第2章 評価対象プロジェクト
2. 事業の背景・目的・位置づけ 1 事業の背景
2.6 研究開発の実用化、事業化に向けたマネジメントの妥当性
3.情勢変化への対応
(1)これまでの情勢変化への対応
本プロジェクト推進に当たり、随時発生する事象について、適宜対策を講じて、目標達成を図った。
主要な対策は以下の通り。
表3.1 情勢変化への対応推移
時期 情勢の変化 対策 投入加速資金
(単位:百万円)
2008年4月
高速蒸着プロセス技術の研究開発を進 めていった結果、蒸着の高速化に際し て蒸着の異常防止、膜品質向上、材料 劣化防止には、バルブ型蒸着セルのき め細かい温度の均一制御処理が効果 的であることが判明した。
バルブ型蒸発セル技術、温度均一制 御技術など、真空関連の製造装置分 野における高度な先進的研究開発能 力を保有する長州産業(株)を再委託 先として調整を行い、新規参画する体 制強化を行った。本対策により目標を 達成した。
-
2008年7月
海外照明メーカ(No valed社)による急 速 な 研 究 進 展 に よ り 高 性 能 パ ネ ル
(Ra:90、寿命:4 万時間)が開発され
た。
加速対策として以下の上位目標を設 定して加速資金を投入した。
・2008年度の半減寿命目標を 1万時間 → 2.5万時間に引き上げ 本目標を達成した。
180
海外、国内ともに有機 EL 照明の実用 化の機運が高まり、低コスト化の重要度 が増した。
加速対策として以下の追加目標を設 定して加速資金を投入した。
・2009年度末の不均一領域を 塗布端部から各5mm以下と目標を 追加(2008 年度目標:30mm以下)
し本目標を達成した。
45
2009年4月
次世代の点光源の代表である LED に ついて4万時間寿命の製品発表があっ た
加速対策として以下の上位目標を設 定して加速資金を投入した。
2009年度の半減寿命目標を 2.5万時間→4万時間に引き上げ 本目標を達成した。
347
合計 572
4.今後の対応
本プロジェクトの成果を生かして今後の発展を促す、現在計画されている対策を参考に示す。
① 蛍光灯の2倍の発光効率の次世代照明の実用化
本プロジェクトの基盤技術開発により、有機 EL 照明の実用化の目途が立った。本基盤技術 により、蛍光灯に対して演色性、輝度半減寿命を凌ぐ有機 EL 照明の実現が可能であることか ら、装飾照明や高付加価値照明として有機 EL 照明の実用化が可能となった。しかし現在、家 庭やオフィスで使用されている蛍光灯を、一般利用者により積極的に有機 EL 照明に置き換え てもらうためには、さらなる発光効率向上及び、低コスト化の課題を今後解決する必要がある。
本有機 EL照明プロジェクトの成果を生かして、さらに発展させるためにNEDO 事業として「次 世代高効率・高品質照明の基盤技術開発」プロジェクトを2009年度より立ち上げて、発光効率 としては蛍光灯の2倍以上に当たる 130 lm/W、コストとして蛍光灯並みの 0.3 円/lm・年以下 の有機EL照明を実現する次世代有機EL照明の実現に必要な基盤技術開発をスタートした。
本基盤技術開発完了後は有機 EL 照明の蛍光灯代替が急速に加速普及することが予想され る。経済産業省戦略の2020年の蛍光灯の次世代照明による全代替の実現が期待でき、国内 の省エネルギー化、CO2削減が大幅に進展する。
② 有機EL照明の国際標準化
