第3章 実験方法・装置
3.1 研究・実験用試料の合成
3.1.1 Li3Nの合成
複合窒化物の原材料であり、また各3元系における相平衡を解析するため に重要な役割を占めるLi3Nは、内圧が2気圧程度(室温時)まで耐えられ
る密閉可能なステンレスチャンバー(内容積:3.8761)でリチウム棒を313K ないし333Kに昇温して合成した(合成Exp.No. 1‑4)。なおリチウム棒は、アルゴンを満たしたグローブボックス内で表面酸化層を削り取りニッケル柑
場内に入れた。反応はチャンバー内に高純度窒素ガス(純度: 99.9999%以上)を約1.7気圧程度の加圧状態になるまで導入し、リチウムの窒化によりチャ ンバー内が常圧より低い減圧状態になると、再び初期加圧状態と同じ圧力に なるように窒素ガスを供給した。このLi3Nの合成で用いた物質、及び以降 の合成・実験で用いる物質の詳細(形態、純度、購入先、大きさ他)をTable
3‑1にまとめて示す。またこのときの合成で用いたガス経路図をFig. 3‑1に示 す。ここで、このFig. 3‑1に示す電気炉は約1400Kまで昇温が可能である。このようにして得られたLi3Nは、アルゴン封入のグローブボックス内で電
動粉砕機(Janke&Kunkel IKA‑WERE Analysenmuhle A 10)及びメノウ乳鉢を用
いて粉末にしたあと、ガラスプレートにのせてカブトンフイルムを用いて大
気と遮断し、粉末 X線回折、 Ⅹm (理学社製 mT 2000 X‑RAY DIFFRACTOMETER) 、により相の同定を行った.3.1.2 Mg3N2の合成
前章の2.5で述べたTa粉末の同時脱酸・窒化では、この研究のポイントが
Mg,N2の合成と粉末化、さらにはTa粉末との微細均一混合にあるというこ
とに留意して、 Mg,N2の合成を行った. Mg,N2は,原材料のMgパウダー(Table 3‑1参照)をFe相場に入れてチャンバー(Fig.3‑1参照)内に入れ、約950Kに昇温して合成した(合成Exp. No. 5)。また窒素ガスの封入は、前節3.1.1 のLi,Nの場合と同様le)要領で行った。このようにして得られたMg3N2は、Li3N
の場合と同様に皿による相の同定を行い、合成の確認を行ったこ
3.1.3 Li‑Mg‑N 3元系試料の合成
本研究では前章2.3でも述べたように、複合窒化物の熱力学的安定性を起 電力法により求めるが、そのためにはLiMgNの場合、固体電解質とする
LiMgNだけでなく、例えばFig. 2‑14中に示す3相平衡ポテンシャル点1''と
してLiMgN‑Li3N粉末混合試料等の2相の粉末混合試料が必要である。した
がって、これらの試料を以下の反応式により、それぞれLiMgN‑40m01%Li3N、LiMgN、 LiMgN ‑ 40m01% Mg,N2の単相及び混合相試料を合成した。
Li3N+Mg+1/3N2 ‑ LiMgN+2/3Li3N (合成Exp.No.6) (3.1) 1/3Li3N+Mg+ 1/3 N2 ‑ LiMgN (合成Exp. No. 7) (3.2)
1/3Li3N+3Mg+N2 ‑ LiMgN+2/3Mg3N2 (合成Exp.No. 8) (3.3)
具体的には、前々節3.1.1で得られたLi3Nパウダーと購入したMgパウダー (Table 3‑1参照)をメノウ乳鉢を用いて式(3.1)〜(3.3)左辺のモル比に混合し
た後、それぞれを別の鉄製相場に入れ、それらを1つの鉄製の試料輸送容器 に入れた後ステンレスチャンバー内にセットした。このとき、合成時におい てチャンバー内に微量に存在する酸素の影響を抑制するため、相場と試料輸 送容器の間には酸素ゲックーとしてCuメッシュを約5 g入れておいた。ま たチャンバー内にはLi3N合成時と同様の要領で高純度窒素ガスを供給し、
