トーロン® PAIは、一般的な3種類の成形方法である射出、押出、
圧縮のいずれでも成形できます。それぞれの方法には独自の利 点と制約があります。
射出成形
射出成形法により精密形状のトーロン® PAI製部品を製造できま す。3種類の成形方法の中で最も強度の高い部品を作り出せる のが射出成形です。複雑な形状の部品が大量に必要なときには、
サイクル時間が短くて複写性が優れた射出成形は、最も経済的な 方法でもあります。部品の肉厚はそのポリマーの持つ流動長と厚 さの関係によって決まります。この方法で製造できる部品の厚み は最大15.9 mmに制限されます。
押出成形
押出成形により、トーロン® PAIからロッドやチューブ、シート、フィ ルム、プレートなどの形状の素材を製造できます。単純な形状の 小型部品であれば、押出成形と自動ねじ切り盤の組み合わせで経 済的に製造することができます。トーロン® PAIの切削用棒材お よびプレートを各種用意しています。
圧縮成形
厚みが 15.9 mmを超える大型部品は圧縮成形で作る必要があり ます。この方法の成形製造に掛かるコストは他の方法よりもかな り低くなります。圧縮成形された部品の強度は射出成形や押出 成形された同等の部品よりも低くなりますが、応力が小さいため 切削が容易です。圧縮成形で製造されたロッドや各種OD/IDの チューブ、圧縮成形プレートが様々なサイズと厚さで提供されて います。認定サプライヤーの詳細はソルベイスペシャルティポリ マーズへお問い合わせください。
トーロン
® PAI製部品のポストキュア
トーロン® PAI製部品にはポストキュアが必要です。最高の性能
(特に耐薬品性と耐摩耗性)は完全なポストキュアによってのみ 引き出されます。昇温サイクルでトーロン® PAI製部品のポスト キュアを行うことで最良の結果が得られます。ポストキュアサイク ルのパラメーターはその部品の寸法と形状に依存します。
トーロン
® PAI製部品の設計ガイドライン
トーロン® PAIとさまざまな加工方法を使用すれば、精細な形状 の部品を成形することができます。設計者は材料の持つ卓越した 性能を選択できるばかりでなく、設計上の自由度が広がります。
以下のセクションではトーロン® PAIを使用して部品を設計するた めのガイドラインを説明します。
面部分
実際の使用条件で許容しうる限り、部品の肉厚を薄くしてサイク ル時間の短縮と材料使用量の削減を図るべきです。成型後の肉 厚が12.7 mmを超える面部分がある設計の場合は、コアやリブ の構造を組み込むか、トーロン® PAIの特殊グレードの使用を検 討してください。
トーロン® PAI樹脂から小型部品を成形する場合の面部分の一般 的な肉厚は0.8〜13 mmですが、ガラス強化グレードや摺動グ レードを使用すれば15.9 mmまでの肉厚も可能です。
トーロン® PAIは比較的高い溶融粘度を持つため、面部分の肉厚 に対する流動長が制限されます。油圧アキュムレーターの使用と 綿密なプロセス制御によって、この制限の影響を緩和することが できます。厚さが1.3 mm未満の面部分については、部品形状 や流れ方向、流路変更の困難さなど多くの因子が絡み合うため、
流動長と面の肉厚の関係を明確に示すのは困難です。部品の具 体的な設計に際しては、ソルベイスペシャルティポリマーズの技 術担当者と相談することをお奨めします。
肉厚の変化
肉厚を変化させる必要がある場合は、ひずみを発生させずに内 部応力を低下させるために、できるだけ滑らかに変化させること をお奨めします。図51に、望ましい肉厚変化である滑らかなテー パーを示します。さらに、厚い部分から薄い部分へ材料が流れる ようにすれば、ひけやボイドなど成形上の問題が起きにくくなり ます。
図51:肉厚が異なる場合の設計
滑らかなテーパー
材料の方向
抜き勾配
