第2章 評価対象プロジェクト
2. 事業の背景・目的・位置づけ 1 事業の背景
2.1.2 技術的背景
次世代照明のひとつとして白熱電球からLED光源への置換も先行して行われている。LEDは指向 性光源でありスポットライト、ダウンライト等には適しているが、広範囲の面発光には必ずしも適しておら ず未だ蛍光灯光源が主流の状況である。そのため、面発光、高演色性を実現しつつ、蛍光灯光源の 限界を超える高効率光源の開発が不可欠な状況であった。
その点、有機発光機構を用いた照明は、LED や蛍光灯の白色発光の拡散損失がなく、蛍光灯光 源の理論限界を超える高効率を実現できる可能性があり、さらに①面発光性、②高演色性、③折り曲 げが可能で凹凸のある壁面にも実装可能な柔軟性、④水銀を使用しないエコロジー性、⑤紙以上に 薄く製造できる超薄膜性、⑥超軽量等、優れた特性を発揮可能であることから、家庭用照明を置き換 える高効率次世代照明として期待されると同時に、これまでにない新しい分野への適用による新事業 の創出も期待できる。このように次世代照明として期待されているLEDと有機EL照明であるが、一般 的に、適した利用分野が異なるために、補完しつつ白熱電球、蛍光灯の代替は進むことが予想され
る。、図2.1.1に、LED照明と有機EL照明に適した利用分野のすみ分けを示す。
・強い指向性
シーリングライト
面光源
ペンダント
スポットライト ダウンライト
蛍光灯
白熱灯
有機EL LED
ダウンライト
点光源
HID
薄型/フラットな器具 小型/コンパクトな器具
有機EL照明
・
面発光
・拡散光源
・薄型・軽量
・大面積
・フィルム化
・効率改善要
・短寿命
LED照明
・点光源
・強い指向性
・高効率
・高輝度
・小型
・大面積化難
・低光束
図2.1.1 有機EL照明とLED照明のすみ分け
有機EL照明は新しい利用分野、事業分野を切り開く起爆剤として期待されていたものの、LEDより 5 年後発で開発されつつある技術であるため、実用化の目途がたっていない状況であった。その中で、
海外の国家プロジェクトや主要照明企業が相次いで有機 EL 照明基盤技術開発に着手しており、実 用化に向けた国際的な技術競争が加速化している状況にあった。本状況下でも、白色有機 EL 照明 を最初に実現してこれまで研究開発成果を積み上げてきた日本に、まだ技術的アドバンテージがある 状況にあり、実用化にはもう一歩踏み込んだ基板技術開発が必要な状況にあった。
2.2 事業の目的
本プロジェクトでは、生活照明代替高性能照明となる有機EL照明の早期実用化のため、高演色性 を有する高効率有機 EL 照明光源の実現に必要な生活照明を代替する高性能照明光源の開発、及 び低コスト化を実現する高演色性光源デバイスの省資源型製造プロセス技術の開発に取り組む。
2.3 事業の位置づけ
本事業は、エネルギーイノベーションプログラムの一環で、有機EL照明の生活照明での実用化の促 進を狙いとして、事業終了後、数年以内の有機EL照明の市場導入を行うための技術開発と位置づけ る。将来的には白熱電球、蛍光灯を代替する次世代照明への展開だけでなく、有機 EL照明による装 飾照明などの多目的照明に向けた新市場の創出、及び事業機会の拡大を狙いとする技術を確立す る。
次に国際競争力の観点での評価を示す。有機EL照明の実用化に向けて長寿命化、演色性、発光 効率が大きなポイントである。これらの性能はトレードオフの関係にあり、他の性能項目を犠牲にして一 部の性能向上を行うことは可能であるが、実用化のためには3つの性能項目全てをバランス良く向上さ せる必要がある。各国で研究開発が進んでいるが、本プロジェクトの基盤技術開発により、高演色性有 機ELデバイスとして寿命、演色性で世界トップの成果をあげており、今後の日本の照明事業において 優位な立場にある。図1.2.2、図1.2.3の有機EL照明の本プロジェクト成果と海外企業の実績比較を 表す技術マップにより本事業の国際的な位置づけを示す。
Ⅱ.研究開発マネジメントについて 1. 事業の目標
日本の家庭で消費されるエネルギーのうち、照明用途で約 15%を占め、世界的に見ても、約 20%
を占める現状を踏まえて現在広く使用されている白熱電球や蛍光灯などを置き換える高効率照明 光源技術の開発が、エネルギー消費量削減のための重要かつ緊急の課題である。
