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仮説モデルと調査・解析方法

ドキュメント内 社会学研究科社会福祉学専攻 髙橋 順一 (ページ 44-58)

本章では,研究方法としての本研究の仮説モデルと調査方法,解析方法を示す.第1節 では,「次世代政策に対する認知的評価(事業・施策・政策)」測定尺度を開発し,ロジッ クモデルにおけるアウトカムを「次世代政策に対する認知的評価(事業・施策・政策)」, インパクトを「SWQOL」とする因果関係の連鎖に関する仮説モデルを示す.第2節では,

調査方法として,調査対象や調査内容を記す.第3節では,統計解析の方法として,因子 構造モデルの構成概念妥当性や信頼性,因果関係モデルを検討する方法を示す.

第1節 仮説モデル

本研究は,就学前児童の親の視点によるアウトカム・インパクトを効果的・効率的に高 める政策に関する知見を得ることをねらいに,就学前児童の親における次世代政策に対す る認知的評価とSWQOLの関係を明らかにすることを目的とした.また,この研究目的を 達成するために,本研究の課題を,①「次世代政策に対する認知的評価(事業・施策・政 策)」測定尺度を開発し,②ロジックモデルにおけるアウトカムを「次世代政策に対する認 知的評価(事業・施策・政策)」,インパクトを「SWQOL」とする因果関係の連鎖に関す る仮説モデルを組み立て,実証的に検討するロジックモデル評価を行うこととした.

総合的な政策評価であるプログラム評価では,ニーズ評価に続いて,政策の過程をロジ ックモデル(W.K. Kellogg Foundation 2004)として図示し,適切な論理であるかを確認す るセオリー評価を行い,これを基礎にプロセス評価やアウトカム・インパクト評価,コス ト・パフォーマンス評価をシステマティックに行う(Rossi et al. 2004;龍ら 2004)ことを 目指している.このときのロジックモデルは,「インプット(予算・人材等)→アクティビ ティ(活動回数等)→アウトプット(利用・参加人数等)→アウトカム(ニーズ充足等)

→インパクト(社会的な影響)」という因果関係の連鎖であり,論理性の確認や指標の選定 等のために評価の根幹となるものである(Rossi et al. 2004;Hatry 2006).

この確認に関しては,構造方程式モデリングを用いてロジックモデルの適切性や要素間 の関連性を検討する評価が厳密には不可欠である(Dei et al. 2017).これは,行政指標がメ インとなるインプットやアクティビティなどとは別に,インパクトセオリーとしてのアウ トカム以降に焦点を当て,政策体系(事業→施策→政策)を反映した政策に対する認知的 評価を測定し,それらの因果関係の連鎖としてのロジックモデルの適切性を評価するもの である.つまり,ニーズ評価に基づいて作られた次世代政策が,ロジックモデルの通りに

進めることでアウトカムやインパクトといった政策効果の得られる政策であるかを確認す る評価である.次世代政策を児童の親の社会生活の観点から評価することに焦点を当てる と,高齢者福祉政策におけるDeiら(Dei et al. 2017)と同様に,政策体系(事業→施策→

政策)を反映した「政策に対する認知的評価」による,インパクトセオリーに着目したロ ジックモデルが導出される.さらに,次世代政策のインパクトの1つとして,就学前児童 の親におけるSWQOLへの因果も想定される.そのため,本研究においては,政策による 社会的影響としてのインパクトに,社会福祉領域におけるエンドポイント指標である

SWQOL を配置したロジックモデルの適切性や要素間の関連性を検討するロジックモデル

評価を行うこととした.

したがって,具体的には政策体系(事業・施策・政策)を考慮して,ロジックモデルの アウトカムを1)初期的成果:事業の目標(目的)に対する達成度の認知的評価と2)中間 的成果:施策の目標(目的)に対する達成度の認知的評価,3)最終的成果:政策の目標(目 的)に対する達成度の認知的評価に区分し,さらに3)が4)インパクトとしてのSWQOL に影響するという間接効果モデルを仮定し(図1),この仮説モデルを横断的なデータを基 礎に,そのデータへのモデルの適合性と変数間の関連性について構造方程式モデリングを 用いて検討する.つまり,次世代政策のロジックモデルにおけるアウトカムならびに政策 体系としての事業,施策,政策(狭義)を尺度化し.構造方程式モデリングを用いて,各 尺度と因果関係のモデルのデータに対する適合度ならびに要素間の関連性について量的・

実証的に検討する.本研究では,次世代政策の各要素に加えて,社会福祉領域のエンドポ イントであるSWQOLを政策による社会的影響・インパクトとして配置したモデルを,仮 説モデルとしている.

