第1節 サンプルの属性
調査の結果、311 の有効回答を得られた。サンプルの属性を表 5 に示した。男性と女性の割合に大 きな差は無く、サンプルの平均年齢は 32.6 歳であった。自由裁量所得に関しては、1 ヶ月の平均自由 裁量所得は\50,951 であった。バスケットボール競技歴がないと答えた観戦者は 45.3%であり、競技 歴のある観戦者(54.7%)と大きな差は見られなかった。バスケットボール競技歴に関しては、競技 歴のない観戦者が 45.3%、競技歴のある観戦者が 54.7%であり、全体の平均競技年数は 4.8 年、競技 歴のある観戦者間のみでは平均競技年数は 8.8 年であった。
試合会場でのバスケットボール観戦歴は、B リーグ開幕以前からの観戦者が 45.1%、B リーグ開幕 以降からの観戦者が(初観戦者も含め)54.9%であった。昨シーズンのホームゲームの観戦者は 65%
であり、観戦回数は 1~5 回が 31.8%で最も多く、次いで 6~10 回が 16.4%であった。「NBA」観戦を する観戦者は 43.9%であり、「3X3」観戦をする観戦者の 26.4%を上回った。
B リーグ会員の登録状況は全体の 60.7%であり、ファンクラブ会員の登録状況の 44.1%より高く、
B リーグアプリの利用状況に関しては、「B.スマチケ」の利用状況が全体の 40.0%と「B.応援」アプ リの 17.9%を上回った。チームの公式 SNS のフォロー状況に関しては、対象とした 3 つの SNS
(Instagram, Twitter, Facebook)のうち、Twitter をフォローしている観戦者が 38.9%と最も多く、
次いで Instagram の 28.4%、Facebook は 24.6%であった(表 6)。
31
n %
<性別>
男性 156 54.5
女性 130 45.5
合計 286 100.0
<年齢>
20歳未満 22 8.8
20代 92 36.8
30代 65 26.0
40代 48 19.2
50代 21 8.4
60歳以上 2 0.8
合計 250 100.0
平均:32.6歳
<自由裁量所得>
~\9,999 15 7.3
\10,000~19,999 16 7.8
\20,000~29,999 24 11.7
\30,000~39,999 41 20.0
\40,000~49,999 8 3.9
\50,000~59,999 56 27.3
\60,000~69,999 6 2.9
\70,000~79,999 2 1.0
\80,000~89,999 2 1.0
\90,000~99,999 0 0
\100,000~ 35 17.1
合計 205 100.0
平均:\50,951
<ファンであるかどうか>
はい 206 74.6
いいえ その他のクラブのファン 19 6.9
応援しているクラブは特にない 51 18.5
合計 276 100.0
<バスケットボール競技歴>
なし 129 45.3
1~5年 54 18.9
6~10年 54 18.9
11~15年 28 9.8
16~20年 12 4.2
20年以上 8 2.8
合計 285 100.0
平均:4.8年
次ページへ続く 表5 Bリーグ観戦者の属性
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前ページから続く
n %
<試合会場でのバスケットボール観戦歴>
今日から(初観戦) 29 10.2
2017年から 33 11.6
2016年から 94 33.1
2015年以前から 128 45.1
合計 284 100.0
<昨シーズンのホームゲーム観戦回数>
なし 100 35.0
1~5回 91 31.8
6~10回 47 16.4
11~15回 16 5.6
16~20回 16 5.6
21~25回 2 0.7
26~30回 8 2.8
31回以上 6 2.1
合計 286 100.0
平均:5.9回
<「NBA」を観戦するか>
はい 125 43.9
いいえ 160 56.1
合計 285 100.0
<「3X3」を観戦するか>
はい 75 26.4
いいえ 209 73.6
合計 284 100.0
<バスケットボール以外のスポーツを観戦するか>
はい 199 69.6
いいえ 87 30.4
合計 286 100.0
(注)バスケットボール以外のスポーツ観戦については、多かったものから順に、サッカー(n=103)、
野球(n=101)、バレーボール(n=27)、テニス(n=13)、フットサル(n=8)、アメフト(n=8)、
陸上(n=7)、フィギュアスケート(n=6)、プロレス(n=4)、相撲(n=4)、水泳(n=3)、ゴルフ(n=3)、
スノーボード(n=3)、バドミントン(n=2)、体操(n=2)、自転車(n=2)、卓球(n=2)、シンクロ
(n=1)、F1(n=1)、水球(n=1)、格闘技(n=1)、剣道(n=1)、車椅子バスケ(n=1)であった。
33
n %
<Bリーグ会員登録状況>
