものを知覚できる空間になっている。またナイトクラブやスタ ジオなどは地上部分に存在するエトランストと夜の特徴的な静寂や暗闇によって地 下空間での人の活動の知覚を可能にしている。(図 24)

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図 24 地下空間の表出

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4−3 「夜」の都市空間の考察

①コンビニの前の滞在空間

 今や日本全国どこにでも共通で私たちの生活のインフラともなっているコンビニ の前の街路空間は「夜」の都市空間において生活者が集まり会話を楽しむ空間にシ フトしている。この光景はレイ・オルデンバークが定義したサードプレイスの構造 にとても類似し、海外のイギリスではパブ、フランスのカフェ、ドイツのビアガル テンがこれに当たる。空間構造としてはかつての日本の商家が並ぶ町家とも捉えら れる。これらのサードプレイスの要素を持った場は身近な場所に位置し目立たない 存在−あって当たり前な生活の一部にすぎないことが客の本質を捉える−であり、

基本的な組織(家庭・仕事・学校)から解放された時に受け入れられるためいつで も要求に答えられるように一日のどんな時間帯にも利用できる場所でなければいけ ない。またサードプレイスで一番重要な要素は気軽に会話ができるである。コンビ ニは日本の生活空間のセーフティネットとして象徴的であり、誰から見ても当たり 前の存在で常に客を受け入れられる体制が整っている。一方でサードプレイスの潜 在的な性質を持ちながらも昼のコンビニには前の外部空間、内部空間にもそのよな 現象は見られないことが夜の視点から理解できる。むしろ家庭や地域社会のコミュ ニティを遠ざけた一要因として扱われる。内部空間にはイートインスペースを設け 集合体を形成できる空間が用意されているように見えるが、夜のコンビニ前の街路 空間に見られる広がある空間と比べても店舗の隅に極小のスペースが確保されてい るにすぎず、せいぜい独り身の人や二人組が食事をする程度の他の飲食店とあまり 変わりはない。さらに店の前にある大きな一枚のガラス壁を境界に都市と遮断され たかたちになり、活動も表出しなければ、連動性もないことがわかる。しかし夜の 空間の特性では内部でおこなわれる活動が外に表出する反転が起きている。原が「夜 の道を歩いている。(中略)私は外を歩いていると思っている。(中略)道に明るみ が出て、人影も見え出し、色彩が浮かび上がる。やがて店が両側に並び(中略)内 を歩いていると思うのだ。このにぎわいと明るさのグラデーションは空間の内と外 との<反転>をよぶ。」17)と指摘するように夜の都市空間では照明の明るさにより外 部空間である街路が内部空間のような姿に変わる。すなわち集合体を形成するこの 特性は「夜の特有の性質がもたらす」、もしくは「商店の前である」という単一構造 ではなく夜の特有の性質である外部空間が内部空間のように使用されることとコン

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②隠れたプライベート空間

 図 21 の私的化を形成する「夜」の特異な空間は、常時社会的なしがらみが多く、

安全・安心を与えることで活動の幅を広げたはずの照明技術が夜どこへ行っても人 が認識できる状態を創った現代の都市において、一人または、恋人と二人になり、

周囲からの目線を遮断できるとても貴重な空間だと考えられる。近年では社会的に

「お一人様」という言葉が普及しカプセルホテル、一人焼肉、一人カラオケなどの 一人客向けの施設が増えている。しかしこれらの施設は全て商業的な施設で溢れて いて、都市の中で一人になれる空間ではない。都市はそもそも企業や近隣といった 集団から解放される場だが、極度にクリーン化された現代の都市では商業的な側面 を除いてはそのような空間は望めない。近代都市において必ず周囲の目線が存在し、

フーコーの『監獄の誕生』で説いた管理社会であることは否めない。しかし、「近世 の人々にとって、地域社会の監視と制裁の脅威は、人目のない状態をいっそう貴重 と見なす気持ちを助長したのである。とりわけ夜間がそうだ。」18)と言及されるよう に、「夜」の都市空間は周囲からの監視から逃れるを役割をこれまでも果たしてきた。

「夜」の本質、上位概念に当てはまるものは暗さである。どこでも照らされるような 都市で生活者の周囲を覆う物理的環境が本質的な暗さを作り出している。すなわち

「夜」の都市空間で確認できる私的化された空間は現代社会の都市においてもパーソ ナルスペースを確保できる空間の可能性を都市の中に示唆している空間である。

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【参照】18: 前提 8) P.230

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