チャンバー内の温度が約880 Kになるように電気炉を昇温した。反応中は逐 一チャンバー内圧を確認し、窒化が進み内圧の変化が無くなり反応が終了し
た後は、 60ないし80 K程度更に昇温し、 1.8 ks程度保持した後反応管ごと炉冷した。それぞれの試料は回収後グローブボックス内に移し、電動粉砕機
とメノウ乳鉢を用い、更にふるい(Testingsieve,opening: 590FL)を使ってメ ッシュが28号以下の微粉にし、 Li,N、 Mg,N2同様皿により相の同定を行
った。
3.1.4 Li‑A1‑N 3元系試料の合成
Li ‑ Al ‑ N 3元系では、起電力測定において固体電解質とするLi3AIN,̲単 相粉末試料、またLi3AIN2 ‑ Li3N (Fig. 2‑6中の3相平衡ポテンシャル点1) 及びLi3AIN2‑ AIN (Fig. 2‑6中の3相平衡ポテンシャル点2)の粉末混合試料 が必要なので、以下の反応式に基づいて、それぞれLi..,AIN2 ‑ 40m01% Li3N、
Li,AlN2、 Li,AIN2 ‑ 40m01%AlNの単相及び混合相試料を合成した。
5/3Li,N+Al+1/2N2 ‑ Li,AlN2+2/3Li,N (合成Exp.No.9) (3.4) Li,N+Al+ 1/2N2 ‑ Li,AIN,̲ (合成Exp. No. 10) (3.5)
Li,N+5/3 Al+5/6N2 ‑ Li,AIN2+2/3 AIN (合成Exp.No. ll) (3.6)
原材料は3.1.1節で得られたLi3Nパウダーと購入したAlパウダー(Table3‑I 参照)であり、前節のLi‑Mg‑N 3元系と同様の手法で合成した。また、
この合成では、チャンバー内温度を約1100 Kになるように電気炉により制 御し、合成で得られた試料についてはⅩmにより相の同定を行ったC
またLi‑Al‑N 3元系については、試料合成の原材料として純Al以外に もAl‑ Li合金(Table 3‑1参照)が市販されているので、これを粉砕機によ
り粉末にした後、 Li3Nパウダーと混合して前述の純Alを用いた場合と同様
の組成を持つ試料の合成を試みた. Li,NパウダーとAl‑ Li合金パウダーの混合比は、以下の反応式に基づいて決定した。
aLi3N + b (Li‑Alalloy) + cN2 → Li3AIN2 + 2/3 Li3N
(合成Exp. No. 12) (3.7)
a'Li3N+b'0.i‑Alalloy) +C'N2 → Li3AIN2
(合成Exp, No. 13) (3.8)
a" Li3N + b" G.i‑Alalloy) + C" N2 → Li3AIN2 + 2/3 AIN
(合成Exp. No. 14) (3.9)
(a=1.383, b‑1.852, C=0.642, a'‑0.716, b'‑1.852, C'‑0.642,
.a"‑o・527, b"‑3・.086, C"40.70)
またこの時のチャンバー内温度を約960 Kになるように電気炉を制御し、合 成で得られた試料については別により相の同定を行った。
3.1.5 Li‑Ga‑N 3元系試料の合成
Li ‑ Ga‑N 3元系においても、起電力測定では固体電解質とするLi,GaN2 単相粉末試料、またLi,GaN2‑Li,N (Fig. 2‑9中の3相平衡ポテンシャル点1') 及びLi3GaN2 ‑ GaN (Fig. 2‑9中の3相平衡ポテンシャル点2')の粉末混合試 料が必要である。そこで次の反応式に基づいて、それぞれLi3GaN2 ‑ 40m01%
Li3N、 Li3GaN2、 Li3GaN2 ‑ 40m01% GaNの単相及び混合相試料を合成した。
4/3 Li3N +LiGa+ 2/3 N2 → Li3GaN2+ 2/3 Li3N
