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I. 背景と目的

Ⅷ. 研究への提言

LFSサーベイランスの導入には、当該患者のがん発症率の高さと、これに対して早期発見・早期 治療介入により進行がんやがん死亡を減少できるという理論的仮説に基づいている。Analytic

Frameworkにおいてモデル化した ①TP53病的バリアント保持者を診断する診断基準(リスクスコ

ア)の診断精度、②TP53 病的バリアント保持者に関連する各がん種の発症リスク、③各がん種に 対する種々のサーベイランスの有効性、という複数の核となる要素から得られる総合的な効果に よって、最終的なアウトカムの改善がもたらされる。これはTP53遺伝学的検査から始まる一連の 介入であり、この効果を証明するには、究極的には一連の介入をランダムに割り付け、全体の効 果として長期予後を比較する無作為化比較試験が最も望ましい。しかし、LFSは稀な病態であり、

最終的な長期アウトカムが評価可能で十分な統計学的パワーを有する大規模な無作為化比較試験 の実施は現実的ではない。そこで次善的には核となる要素について実施する観察研究が第一の代 替案となり、これをもとに二次的な検討(モデル研究など)を加えることとなる。

英国では、遺伝性乳がんについてはBRCA1/2TP53などのハイリスク者に対するサーベイラン スを行っている 1)。標的臓器に限定し、検査方法や対象年齢を明確にすることで、不利益をでき るだけ抑えたサーベイランスを確立し、国家プログラムの導入を可能とした。そのために科学的 根拠を作るために行われたMARIBS studyではハイリスク者の乳房MRI、マンモグラフィの感度・

特異度が計測され、引き続き生存率解析2)や費用効果分析3)が行われた。こうした段階的評価を経 て、乳がんサーベイランスのNHS導入が実現している。

遺伝学的検査の急速な普及に伴い、今後 LFS と診断される者が増加する可能性が見込まれる。

がん発症リスクの極めて高い TP53 病的バリアント保持者を今後どのように管理していくかが喫 緊の課題となっている。現段階でLFSサーベイランスに関する科学的根拠はないが、システマテ ィックレビューの成果を踏まえ、我が国おける評価研究の実施を見据え、下記のプランを提言す る。

今後、我が国の診療における発端者であるLFSを有するがん患者・近親者へのLFSサーベイラ ンス導入を検討する上で、以下の評価を検討すべきである。

1) TP53遺伝学的検査の病的バリアント保持者は全例登録し、前向きに予後調査する。

2) TP53遺伝学的検査を実施する際には、結果に拘わらず全例臨床研究として前方視的に登録し、

最新のChompret基準のリスク評価を評価項目に加える。

3)不利益の大きい複合検査ではなく、疾病負担やがん検出の効率を考えて単独の検査によるサ ーベイランスを信頼性の高い方法で評価すべきである。第1段階として、LFSコア腫瘍を標的 とした全身MRIの感度・特異度を算出することが望ましい。

4)サーベイランスの不利益には、偽陽性、過剰診断、小児の鎮静による偶発症を含む有害事象、

心理的影響について調査を行う。

文献

1. National Institute for Health and Care Excellence. Familial breast cancer: classification, care, and managing breast cancer and related risks in people with a family history of breast cancer. 2013.

2. Evans DG, Kesavan N, Lim Y, Gadde S, Hurley E, Massat NJ, Maxwell AJ, Ingham S, Eeles R, Leach MO; MARIBS Group, Howell A, Duffy SW. MRI breast screening in high-risk women: cancer detection

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and survival analysis. Breast Cancer Res Treat. 2014 Jun;145(3):663-72.

3. Griebsch I, Brown J, Boggis C, Dixon A, Dixon M, Easton D, Eeles R, Evans DG, Gilbert FJ, Hawnaur J, Kessar P, Lakhani SR, Moss SM, Nerurkar A, Padhani AR, Pointon LJ, Potterton J, Thompson D, Turnbull LW, Walker LG, Warren R, Leach MO; UK Magnetic Resonance Imaging in Breast Screening (MARIBS) Study Group. Cost-effectiveness of screening with contrast enhanced magnetic resonance imaging vs X-ray mammography of women at a high familial risk of breast cancer. Br J Cancer. 2006 Oct 9;95(7):801-10.

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文献レビュー委員会委員名簿

委員長 濱島ちさと (医療技術評価、がん検診)

帝京大学 医療技術学部 看護学科 保健政策分野 教授

委員 寺澤 晃彦 (総合内科診療、臨床疫学)

藤田医科大学 医学部 救急総合内科 教授 片山 貴文 (医療技術評価)

兵庫県立大学 看護学部 統計・情報系 教授 山崎 文登 (小児科)

慶應義塾大学 医学部 小児科 助教 オブザーバー 熊本 忠史 (小児科)

国立がん研究センター 中央病院小児腫瘍科 医長

*( )内は主たる専門分野

文献レビュー委員会メンバーの利益相反

・ ガイドラインの作成に関わるその他の委員は、特定の企業からの研究費などの支援を受けて いない。

本レポート作成のための研究費

平成29-平成元(2017-2019)年度 厚生労働省科学研究費補助金(がん政策研究事業)「小児期に発症 する遺伝性腫瘍に対するがんゲノム医療体制実装のための研究」班(研究代表者 熊本忠史)に基づ く。

84 謝辞

以下の方々には、「LFSサーベイランスのためのエビデンス・レポート」作成に関わる関連業務な どを担当していただきましたことに感謝いたします。(敬称略)。

浅井 淳子 帝京大学 医療技術学部 看護学科 保健医療政策研究室 冨永 育子 帝京大学 医療技術学部 看護学科 保健医療政策研究室 樋田 記子 帝京大学 医療技術学部 看護学科 保健医療政策研究室 中川由美子 帝京大学 医療技術学部 看護学科 保健医療政策研究室 松島佳乃子 国立研究開発法人国立がん研究センター 検診研究部

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Appendix

1. 文献検索式 検索123456710

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