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科学技術振興調整費による研究

ドキュメント内 工業技術院年報 (ページ 48-54)

2.1  試験研究業務

2.1.7  科学技術振興調整費による研究

〔研 究 題 目〕微生物群集の多様性と時空間変動に関す る研究

〔研究担当者〕丸山 明彦、中原 東郎、花田  智

〔研 究 内 容〕海底熱水系の地下環境やその噴出熱水中 に出現する微生物群集の多様性を、分子系統学的・化学 分類学的手法により解明するとともに、定量的なポピュ レーション解析手法、微生物・遺伝子試料を現場で濃 縮・採取する手法、コア試料の処理解析手法等の基盤技 術の開発を通し、熱水微生物群集の時空間変動様式の解 明を図ることを目的としている。平成

12

年度は、来年 度の海底熱水系調査の準備段階として、現場熱水試料採 取装置の導入や試料処理・解析手法の検討、東北鳴子温 泉域や北海道豊羽鉱山の調査等を行い、熱水地下生物圏 研究手法の確立を図った。すなわち、従来の採水法では 海底面上で採取できる微生物細胞・核酸試料の数や量に 大きな制約があることから、現場濃縮により効率的に試 料を獲得する手法を検討し、バッテリー・タイマー駆動 式で一回の投入で多数の試料を必要量濃縮採取する装置 を導入、さらに濃縮・保存システムに改良を加えた。ま た、本濃縮システムのプロトタイプで採取した試料を対 象に、その後の処理・解析システムの構築を目指し、細 胞の破砕、抽出・精製、微生物含有核酸やキノン、脂質 等分析系の検討を行い、微生物含有

RNA

成分について

は分子定量解析を実現した。一方、鳴子温泉域の調査で は、熱水中に多数の微生物細胞を検出したが、期待され たアーキアは

FISH解析の検出限界以下、この地の高温

地下環境へのアプローチにも限界が見出された。また、

世界的に希有な高温岩盤内にある豊羽鉱山の調査では、

実際に地下

500

600 m深の掘削孔からの噴出熱水や掘

削循環水用の沢水等より微生物細胞・核酸試料を採取、

ほとんどの試料で微生物の細胞や増殖活性を検出、さら に解析を進めている。

〔研 究 題 目〕現場培養・計測手法による微生物群集解 析に関する研究

〔研究担当者〕丸山 明彦

〔研 究 内 容〕海底熱水系地下環境における微生物活動 およびそこから上層海水中に至る微生物のバイオマスや 群集組成、代謝活性等の変遷についての解明を目的とし、

現場培養・計測手法による微生物群集解析データの取得 を図るための基盤整備を行った。すなわち、海底熱水系 に特有な環境傾度を再現し、そこに生息する微生物の増 殖特性を解明するための現場培養手法、微生物

ATP

成 分に着目した現場微生物バイオマス計測手法等に係わる 装置や手法の開発を進めた。前者については、海底熱水 環境に設置できる半開放型培養系で、酸素濃度・基質濃 度を制御でき、微生物試料を経時的に現場で採取・固 定・保存できる装置を目標にプロトタイプを作製すると ともに、培養槽とオートサンプラーやバッテリー駆動系 の一体化、ハンドリング性の向上を目指した小型化、低 重量化、低電力化等についてさらに検討を行った。後者 については、現場調査に適用できる地下微生物の存在に 係わる要因として硫酸呼吸活性、硝酸呼吸活性、ATP量 の計測が有用であることを明らかにするとともに、現場 深海環境での使用を前提とした

ATP

量の酵素・光学的 測定装置のプロトタイプを作製、海域試験により装置や 反応系の問題点を実際に検討した。これら現場培養・計 測手法によるアプローチと、従来より行っている試料採 取、洋上保存、陸上解析手法によるアプローチ間の長短 所を整理し、来年度に予定される実海域調査において、