(合成Exp.No. 15) (3.10) 2/3 Li3N+LiGa+2/3 N2ーLi3GaN2
(合成Exp.No.16) (3.ll) 4/9Li3N+ 5/3 LiGa+ 10/9N2 → Li3GaN2 + 2/3 GaN
(合成Exp.No. 17) (3.12)
ここで、前節及び前々節の式(3.1)〜(3.6)同様にGa金属単体を用いるのでは なく、 LiGa (パウダー)を用いたのは、 Ga固体金属を約300Kにおいて融解 させた場合、 Gaの表面張力が比較的大きいため水銀のように振る舞い、 Li3N
パウダーと混合することが困難な点を克服するためである。したがって、本
研究では、まずLiGa及び次項の平衡実験で用いるLi2Gaを合成した。いず
れも0.2mm厚Ta箔を角形の相場に加工し、その中‑、LiGaはLiとGa(Table 3‑1参照)をモル比で1 : 1の分量に(合成Exp.No. 18)、 Li2Gaは2: 1にし たものを入れ(合成Exp. No. 19)、アルゴンガスをフローし、内圧を常に約1 atmに保持したステンレスチャンバー内にセットして合成を行った。合成
条件は、 LiGaは約890Kで2時間保持後、徐冷、 Li2Gaについては順次約800 Kで30分、約785Kで3時間、約765Kで1時間保持後、徐冷した。得られたサンプルは粉末にし年後甲D.の碑の同軍により合成の確認を行った。
またこれで得られたLiGaパウダーとLi3Nパウダーを式(3.10)〜(3.12)により 混合し、 Li ‑ Mg ‑ N 3元系と同様の手法で起電力測定用試料を合成した。
この時のチャンバー内温度を約1000 Kになるように電気炉を制御し、合成 で得られた試料については別により相の同定を行った。
3.2 平衡実験
本研究では、前章2.4で既に述べたようにLi‑M‑N 3元系においていず
れの相が互いに平衡関係にあるかを明らかにし、また各系の複合窒化物の熱 力学的安定性のおおよその見当をつけるため、 3元系状態図の未確定部分の
組成を持つ試料について重点をおいて平衡実験を行った。具体的にはFig. 3‑2に示す様に、アルゴン封入グローブボックス内で種々の組成を持つ試料(ペ レットもしくは混合パウダー)を用意し、それらを複数の鉄製チューブ内に 個別に入れステンレス製の栓で閉じ、これらを更にステンレス製の相場に入 れ平衡実験を行った。容器内には、大気が流入しないようにステンレス製の 蓋をTIG溶接によりシールし、さらにステンレス製の相場の中には、柑場内 に微量に存在する酸素による実験‑の影響を考慮して、酸素ゲッタ‑として Cuメッシュを約5g入れておいた。これを目的の温度まで昇温し、数日間保 持した後反応容器ごと水中にて急冷、試料は回収後Xmにより相の同定を
行った。
3.2.1 Li‑Mg‑N 3元系平衡実験
Li ‑ Mg ‑N 3元系においては、 Fig. 3‑3に示す①(Li,N ‑ 25.Omol% Mg)か ら⑧(Li3N ‑ 92.3m01% Mg)までの8種類の組成の試料を用いて平衡実験を行っ
た。ステンレス製相場及び内部は出来る限り均熱状態であるように電気炉内 での設置に配慮し、測温点(ステンレス製蓋中心部)が900 Kになるように 電気炉を昇温し、 9日間保持した後、急冷試料のm解析を行った。なお、
Fig. 3‑3中のA、 B、及びCは、前項3.1.3で合成した起電力測定に用いる試
料の組成を示しているb
3.2.2 Li̲Al‑N 3元系平衡実験
Li̲Al‑N 3元系においては、 Fig. 3‑4に示す①(Li,N‑25.0m01%Al)から⑧ (Li3N ‑ 92.3m01% Al)までの8種類の組成の試料を用いて平衡実験を行った〇 以降の作業はLi‑Mg‑N 3元系と同様の要領で行い測温点が900Kになる
