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2  示量変数,示強変数

ドキュメント内 基礎物理学講義ノート (学生用) (ページ 172-178)

過程 IV) 断熱過程なので,エントロピーは変化しない.

例題 11. 2  示量変数,示強変数

内部エネルギー,温度,エントロピーそれぞれは示量変数か,示強変 数か.

同じ温度,体積,圧力にある系Aと系Bを加え合わせたとき,どうなるかを 考えればよい.内部エネルギーは倍になるので,示量変数である.温度は変わらな

いので示強変数である.エントロピーは熱量(示量変数)を温度(示強変数)でわっ +温度は気体を構成する分 子一つ当たりの運動エネル ギーなので,系を倍にしても 変化しない.

たものなので,示量変数である.実際,式(11.25)はモル数n(つまり粒子数)に 比例している.

熱力学関数 内部エネルギーの変化と与えられた熱量,外部にした仕事 の関係はエネルギーの保存則より,

∆U =Q−P∆V (11.49)

である.エントロピーの表式(11.22)Q=T∆Sより

∆U =T∆S−P∆V (11.50)

Uの変化を見るためには,エントロピーの変化を見なければいけないとい う,実際には困難なことをこの式は主張している.そこで,

F =U−T S (11.51)

を定義する.これはヘルムホルツの自由エネルギーとよばれている.この 微小変化は

∆(T S) = (T + ∆T)(S +

∆S)−T S = T ×∆S +

∆T ×S+ ∆T∆ST ×

∆S+ ∆T×Sを用いた.

∆F = ∆(U−T S)

= ∆U∆(T S)

T∆S−P∆V −T∆S−S∆T

=−P∆V −S∆T (11.52)

となり,体積と温度の微小変化で表される.

体積でなく,圧力を変数としたものが扱いやすい場合がある.それには,

H =U+P V (11.53)

を考えればよい.Hはエンタルピーとよばれる.エンタルピーの微小変化は

∆H = ∆(U+P V)

= ∆U+ ∆(P V)

T∆S−P∆V +P∆V +V∆P

=T∆S+V∆P (11.54)

である.

同様にヘルムホルツの自由エネルギーFP V を加えたものをギブスの 自由エネルギーとよび,Gで表す.

G=F+P V =U−T S+P V (11.55)

∆G= ∆(F+P V)

−P∆V −S∆T +P∆V +V∆P

=−S∆T+V∆P (11.56)

ギブスの自由エネルギーの微小変化は温度と圧力の変化で表される.

ここで導入した4つの熱力学関数を表にまとめておく.

11.4 熱力学関数 173

記号 定義 微小変化 変数の組

U T∆S−P∆V (S, V)

F U−T S −S∆T−P∆V (T, V) G U−T S+P V −S∆T+V∆P (T, P) H U+P V T∆S+V∆P (S, P)

自由エネルギーの性質 F, Gになぜ自由エネルギーという名前がついて いるのであろうか.

まず,熱源Tに接している状態Aと状態Bを考える.このとき,クラウ ジウスの不等式の応用(11.47)から,

T(S(B)−S(A))≥Q (11.57)

が導かれる.内部エネルギーの変化はU(B)−U(A)である.エネルギーの 保存則Q=U(B)−U(A) +Wfより,

T(S(B)−S(A))≥U(B)−U(A) +Wf (11.58) となる.これより,

F(A)−F(B)≥Wf (11.59)

となる.つまり,一定温度の熱源に接しながら状態Aから状態Bに移って +ここではAは状態Aを指 定する変数の組,VA, TAの 意味とする.

仕事をしたとき,ヘルムホルツの自由エネルギーが減ったとする.その減 り分は仕事の上限値を与えているのである.すなわち,系が一定熱源に接 しているとき,仕事として自由に取り出せるエネルギーを表しているのが,

Fである.

孤立系で外部に仕事をしない場合はWf= 0となる.すると

F(A)≥F(B) (11.60)

となるので,状態Bの自由エネルギーは状態A以下である.温度Tの熱源 にずっと接していると,自由エネルギーは必ず下がり,最小値をとって安定 するのである.よって,熱平衡状態ではヘルムホルツの自由エネルギーが 最小となっているのである.

圧力一定で仕事をしている場合,

F(A)−F(B)≥Wf=P(V(B)−V(A)) (11.61) である.

F(A) +P V(A)≥F(B) +P V(B) ∴G(A)≥G(B) (11.62) となっている.よって圧力と温度が一定の環境に放置して置くと,ギブスの 自由エネルギーがどんどん小さくなり,最小値に落ち着く.

マクスウェルの関係式 表11.4のたとえば,内部エネルギーUの微小変 化を考えよう.すると,

∆U =T∆S−P∆V (11.63)

であるから,V を固定し,Sで偏微分すると,

(∂U

∂S )

V

=T (11.64)

この温度は(S, V)の関数である.温度をさらにV で偏微分すると ( 2U

∂V ∂S )

= (∂T

∂V )

S

(11.65) となる.一方,Sを固定し,UV で偏微分すると,

(∂U

∂V )

S

=−P (11.66)

である.Pも(S, V)の関数なので,これをさらにSで偏微分すると ( 2U

∂S∂V )

= (∂P

∂S )

V

(11.67) 偏微分は順序によらない.よって,

(∂T

∂V )

S

= (∂P

∂S )

V

(11.68) が導ける.

同様に∆F,∆G,∆Hから,

(∂S

∂V )

T

= (∂P

∂T )

V

(11.69) (∂S

∂P )

T

= (∂V

∂T )

P

(11.70) (∂V

∂S )

P

= (∂T

∂P )

S

(11.71) が得られる.これらはマクスウェルの関係式とよばれる.

たとえば,温度一定での内部エネルギーの体積変化,(∂U/∂V)T を求め たいとする.このとき,

(∂U

∂V )

T

=T ( ∂S

∂V )

T

−P (11.72)

となるが,

(∂S

∂V )

T

は簡単には測定できない.そこで式(11.69)を用いて,

(∂U

∂V )

T

=T (∂P

∂T )

V

−P (11.73)

とするのである.体積一定での圧力の温度依存性なら簡単に測定できる.

このようにマクスウェルの関係式は熱力学量の測定に役立つ.

11.4 熱力学関数 175 演習問題11

A 1. 温度が異なる物体の接触

熱容量Cの同じ物体を用意し,片方を温度T,もう片方を温度 T0(> T)にする.2つを接触させると温度は(T+T0)/2となる.こ のとき,接触前と後でエントロピーはどのように変化したか.

2. T-S面で描いたカルノーサイクル

(a) カルノーサイクルをP-V 面でなく,温度とエントロピーSを 使って,T-S面で表すとどのようになるか.

(b) 曲線で囲まれた面積は何を表すか.

3. マクスウェルの関係式

式(11.69), (11.70), (11.71)を導け.

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