効率的なデータ収集を図る方策について検討した。

〔研 究 題 目〕海底地下生物圏の遺伝子手法による始原 的な生物の検出に関する研究

〔研究担当者〕河原林 裕、花田  智

〔研 究 内 容〕宮城県鳴子温泉、北海道豊羽鉱山等、高 温熱水環境を対象とし、好熱性細菌の分離培養を行い、

新規と思われる硫酸還元菌等の嫌気性菌株やイオウ酸化 細菌等の好気性の好熱性菌株の分離培養を進めている。

また、豊羽鉱山において掘削コアの嫌気処理システムの 構築を図った。これらの環境中での検出を可能とする

DNA

プライマーやプローブの開発を行い、熱水試料等

への応用を検討した。また、高温熱水環境を起源とした 環境遺伝子試料を用い、PCR法に依存せず、直接多数の

DNA

塩基配列解析を行うための効率的なクローン調整 手法の開発を行い、すでに一部で新規

DNA配列の発見

に成功している。

〔研 究 題 目〕植物の環境応答と形態形成の相互調節ネ ットワークに関する研究

〔研究担当者〕鈴木  馨、高木  優、福田 祐二、

進士 秀明

〔研 究 内 容〕微生物の感染に対して、植物は微生物由 来のシグナル物質であるエリシターを認識して生体防御 遺伝子群の発現を誘導し、また同時に植物ホルモンなど の細胞間防御シグナルを生成し伝達することにより感染 組織だけでなく非感染組織細胞の生体防御応答を誘導す る。植物体を用いた植物ホルモン応答性の遺伝子発現制 御実験系と、培養植物細胞を用いたエリシター応答性の 過敏感細胞死の発現制御実験系を用いて、植物の環境シ グナルの認識、細胞内・細胞間の情報伝達機構と遺伝子 の転写制御機構を解析した。生体防御遺伝子の転写を制 御する

ERF

のうちクラス2の

ERF

が転写の抑制因子と して機能することを明らかにして、その転写抑制機能を 一過的発現系を用いて解析し、転写抑制機能に関与する 領域を同定した。

2)国際共同研究総合推進制度

〔研 究 題 目〕アルツハイマーペプチドの立体構造及び 凝縮性に関する研究

〔研究担当者〕中西 洋志、石塚 靖子、金澤 健治、

根本  直

〔研 究 内 容〕本研究は、日本側は通商産業省生命工学 工業技術研究所及び、東京理科大学基礎工学部と、スウ エーデン側はストックホルム大学生物物理学部アレニウ ス研究所との国際共同研究である。ヒトの痴呆の原因の ひとつであるアルツハイマー病に関係するβ-アミロイ ドペプチドの立体構造を明らかにし、そのペプチドの分 子間相互作用、多量体化、繊維化による凝縮性について 研究を行った。

β-アミロイドペプチド分子の分子間相互作用が強い と考えられる部分ペプチドを合成し、CD法、種々の1 次元、2次元

NMR

法を用いて、その立体構造を明らか にするとともに、水溶液中での分子間相互作用及び高分 子化のプロセスについて研究を行い、興味ある結果を得 た。また、ペプチドの立体構造について種々のコンピュ ータ計算を行い、相互作用などについても検討を行った。

更に、β-アミロイド分子の凝縮性について、EM法など を用いて研究を行い、繊維化のプロセスについて重要な 知見を得た。

〔研 究 題 目〕遺伝子レベルの DNA 立体構造決定をめざ した電子エネルギー分光顕微技術の開発

〔研 究 内 容〕本研究では、日蘭両機関が持つ先端技術、

特に、フィリップスグループが蓄積してきた関連電子顕 微鏡技術と、生命工学工業技術研究所が近年集中的に研 究投資、開発してきた構造生物学関連技術を総合する事 により、遺伝子程度の長さを持つ単一

DNA分子の立体

構造を、可能な限り高分解能で決定するための科学技術 を確立する事を目標とした。

ヒトの

1

つの細胞中にある

DNA

分子を伸ばすと

2mに

達する。この事実に端的に示されるように、DNA分子 には「必要に応じて」折れ曲がる性質がある。DNA分 子の高次立体構造(DNAというヒモの3次元の走り方 やその柔軟性)は、その塩基配列に依存する。したがって、

ゲノム

DNA

分子の塩基配列は、蛋白質のアミノ酸配列 だけではなく、自らの立体構造や物性をもコードしている。

水溶液中の

DNA

分子、人工結晶中の

DNA

分子、疑似 結晶中の

DNA

分子等を電子顕微鏡技術を用いて解析、

検討した。これにより

DNA分子の立体構造や物性を解

明するための基礎が確立された。

3)重点基礎研究

〔研 究 題 目〕機能性細胞における遺伝子発現調節機構 の解明

〔研究担当者〕岡本 治正、池本 光志、玉野上佳明

〔研 究 内 容〕脳神経系における細胞・組織の諸特性(神 経発生・分化、日周期及び記憶過程の制御等)に関わる と思われる遺伝子群の脳内における発現調節機構を明ら かにするとともにその利用技術の開発を目指す。

