第4章では,23項目7因子二次因子モデルで構成される事業に対する認知的評価測定尺 度,7項目一因子で構成される施策に対する認知的評価測定尺度,4項目一因子で構成され る政策に対する認知的評価測定尺度における,因子構造モデルの側面から見た構成概念妥 当性ならびに内的整合性の観点からみた信頼性が,性別・地域別においても統計学的に許 容範囲にあることを明らかにした.第5章では,12項目3因子二次因子モデルで構成され
るSWQOL測定尺度の構成概念妥当性と信頼性が,性別・地域別においても統計学的に許
容範囲にあることを明らかにした.
本章では,構成概念妥当性・信頼性の支持された4種類の尺度を用いて,次世代政策の ロジックモデルのアウトカムを初期的成果:事業に対する認知的評価,中間的成果:施策 に対する認知的評価,最終的成果:政策に対する認知的評価と区分し,さらにインパクト
としてのSWQOLに影響すると仮定した間接効果モデルのデータへの適合性と変数間の関
連性を構造方程式モデリングで検討,すなわち政策評価に関するロジックモデル評価を実 施する.また,ロジックモデルにおける変数間の関連性をより正確に把握するため,本研 究における4変数に影響すると仮定される地域,性別,最終学歴,児童の数,末子の年齢 を統制変数として投入したロジックモデルのデータへの適合性と変数間の関連性の検討も 行う.さらに,性別・地域別においても構成概念妥当性と信頼性を備えていることが明ら かとなった上記の4尺度を用いて,性別・地域別においてもロジックモデルが適切である かも検討する.
第1節 次世代育成支援対策推進政策に対する認知的評価と社会福祉QOLの関係 本節では,政策評価のプログラム評価におけるプログラム理論(Rossi et al. 2004;龍ら
2004)を基礎に,次世代政策のロジックモデルの因果関係の連鎖を検討するために,構成
概念妥当性・信頼性が統計学的に支持された4種類の尺度を市民視点における政策効果測 定指標として用いて,就学前児童の親 1,583 名のデータに対する本研究の仮説モデルの適 合性を検討した.具体的には,アウトカムを,初期的成果:事業に対する認知的評価,中 間的成果:施策に対する認知的評価,最終的成果:政策に対する認知的評価に区分し,さ らにインパクトとして社会福祉領域におけるエンドポイントであるSWQOLに影響すると いう間接効果モデルのデータに対する適合性を,構造方程式モデリングにより検討した.
その結果,上記の因果関係モデルのデータに対する適合度はCFIが0.951,RMSEAが0.
074 であり,そのモデルはデータに適合していた.また,各要素間の因果関係も統計学的 に有意な正の関連性を示した(図 31).初期的成果:事業に対する認知的評価から,中間 的成果:施策に対する認知的評価へのパス係数は0.919で有意な正の関連性を示していた.
中間的成果:施策に対する認知的評価から,最終的成果:政策に対する認知的評価へのパ
ス係数は 0.894 で有意な正の関連性を示していた.さらに,最終的成果:政策に対する認
知的評価から,インパクトとしてのSWQOLへのパス係数は0.833で有意な正の関連性を 示していた.なお,因果関係モデルにおける,施策に対する認知的評価への説明率は84.4%,
政策に対する認知的評価への説明率は80.0%,SWQOLへの説明率は69.4%であった.
