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皮膚がんマウスモデルの作成

ドキュメント内   201702安鋼 博士論文   (11.21MB) (ページ 115-121)

第五章 皮膚がん治療の検討・・・・・・・・・・・・・・・・・・106

5.2 皮膚がんマウスモデルの作成

5.2.1 皮膚がんの研究歴史

イギリスの外科医 Percival Pott(1714‐88)は1775年に煙突掃除人に陰囊癌が多い こと、陰囊が長い間すすにさらされているためではないかと記載した9)。その後、フ ィルヒョーは、『細胞病理学』で発癌の刺激説を立てた。1858 年、Virchow は「細胞 に特定の刺激を受けると異型増殖が起り、腫瘍が発生する」という刺激説を提唱した。

日本では、1915年、市川らが兎の耳を用い、コールタールでの反覆塗布により、皮 膚がんを発生させた。その後、筒井らは同様の誘発実験をマウスの皮膚に行い、皮膚 がんを発生させた 10)。1934 年、Cook.Haslewood らは 20-メチルコラントレンが作成

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させた11)12)、本多らの研究成果によると、20-メチルコラントレンは20数種類の成分

に2番目の強力な成分である 12)。20-メチルコラントレンの構造は Fig.5-5に示した 通りである。

Fig.5-5 20-メチルコラントレンの構造式

Simpson.らの螢光顕微鏡による観察において、メチルコラントレンーベンゾール溶 液をマウスの皮膚に塗布した場合、先ず皮脂腺から侵入して分解し毛嚢および角質層 の脂肪に溶けて出て、一部のメチルコラントレンは真皮に入り内部から皮膚に影響を 与え、皮膚がんを発生させると報告している12)13)。1930年、Warburg12)14)は 癌組織が 正常組織に比較して解糖作用が旺盛なことが発見された。その後、Boyland12)15)は、発 がん物質の多くは核酸に作用すると記述していた。しかし、詳細な発がん機構は未だ に完全に解明していない。

5.2.2 皮膚がんの誘導操作

皮膚癌誘発の研究は山極らがタール塗布によるうさぎの試験を行った。最初、脱毛 が起り、慢性炎症、皮膚の肥厚化、乳頭腫形成、皮角形成を経て皮膚癌にまでに進行 する。1960年、谷田らは20-メチルコラントレンによる実験的マウス皮膚癌の研究を 行い、20-メチルコラントレンによるマウス皮膚癌の誘発過程の皮膚組織学的所見及 び病理写真を以下の通りにまとめた16)17)

Fig.5-6 に示した通り 17)、マウスの正常皮膚は薄い角層と 2~3 層の細胞の表皮層 から成り、基底層をなす細胞は円柱状であり、上層の細胞は扁平である。細胞の境界 は明瞭であるが、真皮には多数の毛嚢の切断面が見 られる。皮下組織は稀薄で、弾 力線維は皮下結合織に微細な線維として僅かに存在する16)

Fig.5-7に示した通り17)、急性炎症期の皮膚では、真皮層の病理変化が強く、表皮 層は肥厚し、毛嚢は拡大する。皮脂腺は萎縮している。真皮層では血管が拡充して主 として多核白血球の細胞浸潤が顕著となっている16)

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Fig.5-8に示した通り17)、肥厚期では、表皮の肥厚が顕著になると共に、毛嚢に変 化が起り、毛髪及び脂腺は消失している。表皮層はさらに肥厚している。 基底細胞 は正常な皮膚に比べ、表皮層に移行に従い、扁平状になっている16)

Fig.5-9に示した通り17)、乳頭腫形成期になると表皮は、小豆のような突起を形成 している。細い茎を持つ乳頭状に突出することが観察された。明らかに毛嚢細胞の増 殖が観察されていた。乳頭腫の両側の皮膚は、表皮は 8~9 層から構成され、肥厚期 における皮膚の所見と殆んど同じ変化を呈する。扁平化した細胞においては、顆粒状 の塩基性色素に強く染まる変化が見られる。毛嚢変化が進んで形成された角質嚢胞が あり、毛嚢における細胞の増殖様子は表皮での細胞増殖と同様である16)