さらに日本の有機 EL 照明が国際的にグローバルに普及するためには、全世界共通の製品 規格が確立される必要がある。青色LEDの発明がありながら LED照明の標準化の立ち遅れ により日本企業の海外市場で苦戦している現在の状況を鑑みて、NEDO 事業として全世界共 通の規格づくりに向けた国際標準化活動に取り組む予定である。有機 EL 照明分野において は日本の技術力の優位性を損なわれない性能項目及び性能項目を計測する測光方式に力点 を置いて、有機 EL 照明技術のトップを走っている日本から標準規格を発信して、地盤固めす ることにより、日本の有機EL照明をグローバルに拡大することを目指す。
Ⅲ.研究開発成果について 1. 事業全体の成果
輝度1,000 cd/m2において、平均演色評価数Ra=95、電力効率37 lm/W、輝度半減寿命4 万時間以上を同時に実現した、演色性、電力効率、半減寿命の全てを高いレベルで同時に満た す高性能白色有機 EL 素子を実現した。各種特性は、発光面サイズ 2×2 mm2~100×100 mm2の範囲で同等であった。また、本有機EL素子の発光色の角度依存性は、Energy Starが 2008年に規定した”ENERGY STAR® Program Requirements for Solid State Lighting Luminaires, Eligibility Criteria”に記載の範囲に収まるものであり、照明用光源として優れた ものであるといえる。また学術的には、電極-有機膜界面や有機層-有機層界面などに存在する 寿命支配要因の解析を行い、長寿命化に関する指針を得た。また、スパッタプロセス、塗布プロセ スにおいて膜特性に影響を与える要因の解析を実施したとともに、極薄の有機膜の熱伝導率およ び界面熱抵抗に関する定量的な知見を得ることができた。
一方前記有機 EL 素子を作製するための製造プロセス要素技術として、塗布、蒸着、封止に関 するプロセス技術の開発を行った。塗布プロセスに関しては、極薄ホール注入層の高速均一塗布 形成プロセスの開発をCAEも活用して実施し、A4サイズのITO付ガラス基板に対して、有機EL に求められる約30 nm(膜厚分布±3%)の極薄膜を、塗布速度200 mm/sで塗布し、所定の形 状にパターニング後均一に乾燥・焼成可能な一貫プロセスを開発した。また本プロセスは実際の 白色有機ELパネルの作製にも有効であった。
蒸着プロセスに関しては、バルブ付き蒸発機構とホットウォールを融合した新規蒸着源を新たに 開発し、材料使用効率70%以上、成膜速度8 nm/s以上、膜厚分布±3%以下の優れた成膜特 性を実現した。本蒸着源は、20 nm/s程度までの成膜速度範囲で良好な成膜速度制御性を有す るとともに、0~100%の速度制御を10秒以内で行え、また複数の材料を±3%以内の膜厚分布で 均一混合可能なものであった。また連続運転への対応のため、蒸着速度を安定に長時間維持で き、かつ材料の熱劣化を抑制可能なバルブ付き蒸着機構を開発した。さらに本蒸着源を用いたイ ンラインプロセス要素技術開発を、基板高速搬送および基板冷却の観点から実施し、基板温度を 100℃以下に保持可能なインライン蒸着プロセスを実現した。
封止構造およびプロセスに関しては、過去に開発した金属箔固体封止構造の高信頼性化を実 現するための技術を開発した。防湿層の挿入により、非発光部の成長速度を 1/10 以下に抑制し、
初期輝度1,000 cd/m2における半減寿命4万時間、および10万時間を超える室温での保管寿
命を実現した。なお本封止構造を備えた有機ELパネルは、5,000 cd/m2などの高輝度でも長時 間の安定点灯が可能なものであった。
目 標 研究開発成果 達成度
①生活照明を代替する高性能照明光源の開発
(1) 高演色性マルチユニット素子構造の技術開発 (出典:基本計画p4-5)
平均演色評価数Ra: 90以上 効率: 35 lm/W以上
輝度: 1,000 cd/m2 半減寿命: 4万時間以上 (10cm角基板で)
