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発酵廃棄物系バイオマス(FBA,FBWA)を利用した農作物への重金属取込抑制 78

ドキュメント内 群馬大学理工学府環境創生理工学領域 (ページ 82-129)

重金属取込抑制

3-1緒言

序論で触れたように中国国務院は,2014年4月に公開した「全国土壌汚染状況調査公 報」1) に基づいて,2016年に「土壌汚染防治行動計画」を各省・特別市等に通知した2). 汚染農地が集中している,江西省,湖北省,湖南省など(広東,広西,四川,貴州,雲 南)が地域指定され,これらの地域の汚染農作物対策は喫緊の課題となっている.

中国をはじめ米を主食とする東南アジアでは,重金属汚染農地による米のカドミウム

(Cd)取込みは深刻な問題である.たとえば,タイ(Chunhabundit,2016)3),ベトナム

(Ngo et al.,2012)4),バングラデシュ(Kippler et al.,2010)5) と中国(Hu et al.,

2016)6) の多くの研究者がCd汚染された農地で収穫される米の摂取によって,健康リス

クが増加することを示唆している.

これらの国の多くは途上国であることから,費用対効果の高い方法としてバイオマス材 料を用い,植物へのCd吸収を抑制するon-site 修復方法の開発が盛んに行われるように なった7-8).例えば,中国では伝統的な干草,ウッドチップ,大鋸屑お が く ず,穀物わら等の廃棄 有機修復材BSA(biochar soil amendment)を利用した,原位置(on-site)修復の効果が 公表されている9-15).南中国全域の重金属汚染田土壌では,BSAを20 – 40 ton ha-1添加 し,米のCd含有量を20-90%低減している (B. Rongjun et al.,2013)9).最近では,湖 北省武漢市郊外のポット試験で,対照の土壌に対して添加率10 ton ha-1で45% – 62%,

添加率 20 ton ha-1で66% – 89%の土壌中の可溶態Cd量を減少させた報告もある (Z.

Run-Hua et al., 2017)16).有機肥料 (a commonly organic fertilizer in rural China) を土 壌重量(w/w)あたり1.5%及び3.0%を添加し,土壌中のCd可溶態濃度を減少させる方 法が示されているが,この場合玄米のCd含有量は0.27 – 0.31 mg kg-1と基準値以下にな らない事例があり,修復材添加率を増加させる必要があると結論する報告もある(Yang,

Wen-Tao, et al. 2016)17).しかしながらこれらの場合,修復材の多量散布による農地への

影響が懸念される.

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一方,農作物への重金属移行抑制を目的に板橋研究室が開発したFBA(Fermented

Burke Amendment)は,1%以下の添加で,Cd可溶態をCdSとして土壌中に固定化し食

物体への取込を抑制することが示された18).しかしながら,土壌,水,気温,降水,風等 の自然環境要因を強く受ける実農地での検討は行われていない.そこで本研究では,高温 多湿な気候条件と米食文化が共通する中国農地にて実証検討を行い,FBAと中国産原料の FBWA(Fermented Biomass Waste Amendment)の両栽培法の実用性を評価した.ここ では群馬大学と上海聖龍環境修復技術有限公司の共同研究を中核とし,南京環境科学研究 所,江蘇省地質調査研究院及び南京大学環境学院の協力を得て,2015年から中国江蘇省 の中度~高度のCd汚染農地にて稲と小麦の二毛作農地で農作物への重金属取込抑制効果 を実証した.

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3-2実験

3-2-1試薬と装置

日本では和光純薬製(大阪)の特級品を,中国では蘇州晶瑞化学有限公司製(蘇州市,

中国)の超特級品(塩酸,硝酸,フッ化水素,過酸化水素水)を用いた.日本ではMerck

Serono S.A.S.(リオン,フランス)で,中国では南京環境保護科学技術有限会社製

EUG-CY2-20(南京市, 中国)の純水器で製造した純水を使用した,日本の植物防疫法(1950,

法律第151号)で輸出入が規制される土壌と種子(米,小麦)は,江蘇省地質調査研究院 と南京大学環境学院にて分析した.分析と計測に用いた装置を表3-1に示す. なお,

FBWA分析の一部は日本の計量証明事業者(計量法(1992,法律第51号))に,CEC,

P2O5,K2Oの分析を依頼した.

図3-1に本研究の野外計測法を示す.FBA及びFBWA散布後のポット試験並びに試験農 地の土壌と水の pH,ORP,EC,水温及び水位は野外計測マニュアルに則して測定した.

水田における現場計測は水飽和土壌を180 mLコップに採取した後,pH計及びORP計を 挿入し1分間静置後に計測した.なお,pH計測機は三点校正(pH 4,pH 7,pH 9),

ORP計測機はORP標準液用粉末(堀場製作所製)にて校正した.参考データとして土壌 に5 cmの深さに突き刺して土壌のEC(ms m-1)及び温度を計測した.

