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産業科学技術研究開発

ドキュメント内 工業技術院年報 (ページ 38-46)

2.1  試験研究業務

2.1.4  産業科学技術研究開発

〔研 究 題 目〕糖鎖導入による糖蛋白質の機能性付与技 術の評価

〔研究担当者〕地神 芳文、仲山 賢一、新間 陽一、

横尾 岳彦

〔研 究 内 容〕酵母の

N-結合型糖鎖は 30

100

残基異常 という非常に多くのマンノースが付加するマンナン型糖 鎖となる点がヒトなどと大きく異なる点であったが、

我々は、この酵母型糖鎖を生産する遺伝子を特定し破壊 す る こ と に よ り 、 ヒ ト の 高 マ ン ノ ー ス 型 糖 鎖

(Man8GlcNAc2)を蛋白質に付加する酵母の分子育種に成

功している。昨年度までに、この高マンノース付加型酵 母において、ヒトの蛋白質である糖鎖付加型

FGF

の生 産および精製に成功しているが、今回、この糖鎖付加型

FGF

を大量に調製し、マウスを用いた体内動態の実験を 行うことによって、糖鎖の機能評価を行った。実験は、

糖鎖を酵素により取り除いた糖鎖のない

FGF

をコント ロールとし、野生型酵母で生産した酵母マンナン型糖鎖 を付加した

FGFと、糖鎖変異株を用いて生産したヒト

高マンノース型糖鎖付加

FGF

をそれぞれ

125I

でラベル し、体内動態の比較を行った。その結果、酵母マンナン 型糖鎖の付加した

FGFとヒト高マンノース型糖鎖の付

加した

FGF

は、糖鎖のない

FGF

に比べ有意に肝臓への 移行が観察された。この肝臓への移行はマンノースの数 が多い酵母マンナン型糖鎖を持つ

FGF

が、ヒト型高マ ンノース型糖鎖を持つものより大きな値を示したことか ら、これらの肝臓への移行はマンノース結合蛋白質によ る肝臓への移行であると推定された。さらに、ヒト高マ ンノース型糖鎖を付加する

FGF

は、糖鎖のない

FGF

及 び酵母マンナン型糖鎖の付加した

FGF

と比べて優位に 腎臓への移行が増加しているのが観察された。これらの ことから、糖鎖の付加により臓器への移行性が本来の

FGF

と異なることが明らかとなり、糖鎖の付加により臓 器特異性の機能付与の可能性が示された。

〔研 究 題 目〕進化実験系基盤技術の開発

〔研究担当者〕細野 邦昭、巌倉 正寛、本松 成和、

三石  安、末森 明夫、宮崎健太郎、

竹縄 辰行、西川  諭、

P.K. クマール

〔研 究 内 容〕本研究は、工学的応用が可能な酵素の開 発に直接結びつく進化実験系の確立を目的としている。

そのために、本プロジェクトの第1期で開発した進化 実験要素技術の汎用化とその組み合わせ技術の観点か ら、酵素の工学的応用として大きな期待が持たれている 次世代型固定化酵素の開発に必要な構造・機能を獲得す るように蛋白質を進化させるための進化実験系の開発を 目指し研究を進めている。

平成

12

年度は、昨年度に引き続き、蛋白質の長寿命 化を持たせるように蛋白質を進化させることを意図して 研究をつづけた。昨年度作成した含硫アミノ酸を含まな いで且つ野性型蛋白質と同等以上の活性をもつ長寿命化 ジヒドロ葉酸還元酵素について、さらに、残りのアミノ 酸について、それぞれを非野生型アミノ酸に置き換えた

変異蛋白質の作製を行ない、得られた一アミノ酸置換変 異体について、酵素活性と安定性を指標とするデータベ ースの構築を進めた。このデータをもとに、安定性に関 する新しい適応歩行指針を開発しつつある。

