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第 6 章 終章 94

B.2 発散:初期値敏感性

付 録B 発散と収束の観測

表B.1の①と②から計算精度128ビットのときの初期状態x0が264と263 による軌道の状態の推移を観察できる.計算精度が128ビットであるから,丸 め誤差は129ビット以下の部分からなり,そして,一回の写像で最大2ビット 上位へのぼる.従って,32回以下の順計算では,丸め誤差が上位64ビット以 上に拡散され,影響を及ぼすことはない.即ち,表B.1の①と②のt= 32まで,

上位64ビットから,丸め誤差の影響を分離した初期値の微小の差による影響を 観察できる.

表B.2①は計算精度が64ビットであるから,t = 1から丸め誤差が生じ,t= 2 から丸め誤差が拡大され,その影響を下位ビットから受ける.それに対し,表 B.1の①は計算精度128ビットであるから,t = 32まで,上位64ビットまで丸 め誤差の影響は及ばない.表B.1の①と表B.2の①のt= 32まで,上位64ビッ トから計算精度64ビットのときの丸め誤差による影響を観察できる.表B.1の

②と表B.2の②からも同様な観察ができる.

そして,表B.2の①と②は計算精度64ビットのときの初期値の微小な差と丸 め誤差による複合した影響を観察できる.

整数ロジスティック写像を計算するとき,状態(値)を決める度に初期値敏 感性の影響受けていることがわかる.そして,異なる計算精度にその影響も異 なる

B.2.3 初期値敏感性と有限計算精度のカオス軌道

カオスには初期値敏感性を有するため,初期値の微小な違いでも,異なるカ オス軌道が得られる.

有限計算精度で計算して得られたカオス軌道は,計算する度に生じた丸め誤 差が,その後の繰り返しの計算により拡散され,元の軌道から離れ,別の軌道 になることは表B.1と表B.2から観察できる.そして,この写像するときのXt

の値に依存する(常に変化する)丸め誤差の影響で,決定論的なカオスを非決定 論的なものにした[1].即ち,同じ初期値を同じ計算精度で計算するときに限っ て,同じ軌道が得られ,計算しないで,その軌道への予測はできない.

有限計算精度で計算されるカオス軌道に対し,2つの初期値からの軌道の関 係を観測するとき,観察されたその軌道の一致あるいは不一致は,ある特定の 観測精度においての結果である.

B.2. 発散:初期値敏感性 表B.1①と表B.2①のカオス軌道を比較するとき,観測精度を65ビットにす ると,t= 1で異なる軌道となるが,観測精度を小さくすると,軌道が一致する tが大きくなる.同様に,表B.2①と②のカオス軌道からある観測精度(<64)

において,t < 33で1つのカオス軌道からもう1つのカオス軌道の状態(値)

を得る(予測する)ことができる.しかし,このような微小な初期値の差から 生成された2つのカオス軌道の間の一致するビット数はt= 32で最上位ビット まで減少され,t = 33で初期値の微小の差が初期値敏感性により,最上位ビッ トまで発散された.即ち,t= 33で完全に(観測精度によらない)異なった軌 道になった.

このような微小な初期状態の差から生成された2つのカオス軌道がは初期値 敏感性により発散され,最上位ビットまで異なるとなったtは初期状態X0に よって異なる.表B.2③と④のカオス軌道から,最上位ビットまで異なるとなっ たtは61であることを観測される.

付 録B 発散と収束の観測

表 B.1: 丸め誤差を分離した初期値敏感性の観測.整数ロジスティック写像を整 数を用いた固定小数点演算128ビットで初期値X0から計算し,t = 0 ∼ 63の Xtを示す.Xtは16進数32桁で表示.

B.2. 発散:初期値敏感性

表 B.2: 異なる初期状態(値)による初期値敏感性による発散の強さ.整数ロジ スティック写像を整数を用いた固定小数点演算64ビットで初期値X0から計算 し,t= 0 ∼63のXtを示す.Xtは16進数16桁で表示.

付 録B 発散と収束の観測