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図3-1 本研究の野外計測法

82 表3-1 本研究に用いた分析機械と計測機器

機器・試薬 分析・計測対象 分析機器・計測器 規格・製造元 試験方法・分析方法 試薬類 H2O2,HNO3,HF,H2SO4 上級,超特級

研究所 大学 分析会社

土壌 蛍光X線分析装置 Mesa50(堀場製作所) 乾燥,陶器乳鉢→瑪瑙乳鉢,粒度 10 μm以 下に調整

土壌 種子(米・小麦) ICP-MS Thermo X-2

Thermal Elemertal X7 分析方法:

GB 5085.3-2007,HJ/T 299-2007,GB/T 15441-1995

分析基準:

USEPA700B-2007,HJ687-2014,USEPA 6020A-2007,USEPA-9045D-2004,NY / T 11243-1999

有機修復材 便携式Delta Tox毒性检

测仪 SDI公司

無機修復材 原子吸光分光光度計 Z-530(日立ハイテクサイ エンス社製偏光ゼーマン 原子吸光光度計)

水 原子蛍光分析機 AFS-9760(HaiGuang Instrument, 北京, 中国)

試験農地

pH PHscan20 Sartorius PB-21(ドイツ),

堀場製作所,般特仪器有限 公司

校正:毎日計測直前に校正液にて三点校正 乾田:乾土5gに純水25mL(固液比1:5)→10 分振盪,静置2分,計測1分

水田:飽和土壌(原状)→2 分静置,1分計測

EC(ms/m) HI98331-S ハンナ インスツルメン

ツ・千葉,日本 土壌突き刺し,計測

ORP(mV) ORPscan20 般特仪器有限公司

ORP標準液用粉末(堀場製作所製)にて毎日 計測前に校正係数

各点で1分計測,各点計測後にセンサーを 純水洗浄

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3-2-2発酵廃棄物系バイオマス(FBWA)

日本環境省は廃棄物系バイオマスの種類を,生ごみ等食品廃棄物,家畜ふん尿,下水汚 泥,農業残さ(残渣),木質系廃棄物に大別している19)

FBWA原料となる廃棄物系バイオマスを図3-2に示す.木質系廃棄物である林地残材や 木材成形時の廃材(樹皮,大鋸屑お が く ずEA)を細断粉砕し,農業残渣のAE米糠こ め ぬ かEA及び生ごみ等食品廃

棄物のAE雪花菜お か らEAを同重量比で混合し原料とした.通常,この種の発酵は2か月~半年間で

進行するが,土壌や植物に普遍的に存在するバチルス菌類縁株を含む枯草菌(Bacillus

subtilis)を加えることによって,温度60 – 80 ℃,湿度40% – 50%を保った条件下で原

料を高速発酵させることが出来る.ここではこの製造工程を3~4日で行った後,含水率

を10%程度になるまで乾燥させ,再発酵させない状態で包装し20kg単位保管したものを

用いた.

図3-2 FBWA原料となる廃棄物系バイオマス

表3-2に日中原料とFBA及びFBWAの有機分析値を示す.中国産原料FBWAと日本産 原料FBAを有機元素分析し比較した結果,水素,炭素,窒素の含有量(%)はほぼ同程度 であった.FBWAの化学組成はバーク堆肥とほぼ同じであるため,NPO法人 日本バーク 堆肥協会が指定するパリノ・サーベイ(株)にてFBWAを分析した結果を,表3-2にバーク

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堆肥品質基準と共に示す.FBWAは,pH 7.8,窒素2.66%,リン0.79% ,カリウム 1.35% ,C/N 17.6,CECは72.4 cmol kg-1であり,日本バーク堆肥協会のバーク堆肥品質 基準に適合する.また,廃棄物系バイオマスのC/Nは22.4であったが高速発酵後の FBWAは17.6で,窒素比が向上して肥料機能が高まったと考えられる.

85 表3-2 日中原料とFBA及びFBWAの有機分析値

試料 pH 含有量 / wt%

C / N CEC

/ cmol kg-1

H O C N S P2O5 K2O

日本原料 a バーク

乾燥

5.84 - 47.1 0.36 - -

- -

131 -

4.48 - 39.9 2.14 - - 18.6 -

FBA 6.23 - 45.9 2.88 1.8 - 15.9 68.5 ± 2.7

中国原料 b

廃棄物系バイオマス 5.83 38.7 42.3 1.89 0.00 - - 22.4 -

FBWA 乾燥後 5.56 34.8 42.5 2.37 0.00 - - 17.9 -

- - 46.9 2.66 - 0.79 1.35 17.6 72.4

乾燥前 7.8 - - 41.2 2.34 - 0.69 1.19 63.6

日本バーク堆肥協会品質基準 5.5-8.0 ≥1.2 ≥0.5 ≥0.3 ≤35 ≥70

a Mori et al.18(2016)

b 分析機関:パリノ・サーベイ(藤岡市,群馬)

