Q: 生まれた子供の抗体検査は?
5. 研究開発の推進…研究費増大
HTLV-1 総合対策の骨子
HTLV-1母子感染予防体制
厚生労働省
関係学会・団体
(産婦人科・小児科・助産師等)
都道府県・都道府県 HTLV-1 母子感染対策協議会
保健所
女性健康支援センター
市区町村
(保健センター)
産婦人科・小児科医療機関
出産後 妊娠中
授乳に関する指 導・助言、不安 や悩みのカウン セリング
HTLV-1 雑学
∗ 元々は旧世界ザルが似たようなウイルス「サルT細胞白血病ウイル ス」を持っていて、それが2~5万年前にヒトに入り込んできた。
∗ 沖縄や長崎、鹿児島、宮崎、熊本、愛媛、高知のほか、紀伊半島で 感染者が多い。
∗ そのような分布になったのは、このウイルスを持っていた縄文人が、
ウイルスを持たない弥生人に圧迫されたためだろうと考えられてい る。
歴史
HTLV-1 世界地図
∗ 1977年、高月らは日本の南西部に多発する T細胞性の白血病が新 しいタイプの病気であることを発見し、成人 T細胞白血病と命名し 報告した。
∗ 1979年、三好らが樹立した ATL 細胞株(MT-1細胞)を用い、
1981年に日沼らはその原因がC型レトロウイルスであることを確 認し、これをと命名し報告した。
∗ C型レトロウイルスと ATL との関連性は吉田らによる ATLV の分 離、遺伝子構造の決定などの研究により検証された。
∗ 一方、米国の Poiesz らは同様のC型レトロウイルスをヒトの皮膚 T細胞リンパ腫から分離していたが、このウイルスがATLVと同一 の遺伝子構造をもつことが明らかにされ、両者は同一種のヒトT細 胞白血病ウイルスとして、human T-cell Ieukemia virus type I (HTLV-1) とレトロウイルス国際委員会で命名された。
HTLV-1 の発見と命名
HTLV-1はどんなウイルス?
ウイルス学
項目項目
項目項目 特徴特徴特徴特徴
HTLV-1 レトロウイルス
病態
• ウイルス遺伝子として2コピーのRNA
• ウイルス粒子のエンベロープタンパク 質で細胞の受容体に結合
• 細胞内でRNAからDNAに変換
• 宿主細胞の染色体にプロウイルスとし て組み込まれる
一旦感染すると 排除できない
レトロウイルス、プロウイルスとは?
レトロウイルス、プロウイルスとは?
感染細胞率(ウイルスロード)とは?
∗ ヒトのTリンパ球に HTLV-1 ウイルスが感染すると、1細胞あたり1 個のプロウイルスが組み込まれる。つまりプロウイルスの数=感染 細胞数となる。
∗ 感染者の血液中の全リンパ球数とプロウイルス数を調べると、全リ ンパ球中の HTLV-1 感染細胞の含有率が求められる。
∗ 無症状の HTLV-1 感染者(キャリア)の末梢血中では、全リンパ球
のうち約 1~3 % 位が感染細胞である。
∗ この感染細胞の割合(感染細胞率あるいは「ウイルスロード」)に ついては、各 HTLV-1 関連疾患と相関あり。
∗ 普通の何の症状も無いキャリアの場合では上記のように1~3 %
∗ HTLV-1 キャリアの一部に発症するぶどう膜炎 (HTLV-1 uveitis、HU) を持つ患者は5 %前後
∗ 慢性の神経麻痺を症状とするHTLV-1 関連脊髄症( HTLV-1-associated Myelopathy, HAM)の患者の方で10 %以上
∗ 感染細胞率には個人差もあり、感染率がキャリアの範囲を超えてい ても、健康に過ごされている感染者もある程度存在する。
∗ HTLV-1 は授乳(母乳)や性交による自然感染以外に、輸血などでも感 染する。