部品の型離れを良くするには、0.5〜1°程度の抜き勾配を確保 してください。トーロン® PAI樹脂では0.125°という低い抜き勾 配が使用された例もありますが、このような小さな角度を使用す るには該当する部品に即した検討が必要です。抜き勾配は引抜 き深さにも依存し、引抜き深さが大きいほど必要な抜き勾配も 大きくなります(図52参照)。部品が複雑なほど抜き勾配への要 求も厳しくなり、またシボのある表面仕上げも同様に影響します。
シボのある表面仕上げでは一般的に、一側面につきシボの深さ 0.025 mmごとに、1°の抜き勾配が必要になります。
図52:抜き勾配の決定に必要な検討事項 抜きによる寸法変化
引き抜き深さ
抜き勾配 コア
肉盗みは重い部分の肉厚を減少させる有効な方法です。成形コス トを最小にするためには、コアの取り出しがプラテン移動と平行 に行われなければなりません。
コア設計には抜き勾配を加える必要があります。盲コアは避ける べきですが、どうしても必要な場合は以下のガイドラインに従っ てください。コアの直径が4.8 mm未満の場合は長さを直径の2 倍以下、直径が4.8 mmを超える場合は長さを直径の3倍以下 にします。貫通コアでは、直径が4.8 mmを超える場合は長さを 直径の 6倍以下、直径が4.8 mm未満の場合は長さを直径の4 倍以下にします。
リブ
リブを使用すると、部材の肉厚を増加させずにトーロン® PAI製 部品の剛性を向上させることができます。底部におけるリブの幅 は、充填遅れ防止のために隣接する面の厚さと同じにします。型 離れを良くするためにリブにはテーパーを付けます。
ボス
ボスは組み立て時の位置決めを容易にする目的でよく使用されま すが、それ以外の目的に使用されることもあります。一般的に、
ボスの外径は穴の内径の2倍以上とし、ボスの面肉厚は隣接す る面の肉厚以下にします。
アンダーカット
スライドコアを使用しない限り、トーロン® PAI製の部品にアン ダーカットを成形することはできません。成形コストを低減するに は、アンダーカットの使用を避けます。どうしても必要な場合に は、スライドコアを使用して外部にアンダーカットを組み込むこと は可能ですが、内部にアンダーカットを作るにはコアをつぶした り、移動可能なコアにする必要があります。
成形インサート
トーロン® PAI製部品に一体成形されたねじ山には良好な引抜き 力がありますが、より大きな引抜き力が必要な場合には金属イン サートを一体成形することもできます。トーロン® PAI樹脂は熱線 膨張係数が低いため、プラスチックと金属を組み合わせて使用す る用途に最適な材料です。成形を容易にするため、インサートは パーティングラインに垂直に配置し、溶融樹脂の射出時に位置が ずれないように支持します。また、インサートを型の温度まで予 熱します。
一般的なインサート材料について、インサート周囲のポリマーの 肉厚とインサートの外径との比を表35に示します。強度を保つ ためには、インサート周囲に十分な量のポリマーが必要です。
表35:肉厚とインサート外径(OD)の関係
インサート材料 インサート外径に対する肉厚の比
鉄鋼 1.2
真鍮 1.1
アルミニウム 1.0
ねじ
ねじも一体成形が可能です。トーロン® PAI樹脂を使用すれば、
クラス2の寸法公差に対応する通常の成形方法で内部と外部の いずれのねじ山も一体成形することができます。非常に精密な金 型を使用すると、クラス3の寸法公差での成形も可能です。少数 生産の場合、一般的にはねじ山を切削する方が経済的です。トー ロン® PAIのねじ保持強度を表38(41ページ)に示します。
穴
穴にはさまざまな機能を持たせることができます。例えば、電気 コネクターには、相互に近接して多数の小さい穴があります。そ れぞれの穴にウェルドラインが付随するので、その位置で強度が 低下する可能性があります。低下する程度は、流動長や部品形状、
穴の周囲の肉厚などによって異なります。トーロン® PAI樹脂は 精密公差での成形、また亀裂なしで薄い断面の成形が可能であ るため、この種の部品には非常に適した材料です。ただし、設計 上の変数が複雑になるため、各アプリケーションを個別に検討す る必要があります。