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ゼオライト修復材(ZRM)を利用した農作物への重金属取込抑制

ドキュメント内 群馬大学理工学府環境創生理工学領域 (ページ 32-82)

2-1緒言

農用地におけるカドミウム(Cd)の汚染問題は1955年頃から日本国内の亜鉛鉱山や精 錬所下流域で見出されて社会問題化し,1970年に成立した「農用地土壌汚染防止法」で は玄米中のCd含有量基準1 mg kg-1未満が定められた.その後,食品の国際規格を決める

「コーデックス委員会」の勧告もあり,厚生労働省は食品安全委員会の食品健康影響評価 結果を踏まえて,2011年2月28日に基準 (玄米と米) を0.4 mg kg-1以下に改正し た.

土壌中のCd含有量 (mg kg-1) と生産された玄米中のCd含有量 (mg kg-1) は,こ れまで農林水産省が行ってきた長年の実態調査結果でも,水田土壌中のCd濃度が高いほ ど米のCd濃度も高い傾向が示されている1).しかし,両者には明瞭な正規分布相関が認 められないことから,農用地土壌汚染防止法では玄米及び米中のCd含有量で土壌基準が 指定されている.

植物体の重金属含有量と土壌水の重金属イオン量(溶出量)については,水稲の栽培実 験に基づいて水耕液中のCd濃度(0.1 M塩酸抽出法)に応じて玄米中の含有量が上昇す る現象が早期に報告されている2).これより,土壌改良材としてケイ酸カルシウムを原料 とした多孔質ケイカル(Autoclaved-Lightweight-Concrete,以下ALCと表記)や熔成リン 肥等を重金属汚染土壌に散布し,土壌から米への吸収を抑制する実験が行われている3). 未修復の対照区画や対照土壌(以下,図表ではBlankと表記)で栽培した玄米Cd濃度

(0.1 M塩酸抽出法)が0.21ppmに対してALC散布した修復区画の玄米Cdは0.02 ppm,対照区画の0.74 ppmからALC修復区画0.14 ppmと低下した報告がある4).ま た,ALCの大量施用(5~20 ton / ha)でCd汚染水田における水稲のCd吸収量が減少す ることが報告されている5).しかしながら,いずれの報告例でも吸着抑制効果はpH上昇 による可溶性Cd量の減少に伴う玄米Cd濃度の低下であると結論されている.

土壌改良材としてゼオライトを施用(2 kg / m2)し玄米Cd含有量が,対照区画0.20 mg kg-1と比べ0.10 mg kg-1と半減した農地実験の報告がある6).この実験例でもCd取込 抑制効果は土壌の平均pHが 6.0から7.5に上昇したことが原因とされ,ゼオライトによ

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る不溶化(吸着効果)でないとされている5).また,ゼオライトを含む多数の無機材料の 効果については,湛水管理による抑制効果よりも劣るとの報告もある7)

一方,ゼオライトは珪素原子(Si)を中心に4つの酸素原子(O)を配列したSiO4正四 面と,一部をアルミニウム原子(Al)で置換したAlSi四面体による立体網目構造を有して おり,その構造から分子 篩分し ぶ ん能,イオン交換能,吸着能などの優れた特性があり,使用 する条件を設定すれば環境修復材として利用することが可能と考えられる.実際に人工ゼ オライトとバーミキュライトを混合添加した水田で稲を栽培した実験から,これらの吸着 効果により玄米中のCd含有量が低減すると報告されている8)

そこで,本研究では,ゼオライトの土壌修復材としての可能性を明らかにするため,ゼ オライトを主成分とする修復材を調製し,実際の農地を用いて米と麦のカドミウム取込に 関する検討を行った9).本章2−2では日本の農地を用いた検討結果を,2−3では中国の 農地を用いた検討結果を記述する.

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2-2実験

2-2-1試薬と装置

本章で用いた試薬は全て和光純薬工業製の特級を,試料の調製及び希釈に用いた水はヤ マト科学製WEX 3 Autopureにより精製したものを使用した.また,分析装置は表2-1に 示すものを使用した.

31 表2-1 試薬及び分析.計測装置

機器・試薬 分析・計測対象 分析機器・計測器 規格・製造元 試験方法・分析方法

試薬類 和光純薬工業 Cd等重金属吸着試験

純水装置 WEX3 Autopure ヤマト科学 各種実験

大学 分析会社

土壌

蛍光X線分析装置 Mesa50(堀場製作所,京都) 乾燥,陶器乳鉢→瑪瑙め の う乳鉢,0.01mm鉢 粒度調整

ICP発光分光分析計 iCAP 6200 Duo(サーモフィッシャ

ーサイエンティフィック) 環告18号1 ,環告19号2 原子吸光光度計 Z-2000(日立製作所製,東京)

ゼオライト XRD RINT2000(リガク,東京) 構成鉱物同定

水・検液

原子吸光光度計 Z-530(日立ハイテクサイエンス社 製偏光ゼーマン原子吸光光度計)

吸着試験 原子蛍光光度計 AFS-9760(HaiGuang Instrument,

北京, 中国)

pH 卓上pHメーター D-51(堀場製作所製,京都)

試験農地 pH 野外PHメーター 堀場製作所

校正:毎日計測直前に校正液にて三点校 正

乾田:乾土5gに純水25mL(固液比1:

5)→10 分 振盪し ん と う,静置2分,計測1分 水田:飽和土壌(原状)→2 分静置,1分計 測

1土壌溶出量調査に係わる測定方法を定める件(環境省,2003年)

2土壌含有量調査に係わる測定方法を定める件(環境省,2003年)

