ねじ保持強度
金属ねじを使用して、ねじ山付きのトーロン® PAI製部品をしっ かり接合することができます。厚さ4.8 mmのトーロン® PAI製 平板に#4 – 40ねじ用の穴をドリルで開け、ねじ切りしました。
ASTM D1761に従って測定したねじの引抜き力を表38に示しま す。クロスヘッド速度は2.5 mm/分でした。平板とねじ保持治具 の間隔は 27 mmでした。
表38:トーロン® PAIに切削したねじ山のねじ保持強度
引抜き力
穴あたりの嵌合ねじ山数
グレード [kg]
4203L 240 7.5
4275 180 7.7
4301 200 7.8
締まり嵌め
締まり嵌め(圧入)は最小のコストで良好な強度の接合が得られる 方法です。耐クリープ性に優れたトーロン® PAIエンジニアリング ポリマーはこの接合方法に最適な材料です。発生する応力が設計 限界以内であるかどうかを判定するには、嵌め代、実際の使用温 度、および荷重条件を評価する必要があります。
超音波インサート
キュア前のトーロン® PAI製部品に超音波インサート法で金属を 埋め込むことができます。この方法を使用すれば、一体成形法に 匹敵する強度で迅速にインサートを取り付けることができます。イ ンサートよりもわずかに小さい穴を成形しておきます。金属イン サートをトーロン® PAI製部品に接触させます。18 kHzを超える 周波数の振動を金属インサートに与えることにより、摩擦熱を発 生させて樹脂を融解します。インサートの刻みやねじ山などの周 囲に十分に樹脂を充填すると高い強度が得られます。
その他の機械的な接合方法
ポストキュア後のトーロン® PAI製部品は非常に強靱であるため、
接合方法の中にはこれらの部品に適さないものがあります。拡張 式インサートは一般的には推奨できませんが、個々の用途によっ ては検討に値する場合もあります。
接着剤による接合
トーロン® PAI部品は市販の接着剤でも接合が可能であるため、
設計の自由度が広がります。用途の要件について、接着剤メーカー と相談することをお奨めします。
接着剤の選択
アミドイミド、エポキシ、シアノアクリレート系など各種の接着剤 でトーロン® PAI製部品を接合することができます。ただし、シ アノアクリレートは耐環境性に劣るため推奨できません。シリコ ン、アクリル、ウレタン系接着剤についても、環境条件により他 の選択肢が除外されている場合を除いて推奨できません。アミド イミド接着剤はトーロン® 4000T PAI粉末をN-メチルピロリドン
(NMP)に 35:65 の割合で溶解して作られます。
警告:NMPは引火性のある有機溶剤であるため、EPA、 NIOSH、およびOSHAの推奨する取り扱い方法に従ってください。
溶剤を使用するときは適切な換気が必要です。
各種トーロン® PAIグレードの接着
トーロン® PAI樹脂グレード4203L、5030、7130は比較的容易 に接着できます。摺動グレードの4301、4275、4435は自己潤 滑性を持っているため、接着はより困難です。これらのグレード をエポキシ、シアノアクリレート、およびアミドイミド系接着剤で 接着したときのせん断強さを比較したデータを表39に示します。
トーロン® PAI製の試験片(64 × 13 × 3 mm)をポストキュア後 に軽く研磨し、アセトンで拭き取ってから、重なり部分の長さを
13 mmにして接着しました。両端をクランプで固定して、接着剤
メーカーの推奨に従って硬化させました。室温で7日間放置後、
引張試験機を用いてクロスヘッド速度1.3 mm/分で接合部を引き 離しました。接着部分以外で破損が生じた場合は徐々に接着面積 を小さくしながら、接着部の重なりが最小で 3.2 mmになるまで 試験を繰り返しました。
表面の前処理
接着表面にオイルや油圧流体、粉塵などの汚染物質が残っていて はなりません。トーロン® PAI製部品は接着前に除湿乾燥器によ り温度149℃で少なくとも24時間乾燥させ、水分を取り除きます
(厚さが6.3 mmを超える部品では乾燥時間を長くします)。トー ロン® PAIの表面は機械研磨してから溶剤で拭き取るか、プラズ マアーク処理を行って接着性を向上させます。
接着剤の塗布
アミドイミド以外の接着剤を使用する場合はメーカーの指示に 従って作業を行ってください。アミドイミド接着剤の場合、両方の 接着面に均一な膜となるように接着剤を塗布します。接着剤を塗 布した面同士を 1.7 KPa程度の最小の圧力でクランプします。は み出た接着剤はN-メチルピロリドン(NMP)できれいに拭き取り ます。
警告:NMPは引火性のある有機溶剤であるため、EPA、 NIOSH、およびOSHAの推奨する取り扱い方法に従ってください。
溶剤を使用するときは適切な換気が必要です。
硬化処理
アミドイミド接着剤は通気のある空気循環型のオーブンで硬化さ せます。推奨サイクルは温度23℃で24時間、149℃で24時間、
204℃で2時間です。部品の温度が66℃以下になるまで、クラ ンプしたままにします。
各種接着剤の接着強度
市販の接着剤を使用してトーロン® PAI製部品を接合しました。
そのせん断強さを評価した結果を表39に示します。
「使いやすさ」を基準として、硬化方法、取り扱い、接着剤の有効 寿命などの格付けを行いました。使用可能な温度範囲はメーカー が提供する資料に記載されており、荷重や化学的な環境条件に よって変化します。
トーロン® PAI製部品と金属の接着
