第 5 章 地震時荷重に対する地盤改良形状の違いによる外的安定性の検証
5.3 実験結果および考察
5.3.3 砂槽底盤傾斜に伴う擁壁変位の推移
(1)試験体〔L/H=0.7〕,〔θ=0°〕,〔θ=30°〕
各試験体の砂槽底盤傾斜角 θ1と擁壁水平変位(δt:壁天端変位,δb:底版下端変 位)の関係を図5‐6(a)~(c) に示した.砂槽底盤の傾斜は,背面地盤作製直後に開 始した.図中の▽は,地表面にすべり線が発生した時の砂槽底盤傾斜角 θ1を示す.
縦軸は,壁変位であり擁壁高さ(H=250mm)で除し無次元化した.また,図中の δbは,擁壁底版下端変位で滑動による変位であり,同様に,(δt-δb)は転倒による 変位で,擁壁底版前端側と擁壁底版後端側の相対的沈下により生じる擁壁天端の変 位である.なお,試験体〔θ=15°〕については,上段に取り付けた変位計(δt)が誤 作動を起こしていたと推察され,5.3.3項(2)にて後述する.試験体〔L/H=0.7〕
は,砂槽底盤傾斜θ1が小さい段階では変化せず,砂槽底盤傾斜θ1=10°付近からゆ るやかに増加する傾向を示した.砂槽底盤傾斜θ1=15°以降は,滑動による変位(δb) が転倒による変位(δt-δb)を上回って推移し,θ1=21.6°時において地表面にすべ り線が発生し倒壊した.試験体〔θ=0°〕は,試験体〔L/H=0.7〕同様に,砂槽底盤 傾斜θ1が小さい段階では変化せず,砂槽底盤傾斜θ1=10°以降ゆるやかに増加する 傾向を示した.転倒による変位が滑動を若干上回って推移し,砂槽底盤傾斜θ1=18°
付近から大きく変位した後,砂槽底盤傾斜θ1=19.4°時に,地表面にすべり線が発生 し倒壊した.砂槽底盤傾斜に伴う変位は,全試験体中最も大きく,また,最も早い段 階ですべり線が発生することが分かった. 試験体〔θ=30°〕は,砂槽底盤下端の砂 槽底盤傾斜角θ1が5°~20°時に受働側(-)へ変位し,砂槽底盤傾斜角θ1が20°を 越えてから主働側(+)へ変位することが分かった.砂槽底盤傾斜角θ1=20°以降,
階段状の変位が顕著となり砂槽底盤傾斜角 θ1=24.7°時においてすべり線が発生し 倒壊した.この間,転倒による変位が滑動による変位を大きく上回って推移した.
なお,砂槽底盤傾斜角θ1=5°~20°時において擁壁底版下端は受働側(-)へ変位し ており,その最大値は,約0.5mm(≒2×10-3H)となっているが,その理由は,以 下のように推察される.背面地盤作製直後(θ1=0°)において擁壁底版面下に作用 する接地圧は,擁壁底版前端側に比べて擁壁底版後端側が大きく,擁壁前端側は極 めて小さい(5.3.4 項).砂槽底盤の傾斜開始と共に,擁壁底版前端側の接地圧が増 加し,それに伴い擁壁底版前端側は徐々に沈下する.この時,擁壁底版下端の変位 δbは,受働側(-)に変位した状態となる.一方,傾斜中(θ1=0°~20°),擁壁底 版下端の滑動による変位(+)は極めて小さく,この間,沈下による受働側(-)の 変位が滑動による変位(+)を上回り,擁版下端変位は(-)の状態となる.