ように電気炉を昇温し、 10日間保持した後、急冷試料のXm解析を行った。
なお、 Fig. 314中のA、 B、及びCは、前項3・1・4で合成した起電力測定に用 いる試料の組成を示している。また、この他図中のLi (1) ‑ Li3AIN2 (S)平衡及 びLiAl (SLAIN (S)平衡を表すタイラインは、 Fig, 2‑6よりその成立が自明で
あると考えられるのであらかじめこの様に示すこととした。
3.2.3 Li̲Ga‑N 3元系平衡実験
Li ‑ Ga ‑ N 3元系においては、 Fig. 3‑5に示す①(Li3N ‑ 50.0m01% LiGa)か
ら③(Li,N ‑ 85.Omol% LiGa)及び④oJi,GaN2 ‑ 50.0m01% Li2Ga)から⑥(Li,GaN, ‑
95.0m01% Li2Ga)までの6種類の組成の試料を用いて平衡実験を行った。以降
の作業はLi‑Mg‑N 3元系と同様の要領で行い測温点が700Kになるよう に電気炉を昇温し、 8日間保持した後、急冷試料のm解析を行ったC な
お、 Fig. 3‑5中のA、 B、及びCは、前項3.1.5で合成した起電力測定に用い る試料の組成を示している。また、 Li‑Al‑N系の場合と同様、 Fig.2‑9より
その成立が自明と考えられるLi2Ga (S) ‑ Li3N (S)平衡、 LiGa (S) ‑ Li3GaN2 (S)平 衡、及びLiGa(S) ‑ GaN (ら)平衡も併記した。
3.3 伝導度測定
本研究ではガルバニ・セルの起電力測定を行う前に、まず固体電解質内部 のイオンや電子の挙動を知るために固体電解質と考えられる複合窒化物の伝
導度の測定を行った7日2)〜15)20)。各試料をペレット状に整形し、出来たペレッ
トの申端をタングステンワイ刊羊連結した板状モリブデン電極で挟ん.でチャ ンバー内に設置し、外部よりスプリングを用いて両方の電極界面が密着する
ようにした。そのセルの構成をFig. 3‑6に模式的に示す。チャンバー内には 高純度窒素ガスを、デジタルマスフローコントローラー(STEC INC.社製SECU‑1)で10 cc/min.の一定流量でフローさせ(Fig. 3‑1参照)、窒素分圧を
バブラーバルブ開放により約1気圧の定常状態に保持した。伝導度測定は4
端子法により、周波数応答解析装置、 FRA (東洋テクニカ社製 ソ‑ラトロンSI1287 ELECTROCHEMICAL NTERFACE及び同 SI1260 IMPEDANCE /
GAm‑PHASE ANALYZER)、を用いて行った。また、測定結果より電気化学 インピーダンス解析ソフトウェア(ScribnerAssociates社製Z‑plot)を用い て複素平面インピーダンスプロット(Cole‑Coleプロット)を作製し、伝導
度の解析を行った。
3.3.1 Li3Nの伝導度測定
本研究では複合窒化物の伝導度を測定するに先立ち、次章の起電力測定で も用いる伝導度測定用セットアップの性能を確認する意味で、まずはじめに
良好なLiイオン伝導体であると報告されている7)28)Li,Nの伝導度測定を行っ た。 3.1.1で得られたLi,Nパウダーは底面積が約1.89 cm2 (直径1.55 cm)の円柱形の鉄製ダイスを用いて約550MPaでペレット状に整形した(ペレット
の長さ(厚さ) lLl,N‥6・4mm)。また、このペレットを焼結するとペレットの
表面に体積変化によると思われる大きなクラックが現れたので、以降の伝導 度及び起電力測定の場合ではあえて焼結は行わなかった。これは、測定まで の昇温過程において試料が焼結すると考えたためである。測定は600から
1000Kまでの100K間隔の各一定温度で行った。3.3.2 LiMgNの伝導度測定
3.1.3で得られたLiMgNパウダーはLi3N同様鉄製ダイスを用いてペレット