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私の経験した現場

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はしもと

本 裕

ゆ う じ

K

ey Word 平成 23 年東北地方太平洋沖地震,河川堤防,統合物理探査,

ランドストリーマー方式表面波探査,牽引式電気探査

応用地質株式会社 関西支社 技術部 グループリーダー

図 1 統合物理探査実施区間1) 提供:国土交通省利根川下流河川事務所

私の経験した現場

粒度特性と相関が認められ大まかな土質区分の指標 となる比抵抗分布を把握する電気探査が適用される ことが多く,本調査でもこれら手法を実施した。い ずれの調査手法も牽引式とすることで,測定効率を 大幅に向上させることが可能となり(写真 1,写真 2),本調査の場合 38km の測定を約 1.5 ヶ月で完了 することが出来た。

3. 安全性評価の考え方

 本調査における安全性評価とは,浸透に対して 堤防が地震発生前の機能を有しているか否かを確 認し,仮に機能低下の可能性が懸念される場合に は,その箇所において現状での安全性を浸透流解 析・安定計算を用いて把握することを意味する。

 図 2に安全性評価の流れの概要を示す。

 ここでは,地震により緩みが発生・進行した可 能性がある砂質土を物理探査で抽出し,その代表

箇所にて実施する詳細調査結果と,地震発生前の 既存調査結果を比較検討することで安全性を確認 することとしている。

4.評価基準の決定と安全性評価結果 4.1 緩みの評価基準

 本調査で問題となるのは,地震前の堤防の性状

(緩み)をどう評価するか,ということである。地 震前は基本的には粗い間隔でのボーリング調査が 成されているだけで,堤防縦断方向に連続した調 査は成されておらず,地震後の統合物理探査結果 と一対一で比較することができない。

 そこで,地震前の堤防の緩み度合いの指標を得 るために,調査対象区間の既存調査の N 値の頻度 分布を整理した結果,その最頻値は N=3 であった。

このことから,地震後 N=3 以上を示す箇所につい ては,地震前の堤防と同程度の安全性を有するも のと判断した。これは,N=3 を超えて N 値が低下 した箇所(地震前 N=5,地震後 N=2 など)を地震 の影響で緩みが発生・進行した箇所として抽出で きるように,安全性評価の基準を N=3 としたこと

写真 1 ランドストリーマー方式表面波探査

写真 2 牽引式電気探査

提供:国土交通省利根川下流河川事務所

図 2 安全性評価の流れ(概要)

になる。この考え方では,地震前から N=1,2 であっ た箇所も全て地震により緩みが生じた可能性のあ る箇所として抽出されるが,これは評価としては 安全側になることから許容している。

 次に,N 値を基準に地震後の表面波探査結果と 比較するためには,前述の評価基準 N=3 を S 波速 度に変換する必要がある。N 値と S 波速度の相関 式は複数提案されているが,本調査では「河川堤 防の統合物理探査」2)にて示されている以下の稲崎

(2005)3)式を採用した。

 この式により評価の基準とした N=3 は S 波速度 145m/s 程度となる。なお,本調査では緩み領域を さらに絞り込むために N=2(Vs=125m/s)も評価 基準の 1 つとして加えている。

4.2 土質区分の評価基準

 調査対象区域の概略の土質区分を行い,砂質土 を抽出するのに,電気探査で得られた比抵抗値を 利用した。比抵抗値は細粒分が多い地盤ほど値が 小さく,砂分・礫分が多いと値が大きくなる傾向 を有している。このことから,既存ボーリングの

土質区分と,地震後の電気探査で得られた比抵抗 値を比較し,粘性土と砂質土の境界(粘性土区分 の上限値)を比抵抗値 200 Ω ・m と設定した。また,

緩んだ砂質土としてさらに絞り込むための基準値 として 400 Ω ・m も設定している。

4.3 安全性評価結果

 設定した S 波速度・比抵抗値の評価基準と,探 査結果を基に,図 3に示すとおり低速度・高比抵 抗領域を地震により緩んだ可能性がある砂質土と して絞りこんだ。結果の例を図 4に示す。

 なお,実際の評価基準は堤体,基盤それぞれに 対して設定した上で,評価を行っている。

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N=1.6 × 10-6× Vs2.9

      Vs:S 波速度 (m/s)

図 3 緩んだ砂質土を抽出するために設定した S波速度・比抵抗の評価基準1)

図 4 表面波探査及び電気探査結果と抽出した緩んだ砂質土分布の例1)

図 3,4 提供:国土交通省利根川下流河川事務所

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 これらの結果から,地震により緩んだ可能性が ある砂質土として抽出した箇所を中心に詳細調査 としてボーリング調査・サウンディング・室内試 験を実施し,地盤性状を確認した。その際,地震 発生前の状況との比較が可能となる様に,近傍に 既存ボーリング結果等が存在する箇所を調査地点 として選定している。

 その結果,今回の詳細調査結果と既存調査結果 は概ね同程度の値を示すことが確認され,地震の 影響による緩みが進行したものではないと判断し た。なお,1 地点については N 値が系統的に 1 ~ 2 低下している状況が確認されたため,浸透流解析・

安定計算を行い,所定の安全性を確保しているこ と確認した。

 以上の結果を持って,本調査地においては,浸 透に対して地震発生前の堤防の機能を有している と判断され,はん濫注意水位や水防団待機水位の 基準水位は地震前の基準に戻されることとなった。

5.おわりに

 本稿で紹介した物理探査手法は,調査対象とな る地盤を連続的に,かつ効率的に把握することが 出来るという他の調査手法にない大きなメリット を有している。そのため,今回のように延長が長 大な河川堤防に対しては,現状ではボーリング結 果等の限定された情報から設定されている細分区 間の見直しに活用するなど,今後堤防の維持管理 を計画していく上で大きく貢献できる手法である と,私は考えている。

 ただし,非破壊であるが故に,直接対象地盤を 確認できるボーリング調査等に比べ,その分解能 や精度に限界があることも事実である。

 このような物理探査が持つ長所と限界を正しく 認識した上で,他の調査手法の長所と組み合わせ,

最も効果的な適用方法をより明確にしていくこと,

そしてその結果を多くの方に理解してもらうこと で物理探査が今まで以上に社会に貢献できるよう まとめていくこと,それが今の私の目標の 1 つと なっている。

 最後に,本稿をまとめるに当たり,国土交通省 関東地方整備局利根川下流河川事務所により,業 務を通じて得られた成果の利用を承諾頂きました。

ここに謹んで感謝致します。

〈参考文献〉

1) 国土交通省関東地方整備局利根川下流河川事務所:

  H23 利根川下流左岸堤防物理探査業務報告書,2012.12 2) 土木研究所・物理探査学会編:「河川堤防の統合物理探査-安

全性評価への適用の手引き-」,愛智出版,2013

3) 稲崎富士:「沖積層堆積物の S 波速度と土質特性の関係につい て」,物理探査学会第 113 回学術講演会論文集,pp.217-220,

2005.10

4) 国土交通省関東地方整備局:統合物理探査の今後の河川堤防調 査に資する知見

  http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000075195.pdf   (2016 年 2 月 2 日現在)

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