(1)以下の特性を有する白色発光素子を実現 (出典:事業原簿公開版 pⅢ-9~Ⅲ-28)
平均演色評価数Ra:95 効率:37 lm/W
輝度:1,000 cd/m2
半減寿命: 推定4万時間以上
(1) 達成
(2)有機ELの寿命支配要因の解明 (出典:基本計画p4-5)
・有機層界面部の劣化機構、電極に隣接する 有機層自体に於ける劣化機構の分析・解析"
・有機層と無機層との界面部に於ける 劣化機構の分析・解析"
・塗布成膜される有機層の形態的・電気的特性と 膜形成プロセスとの相関解析
・当該塗布層とそれ上に形成される蒸着層との 界面の解析"
・極薄膜均一高速成膜プロセス技術の開発
(2)以下の寿命支配要因を解明
(出典:事業原簿公開版 pⅢ-28~Ⅲ-30)
・傾斜型素子構造の有効性、すなわち界面蓄 積電荷が寿命に与える悪影響を排除する方 策を提案した
・電極上に有機単分子層を設け、ドープする 方法において、寿命向上に大きく貢献する表 面処理法(材料・プロセス)を見いだした
・ホール注入層組成とホール輸送層との相互 作用の定量的評価
・膜厚100 nm以下の極薄膜の熱伝導率の定 量的評価
・無機導電膜成膜プロセス中の高エネルギー 粒子のin-situ解析
・off-axis スパッタ法のダメージ低減方法とし ての有効性確認
・有機薄膜構造の成膜プロセス依存性として、
乾燥速度と分子配向性・結晶性・移動度の関 係について解析
(2) 達成
本プロジェクトは、生活照明を代替できる高性能照明となる有機EL照明を早急に実用化し、
民生部門の省エネルギー化促進および京都議定書の目標達成への貢献に寄与することを目的と して実施した。また、現在の照明光源の世界シェアは日本が20%程度であるのに対し、欧米は 65%(欧州:50%、米国:15%)という状況であるとともに、欧米メーカー(オスラム・フィ リップス・GE)の照明光源は、日本国内でも事業展開されるようになってきている。これらの メーカーが先行して次世代照明を市場に投入した場合には、欧米メーカーに国内シェアを大幅 に奪われかねず、世界的にみると弱小な日本国内の照明企業は大半が存在すら危うくなること が危惧される。これに対抗するため、日本でもいち早く次世代照明を開発し、新たな照明市場 を切り開くことも本プロジェクトの目標であったといえる。
目 標 研究開発成果 達成度
②高演色性光源デバイスの省資源型製造プロセ ス技術の開発
(1) 大気圧下薄膜層形成技術の開発 (出典:基本計画p6-7)
膜厚: 30 nm以下 塗布速度: 200 mm/s以上 均一性: 分布±3%以下
選択塗布プロセスの開発に関し、
不均一領域: 塗布端部から5 mm以下"
(1)
・膜厚:30nm 塗布速度:200mm/s 均一性:±3 % 不均一領域:
塗布端部から5mm以下を実現
(出典:事業原簿公開版 pⅢ-30~Ⅲ-38)
(1) 達成
(2)省資源型高速蒸着プロセス技術の開発 (出典:基本計画p6-7)
材料使用効率: 70%以上 成膜速度: 8 nm/s以上
基板温度(表面温度): 100℃以下"
(2)
・材料使用効率70%、成膜速度8 nm/s・試作 デバイスの良好な発光特性を確認
・バルブ型蒸着セルの蒸着温度低減を 長州産業株式会社と実施し、
約20度の温度低減を実現
・材料の熱分解を抑制し、長期間良好な 特性の素子作製が可能であることを確認
(出典:事業原簿公開版 pⅢ-38~Ⅲ-49) (2) 達成
(3)高放熱薄型封止プロセス技術の開発 (出典:基本計画p6-7)
半減寿命: 4万時間以上 保管寿命: 5万時間以上 (10cm角発光面で)
(3)
・半減寿命推定4万時間・保管寿命10万時間
(推定)を達成
(出典:事業原簿公開版 pⅢ-41~Ⅲ54)
(3) 達成