〔研 究 題 目〕新型高機能酵素創製のための進化実験系 の評価

〔研究担当者〕細野 邦昭、巌倉 正寛、本松 成和、

三石  安、末森 明夫、宮崎健太郎、

竹縄 辰行、西川  諭、

P.K. クマール

〔研 究 内 容〕本技術評価においては、革新的な省エネ ルギープロセスであるバイオプロセスに必須な新型高機 能酵素を創製するための進化実験系構築技術の技術評価 を行う。そのために、要素技術のひとつである変異発生 技術について技術評価をおこなった。変異発生技術とし てもちいられるランダム多重変異体作成技術の有効性を 定量的に評価するために、芳香族化合物の酸化酵素につ いて、酵素のアミノ酸配列上の標的サイト

9

ケ所あまり を選択し、これらのサイトを天然型アミノ酸から他の19 種類のアミノ酸に置換した変異体、およそ

150

を順次作 成した。これらの変異体について、主反応に対する副反 応の割り合いを評価して一アミノ酸置換変異体の副反応 に対する評価データベースを作成した。このデータをも とに、副反応の起こりにくい変異体を作成するための効 率的な多重変異導入方法を検討した。

その結果、副反応の減少した変異体を取得する場合に も、主反応における活性を増強する場合と同様に、変異 の相加性を仮定できることが明かとなった。すなわち、

曖昧な相加性を考慮に入れた変異の組み合わせ戦略をも ちいて、各変異導入サイトにおいて野生型のアミノ酸よ り副反応が少なくなった数種の変異を順次組み合わせて 多重変異を導入することで、野生型酵素の

30

%以下に 副反応が押さえられた変異酵素を取得することができた。

また、一アミノ酸置換変異体の機能を種々の観測手法 でデータベース化することにより、少ないステップの変 異導入で目的とする機能に到達できるようになると考え られた。

〔研 究 題 目〕微生物コンソーシア解析技術

〔研究担当者〕倉根隆一郎、金川 貴博、鎌形 洋一、

川原崎 守

〔研 究 内 容〕廃水処理用の活性汚泥は、産業界で最も 多く用いられている微生物コンソーシアである。活性汚 泥を利用する上で、最も問題となる点は、活性汚泥を静 置しても菌が沈まないという現象が時々起こることであ る。この現象はバルキングと呼ばれ、糸状の細菌が異常 増殖することで起こる場合が多い。活性汚泥中には、

様々な種類の糸状性細菌が観察され、バルキングを起こ

すのは、そのうちの数種類と考えられるが、見分けるの は難しい。バルキングを起こす菌が増えつつあるかどう かを解析することができれば、バルキングが起こる前に 対策をとることができると考えられる。

バルキングの原因菌として最も頻繁に見られるのは、

Eikelboom type 021N

であり、活性汚泥中におけるこの 菌の迅速定量方法を検討した。

この菌を特異的に検出できる蛍光プローブを前年度に 開発したので、これを用いた

FISH

法での定量を試みた 結果、定量下限値が高く、バルキング予防には適さない ことがわかった。次に消光プローブを用いた新しい定量 法を試みた結果、現状では混在する他の菌の影響が大き く出るため、基礎的なところからの測定条件の検討が必 要であり、開発に時間がかかることがわかった。そこで 次に消光プライマーを用いた新しい定量的

PCR

を試み た結果、感度よく測定することが可能であったので、今 後はこの方法をさらに実用的に改善する方針を決めた。

〔研 究 題 目〕微生物コンソーシア培養制御技術

〔研究担当者〕倉根隆一郎、金川 貴博、鎌形 洋一、

川原崎 守、深津 武馬

〔研 究 内 容〕微生物を工業的に利用して物質を生産す る場合、一種類の微生物を純粋に培養して用いているの が現状である。その壁を一歩越えて、複数種の微生物が 混在する集団を制御して利用できるようになれば、新し いバイオプロセスとしての利用価値が非常に高いと期待 される。そこで、本研究では、複数種の微生物によって 構成され、有用な機能を有する集団(微生物コンソーシ ア)を制御し、有用な物質を生産させるための基礎的か つ基盤的技術を開発する。

