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登録商標制度の意義

ドキュメント内 「知的財産法」(2007) 講義録 (ページ 89-96)

商標法の保護の対象は、不正競争防止法2条1項1号、2号と同様、商品名や会社の名前、ブランド 名です。最近では、商品の形状、立体的な形状も保護できる法制になりました。不正競争防止法 2 条 1 項1号と違うのは、保護の手法という点です。保護の対象は同じですが、保護の仕方が違います。

制度の概観の方に入っていきます。どのような保護のシステムになっているかといいますと、まず特許 庁で手続きをして、権利を取得しなくてはいけません。特許庁で手続きをし、お墨付きをもらって、初めて 他人に対する排他権が発生するというシステムになっております。ですから、あらかじめ準備をしておかな いと、他人に対して禁止権を行使することはできないのです。

不正競争防止法2条1項1号や2号は、そのような手続きが必要ありませんでした。混同が生じてい れば、いきなり裁判所に行って、相手が使っている表示をやめろと言うことができましたが、商標権はそう はいかないということです。要するに、不正競争防止法よりも面倒です。制度が 2 つある場合、面倒な制 度が 1 個あって、面倒ではない制度がもう1 個あると、保護のレベルが同じとなれば、みんな手軽な方を 使うことになります。

このように表示について保護法制が 2 つある場合は、めりはりをつけるといいますか、手続きが面倒な 方の保護を強くしないと、法律を2つ作った意味がないということになります。

ですから商標権については、保護を受けるための手続き等は面倒なのだけれども、いったん取得する と不正競争防止法より強いというようなところが、解釈論に反映されることになります。一般的な理解として も、それでよろしいと思います。

商標権の定義については、教材のはじめに、「登録商標と同一または類似する商標を、指定商品また は指定役務に類似する商品または役務に使用する排他的な権利」と書いてあります。これがどのようなも のかをこれから説明していきます。

保護の対象は、2条1項1号、2号と同じということで、保護の趣旨もほぼ同じです。投資をしてブランド 力を形成した表示を他人にフリーライドされると、信用といいますか、顧客が外に逃げていってしまうことに なります。顧客を取り逃がすということになりますので、ブランド形成のインセンティヴが下がって、ブランド 形成がなされません。

ブランド形成がされないと、我々消費者にも迷惑が掛かります。あの会社のあの商品が欲しいというとき に、商品名を目掛けて皆さん買い物に行くと思いますが、みんな似たような商品名だと区別ができないの で、困りますね。表示については、我々消費者の利益、すなわち、公的な利益も保護の対象になってよい ということになります。ですからミックスです。事業者(会社)と我々消費者(普通の需要者)、その両方を保 護するということになります。それを難しい言葉で言うと、取引秩序という言葉になります。

取引秩序というのも、予測可能性と同じように、ペーパー試験のときにしか通用しない言葉です。私から 口頭試問か何かで、取引秩序とは何でしょうと言われたときに、きちんとその中身を答えられるようにして おいた方がよろしいかと思います。もちろん、答案に書くときも、きちんと取引秩序の内容まで、どのような 意味かということを書いた方が、いい点が付きます。

ともすると、そのような何かマジックワードを覚えるような勉強になってしまいますが、きちんと中身まで覚 えている人と、言葉だけ覚えてきた人と、やはり答案を見れば、すぐ分かってしまいます。少し余談でし

た。

権利の取得の方法は、今言いましたように、特許庁に書類を出しに行きます。私も何度か、弁理士であ る父親の使いで行ったことがあります。昔はこのようなことを書面主義と言ったのですが、最近はインター ネットで書類の手続きをすることができるようになりましたので、だんだん過去の言葉になっていくのかもし れません。

では商標とはどのようなものかといいますと、教材125ページに例としてコンサドーレの商標を載せてお きました。上のところに、商標公報と書いてあると思います。これは特許庁が、商標権が発生したことを公 示する書類です。これは現在では特許庁のホームページにアクセスすれば見ることができます。

登録番号、登録日などの情報とともに、絵が堂々と載っています。これは、印刷の都合で白黒になって いますが、本物はドーレくんの赤いところは赤く、白いところは白くなっています。コンサドーレの会社は、

北海道フットボールクラブと言うのですね。注目してほしいのはその下です。ドーレくんの下に、いろいろ なものが書いてあると思いますが、これが指定商品または指定役務と呼ばれるものです。

商標法と不正競争防止法の違いの1つとして、この指定商品、指定役務というものがあります。これは、

出願人が出願をするとき、手続きを取る書類を出したときに、これを指定するものです。これとこれとこれに、

僕はこのドーレくんを使いますので、権利をくださいという意味で、これを指定商品、または指定役務とい います。役務というのはサービスです。

ここに記されているスポーツ、または知識の享受、これはサービスですので、役務の方です。私が行っ ているのも、講義というサービスです。これは、指定商品または指定役務のうち、指定役務の方になります。

これらを指定商品または指定役務と呼びますが、商標権というのは、このドーレくんという商標をこの下に 記載されている指定商品または指定役務に対して、他人に使わせない権利です。

