4 重力下の複雑な運動
例題 4. 1 空気抵抗がある場合のボールの運動
4.4 振り子の運動
振り子 重力の下での複雑な運動の代表は,振り子の運動である.振り 子は,細いひも(糸)の先におもりをつけ,ひもの反対側を固定し,左右 に振らせるものである.ブランコなどはこの代表的なものである(図4.7).
もっとも最近のブランコはひもで結ばれたものは少なく,金属製の丈夫な 棒(金具)で結ばれたものである.金具は変形せず剛体とよばれ,このよう な振り子は剛体振り子とよばれる.
ラジアン 振り子の運動は平衡点(力がつり合っている点)からどれだけ の角度ずれているかで決まってくる.角度は通常“度”,◦で表すが,それよ りも角度をその角度に対応する円弧の長さで定義した方が便利である.た
4.4 振り子の運動 53 だし,ある角度に対する円弧の長さといっても,半径が違う円では長さは
異なってくる.よってある角度に対する単位円上の円弧の長さを角度の単 位として採用する.これをラジアンとよぶ.円周1周に対する角度(360◦) +ラジアンは円弧の長さを
円の半径で割ったものなので,
無次元量である.
をラジアンではかると2π, 90◦はπ/2である.通常の角度とラジアンでは かった角度では,
ラジアンではかった角度= π
180 ×通常の角度 (4.39) ラジアンではかったθが1よりもはるかに小さいと,図4.6の円弧の長さ と直角三角形の高さは近似的に等しい.よって
sinθ≒θ ,|θ| 1 (4.40) (cosθ)2= 1−(sinθ)2なので
cosθ≒√
1−θ2≒1− θ2
2 ,|θ| 1 (4.41)
が導かれる. + 2項展開より,|x| 1の
場合,(1 +x)n= 1 +nx+ n(n−1)x2
2 +· · ·≒1 +nx という近似式が成り立つ.こ の場合,nは正の整数だがこ れを実数に拡張し,近似式,
(1+x)k≒1+kx ,(ただし|x| 1かつ|kx| 1) が成立する.
図4.6 ラジアンとは単位円の円弧の長さを単位に角度を表したもの.
振り子の運動 振り子は平衡位置(重力下では最下点の位置)から,あ る角度θだけずれると,重力mgの成分,−mgsinθの復元力(元の平衡位 置にもどそうとする力,マイナス符号に注意)が働く.
復元力=−mgsinθ (4.42)
おもりの平衡位置から円弧にそってはかった距離xは,ひもの長さを` として,
x=`θ (4.43)
である.運動方程式はxについて md2x
dt2 =−mgsinθ (4.44)
θに関しては
`d2θ
dt2 =−gsinθ (4.45)
となる.
図4.7 振り子の代表的なもの
図4.8 振り子の運動の復元力
方程式の解 この方程式を解き,θとt,あるいは角速度ω (
= dθ dt
) とt の関係を求めるのは簡単ではない.いま,上の式の両辺にωを掛けてみよ う.ωに関しては
ω`dω
dt =−gsinθ× dθ
dt (4.46)
ここでω2/2を時間で微分したものが d
dt (1
2ω2 )
=ωdω
dt (4.47)
であるから,式(4.46)は
` 2
d
dtω2=−gsinθdθ
dt (4.48)
4.4 振り子の運動 55 となることがわかる.あるいは右辺を左辺に移項し,ω2=Xとおくと
`
2dX+gsinθdθ= 0 (4.49) ここで積分記号
∫
を入れると
` 2
∫
dX+g
∫
sinθdθ= 0 (4.50)
となる.よって
`
2X−gcosθ= `
2ω2−gcosθ=K(定数) (4.51) となる.(実際にこれをtで微分してみると式(4.46)となることが確かめら れる.)よって
ω=±
√
K + 2g
` cosθ (4.52)
が得られる.K0= 2K/`である.