事業に対する
認知的評価 .919 .894
.833
生活環境
人権の尊重 .934†
.792 .801
R2=.844
R2=.694
n=1583 χ 2=3861.689 df =395 CFI=0.951 RMSEA=0.074
(推定法:WLMSV)
yf1
施策に対する 認知的評価
政策に対する 認知的評価 社会福祉関連
QOL
yf2 yf3 yf4 yf5 yf6 yf7
.788†
.808 .744 .858 .816 .807 .827
生活の自立
yd1 yd2 yd3 yd4 yd5 yd6 yd7 yd8 yd9 yd10 yd11 yd12
yb1 yb2 yb3 yb4 yb5 yb6 yb7
yc1 yc2 yc3 yc4
.798† .789 .807 .873 .854 .781 .827
.865† .802 .454 .745
.684†
.818 .702 .625
.935 .894
.687 .652 .714 .905†
.745†
.789
R2=.800
ζ1 ζ2
ζ3
ζ4
ζ5
ζ6
※図の煩雑化を避けるため,誤差変数及び 誤差変数間の相関は省略した
図31 就学前児童の親における次世代育成支援対策推進政策に対する認知的評価
(事業・施策・政策)と社会福祉関連QOLの関係
次いで,ロジックモデルにおける変数間の関連性をより正確に把握するため,本研究に おける4変数に影響すると仮定される地域,性別,最終学歴,児童の数,末子の年齢を統 制変数として投入し,検討を加えた.なお,分析モデルにおいて,地域は「小都市」を 0 点,「中都市」を1点,「大都市」を2点と得点化し,性別は「男性」を0点,「女性」を1 点と得点化し,最終学歴,児童の数,末子の年齢は高いまたは多いほど点数が高くなるよ う得点化した.
その結果,上記の因果関係モデルのデータに対する適合度はCFIが0.954,RMSEAが0.
066 であり,統制変数を投入したモデルはデータに適合していた.また,各要素間の因果 関係も統計学的に有意な正の関連性を示した(図 32).初期的成果:事業に対する認知的 評価から,中間的成果:施策に対する認知的評価へのパス係数は 0.912 で有意な正の関連 性を示していた.中間的成果:施策に対する認知的評価から,最終的成果:政策に対する 認知的評価へのパス係数は0.879で有意な正の関連性を示していた.さらに,最終的成果:
政策に対する認知的評価から,インパクトとしてのSWQOLへのパス係数は0.861で有意 な正の関連性を示していた.なお,因果関係モデルにおける,事業に対する認知的評価へ の説明率は3.6%,施策に対する認知的評価への説明率は84.6%,政策に対する認知的評価 への説明率は80.0%,SWQOLへの説明率は75.2%であった.
事業に対する
認知的評価 .912 .879
.861
生活環境
人権の尊重 .934†
.791 .800
R2=.846
R2=.752
n=1583 χ2=4095.901 df =525 CFI=0.954 RMSEA=0.066
(推定法:WLMSV)
施策に対する 認知的評価
政策に対する 認知的評価 社会福祉関連
QOL
生活の自立
R2=.800
ζ2 ζ3
ζ4
ζ5
ζ6
ζ7
注1:図の煩雑化を避けるため,観測変数及び 誤差変数、誤差変数間の相関は省略した 注2:統制変数から4つの潜在変数へのパスは
有意なもののみ示した
図5.就学前児童の親における次世代育成支援対策推進政策に対する認知的評価
(事業・施策・政策)と社会福祉関連QOLの関係
地域 性別 最終
学歴
児童の 数
末子の 年齢
.269 -.141 -.128
-.242
-.175 .111 .043 -.067 .044 .108 .199
ζ1
R2=.036
図32 就学前児童の親における次世代育成支援対策推進政策に対する認知的評価
(事業・施策・政策)と社会福祉関連QOLの関係(統制変数)
換言するなら,次世代政策における,子どもの療育や両立支援などの事業に関する「事 業に対する認知的評価」と,施策の推進度に関する「施策に対する認知的評価」,政策の基
の自立などへの満足度に関する「SWQOL」に至るまでの因果関係の適切性と関連性の強 さが示された.この関連性の強さは,統制変数や誤差の影響を取り除いた,より正確な結 果である.統制変数からの 0.1以上のパスにおいては,大都市であるほど,事業に対する 認知的評価が低く,SWQOL は高いことが示された.また,最終学歴が高いほど,事業に 対する認知的評価及びSWQOLが高いことが示された.なお,統制変数間の関連性におい ては,地域と最終学歴や児童の数などにおける相関関係がみられた.