∗ HTLV-1 はTリンパ球を主な標的とし、逆転写酵素により宿主細胞の
DNAに組み込まれたプロウイルスが宿主細胞の増殖とともに活性化 され再感染を繰り返し、HTLV-1 感染者(キャリア)となる。
∗ キャリアの血液中にはこれらの感染リンパ球が存在するが、ウイル ス粒子は殆ど認められない。これは、このウイルスが細胞に強く依 存するタイプのものであるからであり、感染の拡大には、感染細胞 と標的細胞とが直接コンタクトすることが必要となる。
∗ この点は、血清(または血漿)中に大量のウイルス粒子が認められる その他のウイルスの持続感染(例えばB型肝炎ウイルスやHIV)とは大 きく異なる。
HTLV-1感染と生体反応
∗ HTLV-1は成人T細胞白血病 (ATL) の原因ウイルスとして同定されたが、
その後、ATL 以外の複数の疾患にも関係することが明らかになった。
ATL より発症率は低いが、痙性脊髄麻痺の一病型で HTLV-1関連脊髄 症 (HAM, HTLV-1 associated myelopathy) は典型例である。
∗ その他、気管支肺症、ぶどう膜炎、多発性筋炎、シェーグレン症候群、
リウマチ様関節炎などの一部は HTLV-1 の関与が考えられている。
∗ これらの疾患に共通していることは自己免疫疾患様の病態であること である。
∗ 一般に ATL 患者は HTLV-1 に対し免疫不応状態にあるが、その他の疾
患では HTLV-1 に対して高免疫応答反応を示しており、発病の背景に
免疫機序の関与が示唆されている。
HTLV-1感染と特異的疾患
HTLV-1感染と関連する疾患
分類 分類 分類
分類 疾患疾患疾患疾患
明らかな因果関係
成人T細胞白血病(ATL)
HTLV-1関連脊髄症(HAM) HTLV-1ブドウ膜炎(HU) 感染性皮膚炎
証明不十分な関連
関節障害
シェーグレン症候群
関連の可能性
多発性筋炎 肺疾患
リンパ節炎
∗ HTLV-1 が感染した個体は一定のウインドウ期間を過ぎると HTLV-1 に対する抗体が陽性となる(ただし、母体からの移行抗体が残ってい る乳児期では未感染児でも抗体陽性となるので注意する)。
∗ キャリアの末梢血液中には HTLV-1 プロウイルス保有リンパ球も循 環しているが、感染細胞外に出てくるウイルス粒子は殆どない。
従って、HTLV-1 感染の診断には、HTLV-1 特異抗体を血清学的に同 定するか、末梢血リンパ球中の HTLV-1 プロウイルスを分離同定す ればよい。
∗ 前者の血清学的方法には粒子凝集法 (PA法)、酵素免疫測定法 (EIA 法)、蛍光抗体法 (IF法)、ウエスタンブロット法 (WB法)などがあり、
それぞれの長所と短所を生かして使い分けている。なお、EIA 法に ついては、その変法である化学発光酵素免疫測定法 (CLEIA法) が使 用されることが多い。通常は、最初に PA 法や CLEIA 法など簡便な 検査を先行させ、確認試験としてWB法などを用いる。後者のプロ ウイルスの同定には、感度良好な PCR 法がよく用いられる。
HTLV-1感染の診断
∗ HTLV-1 の自然感染の主流は授乳による母子感染である。HTLV-1 キャリアは無症候性で、治療の必要性は無いが、後年に発症する ATL やHAM、その他の関連疾患のいずれも難治性であるとされてい る。特に ATL は母子感染によってキャリアとなった人の中から発症 するので、母子感染予防対策を講ずる必要がある。
∗ 母子感染は主に母乳の長期直接授乳でおこるので、HTLV-1 キャリア の母親は母子感染予防のために直接授乳せずに人工栄養のみで育て ること(完全人工栄養)を選択することも考慮される。母乳をどうし てもあげたい場合の次善策として、短期間(満3か月まで)の授乳(短 期母乳栄養)や母乳を搾乳し凍結解凍してから飲ませる方法(凍結母 乳栄養)もあるが、どの程度予防できるか確実なデータはない。