Fig.5-10 に示した通り 17)、癌性変化の軽い部位の組織学的に乳頭腫状の形態が保 持し、浸潤性増殖が軽微であり、配列は不明瞭となり、細胞の角化現象が起り、癌真 珠の形成が観察され、変性した弾力線維が認められる。基底膜は悪性度の高いもので は完全に破壊されて終っている16)

Fig.5-6 正常マウスの皮膚17)(H.E.染色)

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Fig.5-8 急性炎症期の皮膚17)(H.E.染色) Fig.5-9 肥厚期の皮膚17)(Elastica VanGieson染色)

Fig.5-10 乳頭腫17)(H.E.染色) Fig.5-11 皮膚癌17)(H.E.染色)

5.2.3 皮膚がんマウスモデルの作成

本試験は、ヌードマウスモデルを用い、0.3%の 20-メチルコラントレン溶液を塗布 し、皮膚扁平上皮がんを誘発させた。Fig.5-12a は通常状態のヌードマウスモデルの 写真であった。Fig.5-12bは1ヶ月0.3%の20-メチルコラントレン溶液塗布後のヌー ドマウスモデルの写真であった。Fig.5-12c は、皮膚扁平上皮がんの誘発後、皮膚切 片採取前の写真であった。

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Fig.5-12 皮膚扁平上皮がんモデルマウスの誘発試験

5.2.4 肉眼による症状確認

試験開始2日後、急性炎症のような症状が見られ、塗布部位の皮膚は発赤した。試 験開始3日後、一部の脱毛が見られ、軽度な皮膚浮腫が観察された。実験開始2週間 後、完全な脱毛症状及び典型な皮膚肥厚等の症状が観察されていた。皮膚の色は灰色 に変化し、皮膚がかなり乾燥していた。試験開始3週間後、顕著な落屑症状が見られ、

皮膚肥厚になり、皮膚表面に波状のものが観察されていた。さらに乳頭腫潰瘍が観察 され、米粒までの大きさに発育した。がん腫形成されたマウスは、急激に衰弱となり、

棘細胞がんの皮膚の周辺部は高く隆起していた。

本試験の結果は谷田らの研究報告とほぼ一致していた。すなわち、発がん過程の肉 眼的な変化は急性炎症期、皮膚肥厚脱毛期、乳頭腫潰瘍形成期、がん腫形成期の4段 階に分けられている。

5.2.5 皮膚切片の観察による皮膚がんの確認

組織化学的研究は昔からヨード澱粉反応等が知られ、グリコーゲンの検出、ペルオ キシダーゼ反応などの方法が発表され、Lison18) (1936)は最初に組織学の基礎を築い た。その以来、技術の進歩が盛んでいる。本研究では、固定液として4%ホルマリンを 使用した。包埋は硬パラフィンを用い、行った。そして、パラフィン用ミクロトーム で普通の薄切法にて5μmの厚さに切り、ヘマトキシリンエオジン重染色法、PAS染色 法を行つた。その後、病理組織学的変化を観察するうえで状況を確認した。PAS 染色 はわずかなグリコーゲンの検出に一番精密な染色法である。皮膚の肥厚期ではグリコ ーゲン増加、表皮の細胞質内が発見された。皮膚がん組織においては、糖類代謝の異 常のため、グリコーゲンは増量することが観察される。

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Fig.5-13はヘマトキシリン・エオシン染色した誘発皮膚がんマウスの組織であった。

皮膚細胞は異常に増殖し、組織の変異を確認できた。また、Fig.5-14 に示した図は PAS染色したがん細胞の切片であった。細胞の形状は異常になり、皮膚がんの発生が 確認できた。

Fig.5-13 HE染色による誘発皮膚がんマウスの組織の観察

Fig.5-14 PAS染色による誘発皮膚がんマウスの組織の観察

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