第3章 配置転換・在籍出向事案
第3節 紛争の分類
2 直用非正規の紛争
直用非正規においても配置転換をめぐる個別労使紛争が発生している。事案の傾向として は正社員と同様な点もあるが、後に記すように配置転換に伴う正社員化要求といった直用非 正規特有の個別労使紛争がある。
(1) 解雇
配置転換を拒否したところ解雇されたという事案が3件ある。「合意成立」は1件のみであ るが、この事案はもともと解雇の撤回と現職継続を求めており、金銭解決は求めていない。
だが、結果として金銭解決に至っており、労働者の苦渋の選択がうかがい知れる。他の2件 は金銭解決を求めていたが、「打ち切り」「不参加」となっている。
30214(非女):朝、店長から電話があり辞令により異動するように言われた。昼前に返事
を聞くということで考える時間もなかった上、面接の際に異動できない旨を何度も言って いた場所への異動であり、受け入れなかったら辞めてもらうと言われた。辞めるつもりは なかったが、辞めざるを得なくなり、このことによる経済的・精神的損害に対する補償金 として 10万円の支払いを求める(打ち切り)。
30234(非男):配置転換命令があり、勤務時間帯が合わないため拒否したところ、異動で きない場合は辞めてもらうしかないと強要された。不本意ながら退職したが、会社のやり 方に到底納得できないでいる。失職による経済的損失の補償として合計月給の 1.6倍を求 める(不参加)。
30613(非男):非常勤職員として障害者施設勤務をしていたが、施設長から介護施設への
異動拒否を理由として解雇通知を受けた。解雇の撤回と現職継続を求めたい。もし撤回が 認められなければ異動を考慮してもよい(16万円で合意)。
(2) 自主退職
配置転換に伴い退職せざるをえなかったという事案は 2 件ある。2 件とも金銭解決を求め る事案であるが、うち1件が「合意成立」に至っている。もう1件は「不参加」である。
10035(非女):突然配置転換を命じられたが、不当な配置転換により退職せざるを得なか
った。経済的精神的損害に対する補償金として50万円の支払いを求める(10万円で合意)。
30386(非女):これまで複数の店舗を異動してきたが、再度異動を命じられた。しかし、
パートの身分であり、家族や本人の体調の都合がつかず退職せざるを得なかった。そのた め、今後の生活保障として3か月分の給料相当額の支払いを求める(不参加)。
(3) 撤回要求
配置転換の撤回を求める事案も存在する。この事案は金銭解決を求めてはいなかったが、
結果として金銭解決に至っている。
30215(非女):正社員として勤務した後、パートで販売勤務した。重篤な服務規律違反を
理由として解雇を通告された。労働局の助言により解雇は撤回されたが、納得できない配 置転換を要求された。今まで通り、同じ条件で復職したい(20万円で合意)。
(4) 賃金減少分の補償
配置転換に伴い賃金が減少したことによってあっせん申請したケースは1件のみで、「不参 加」である。このケースはいじめ・嫌がらせとも関連するケースである。
40025(非女):清掃部門のパート社員として勤務していたが、現場責任者に突然仕事を取
り上げられ、その仕事を新人に任せていた。毎回のように辞めてしまえと責め立てられ、
1 日 2 時間のみの勤務へ変更された。そのため、賃金が減少した。元の形で復職したい。
また、意図的に時間短縮された分の賃金および補償金を求めたい(不参加)。
(5) 説明要求
配置転換の理由が説明されず、その説明を求め、またいじめ・嫌がらせの解消を求める事 案が1件ある。
30147(非女):異動を通告されたが、何の説明もなく納得していないため、十分な説明を
求める。また、上司のパワハラとその他数名からの嫌がらせをやめさせ、これまで受けた 嫌がらせによる精神的損害に対する慰謝料180万円を支払うことを求める(打ち切り)。
(6) 正社員化要求
支社閉鎖による他県への異動を求められたが、直用非正規という立場での異動は受け入れ がたいことから正社員化要求を、いわば集団的あっせん申請という形で行われたケースがあ る。これは直用非正規特有の事案といえよう。
30399~30403(5 名)(非女):嘱託社員(1 年契約)として勤務していたが、支社長から
経費削減目的による現在勤務している支社が閉鎖されることと、他県への転勤を通告され た。入社時に勤務地限定と説明されたことや期間雇用という身分での転勤は受け入れがた いことから、正社員化を要請したい。やむなく退職する場合、整理解雇ということは会社 も認めているので、経済的・精神的損害に対する補償金として 12 か月分給与相当額を求 める(不参加)。
(7) その他
以上の分類に収まらない事案をその他としてまとめた。
30223(非女):配達担当として勤務していたが、収入制限があるため、1日 4 時間労働の
条件で入社したのに「長い時間働かなければ辞めてくれ」と言われた。また、退職した同 僚に対し、主任がきつい口調で言っていたので意見したところ、「辞めさせるつもりで言 った」と聞き、そのような上司のもとで働くことに嫌気がさし、退職した。退職による経 済的損失の補償として15万円の支払いを求める(不参加)。
30251(非男):役員の運転業務に従事しているが、待機する部屋が A~Dあるうち、Cの
部屋に待機している。Cの部屋にいる教官が他の社員に対して自分とは話をしてはいけな いという指示を出しているため働きにくい状況となり、精神的苦痛を感じるので、教官の いない他の部屋で待機することを求める(有給休暇を消化して退職)。
30618(非女):調理補助者としてパート勤務してきたが、部長から配転を命じられ、特別
養護老人ホームに赴任した。だが、責任者からいろいろと詰められて仕事をさせてもらえ ず、そのことを部長に訴えたところ自宅待機状態におかれた。このような状態で生活に困
るので、正常に戻し、本来受け取れる賃金と同等の 2 か月分の補償金を文書で求めたが、
回答がなかった。これまでの賃金減を補填するために 20 万円の支払いを求める(取り下 げ)。