トーロン® PAI部品と金属部品は接着剤による接合が可能です。
適切な表面処理と接着剤の取り扱いにより、高い強度を持つ接合 を実現することができます。さらに、温度が変化しても接合面に はごくわずかな応力しか発生しません。その理由は、他の多くの 耐熱プラスチックとは異なり、トーロン® PAIの熱線膨張係数が金 属と非常に近い値であるからです。
前のセクションで説明したように、接着強度は選択した接着剤の 種類やトーロン® PAIのグレードだけでなく、接着の前処理法や 硬化法にも依存します。トーロン® PAIとアルミニウム、およびトー ロン® PAIと鋼材との接合部のせん断強さデータを表40に示しま す。鋼表面の前処理は機械研磨だけでは不十分なことがあります。
使用温度の条件からアミドイミド接着剤を使用しなければならな い場合は、鋼表面の化学処理をお奨めします。
表39:トーロン® PAIとトーロン® PAI間接着のせん断強さ
グレード 単位 エポキシ(1) シアノアクリレート(2) アミドイミド
4203L MPa 41.4 19.2 34.5
4301 MPa 15.5 12.0 19.9
4275 MPa 24.1 11.6 23.4
5030 MPa 33.0 21.2 35.4
7130 MPa 44.1 27.4 32.8
使いやすさ 1= 最も容易 2 1 3
使用温度範囲 ℃ –55〜71 –29〜99 –196〜260
(1) Hysol® EA 9330。HysolはDexter Corporationの商標です。
(2) CA 5000、Lord Corporation。
表40:トーロン® PAIと金属間接着のせん断強さ(1)
グレード 単位 エポキシ(2) シアノアクリレート(3) アミドイミド
せん断強さーアルミニウム2024とトーロン® PAI の接着
4203L MPa 27.6 9.3 34.8 +
4301 MPa 17.2 10.0 34.1
4275 MPa 16.9 5.2 30.0 +
5030 MPa 26.9 22.4 41.7 +
7130 MPa 27.6 25.9 44.1 +
せん断強さー冷間圧延鋼とトーロン® PAI の接着
4203L MPa 21.0 15.2 10.0
4301 MPa 25.5 14.1 12.7
4275 MPa 21.7 16.9 13.1
5030 MPa 32.1 14.5 16.5
7130 MPa 31.4 16.9 7.6
使いやすさ 1= 最も容易 2 1 3
使用温度範囲 ℃ –55〜71 –29〜99 –196〜260
(1)この試験では、寸法が 64 × 13 × 3 mmのトーロン®PAI板材、冷間圧延鋼の無光沢仕上げパネルから切り出した同寸法のプレート、および2024合金 パネルから切り出したアルミプレートを使用しました。
(2) Hysol EA 9330。HysolはDexter Corporationの商標です。
(3) CA 5000、Lord Corporation。
トーロン
® PAI樹脂部品の切削加工ガイドライン
トーロン® PAIから成形した部品や押出成形した棒材は、軟鋼や アクリルと同様の方法で切削が可能です。いくつかの代表的な作 業に使用できる切削加工パラメータを表41に示します。
トーロン® PAI樹脂から製造した部品は寸法が安定しており、切 削工具が当たってもたわみやへこみが生じません。トーロン® PAI の全グレードが標準的な工具を摩耗させるため、高速切削工具 は使用しないでください。
炭素鋼チップを付けた工具も使用できますが、ダイヤモンドチッ プ付きやインサート(交換用刃先)の切削工具を強く推奨します。
これらの工具は初期コストが相対的にやや高くなりますが、炭素 鋼チップを付けた工具よりも寿命が長く、製造業者にとっては経 済的観点からも魅力があります。薄い部材やシャープコーナーは 割れや欠けを起こさないように慎重に作業する必要があります。
壊れやすい部品の損傷を最小限に抑えるには、仕上げ工程での 切り込みを浅くします。冷媒噴霧により工具先端を冷却し、工作 物表面から破片や削り屑を速やかに除去してください。空気ジェッ トや吸引を使用して、工作物表面をきれいな状態に維持すること
ができます。
射出成形したブランク材を切削加工した部品には応力が蓄積して いる可能性があります。ひずみを最小に抑えるには、部品を対称 的に切削して逆方向の応力を緩和します。
切削加工した部品の再キュア
厳しい摺動条件で使用される部品、あるいは過酷な化学環境に 曝露する部品に最高の性能を発揮させるためには、切削加工後 に再度硬化を行うべきです。このような部品に対して 1.6 mmを 超える深さで切削加工を行った場合には、再キュアを強く推奨し ます。
表41:トーロン® PAI樹脂部品の切削加工ガイドライン
旋盤加工 値 単位
切削速度 90〜240 m/分
送り 0.1〜0.6 mm/rev
逃げ角 5〜15 度
すくい角 7〜15 度
切り込み深さ 0.6 mm
丸のこ加工
切削速度 1,800〜2,400 m/分
送り 高速かつ一定 mm/rev
逃げ角 15 度
送り速度 微速
すくい角 15 度
フライス削り
切削速度 150〜240 m/分
送り 0.2〜0.9 mm/rev
逃げ角 5〜15 度
すくい角 7〜15 度
切り込み深さ 0.9 mm
ドリル加工
切削速度 9〜240 m/分
送り 0.1〜0.4 mm/rev
逃げ角 0 度
先端角 118 度
リーマ仕上げ
低速 150 m/分