第2節 性別にみた因果関係モデルの検討
本研究におけるロジックモデル評価としての仮説モデルは,就学前児童の親 1,583 名の データに適合しており,また各要素間の因果関係も統計学的に有意な正の関連性を示して いた.本節ではさらに,性別で2分したデータにおいても,本研究で構築した仮説モデル がデータに適合するかを検討した.
まず,就学前児童の親1,583名のうちの女性881名(55.7%)のデータを用いて,本研究 における仮説モデルを構造方程式モデリングにより検討した.その結果,因果関係モデル のデータに対する適合度はCFIが0.948,RMSEAが0.077であり,仮説モデルはデータに 適合していた.また,各要素間の因果関係も統計学的に有意な正の関連性を示した(図33). 初期的成果:事業に対する認知的評価から,中間的成果:施策に対する認知的評価へのパ
ス係数は 0.923 で有意な正の関連性を示していた.中間的成果:施策に対する認知的評価
から,最終的成果:政策に対する認知的評価へのパス係数は0.899 で有意な正の関連性を 示していた.さらに,最終的成果:政策に対する認知的評価から,インパクトとしての S WQOLへのパス係数は0.867で有意な正の関連性を示していた.なお,因果関係モデルに おける,施策に対する認知的評価への説明率は85.2%,政策に対する認知的評価への説明
率は80.8%,SWQOLへの説明率は75.1%であった.
事業に対する
認知的評価 .923 .899
.867
生活環境
人権の尊重 .935†
.804 .791
R2=.852
R2=.751
n=881 χ 2=2437.018 df =395 CFI=0.948 RMSEA=0.077
(推定法:WLMSV)
yf1
施策に対する 認知的評価
政策に対する 認知的評価 社会福祉関連
QOL
yf2 yf3 yf4 yf5 yf6 yf7
.786†
.781 .723 .849 .823 .808 .808
生活の自立
yd1 yd2 yd3 yd4 yd5 yd6 yd7 yd8 yd9 yd10 yd11 yd12
yb1 yb2 yb3 yb4 yb5 yb6 yb7
yc1 yc2 yc3 yc4
.806† .794 .816 .895 .857 .787 .816
.867† .825 .490 .764
.687†
.819 .683 .619
.936 .893
.694 .688 .721 .887†
.733†
.772
R2=.808
ζ1 ζ2
ζ3
ζ4
ζ5
ζ6
※図の煩雑化を避けるため,誤差変数及び 誤差変数間の相関は省略した
図5.就学前児童の親における次世代育成支援対策推進政策に対する認知的評価
(事業・施策・政策)と社会福祉関連QOLの関係
図33 就学前児童の親における次世代育成支援対策推進政策に対する認知的評価
(事業・施策・政策)と社会福祉関連QOLの関係(女性:n=881)
次に,就学前児童の親1,583名のうちの男性702名(44.3%)のデータを用いて,本研究 における仮説モデルを同様に検討した.その結果,因果関係モデルのデータに対する適合
度はCFIが0.955,RMSEAが0.072であり,仮説モデルはデータに適合していた.また,
各要素間の因果関係も統計学的に有意な正の関連性を示した(図 34).初期的成果:事業 に対する認知的評価から,中間的成果:施策に対する認知的評価へのパス係数は0.916 で 有意な正の関連性を示していた.中間的成果:施策に対する認知的評価から,最終的成果:
政策に対する認知的評価へのパス係数は0.890で有意な正の関連性を示していた.さらに,
最終的成果:政策に対する認知的評価から,インパクトとしてのSWQOLへのパス係数は
0.790で有意な正の関連性を示していた.なお,因果関係モデルにおける,施策に対する認
知的評価への説明率は84.0%,政策に対する認知的評価への説明率は79.2%,SWQOLへ の説明率は62.5%であった.