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-5 0 5 10 15 20 25
0 5 10 15 20 25
Horizontal displacement
Rotation angle of base δt
δb
δt- δb
θ1(deg) (×10-3H)
-5 0 5 10 15 20 25
0 5 10 15 20 25
Horizontal displacement
Rotation angle of base δt
δb
δt- δb
θ1(deg) (×10-3H)
δt
δb
-5 0 5 10 15 20 25
0 5 10 15 20 25
Horizontal displacement
Rotation angle of base δt
δb
δt- δb
θ1(deg) (×10-3H)
(a) 〔L/H=0.7〕
(b) 〔θ=0º〕
図5‐6 擁壁変位(δt,δb)の推移 (c) 〔θ=30º〕
砂槽底盤傾斜角
擁壁変位
砂槽底盤傾斜角
擁壁変位
砂槽底盤傾斜角
擁壁変位
すべり線発生角度 θ1=21.6°
すべり線発生角度 θ1=19.4°
すべり線発生角度 θ1=24.7°
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(2)試験体〔θ=15°〕
試験体〔θ=15°〕については,擁壁上段の変位計(δ1)が誤作動を起こしていたと推 察され,図5‐6には明示していない.ただし,試験体〔θ=15°〕の砂槽底盤傾斜に伴 う変位性状を把握するため,他の地盤改良試験体(〔θ=0°〕,〔θ=30°〕)と共に,砂槽 底盤傾斜角θ1と変位(δ1、δ2)の関係を図5‐7~図5‐9に示す.
以下に,試験体〔θ=15°〕の変位計の推移と砂槽底盤傾斜に伴う変位性状について 考察を行う.
図5‐8より試験体〔θ=15°〕の擁壁上段の変位(δ1)は,砂槽底盤傾斜角θ1≒17°
~18°において一定であり,この間,図5‐13(b)より擁壁底版前端側の接地圧は増 加していることから擁壁上段の変位計は誤作動をおこしていると推察される.また,
θ1=0°~15°の変位量の差分(δ1-δ2)は,試験体〔θ=15°〕が3試験中最も小さい値 を示している.この間の擁壁底版前端側の接地圧増分量(図5‐13)は,試験体〔θ=
30°〕>試験体〔θ=15°〕>試験体〔θ=0°〕であり,増分量から判断すると,試験体
〔θ=15°〕の差分(δ1-δ2)は,試験体〔θ=0°〕とほぼ同じか若干大きな値になると 推察される.このことから試験体〔θ=15°〕の擁壁上段の変位計は,実験当初から不 具合があったと推察される.
試験体〔θ=15°〕のδ2(壁高中央変位:図5‐8)は,試験体〔θ=0°〕のδb(擁壁 底版下端変位:図5‐6 (b))を下回って推移しており,これより,滑動量は,試験体
〔θ=15°〕の方が試験体〔θ=0°〕より小さいと考えられる.また,砂槽底盤傾斜角θ1
=0°~15°の擁壁底版前端の接地圧増加量は試験体〔θ=15°〕が,試験体〔θ=0°〕を 若干上回っており,試験体〔θ=15°〕の転倒による変位量(δt-δb)は,〔θ=0°〕とほ ぼ同じか若干大きな値になると推察される.以上より,試験体〔θ=15°〕は,試験体
〔θ=0°〕と同様に転倒による変位が滑動による変位を上回り,その変位量は,試験体
〔θ=15°〕の方が試験体〔θ=0°〕より大きいと推察される.
以上,各試験体のすべり線発生時までの変位は,試験体〔L/H=0.7〕が滑動による 変位が転倒による変位より大きいのに対し,地盤改良試験体は,転倒による変位の方 が滑動による変位より大きいことが分かった.また,試験体〔L/H=0.7〕は,すべり 線発生時において地盤改良試験体より滑動が大きく,転倒による変位が小さくなる傾 向を示した.
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0 5 10 15 20 25
0 5 10 15 20 25
Horizontal displacement
Rotation angle of base δ1
δ2
θ1(deg) (×10-3H)
δ1
δ2
図5‐7 擁壁変位(δ1,δ2)の推移・〔θ=0°〕
-5 0 5 10 15 20 25
0 5 10 15 20 25
Horizontal displacement
Rotation angle of base δ1
δ2
θ1(deg) (×10-3H)
-5 0 5 10 15 20 25
0 5 10 15 20 25
Horizontal displacement
Rotation angle of base δ1
δ2
θ1(deg) (×10-3H)
図5‐8 擁壁変位(δ1,δ2)の推移・〔θ=15°〕
砂槽底盤傾斜角 砂槽底盤傾斜角 砂槽底盤傾斜角
擁壁変位擁壁変位
図5‐9 擁壁変位(δ1,δ2)の推移・〔θ=30°〕
θ1=17°
θ1=18°
擁壁変位
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