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図3-3に FBWAのCd吸着量試験方法を示す.FBWAによる農作物への土壌中Cdの移 行抑制する機能の一つを評価するためCd吸着量を計測した.60℃24時間で乾燥後に,2 mmナイロンメッシュで篩分けした試料0.5gを検体とし,Cd基準液(0.1 molのdm–3 HNO3の中のCd(NO32)を希釈した1.0×10–6 M Cd溶液を緩衝液にてpH調製した100 ml溶液に,0.5g試料を入れ振盪機にて1時間攪拌した.0.45 μmフィルターにて濾過し た検液を原子吸光光度計(AAS)で測定した.

図3-3 FBWAのCd吸着量試験

2015試験農地と2016試験農地の土壌pH4.5-6.5を考慮し,Cd溶液中におけるFBAと FBWAの吸着率を下記式で求めた.

𝐴𝐴𝐶𝐶𝐶𝐶 (%) =�[Cd(II)]0−[Cd(II)]𝑟𝑟

[Cd(II)]0 �× 100

Acd:吸着率,[Cd(II)]0:Blank溶液Cd濃度,[Cd(II)]r:吸着試験後検液Cd濃度

図3-4に日本産FBAと中国産FBWAのCd吸着率に及ぼすpHの影響を示す.その結 果, pHが5.2から6.5に変化するにつれてFBA,FBWA共にのCd吸着量は上昇した

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が,FBAのCd吸着率が40 - 60%であったのに対し,FBWAの吸着率は75 - 85%となっ た,.これより土壌中Cdの農作物への移行抑制効果の一つであるCd吸着能はFBWAの方 が高いことが分かった.

図3-4 日本産FBAと中国産FBWAのCd吸着率に及ぼすpHの影響

3-2-3修復材の環境に対する安全性

農地に環境修復材を添加する場合は土壌環境と植物等への安全性や親和性に留意しなけ ればならず,特に食用農作物が対象であれば現地環境への影響に最大限留意する必要があ る.そのため,2015試験農地のC区画とD区画の土壌試料に添加する修復材(FBA7, ZRM)を用いて急性毒性試験と,種の発芽率及び根の伸長阻害率による生物毒性試験を行 った.

発光菌による急性毒性試験は,国際標準化機構 (ISO) において水質環境試験方法

(ISO11348-1:2007, ISO11348-2:2007, ISO11348-3:2007, and ISO21338:2010) で規格 化され,動物や植物に対する重金属等の急性毒性試験として広く普及している20-21),本試

7 毒性試験とポット試験は日本産FBAで行った.

Cd吸着率

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験はSDI's Microtox@(Strategic Diagnostics Inc. SDI,ニューヨーク,米国) の急性毒性 試験キットマニュアルに従って下記手順で行った.

① –22 ℃で冷凍保存している発酵菌(Vibrio Fischeri)1 mLを開封減圧し15分間 室温で蘇生する.

② 蘇生発酵菌とMicrotox SOLO凍結乾燥粉末を4 ℃定温で5分混合し検定溶液と する.

③ 検定溶液(Blank)0.1 mL(10- 28 ℃,pH 6.0- 8.0)の蛍光強度をSDI製可搬

式Delta Tox毒性計測機にて測定する.

④ 試験農地の乾燥対照土壌10 gにそれぞれFBAとZRMを1%と3%添加し,浸透

液0.9 mLに検定溶液0.1 mLを5分間攪拌する.

⑤ 可搬式Delta Tox毒性計測機にて蛍光強度を測定,Blank蛍光強度と比較する.

また,生物毒性段階評価は直径9 cmのガラスシャーレにC区画とD区画の対照土壌

50 g (乾燥重量) にFBAとZRMを1%と3%均一に散布し,土壌と水の重量比9:1

に調整留意して養生した.以下に操作を示す.

① 粒径均一なキャベツ種10個を選択し,自然光で定温25 ± 1 ℃のガラスシャー レ中にて発芽させる.

② 根伸長は発芽点から最長根までの長さ,芽の長さと根の長さとが3 mmを超え た場合に発芽と認定する.

③ 発芽率が65%以上,根伸長が20 mmなったとき試験を終了し平均種子発芽率,

平均根の長さを決定する.

④ 国際標準化機構(ISO) の環境毒性試験方法ISO 17088により,種子の発芽率 と根の伸長阻害率を表3-3示す毒性等級基準に基づいて評価する.

ドキュメント内 群馬大学理工学府環境創生理工学領域 (ページ 82-129)

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