はい 173 60.7
いいえ 112 39.3
合計 285 100.0
<ファンクラブ会員登録状況>
はい 126 44.1
いいえ 160 55.9
合計 286 100.0
<「B.スマチケ」アプリ利用状況>
はい 114 40.0
いいえ 171 60.0
合計 285 100.0
<「B.応援」アプリ利用状況>
はい 51 17.9
いいえ 234 82.1
合計 285 100.0
<Instagram>
はい 81 28.4
いいえ 204 71.6
合計 285 100.0
<Twitter>
はい 111 38.9
いいえ 174 61.1
合計 285 100.0
<Facebook>
はい 70 24.6
いいえ 215 75.4
合計 285 100.0
表6 Bリーグに関する各種サービス登録・利用状況
第2節 モデルの妥当性と信頼性の検証
モデルの妥当性を検証するために、確認的因子分析を行った。調査において回収された質問紙の中 から、バスケットボールの試合が初観戦であった標本、初観戦であった可能性のある標本および、EVSSC に関する項目に欠損値がある標本を除外して、有効回答数 253 を用いた。確認的因子分析の結果は表 7 に示している。
34
α AVE 演出
全体の演出方法はおしゃれである アリーナ全体は見た目がかっこいい 全体の演出が好きである
エンタテイメント性が高い 熱狂的で心うたれる
会場全体のオペレーション・運営が優れている 選手
選手の美しいプレーや個人技にほれぼれする 選手の素晴らしいパフォーマンスを観るのが好きだ
スキルの高いフォーメーション・組織プレーを観るのが好きだ 雰囲気
アリーナ全体の雰囲気・空気が好きである 観客全員でつくりあげる雰囲気・空気が好きである
試合の流れによって変化するアリーナ全体の雰囲気・空気が好きである (チーム名)が優れているのは会場全体の雰囲気である
逃避
日常から遠ざかって、非日常な気分を味わうことができる まるで別世界にいるような気にさせてくれる
いつも(試合に)没頭してしまい、他の一切のことを忘れることができる 内なる楽しみ
純粋にバスケットボールを観戦するのが好きだ 試合を観戦するのは、純粋に楽しいからである 覚醒
アリーナに来ると、わくわくする 試合を観戦すると、気持ちが高揚する 共感
選手が頑張っている気持ちがわかる瞬間、選手と一体感を感じることがある 試合中の選手のミスが、自分のミスであるかのように感じられることがある
チームや選手のプレーに私は強く心を動かされたり、深く入り込んでしまうことがある 効率性
試合がある日だったら、(チーム名)を見に行こうと思う ホームゲームは気軽に訪れることができる
ホームゲームは私の都合に合わせやすい 経済的価値
ホームゲームはお得感がある
私は全体的にチケットの値段に満足している (アリーナ名)で行われる試合は割安であると思う Note: χ2 =1010.90; df=365; GFI=.78; TLI=.85; CFI=.86; RMSEA=.084
因子と項目 因子負荷量
表7 確認的因子分析
.95 審美性
.83 .65 .89 .82 .71 .64 .67
フロー
.84 .84 .75 .83 .93 .86
投資効果
.65 .94 .80
.58
.80 .59
.89 .69
.71 .85 .88
.89
.78 .78 .54 .80 .65 .88 .87 .80 .77
.84 .66
.87 .78
.81
.82
.85 .67
.51
.65
.67 .72
まず、因子負荷量の検討であるが、すべての測定項目において Hair et al(2006)の推奨する基準
(.50)を十分に上回る結果となった。しかし、上位構成概念である「審美性」から「選手」に対する 因子負荷量(.44)のみが基準を下回った。潜在変数の適合度だけに注目して、観測変数を減らすと、
内容的妥当性に問題が生じることが多いこと(南風原, 2002)、「選手」の因子が含む 3 つすべての測 定項目の因子負荷量が Hair et al(2006)の基準(.50)を十分上回っていたことから、構成概念の
35
関係性を考慮し、基準値に満たない項目であっても構成概念上、「選手」の因子が必要な項目と判断し、
以後の分析にも用いることとした。
最終の結果、測定項目の因子負荷量は.54~.95 であり、モデルの適合性はχ2 = 1010.90; df = 365;
GFI= .78; TLI= .85; CFI= .86; RMSEA= .084 となった。.90 以上を許容範囲(acceptable fit)とし た Hair et al.(2014)の指摘からは、当てはまりがいいとはいえない結果となった。また RMSEA(.084)
においても、サンプル数が 250 以上の場合、.07 以下が許容範囲であるとした Hair et al.(2014)の 指摘を満たすことは出来なかった。