実験モデルとしては、ポリリン酸生産微生物系を用い た。前年度の実験では、2か月間の冷凍保存で最大でも 4%しか活性が残っていなかったが、保存条件を検討し た結果、冷凍保存中の温度変化が生残率に大きな影響を 与えることがわかった。そこで、厳密な温度制御が可能 な冷凍庫を用いて-85℃で凍結・保存した結果、

16

週間 保存後で

40

%の活性が見られた。凍結保存時の保護剤 として、DMSO(

10

%、

20

%、

30

%)、およびマルトー ス(

10

%)を検討したが、添加効果はほとんど見られな かった。

〔研 究 題 目〕機能解析手法による複合微生物系解析技 術と複合微生物系新規分離培養技術

〔研究担当者〕倉根隆一郎、山岡 正和、河野 泰広、

中原 東郎、横地 俊弘、深津 武馬

〔研 究 内 容〕複合生物系植物・菌類(植物とそれに寄 生する菌類の系)において、アブラヤシの分子レベル、

物質レベルの防御機構および寄生菌類の毒素生産などの 解明を検討している。既に寄生菌類の1株を主に胞子の

形態から

Ganoderma boninense

であることを推定した。

マレイシアでアブラヤシ病斑から分離した菌株9種につ いて

5.8S rDNAを含む ITS領域を PCR

で増幅し、各領 域の全塩基配列を決定したところ、マレイシア罹病アブ ラヤシから分離された寄生菌は検討した範囲で遺伝的に 均質であることが分かった。また、この塩基配列に基づ いて設計したプライマーを用いることにより、罹病アブ ラヤシ組織から寄生菌株を高感度で検出することが可能 となった。

複合生物系の新規な分離培養法について前年度まで に、植物表面で共存する海洋細菌を塗布した寒天培地を 用いることによって、従来法では困難であったヒルギ、

アマモ等からのラビリンチュラ属菌の分離に成功した。

本年度は共存する

Mo-raxella

属海洋細菌を同定し、

Psychrobacter phenylpyruvi-cus

であることをつきとめ た。同細菌は低栄養性、塩分耐性の特徴を示した。

海洋生物と寄生・共生・共存する細菌(カイメンから 分離した

Pseudomonas elongata

類縁菌およびダイダイ カイメンより分離した

Pseudoalteromonas luteoviolacea

類縁菌)から、それぞれ抗菌物質を分離・精製したとこ ろ、phenazine構造を持つgriseoluteic acidとbromophenol 化合物である

bromophene

であることをつきとめた。と もに海洋細菌から得られたのは新しい知見である。

〔研 究 題 目〕分子遺伝・組織化学的手法による複合微 生物解析技術

〔研究担当者〕倉根隆一郎、丸山 明彦、深津 武馬、

鎌形 洋一、細矢 博行 

〔研 究 内 容〕自然界の微生物の大多数は分離・培養が 困難なもので占められており、微生物資源の開発を大き く阻んでいる。そこで本研究では、複合生物系構成微生 物等の多様性や代謝活性を、非培養法で解析するための 分子遺伝学的、組織化学的解析技術の開発を行い、未利 用微生物資源開発基盤技術の確立を図ることを主な目的 としている。平成

12

年度は、これまでの基盤技術開発 の成果を踏まえ、より信頼性や定量性を重視した解析手 法の開発等に取り組んだ。すなわち、DNA

プローブ-RNA

試料間のハイブリダイゼーション温度依存性試験 を、RIを用いない簡便な蛍光法として確立し、新規お よび既存プローブの正確な条件決定を行った。また、ド ットブロットハイブリダイゼーション法に基づく

16S

rRNA

ユニバーサル領域含量を基準とした相対分子定量 解析手法についても、Non-RI法での解析系として確立 するとともに、微生物群集量としての標準化のため、各 種アーキアやバクテリア、ユーカリア標準株での標的

RNA

含量比の測定を行った。さらに、これまでに獲得 していた沿岸汚染環境水中の微生物群集核酸試料の一部 に対し、本

Non-RI

手法の適用を試みた。一方、新しい 分子定量法として注目されるリアルタイム蛍光検出定量

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