ω=dθ/dtであるから上の式は dθ dt =±
√
K + 2g
` cosθ
∴ dθ
±√
K + 2g` cosθ
=dt
(4.53)
両辺に積分記号を入れて
∫ dθ
±√
K + 2g` cosθ
=
∫
dt+L(定数) t+L =±
∫ dθ
√
K + 2g` cosθ
∴t =±
∫ dθ
√
K + 2g` cosθ
−L
(4.54)
これが,求めようとしたθとtの関係である.しかし上の式の積分は難しく,
コンピュータを使って数値計算をするか,積分公式集を用いることになる. + たとえば岩波公式I(森 口繁一他著,岩波書店),数 学大公式集(Gradshteyn他 著,丸善)
一方,θが十分小さい「微小振動」の場合,sinθ≒θと近似でき,振り子 の振動の式(4.45)は
`d2θ
dt2 =−gθ (4.55)
となる.これは5章で述べる単振動であり,簡単に解ける.
複振り子 図4.9に示すように,「振り子に振り子をつけた」ものを複振 り子という.簡単のために,ひもの長さは同じ`,おもりの質量も同じm としよう.
図4.9 複振り子
複振り子の運動はきわめて複雑なように見えるが,おもりの角度,θ1,θ2 が小さいときには,きわめてわかりやすい2種類のパターンからなってい ることがわかる.そのパターンとは図4.10(a), (b)に示すようなもので,お もりが同時に左右に動く場合と,おもりが互い違いに左右に動く場合であ る.これを基本振動という.より詳しい基本振動の説明は次章で行うが,要 +基準振動ともよばれる.
は複雑な振動も簡単な基本振動の重ね合わせでかけるということである.
図4.10 複振り子の基本振動
4.4 振り子の運動 57
演習問題4
A
1. 斜面上の2個のブロック 図のように傾斜角θ1, θ2の斜面上に,滑 車にかけられたひもで結ばれた質量m1,m2のブロックが,滑り運 動をする.ひもの質量,ブロックと斜面との摩擦, 滑車とひもの摩 擦を無視する.ひもは伸び縮みしないとして,ブロックの加速度を 求めよ.また,加速度が0となるのはどのような場合か.
2. 放物運動の範囲 速さv0で物体を投げ出したときの運動は式(4.18) で記述される.投げ出す角度をいろいろと変えたときの物体の到達 範囲を調べよう.
(a) 式(4.18)の右辺をθの関数として微分せよ.
(b) これよりあるxに対して到達する高さが最大となるθを求めよ.
(c) 到達範囲を求めよ.
3. 斜面での飛距離 角度αで傾いた斜面において,ボールを初速v0, 水平面からの角度θで投げ出す.θ > αである.
(a) 地面とぶつかる座標を求めよ.
(b) いろいろなθで打ち出した.斜面上で一番遠いところに行くと きの角度θを求めよ.
4. 慣性抵抗 空気抵抗が速さの2乗に比例する慣性抵抗を考える.具 体的にこの値が π
4ρ空気a2v2 とする.ρ空気は空気の密度,aはひょ うの半径である.ひょうは球形とする.
(a) 落下の運動方程式をたてよ.
(b) 終端速度を求めよ.
(c) a= 1cmとして終端速度を計算せよ.
5. 抵抗中で進む距離 速さv,質量Mの物体が水中を水平方向正の方 向に進んでいる.このとき,水の抵抗は速さvに比例している.vは
時間の関数となる.運動方程式は,
M dv(t)
dt =−av , a >0 となる.
(a) t= 0で速さがv0であった.その後のv(t)を求めよ.ただし,
v0>0である.
(b) v(t)をtの関数として図示せよ.
(c) この物体は徐々に減速し,十分時間が経つと静止する.t= 0で 速さがv0だった物体が静止するまでに進む距離を求めよ.
実際にはこの粘性抵抗の他に,速さの2乗に比例する慣性抵抗も存 在するので,運動方程式は
M dv(t)
dt =−av−bv2 , a >0, b >0 となる.
(d) d dt = dx
dt d
dx =v d
dx となることを用いると,運動方程式は M dv
dx =−(a+bv) となる.これより,vとxの関係を求めよ.
(e) t = 0で速さがv0だった物体が静止するまでに進む距離を求 めよ.