ですから、この商標と、指定商品または役務というのは関連があるといいますか、どちらも権利範囲を定 めるものです。ここのドーレくんに書いていないことにドーレくんを使うことは、商標権の権利範囲外だとい うことになります。

この指定商品、指定役務というのは、実はお金さえ払えば、いくつでも指定することができます。ですか ら、ここではこの指定商品、指定役務のところに6行書いてあって、その前に41という分類が振ってありま す。これを分類と言いますが、41 以外にも全部で 46 個の分類があります。ですから、その全部の分類に ついてドーレくんの商標を取ることもできます。そうすれば、どんな商品役務についても出願人以外はドー レくんを使えないということになります。ここはお金と効果の問題ですので、出願人の判断になります。

指定商品、指定役務という言葉が、これからたくさん出てくると思いますが、それはここに書いてあるも のなのだと思ってください。商標権というのは、この絵を、この指定された商品や役務に使うということ、そ して他人に使わせないという権利とご理解ください。

商標権ですが、年間どれぐらい処理がされているかといいますと、2年前の2005年の資料によれば、出 願がだいたい1年間で13万5,000 件くらいあるそうです。そして、年々増えているようです。特許庁の商 標専門の審査官は、150 人ぐらいいるそうで、その人たちが、この出願の処理をしています。つまり、審査 をします。商標登録を受けるためには、法律の要件が決まっておりまして、それをクリアする必要がありま す。それが審査というものです。

要件が欠けている場合、出願については拒絶査定というのを受けまして、権利を取れないということに なります。種々の要件をクリアすると、登録を受けて、商標権という排他権が発生します。審査官も人間で

すので、過誤登録の場合があります。過誤登録の場合でも、後に無効審判で無効にすることができます。

これから、商標、特許と、手続き関係の法律を説明することになりますが、必ず審査官という言葉が出て きます。商標は、事務系の職員の中から志願制で庁内試験を経て、審査管理になるようです。特許の場 合は、国家公務員一種の理系の試験を通り抜けてきたテクノエンジニアです。

存続期間は、登録から10年と書いてありますが、更新制度があります。10年ごとの更新です。要らない 場合は捨てることもできます。更新なので、実は明治時代の商標がまだ残っているものがあります。古いも のは大正時代の商標権などもあります。10年ごとに更新していけば、永遠に商標権は残りますので、2005 年の資料によると、日本には商標権は現在、積もり積もって、177 万件あるそうです。たくさん商標登録が されています。この、たくさん登録されているというところが、商標の 1 つの論点であり、問題点だと言われ ています。

これが、商標制度の概観です。保護の対象は表示です。すでに何度か出てきておりますが、自他商品 識別機能、自他商品識別力、あるいは表示の出所識別力を保護する法律です。

登録主義の方にいきます。ここは不正競争防止法2条1項1号との比較をする必要があります。世界 中に商標法というのはあり、また、似たような法律がありますが、商標法を立法する立場といいますか、対 応としては2つあると言われています。

1つは、ここに書いてある登録主義というものです。もう1つは、使用主義というものです。登録主義は、

ドイツ・日本型、使用主義はアメリカ型です。登録主義と使用主義の 2 つの立場があって、日本の商標法 は登録主義です。

登録主義とはどのようなことかというと、商標の使用を登録の要件としないということです。商標が現に使 用されているということを登録の要件として求めないのが、登録主義です。つまり、登録さえすればいいと いう考えです。対して、使用主義というのは、商標権を登録するため、すなわち商標権を発生するために は、実際に商標を使っていなくてはいけないという主義です。

使用主義は使用主義で、これはいいのですが、登録主義というのは、少し語弊があります。商標権を発 生させるために、登録を要する制度だという説明があるのですが、それは誤りです。実際、使用主義も登 録していますから。登録主義というのは、商標権の発生に現実の使用を要求しない主義です。

ですから、アメリカなどでは、今使っている表示、例えばこのボルヴィックでしたら、今ボルヴィックという 商品名を使っています、使っているから、商標権を欲しいので登録したいのです、という使用主義がとら れています。

登録主義というのは、現実の使用を要求しないので、これから使いたいなと思う商標をあらかじめ取るこ とができます。事前に、商品名やブランド名の商標権を取っておくことができます。それが登録主義です。

使用主義と登録主義は、どちらが優れていて、どちらが劣っているというわけではなくて、考え方の違い です。どちらにもいい面がありますし、どちらにも悪い面があります。これが登録主義と使用主義です。

ですから、日本は表示の保護に関しては登録主義だというのは、実は誤りです。なぜならば、日本の表 示を保護する制度というのは、商標法だけではなくて、すでに皆さんが勉強したはずの不正競争防止法2 条1項1号もあるからです。2条1項1号の要件は、周知、類似、混同です。周知だということは、使って いないと周知にはならないはずです。現実に使いもしていない商標、人の目にも触れていない表示が、

周知になるということはあり得ません。ですから、周知を要求しているということは、すなわち使用を要求し ているのと同じことです。そうだとすると、2条1項1号は、表示を保護する法制としては、使用主義だと言

ドキュメント内 「知的財産法」(2007) 講義録 (ページ 89-96)