本章では,就学前児童の親を対象とした調査の結果に基づき,SWQOL 測定尺度の構成 概念妥当性と信頼性を検討する.第 1 節では,確認的因子分析と ω 信頼性係数による,
SWQOL 測定尺度の構成概念妥当性と信頼性を検討し結果を示す.第 2 節では,SWQOL
測定尺度の構成概念妥当性と信頼性を性別に検討し,第3節では,これを地域別に検討し 結果を示す.
第1節 尺度の妥当性・信頼性
SWQOL測定尺度に関する項目の回答分布を表31に示した.因子と項目ごとの回答に着
目すると,「生活環境」の因子においては,「xd1. あなたは,自分の住まいの快適さに満足 していますか」では「満足している」が700名(44.2%)で最も多く,次いで,「どちらで もない」が421名(26.6%)であった.「xd2. あなたは,あなたの地域の生活環境の整備(防 犯・防災・情報・教育・交通・医療・福祉・保育など)に 満足していますか」では「どち らでもない」が655名(41.4%)で最も多く,次いで,「満足している」が442名(27.9%)
であった.「xd3. あなたは,あなたの地域の自然環境に満足していますか」では「満足し ている」が682名(43.1%)で最も多く,次いで,「どちらでもない」が546名(34.5%)
であった.「xd4. あなたは,自分と他の人との絆に満足していますか(家族・親戚・友人・
近隣の人との信頼関係)」では「満足している」が 800 名(50.5%)で最も多く,次いで,
「どちらでもない」が403名(25.5%)であった.
「人権の尊重」の因子においては,「xd5. あなたは,自分の自由権(経済・表現・人身 などの自由を国家権力から制約・干渉されていないこと)の保障のされ方に満足していま すか」では「どちらでもない」が841名(53.1%)で最も多く,次いで,「満足している」
が459名(29.0%)であった.「xd6. あなたは,自分の平等権(性別・格差・教育・政治参 加など)の保障のされ方に満足していますか」では「どちらでもない」が823名(52.0%)
で最も多く,次いで,「満足している」が473名(29.9%)であった.「xd7. あなたは,自 分の尊厳(自分らしさ,自己決定権,名誉・プライバシーなど)の守られ方に満足してい ますか」では「どちらでもない」が808名(51.0%)で最も多く,次いで,「満足している」
が499名(31.5%)であった.「xd8. あなたは,自分の生存権等(暴力・いじめ・犯罪・虐 待を受けない状況)の保障に満足していますか」では「どちらでもない」が829名(52.4%)
で最も多く,次いで,「満足している」が445名(28.1%)であった.
「生活の自立」の因子においては,「xd9. あなたは,自分の生活費の確保状況に満足し ていますか」では「どちらでもない」が525名(33.2%)で最も多く,次いで,「満足して いる」が406名(25.6%)であった.「xd10. あなたは,自分の社会貢献に満足しています か」では「どちらでもない」が896名(56.6%)で最も多く,次いで,「満足している」が 361 名(22.8%)であった.「xd11. あなたは,家庭における自分の役割に満足しています か」では「満足している」が706名(44.6%)で最も多く,次いで,「どちらでもない」が 552 名(34.9%)であった.「xd12. あなたは,自分の意志によって,自分の生き方や生活 について決定することに満足していますか」では「満足している」が725 名(45.8%)で 最も多く,次いで,「どちらでもない」が550名(34.7%)であった.
基本的に,SWQOL測定尺度の開発論文(高橋ら 2015)におけるデータと同様に「どち らでもない」「満足している」を中心とする正規分布に近似していた.「非常に不満足」「不 満足である」に着目すると,「xd5. あなたは,自分の自由権(経済・表現・人身などの自 由を国家権力から制約・干渉されていないこと)の保障のされ方に満足していますか」「xd6.