∗ HTLV-1 感染症の対策は、治療より予防することが有効かつ重要であ
り、これらの予防対策が適切に実施されれば、ATL や他の HTLV-1 関連疾患は次世代では減少すると考えられている。
HTLV-1感染の予防
ATL
∗ 成人T細胞白血病の略で白血病の一種
∗
1980 年に ATL が HTLV-1 により引き起こされていることが判明
∗
主な症状は全身のリンパ節腫脹、肝・脾腫大、皮疹、全身倦怠感、意識 障害など多彩な症状
∗
血液中に異常なリンパ球が増加するため、免疫機能が著しく低下し重症 肺炎などの重篤な感染症となることもある
∗ 予後は極めて不良
(生存期間中央値 急性型6ヵ月、リンパ腫型10ヵ月、
慢性型10カ月、くすぶり型3年以上)
∗
発症年齢中央値 58歳(30歳未満の発症はまれ)
∗ ATL のほとんどの症例は母子感染例
Q:ATLとはどんな病気ですか?
∗ HTLV-1 感染リンパ球ではウイルス関連抗原 (env, gag, pol, P40tax, P27rex) が発現し、これらの抗原に対して、キャリアの 生体内ではT細胞性免疫応答が機能し、特異抗体とT細胞の免役応 答が絶えることなく起こっている。
∗ 一方、HTLV-1 感染Tリンパ球では p40 tax の作用により細胞遺 伝子が活性化されて増殖するが、この増殖反応を繰り返すうちにT リンパ球が、がん化して ATL になる機序が考えられている。
∗ HTLV-1 の初感染から ATL の発症までには数十年の潜伏期間が 想定されるが、上述の免疫応答が HTLV-1 感染リンパ球を排除し つづけ ATL の発症を遅らせているものと考えられる。
∗ 実際に、キャリアの体内では HTLV-1 プロウイルスを保有するT リンパ球が経時的に増減しており、特異免疫応答が機能している。
HTLV-1感染と生体反応
ATLの多段階発がんモデル
多クローン性増殖 プログレッション
無症候性キャリア 無症候性キャリア 無症候性キャリア 無症候性キャリア
ATL患者 患者 患者 患者
HTLV-1感染T細胞
(乳幼児期)
Tax不死化細胞
(多クローン性)
遺伝子異常 の蓄積
ATL細胞
Tax非依存性 Tax依存性
0 20 40 60 80 100 120 140 160
-20 21-25 26-30 31-35 36-40 41-45 46-50 51-55 56-60 61-65 66-70 71-75 76-80 81-85 86-90 91-
91-患者数 患者数 患者数 患者数
ATL 患者の年齢分布
ATLの臨床疫学的特徴
項目項目
項目項目 特徴特徴特徴特徴
男性優位 男女比 1.2 : 1 成人発症 平均発症年齢 57歳 地域集積性 西南日本
家族集積性 家族内発症
特徴的症状
白血病細胞の臓器浸潤 高カルシウム血症
日和見感染症
予後 不良
生涯発症率 感染者の数%(2-4%)
生存中央値 13か月 2年生存率 31%
ATLの臨床疫学的特徴
項目項目項目
項目 特徴特徴特徴特徴
病型
1. 急性型
2. リンパ腫型 3. 慢性型
4. くすぶり型
病態 急性転化
先進国の中で感染率が 高いのは日本のみ
HTLV-1の感染様式
項目 項目 項目
項目 特徴特徴特徴特徴
母子感染
授乳時に母乳から感染 児の約20%
輸血
日本では日赤の抗体スクリーニング の導入(1986年)で阻止された
性行為 主に男性から女性(10年で60%?)