本研究における仮説モデルの検討は,政策評価,特にプログラム評価におけるセオリー 評価の量的・実証的な確認,つまり従来のセオリー評価において作成・図示されたロジッ クモデルが実際に上手く機能するかを明らかにするものである.また各尺度及び因果関係 における関連性の検討により事業等による政策の基本理念及びSWQOLに対する関連性の 強さも検討することのできる評価方法でもある.これまでの政策評価において行われてこ なかった,従来の統計解析では分析できなかった評価手法となる.またこの評価方法は,

妥当性・信頼性を備えた市民指標としての尺度を用いるため,政策における事業等の推進 度・達成度を性別・地域別に評価することも可能となる.

結果

事業に対する 認知的評価

社会福祉 関連QOL

アウトカム① アウトカム② アウトカム③

インパクト

施策に対する 認知的評価

次世代育成支援対策推進政策に対する認知的評価

政策に対する 認知的評価

初期的成果 中間的成果 最終的成果 個人差・地域差

図1 本研究における仮説モデル

第2節 調査方法

本研究では,日本の大中小3都市に設置されている保育所等(保育所・幼稚園・認定こ ども園)計23カ所を利用している就学前児童の親3,360名(大都市1,000名,中都市1,000 名,小都市1,360名)を対象に,無記名自記式の質問紙調査を留置法で実施した.これは,

保育所等を利用できた就学前児童の親に焦点を当て,自治体の規模や地域による事業等の 違いをできる限り反映できるよう,大都市(首都圏),中都市(関東以外に位置する人口 30万人以上),小都市(これらから離れた地方に位置する人口10万人未満)を選定し,大 都市と中都市における保育所等は自治体担当者を通じて選定し,小都市は全保育所等への 調査を行うこととしたものである.前記の調査票配布数に対し,回収数は 1,777名(大都 市434名,中都市444名,小都市899名)であった(回収率52.9%).調査に際しては,就 学前児童の親に対して倫理的配慮等を明記した調査票を準備し,同意の得られた就学前児 童の親からのみ調査票を回収した.調査期間は2015年10月7日~2015年12月6日の約2 ヵ月間であった.本研究は,同志社大学「人を対象とする研究」に関する倫理審査委員会 の承認を得た(番号15029).倫理的配慮としては,本研究で得られた情報を研究以外には 用いないこと,調査への参加は任意であること,データは個人が特定できないよう配慮し,

細心の注意をもって管理・破棄することなどを文書にて説明した.

調査内容は,対象者の基本属性(性別・年齢・最終学歴・就労状況・家族構成・児童の

数・末子の年齢),次世代政策に対する認知的評価(事業・施策・政策),SWQOL で構成 した.

前記調査内容のうち,次世代政策に対する認知的評価は,政策体系ごとの①事業,②施 策,③政策に対する認知的評価を,それぞれ一次元的な概念として測定する尺度を用いて 数量化した.それらの尺度は,次世代法や全国の地域行動計画及びシンプルな質問項目等 の評価指標(厚生労働省 2009;東京都福祉保健局 2010,2011,2013,2015;大分県 2010;

名古屋市 2010;奈良県 2010;京都市 2010;千代田区 2010),自治体担当者による主観的 評価(鎌田 2011),探索的因子分析等の帰納的方法に基づく事業の利用者評価ツール(小 野 2011,2012),その他ニーズ(Bradshaw 1972;三浦 1995)や認知的評価(Lazarus et al.

= 1991)に関する知見を参考に,全国の自治体で市民視点の政策評価に使用できるよう配

慮した.

前記尺度のうち,①事業に対する認知的評価測定尺度は,次世代法や全国の地域行動計 画における,基本的な7施策を構成している各事業のアウトプットが,市民のニーズの解 決に有効に機能しているかという視点からみた23の質問項目で構成した(「市民からみた 事業のニーズ充足度」を測定する7因子23項目).具体的には「子どもの療育」4項目,「健 康保護」4項目,「子どもの安全」2項目,「教育環境」4項目,「生活環境」2項目,「両立」

3項目,「対処方法」4項目を配置した(表1).回答とその数量化は「0点:全く満たして いない」「1点:少し満たしている」「2点:かなり満たしている」「3点:十分満たしてい る」とし,得点が高いほど市民のニーズが充足していることを意味するよう設定した.事 業に対する認知的評価測定尺度の因子構造モデル仮説を,図2に示す.

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