あなたは,自分の平等権(性別・格差・教育・政治参加など)の保障のされ方に満足して いますか」「xd7. あなたは,自分の尊厳(自分らしさ,自己決定権,名誉・プライバシー など)の守られ方に満足していますか」「xd8. あなたは,自分の生存権等(暴力・いじめ・
犯罪・虐待を受けない状況)の保障に満足していますか」が,「非常に不満足」「不満足で ある」の合計が200名超(13%前後)でやや多かった.また,「xd1. あなたは,自分の住 まいの快適さに満足していますか」では,「非常に不満足」「不満足である」が74名(4.7%),
218名 (13.8%),「xd2. あなたは,あなたの地域の生活環境の整備(防犯・防災・情報・
教育・交通・医療・福祉・保育など)に 満足していますか」では,86名(5.4%),347名
(21.9%),「xd10. あなたは,自分の社会貢献に満足していますか」では 55名(3.5%), 209名 (13.2%)と多く,「xd9. あなたは,自分の生活費の確保状況に満足していますか」
に関しては,187名(11.8%),404名(25.5%)と特別多くなっていた.
因子に着目して見直すと,「生活環境」の因子に属する項目への回答では,「xd1. あなた は,自分の住まいの快適さに満足していますか」「xd3. あなたは,あなたの地域の自然環 境に満足していますか」「xd4. あなたは,自分と他の人との絆に満足していますか(家族・
親戚・友人・近隣の人との信頼関係)」の3項目では,「満足している」という回答が最も
らでもない」が421名(26.6%),546名(34.5%),403名(25.5%)となっていた.「xd2. あ なたは,あなたの地域の生活環境の整備(防犯・防災・情報・教育・交通・医療・福祉・
保育など)に 満足していますか」に関しては,「どちらでもない」が655名(41.4%),次 いで「満足している」442名(27.9%)となっていた.
「人権の尊重」の因子に属する項目への回答では,4項目全てが,「どちらでもない」が 841名(53.1%),823名(52.0%),808名(51.0%),829名(52.4%)と最も多く,次いで
「満足している」が,459名(29.0%),473名(29.9%),499名(31.5%),445名(28.1%)
となっていた.
「生活の自立」の因子に属する項目への回答では,「xd9. あなたは,自分の生活費の確 保状況に満足していますか」「xd10. あなたは,自分の社会貢献に満足していますか」では,
「どちらでもない」が525名(33.2%),896名(56.6%)で最も多く,次いで,「満足して いる」が406名(25.6%),361名(22.8%)となっていた.「xd11. あなたは,家庭におけ る自分の役割に満足していますか」「xd12. あなたは,自分の意志によって,自分の生き方 や生活について決定することに満足していますか」では,「満足している」が706名(44.6%), 725名(45.8%)で最も多く,次いで,「どちらでもない」が552名(34.9%),550名(34.7%)
となっていた.
表31 社会福祉関連QOL測定尺度の回答分布(n=1,583)
xd1. あなたは、自分の住まいの快適さに満足していま
すか 74 ( 4.7 ) 218 ( 13.8 ) 421 ( 26.6 ) 700 ( 44.2 ) 170 ( 10.7 ) xd2. あなたは、あなたの地域の生活環境の整備(防犯
・防災・情報・教育・交通・医療・福祉・保育など)に 満足していますか
86 ( 5.4 ) 347 ( 21.9 ) 655 ( 41.4 ) 442 ( 27.9 ) 53 ( 3.3 ) xd3. あなたは、あなたの地域の自然環境に満足してい
ますか 45 ( 2.8 ) 152 ( 9.6 ) 546 ( 34.5 ) 682 ( 43.1 ) 158 ( 10.0 ) xd4. あなたは、自分と他の人との絆に満足しています
か(家族・親戚・友人・近隣の人との信頼関係) 28 ( 1.8 ) 112 ( 7.1 ) 403 ( 25.5 ) 800 ( 50.5 ) 240 ( 15.2 ) xd5. あなたは、自分の自由権(経済・表現・人身など
の自由を国家権力から制約・干渉されていない こと)の保障のされ方に満足していますか
