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IV. 1.研究の背景と目的

 複数の住棟からなる団地型マンションでは、一般的に区分所有者全員で管理する部分と、

各棟の区分所有者が各棟それぞれで管理する部分が存在する。

 「建物の区分所有等に関する法律」(以下、区分所有法)第3条では、「区分所有者の団 体」を規定する中で、マンションの「全体共用」と「一部共用」の概念が示されている。

いわゆる、団地型マンションにおいては、敷地などの様に区分所有者全員で管理する部分 を「全体共用」、名住棟など各棟それぞれで管理する部分を「一部共用」と見る事ができる。

 また、建設省(現国土交通省)が策定した「中高層共同住宅標準管理規約(現マンショ ン標準管理規約)」では、1997年の改正時に、団地型マンションの修繕に対する積立金と して「団地修繕積立金」と「各棟修繕積立金」を規定し、各棟修繕積立金は棟ごとにそれ ぞれ区分して経理するものとした。

 これらは団地型マンションにおける棟別管理や棟別会計を示す内容であるが、棟別管理 や棟別会計の重要性が社会的に注目されたのは、1995年1.月に発生した兵庫県南部地震の 際である。団地型マンションにおいて一部の棟だけが大きな被害にあった場合、その復旧 に関する問題が噴出した。当時も「全体共用」と「一部共用」の概念はあったものの、多 くの団地型マンションでその概念規定が十分にされておらず、団地全体を運命共同体とし て一括管理していたところが少なくない。これらの団地にあっては、一部の棟だけの修繕、

または建替えに対する費用負担や合意形成手続きなどに関して大きな問題が生じた。なお、

2002年の区分所有法改正では、これらの諸問題を踏まえ、団地全体の建て替えと、1棟ま たは数棟の建て替えが規定されている。

 以上の社会的背景の下、現在では多くの団地型マンションで「全体共用」「一部共用(棟 別共用)」の概念が導入されているが、修繕積立金における棟別会計制度を十分に整備して いる管理組合は多くない。また、これまで修繕積立金を団地全体で一括会計してきた管理 組合が棟別会計に移行しようとした際に、区分所有者総会において否決された例もある。

 これらの原因の一つには、居住者レベルにおける棟別会計に対する認識の低さが挙げら れる。棟別会計が求められる理由としては、建て替え時の問題とは別に、建物の維持・保 全における修繕費などの棟別格差の問題がある。しかし、これまで一括会計で円滑に管理 されてきた管理組合にあっては、実態として棟別格差の問題に直面する機会が少ない。特 に、同形状の住棟が建ち並ぶ団地の場合、一般居住者が修繕費の棟別格差を認識する機会 は少なく、棟別会計に移行する必要性の認識が低くなる。

 団地型マンションにおける修繕費の棟別格差は、今後の建て替えを見据えた上でも大き 一64一

第IV章 団地型マンションにおける修繕費の棟別格差に関する研究

な問題になることが予測される。また、修繕費の棟別格差の問題は、積立金として脈々と 過去から将来に受け継がれ、経年にしたがい大きな歪として顕在化する恐れがある。さら に、問題が大きく顕在化した場合には、管理組合運営の面で、大規模修繕工事をはじめと した保全工事を円滑に行なえなくなる事態も想定される。

 そこで本研究主題では、団地型マンションで生じている修繕費の棟別格差の実態とその 要因を明らかにし、棟別会計の必要性を検証することで、大規模修繕工事の円滑な実施の 一助となることを目的とする。

第rv章 団地型マンションにおける修繕費の棟別格差に関する研究

rv.2.研究の概要と特徴

(1)研究項目

     一般的にマンションの修繕費は、修繕積立金会計で処理されており、団地型マンション     における各棟の修繕費の棟別格差に対しては、修繕積立金会計を棟毎に区分し、棟毎の積     立金額を設定することで対応できる。しかし、全棟一括の会計処理や、全棟同一の基準で     修繕積立金を算出している団地は少なくない。

     そこで、本章では、団地型マンションにおける修繕積立金会計の会計処理の構成と、積     立金額の算出方法を整理した上で、修繕費の棟別格差の実態を明らかにすることとし、以     下の3項目を整理・分析する。

1)修繕積立金会計の会計区分と修繕積立金の構成

2)形が類似した住棟で構成される団地型マンションの修繕費 3)形が異なる住棟で構成される団地型マンションの修繕費

 なお、本章における研究の目的は、団地型マンションにおける修繕費の棟別格差の実態 を把握し、問題点を整理した上で、修繕積立金の棟別会計の必要性を検証することにある。

したがって、2)では棟別格差が生じにくいと考えられる「形が類似した住棟で構成される 団地型マンション」を分析し、3)では2)との対比の上から、「形が異なる住棟で構成される 団地型マンション」を分析することで、団地型マンションに起こり得る棟別格差の問題点 を可能な限り抽出する。

(2) 研究の対象

     マンションでは様々な修繕工事が実施されているが、多額の修繕費を要する工事として     は、一般的に大規模修繕工事が最も高額になる。そこで、ここでは大規模修繕工事におけ     る工事費を分析することで、団地型マンションにおける修繕費の棟別格差の実態を明らか     にする。

     大規模修繕工事における工事費の棟別格差の要因は、各棟の形状の違いに伴う格差、各     棟の劣化程度に伴う格差、さらには各棟の居住者の要望に伴う格差が想定される。この内、

    各棟の劣化程度に伴う格差は、主に躯体改修工事の工事費が分析対象となるが、これらを     検証する上では、第H章、第皿章でも述べたとおり大規模修繕工事における躯体改修工事     にっいて、実数精算契約を用いて工事を実施した事例を分析することが有効である。

     そこで、本章においても設計事務所の仕様設計・工事監理の下で、躯体改修工事に実数     精算契約を用いて大規模修繕工事を実施した事例として、S設計事務所に蓄積された大規     模修繕工事の工事竣工データを分析対象とした。

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第W章 団地型マンションにおける修繕費の棟別格差に関する研究