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整数ロジスティック写像の逆軌道

第 3 章 発散,収束,周期性 20

3.3 収束

3.3.4 整数ロジスティック写像の逆軌道

計算精度が無制限ならば,2値系列u0u1· · ·utとxt+1から,逆軌道x0, x1, . . . , xtを正確に求めることができる.しかし,整数ロジスティック写像は切捨て演 算の影響のため,順軌道と逆軌道は必ずしも一致しない.両軌道の関係を定量 的に調べるために,数値計算を試みた.

定義 3.7. 式(2.4)と式(3.19)において,t ≥0に対し,整数∆Xt

∆Xt=Xt−X˜t (3.21)

で定義する.       ¤

順軌道と逆軌道の比較

1. 計算精度N,軌道長T で,区間[1,3×2N3]の中から任意に選んだM個の 値それぞれを初期値X0とおき,順軌道

        (X0, X1, . . . , XT) を求める.

2. 式(3.20)を用いて,対応する2値系列(逆計算符号列)

        Y0Y1· · ·YT を出力する.

3.3. 収束 3. 逆計算はX˜T =XT を初期値にして,逆計算符号を用いて逆計算軌道         ( ˜X0,X˜1, . . . ,X˜T)

を求める.

4. 最後に,−2N < k <2N に対し,∆Xt(0≤t < T)のとる値の頻度         fk=|{t|∆Xt=k, 0≤t < T}|

を求める.         ¤ 例として,N = 128, T = 1000に対し,あるX0に対して上の手順を実施して 求められた∆Xtの取る値の頻度分布を図3.2に示す.図3.2において,横軸は

∆Xtのとる値,縦軸はその頻度である.

図 3.2: 計算精度N = 128ビットで得られた∆Xt=Xt−X˜tの頻度分布.

図3.2から∆Xt = 0となるtの割合は75%以上みてとれる.言い換えれば,

逆軌道の中からランダムにXtを選ぶと,Xt= ˜Xtとなる確率は0.75以上ある.

逆軌道は順軌道と一致ではないが,その近似にあることが示されている.

この結果をさらに詳細に吟味するために,以下の実験を行った.

計算機シミュレーションによって等確率でN = 128ビットの初期値X0

M = 1000個発生させ,それぞれの値に対して,T = 1000とおいて,上述した

比較手順を実施した.

次に,−2N < k < 2N となる各kに対し,第i回目の試行において∆Xt = k となる頻度fk(i)から,平均頻度

fk= XM

i=1

1 Mfk(i)

第3章 発散,収束,周期性 を求める.また,

      d(i) = min{k|fk(i)>0}       d(i)+ = max{k|fk(i) >0} とおき,M回の試行での平均をそれぞれ

d = XM

i=1

1 Md(i) ,

d+ = XM

i=1

1 Md(i)+

とおく.さらに,x(i) =f0(i), d(i), and d(i)+ に対し,x.maxとx.minをそれぞれ       x.max= max{x(i)}

      x.min= min{x(i)} と記す.

以上に述べた比較手順を実施して得られた結果を表3.1に掲げる.

表 3.1: f0,d,d+とf0(i),d(i),d(i)+ の最大最小値

f0 f0.max f0.min d d.max d.min d+ d+.max d+.min 755.530 806 694 -86.996 -6 -3713 279.516 25317 6

        f0:∆Xt= 0の頻度の平均         f0.max:f0(i)の最大値         f0.min:f0(i)最小値         d.max:d(i) の最大値         d.min:d(i) の最小値         d+.max:d(i)+ の最大値         d+.min:d(i)+ の最小値

表3.1から1000回の試行から逆軌道と順軌道の状態が平均75%以上一致して いることが示されている.図3.2と同等な結果であった.

また,|∆Xt| >0が逆計算に拡大されなく0に収束していることも観察され た.1000回の試行から逆軌道と順軌道で,X˜0 = X0となったのが788回あり,

3.3. 収束 f0に近い.すなわち,対称性を利用して生成した2値系列(式(3.20))は逆計 算を用いれば,0.75以上の確率で,初期値が求まる.このような2値系列は情 報セキュリティにそのまま応用することは不適切である.

N = 128ビットの整数ロジスティック写像の順計算と逆計算のデータの一例

を付録Bに示す.