56 ( 3.5 ) 146 ( 9.2 ) 841 ( 53.1 ) 459 ( 29.0 ) 81 ( 5.1 ) xd6. あなたは、自分の平等権(性別・格差・教育・政
治参加など)の保障のされ方に満足していますか 55 ( 3.5 ) 150 ( 9.5 ) 823 ( 52.0 ) 473 ( 29.9 ) 82 ( 5.2 ) xd7. あなたは、自分の尊厳(自分らしさ、自己決定権
、名誉・プライバシーなど)の守られ方に満足して いますか
52 ( 3.3 ) 153 ( 9.7 ) 808 ( 51.0 ) 499 ( 31.5 ) 71 ( 4.5 ) xd8. あなたは、自分の生存権等(暴力・いじめ・犯罪・
虐待を受けない状況)の保障に満足していますか 65 ( 4.1 ) 168 ( 10.6 ) 829 ( 52.4 ) 445 ( 28.1 ) 76 ( 4.8 ) xd9. あなたは、自分の生活費の確保状況に満足して
いますか 187 ( 11.8 ) 404 ( 25.5 ) 525 ( 33.2 ) 406 ( 25.6 ) 61 ( 3.9 ) xd10. あなたは、自分の社会貢献に満足していますか 55 ( 3.5 ) 209 ( 13.2 ) 896 ( 56.6 ) 361 ( 22.8 ) 62 ( 3.9 ) xd11. あなたは、家庭における自分の役割に満足して
いますか 36 ( 2.3 ) 143 ( 9.0 ) 552 ( 34.9 ) 706 ( 44.6 ) 146 ( 9.2 ) xd12. あなたは、自分の意志によって、自分の生き方
や生活について決定することに満足していますか 41 ( 2.6 ) 91 ( 5.7 ) 550 ( 34.7 ) 725 ( 45.8 ) 176 ( 11.1 ) 単位:名(%)
生 活 環 境
人 権 の 尊 重
生 活 の 自 立 因
子 項目 回答カテゴリ
非常に 不満足
不満足 である
どちら でもない
満足 している
非常に 満足
高橋らの SWQOL 測定尺度(高橋ら 2015)から質問項目の文言の微修正及び 1 項目の
追加を行った,12項目で構成されるSWQOL測定尺度の因子構造の側面からみた構成概念 妥当性を確認的因子分析で検討したところ,3 因子二次因子モデルのデータに対する適合
度は,CFIが0.975,RMSEAが0.103とRMSEAがやや高かった.そのため,項目表現が
似ている項目「xd11」と「xd12」の間に誤差相関を設定した.このモデルのデータに対す る適合度はCFIが0.984,RMSEAが0.082であった(図25).またω信頼性係数は0.889 であった.
生活環境
人権の尊重
生活の自立 社会福祉関連
QOL
yd2
.884†
.771
.885
.728†
.913†
.722†
.937 .743 .690 .685
.891 .765
.686 .664 .738
n=1583 χ 2=577.521 df =50 CFI=0.984 RMSEA=0.082
(推定法:WLMSV) .480
yd1
yd3 yd4 yd5
yd7 yd8 yd6
yd9 yd10 yd11
ζ1
ζ2
yd12
ζ3
ε1
ε2
ε3
ε4
ε5
ε6
ε7 ε8
ε12 ε9
ε10
ε11
図25 社会福祉関連QOL測定尺度の構成概念妥当性の検討
因子構造モデルの側面から見た構成概念妥当性ならびに内的整合性の観点からみた信頼 性が許容水準にあったことは,尺度における概念的一次元性が支持されたことを意味して おり,合計得点の算出に関する大きな根拠となる.したがって,SWQOL 測定尺度は,各 自治体において,市民の視点から政策等の効果を測定・比較・評価するアウトカム指標,
インパクト指標として使用することが可能である.この根拠及び視点から,各尺度の合計 得点等の平均値及び標準偏差を示した(表32).
SWQOL 測定尺度全12項目で測定された合計得点は,平均値 27.5点,標準偏差7.13,
範囲0~48点であった.因子別の得点分布は,「生活環境」4項目の平均値が2.41点,標準 偏差0.705,「人権の尊重」4項目の平均値が2.23点,標準偏差0.726,「生活の自立」4項 目の平均値が2.25点,標準偏差0.696,範囲は全ての因子において0~4点であった.因子 別の平均値としては,「人権の尊重」が一番低く,次いで「生活の自立」が低くなっていた.