本年度はモルヒネ耐性依存現象を記憶の長期可塑性の モデル系として解析した。モルヒネ耐性依存現象は、

cAMP

系を介した遺伝子発現変化に起因した神経回路網 の永続的な機能変化により発現・維持されると推定され ている。しかし、その発現機序ならびに分子機構は不明 である。我々は、モルヒネ耐性依存現象の形成維持機構 の解明を目的として、モルヒネ反復投与を施したマウス 扁桃体からサブトラクションクローニングを試み、分泌 性細胞外マトリクス糖蛋白質

SPARC (Secreted protein and rich in cysteine) を単離した。扁桃体外側核におけ

SPARC

の遺伝子発現変化は、モルヒネ反復投与した場

合に特異的であり、2週間以上の長期休薬でも維持され る。この経時変化はモルヒネ移所運動活性の増強効果

(逆耐性)の経時変化と良く相関し、扁桃体外側核へ

SPARC

を脳内投与すると逆耐性現象が顕著に誘導され

る。SPARCは培養神経細胞に対して細胞形態変化およ び突起縮退効果を示すことから、脳内では可塑性因子と して作用して逆耐性現象を引き起こすと推察される。

〔研 究 題 目〕核酸の分子認識機能の応用技術に関する 研究

〔研究担当者〕P.K.R. クマール、西川  諭

〔研 究 内 容〕インビトロ選択法により我々はすでに、

HIV

の転写増殖因子

Tat

タンパク質に特異的に強く結合 する(Kd=

<

1nM)新しい核酸分子(アプタマー)を 創製している。本研究ではそのアプタマーを2分子に分 割し、末端に異なる蛍光基(あるいは消光基)を導入す ることで、Tatタンパク質存在下でのみ、安定な複合体 を形成し、エネルギー移動により発光する「モレキュラ ービーコンアプタマー」を考案した。実際に試験管内と 同様に、このシステムをプレート上に固定し、Tatタン パク質ならびに

Tat

ペプチドを

1 nM

以下の濃度で検出 で き る こ と を 確 認 し た 。 こ の シ ス テ ム 、

A n a l y t e Dependent Hybridizing Oligo Nucleotide Assay 法

(ADHONA)はマイクロアレイとしても有効と考えられた。

〔研 究 題 目〕酵素デザインの基礎および生物工学的応 用に関する研究

〔研究担当者〕倉  正寛、三石  安、本松 成和、

末森 明夫、竹縄 辰行、宮崎健太郎

〔研 究 内 容〕大がかりな構造改変技術及び構造変化解 析技術を利用して、酵素の構造を人為的に制御できる新 しいタイプの酵素蛋白質をデザインすることを目的とした。

本研究においては、先に開発したトポロジー変異体の 作成方法をもちいて、ジヒドロ葉酸還元酵素について、

構造転換が容易におこるように設計した改変酵素蛋白質 をまず作製し、得られた変異体の構造転換の程度を解析 した。次に、解析結果を基に更に変異を導入して酵素蛋 白質の改変を行うことにより、構造の人為的制御を可能 にする新しいタイプの酵素蛋白質の創製を試みた。

この結果、補酵素の結合により、活性な構造に転換す る機能を有する変異酵素の作製に成功した。

〔研 究 題 目〕生殖・分化に関与する遺伝子群の研究

〔研究担当者〕深津 武馬

〔研 究 内 容〕単為生殖によるクローンであるため、真 社会性アブラムシの通常生殖個体と不妊兵隊個体の間で 遺伝的バックグラウンドが完全に同一であるという大き な利点を活かして、兵隊特異的に発現する遺伝子群の単 離・同定をこころみた。2令の不妊の兵隊を産生するハ クウンボクハナフシアブラムシ

Tuberaphis styraci

につ いて、兵隊と通常個体の間で

cDNA subtraction

法をお こなったところ、多数の兵隊特異的発現遺伝子の断片が 得られた。

100

クローン以上について塩基配列を決定し たところ、その半数以上は興味深いことに同一配列であ り、DNAデータベース上の相同性検索によってこの遺 伝子はシステインプロテアーゼの1種であるカテプシン Bをコードすることが明らかになった。 ノザンブロッ

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