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2-2-2使用した天然ゼオライトとその結晶構造

【日本産ゼオライト】

図2-1には日本におけるゼオライトの産地を示す.天然ゼオライトが産出する地質的環 境は新第三紀から第四紀の火山帯周辺の比較的低温低圧な熱水環境で,日本では北海道,

東北,北関東,中国,九州の各地で産出する.日本の天然ゼオライトは結晶構造により,

モルデナイト(斜方晶系)とクリノプチロライト(単斜晶系)の二種に大別される10)

図2-1 ゼオライトの産地9)

図2-2に天然鉱物による重金属のイオン吸着及びイオン交換の模式図を示す11).ゼオライ トは結晶構造中に無数の微細孔を有しており結晶構造の表面が負電荷に帯電しているた め,溶液中で陽イオンとして存在する重金属の大半は結晶構造内に取り込まれる.その構 造により分子篩分し ぶ ん能,イオン交換能,触媒能,吸着能などの特性を有する.

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天然鉱物の吸着機構 陽イオン交換反応概念 鉄系補助剤表面吸着 図2-2 天然鉱物による重金属イオン吸着・イオン交換10)

本研究において検討した天然ゼオライトの化学成分特性を表 2−2に示す.ここでIWは 島根県産をNTは福島県産を表す.これより,両者の化学成分は概ね類似しており,陽イ オン交換容量 (Cation Exchange Capacity,以下CECと表記)もIWが130~180 meq / 100 g,NTが160~190 meq / 100 gとほぼ一致していることから,化学的性質に大きな 差は無いものと考えられる.

表2-2 比較したゼオライトの化学成分特性

分析項目 IW NT

産地 西日本 東日本

CEC 130 - 180 meq /100 g 160 - 190 meq /100 g

化学成分 % %

SiO2 66.0 69.7

Al2O3 12.9 12.5

Fe2O3 1.8 1.5

MgO 0.6 0.3

CaO 2.3 2.2

Na2O 2.6 2.0

K2O 1.6 2.1

P2O5 0.1 0.1

※生産会社HP公表による

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天然ゼオライトの主たる構成鉱物を同定するため図2-3に示す手順で,X線粉末回折装 置(XRD:X‐ray Diffraction,リガク(東京)製RINT2000)により分析を行った.測定条 件は,X-Ray40 kV / 20 mA,発散スリット1°,発散縦制限スリット10 mm,散乱スリッ

ト1°,受光スリット0.15 mm,モノクロ受光スリット0.8 mm,スキャンニング2θ

(degree)0-70である.

得られた回折チャートを図2-4と図2-5に示す.これよりIWは単斜晶系のクリノプチ ロライト群のCpt(灰斜プチロル沸石)を主成分としHeu(灰輝沸石)を付随共存してお り.NTは斜方晶系のモルデナイトであることが分かった.

図2-3 XRD分析試料調整

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図2-4 ゼオライトIWのX線回折パターン Cpt:クリノプチロライト(灰斜プチロル沸石),Heu:灰輝沸石

図2-5 ゼオライトNTのX線回折パターン Mor:モルデナイト(モルデン沸石)

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【中国産ゼオライト】

中国の農用地土壌と農作物を対象に検証するため,中国内で広く流通する中国産天然ゼ オライトのZJ(浙江省産)とLN(遼寧省産)を入手した.日本の天然ゼオライトには温 泉等の影響により重金属が負荷されている可能性もあり,日中ゼオライトの重金属等含有 量を可搬型蛍光X線分析装置にて比較分析した.

図2-6に小型のエネルギー分散型蛍光X線分析装置(ED-XRF,Energy Dispersive X-ray Fluorescence Spectrometry)によるゼオライト分析操作を示す.丸茂らは乾燥した極細試 料の粒子径を均質にし,かつX線照射面を平坦に保つことでED-XRFにより実用可能な高 精度分析値を得る方法を示した12).そのため,採取土壌は砕石や植物遺体などを除去した

後に60 ℃にて乾燥させ,ナイロンメッシュで篩分けし0.125 mm以下の細粒を陶器乳鉢

で粗磨りした.さらに 瑪瑙め の う乳鉢で10 µm以下の極細粒に均質調製し,可搬型ED-XRF

(Mesa50,堀場製作所(京都))により重金属含有量を分析した.

表2-3にゼオライト中の有害物質含有量を示す.修復材として利用する中国産ゼオライ

トの重金属含有量は,中国の土壌環境質量基準(GB 15618-1995)における水田Cd基準

(0.25-1.0 mg kg-1)の2~11倍程度含まれる.しかしながら,添加量は重量比5%以下で あり農用地のCd含有量基準を超過することは無いため,天然ゼオライトの吸着効果によ る米Cd含有量の低減効果の検討に使用できると判断した.

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図2-6 可搬型蛍光X線分析装置によるゼオライト分析

表2-3 ゼオライト中の有害物質含有量(mg kg-1

特定有害物質 中国産ゼオライト 日本産ゼオライト

ZJ LN IW NT

Pb 42.4 21.6 ND ND

Cr 50.0 29.1 47.6 45.2

Zn 102 62.1 63.5 83.3

As 9.93 14.5 18.6 13.4

Cu 4.54 5.60 4.11 6.54

Ni 1.87 2.46 1.40 1.55

Cd 2.84 2.10 0.90 3.05

図2-7,図2-8に,ゼオライトZJ及びLNのXRD結果を示す.得られた回折チャート

(2θ:回折角0~45度)より,ZJとLNは共にクリノプチロライト群(単斜晶系)であ った.ゼオライトZJはCpt(灰斜プチロル沸石)主体であるのに対し,ゼオライトLNは Heu(灰輝沸石)が主体であった.

ドキュメント内 群馬大学理工学府環境創生理工学領域 (ページ 32-82)

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