生活照明への適用に際しては、発光効率だけでなく高演色性照明が要求される。例えば、家庭用 途に広く消費される環形蛍光灯のうち 90%以上を高演色性の照明が占める。また、オフィスや店舗 で多用される直管形蛍光灯でも約半数が高演色性の照明である。そのため蛍光灯照明の代替を促 進する上で、高演色性が必要とされる。さらに生活用の照明として一般家庭に受け入れられるため には、高品質発光(均一発光・長寿命など)、発光体の形状(面状光源・拡散光源としての使用が可 能であることなど)、さらに低コスト(現状の照明器具に代替できる程度の低価格化)などの要求を満 たしていくことが望まれる。
本プロジェクトでは、エネルギーイノベーションプログラムの一環として、生活照明を代替できる高性 能照明となる有機 EL 照明を早急に実用化するため、2009 年度までに、高効率であるとともに低コ スト化を踏まえた有機EL照明の高演色性化技術を確立する研究開発を行う。これにより。生活照明 の高効率な代替照明の早期実用化を図り、民生部門の省エネルギー化促進に寄与することを目標 とする。
2. 事業の計画内容 2.1 研究開発の内容
有機 ELを省エネルギー化に貢献できる生活照明代替高性能照明光源として早期に実用化 するために、光源の高性能化のための「研究項目① 生活照明を代替する高性能照明光源の 開発」(略称:デバイス技術開発)と、それを具現化するために必要な「研究項目② 高演色性光 源デバイスの省資源型製造プロセス技術の開発(略称:プロセス技術開発)」の2項目の研究開発 を並行して総合的に取り組む。各2 項目の詳細研究項目は以下の通りである。
研究項目① 生活照明を代替する高性能照明光源の開発の研究開発 (1) 高演色性マルチユニット素子構造の開発
現行の蛍光灯光源を上回る高い演色性を有する、省積層型・高演色性マルチユニット構造の 有機ELデバイス技術を開発する。
(2) 有機ELの寿命支配要因の研究
目標である輝度半減寿命の目標達成のため、有機ELの寿命支配要因を研究分析する。
研究項目② 高演色性光源デバイスの省資源型製造プロセス技術の開発の研究開発 (1) 大気圧下薄膜層形成技術の開発
大気圧下での高速且つ超薄膜層を形成する製造プロセスを開発する。
(2) 省資源型高速蒸着プロセス技術の開発
材料効率を向上させ高速な蒸着プロセスを実現する技術を開発する。
(3) 高放熱薄型封止プロセス技術の開発
長寿命を実現する薄型封止プロセス技術を開発する。
本事業の目標は、高演色性・高効率白色素子および省資源型製造プロセス技術実現のための要素 技術を確立することである。各研究項目における具体的な目標を以下に列記する。
なお、[ ]内の数値は、本事業の中間目標、2008 年度末に達成することを目指す目標値である。また
※は本事業の期間中に目標値を見直したものである。
研究項目① 生活照明を代替する高性能照明光源の開発(デバイス技術開発)
(1) 高演色性マルチユニット素子構造の開発 (2) 有機ELの寿命支配要因の研究
以下の特性を有するマルチユニット素子構造を開発する。
平均演色評価数(Ra): 90以上 [90以上]
効率: 35 lm/W以上 [25 lm/W以上]
輝度: 1,000 cd/m2 [同左]
輝度半減寿命: 40,000時間以上※ [10,000時間以上]
研究項目② 高演色性光源デバイスの省資源型製造プロセス技術の開発(プロセス技術開発)
(1) 大気圧下薄膜層形成技術の開発
有機薄膜層を、大気圧下で高速・均一に塗布後、均一乾燥・焼成可能な成膜プロセス技術を 開発する。
膜厚: 30 nm 以下 [50 nm 以下]
塗布速度: 200 mm/s以上 [100 mm/s 以上]
均一性: 膜厚分布±3%以下 [±5%以下]
不均一塗布領域: 塗布端部から各5 mm 以下※
[塗布端部から各 30 mm以下]
(2) 省資源型高速蒸着プロセス技術の開発
以下に示す性能を有する蒸着源、および蒸着装置を開発する。
材料使用効率: 70%以上 [50%以上]
成膜速度: 8 nm/s以上 [5 nm/s以上]
基板温度: 表面温度100℃以下 [同左]
(3) 高放熱薄型封止プロセス技術の開発
以下に示す性能を有する封止能力を備えた封止構造を開発する。(初期輝度 1,000 cd/m2時)
半減寿命: 4万時間以上※ [8,000時間以上]
保管寿命: 50,000時間以上 [同左]