次に、各変数の AVE(average variance extracted)を算出し、.50 以上を基準に収束的妥当性の検 討を行った結果、すべての変数において基準を上回る結果となった。従って、構成概念の収束的妥当 性が確認された。また、弁別的妥当性を検証するために、因子間相関の二乗と AVE を比較した(表を 参照)。「演出」と「雰囲気」の相関の二乗(.62)以外のすべてが AVE より小さい数字であった。「演 出」と「雰囲気」は共に試合会場の全体の印象を測っているとも捉えられ、ゲームの雰囲気と試合中 の高揚感はどちらも感情的な反応であり、差別化が難しく相関が高いことが考えられる(齋藤ら, 2010)。それ以外の因子がすべて弁別的妥当性を確認されたため、このまま分析を進めると判断した。
さらに、信頼性を確認するために、Cronbach α係数を算出した結果、.72~.89 であった。すべて の変数において、Hair et al.(2014)の指摘している許容範囲(.70 以上)を上回る結果となったこ とから、信頼性を有していることが示された。
以上より、本研究で用いるモデルの信頼性と妥当性の検証の結果、妥当性においては検討の余地が あるとなったものの、信頼性を確認することが出来た。
36
また、因子間の相関、平均値と標準偏差は表 8 に示すとおりである。平均値は 4.73 から 6.41 であ り、標準偏差は.68 から 1.46 であった。そのうち、「選手」、「内なる楽しみ」と「覚醒」が高い値 を示している一方で、得点の下位 3 つの因子は「経済的価値」、「共感」、「効率性」となった。そ のうち、「経済的価値」のみ、平均値が 5 点以下となっている。
また、モデルの構成概念の相関であるが、「審美性 – フロー」が.75、「フロー – 投資効果」が.63、
「投資効果 – 審美性」が.73 という結果だった。
演出 選手 雰囲気 逃避 内なる
楽しみ 覚醒 共感 効率性 経済的
価値 M SD
演出 1.00 5.23 1.06
選手 .31 1.00 6.41 0.68
雰囲気 .79 .35 1.00 5.64 1.10
逃避 .57 .41 .62 1.00 5.21 1.26
内なる楽しみ .25 .51 .33 .31 1.00 6.40 0.88
覚醒 .34 .52 .51 .59 .56 1.00 6.21 0.87
共感 .41 .39 .46 .56 .31 .48 1.00 5.05 1.20 効率性 .41 .32 .49 .40 .23 .33 .39 1.00 5.07 1.46 経済的価値 .52 .32 .55 .43 .19 .29 .38 .58 1.00 4.73 1.37
表8 因子相関と平均値
第3節 新規ファンと既存ファンによる経験価値の比較
本研究では、「新規ファン」を B リーグ開幕年である 2016 年以降にバスケットボールの試合を会場 で直接観戦するようになった観戦者とし、「既存ファン」を 2015 年以前からバスケットボールを会場 で直接観戦し、現在も直接観戦をする観戦者と定義している。新規ファンと既存ファンの経験価値の 差を明らかにするために、t 検定を用いて新規ファンと既存ファンの経験価値を比較した(表 9)。
その結果、9 因子の中で「内なる楽しみ」の 1 因子に限り有意差が見られた。「内なる楽しみ」は、
37
純粋にバスケットボール観戦が好きかもしくは楽しいかを問う質問項目で構成されており、既存ファ ンの方が観戦歴が長い分、バスケットボール観戦そのものが好きという観戦者が多いと考えられる。
また、9 因子の中でも「覚醒」と並び、最も高い平均値(6.53)を示している。その他 8 因子に関し ては、新規ファンと既存ファンの間に有意な差は見られなかった。上位構成概念の「フロー」を構成 する「逃避」、「内なる楽しみ」、「覚醒」、「共感」において、「逃避」だけは新規ファンと既存ファンの 間で、同じ平均値を示したが、その他の 3 因子は全て既存ファンの方が高い値を示した。一方「投資 効果」においては、構成する 2 因子「効率性」と「経済的価値」両方において、新規ファンの方が高 い値を示した。
表 9 新規ファンと既存ファンによる比較
因子名 新規ファン(n=126) 既存ファン(n=127)
平均値 標準偏差 平均値 標準偏差 t
演出 5.28 1.10 5.21 1.03 0.50 選手 6.35 0.68 6.45 0.69 -1.16 雰囲気 5.76 1.04 5.55 1.14 1.56 逃避 5.21 1.29 5.21 1.24 0.02 内なる楽しみ 6.26 0.96 6.53 0.79 -2.44* 覚醒 6.19 0.93 6.53 0.79 -0.38 共感 4.96 1.13 5.15 1.26 -1.24 効率性 5.21 1.41 4.97 1.48 1.34 経済的価値 4.90 1.29 4.61 1.42 1.71
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