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疾病性と社会復帰要因

ドキュメント内 shinpan handbook vol2r 1 1 (ページ 121-124)

退院許可申立審判における評価と着目点 1. 医療観察法審判における医療の必要性

2. 疾病性と社会復帰要因

ことが多くなってきている。

観察法における『入院治療』や『通院治療(入院によらない治療)』、『不処遇(医

が比較的軽く、医療観察法による通院治療や地域処遇の可能性が大きい場合が 多かった。

しかし、医療観察法の審判において『退院申立て』や『処遇終了申立て』が

の重要性が認められてきている。また、当初審判においても、通院決定や不処 遇の決定が予想以上に多く、そして、関係者の間で医療観察制度に対する理解 が進み、地域での環境要因などを考慮することによる「入院と通院」、あるいは

○退院許可申立審判における評価と着目点

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取り上げられる機会が増加している。

『退院申立て審判の判断』、『当初審判における通院治療(入院によらない治療)

の判断』、『処遇終了や不処遇(医療観察法では処遇しない)の判断』)など、地

般の精神医療においても、精神障害者が退院し、社会復帰していく過程では、医 療機関、保健所、精神障害者関連の社会復帰施設などの援助体制の構築や家族も

体制や緊急時対応(クライシスプラン)等が重要となることでも明らかである。

精神障害者のケアマネジメントや地域ケア計画を評価していくうえで必要な 生活スキルに対応した援助方法、社会復帰施設や福祉関連制度などの社会資源

こと、総合的な地域における処遇計画を作成することが必要であり、地域生活 への円滑な移行には、非常に有効とされている。そして、これらは、精神障害 者が地域で生活していくための重要な評価項目とされている。

一般の精神医療 ・ 福祉分野においても、退院できる病状と地域生活には、あ る程度の隔たりがある場合が多く、それを埋めるものとして精神障害の社会復 帰施設や福祉関連制度など社会資源が整備されてきた。医療観察法の対象者は、

退院できる病状と地域生活の間に、より隔たりが大きくなる場合が多く、総合 的な地域における処遇計画(医療観察法においては『処遇実施計画』)や環境要 ている。また、精神保健審判員及び精神保健参与員は、医療観察法における社

あれば指定入院医療機関や保護観察所等の関わり方自体について、是正の必要 などの意見を伝えていかなければならない。

○退院許可申立審判における評価と着目点

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医療観察法 第 42 条《入院の決定》について 社会復帰の状況を考慮する具体例

第 156 回国会 法務委員会 第 10 号〔平成十五年五月八日〕 議事録より抜粋

○委員(浜四津敏子君)  〔中略〕本人の病状、またそれに加えてその生 活環境に照らし治療の継続が確保されるか否か、また同様の行為を行う ことなく社会に復帰することができるような状況にあるか否かといった 事柄をも考慮するというお答えでしたが、少し具体的な例を挙げて御説 明いただけないでしょうか。

○衆議院議員(漆原良夫君) 二点についての具体例を示せという御質問 でございますので、例えば身近に適当な看護者がおりまして、本人を病 院に通院させたり、あるいは定期的に服薬をさせるということが見込ま れるような場合には、これは治療の継続が確保されるであろうというふ うに考えるところであります。

  また、もう一方の例は、例えば常に身近に十分な看護能力を有する家 族がいらっしゃると。仮に、本人の病状が悪化して問題行動に及びそう になった場合に、直ちに適切に対処することが見込まれるような場合に は、同様の行為を行うことなく社会に復帰することができるような状況 にあるであろうというふうに考えております。

○退院許可申立審判における評価と着目点

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12.医療観察法審判と通院処遇

 医療観察法による医療の必要性については、3要件を前提として決定されるが、

その医療が入院による医療か入院によらない医療かを判定する場合には、本人の 病状や地域処遇の状況などから総合的に判断しなければならない。当初審判のた めの医療観察法鑑定では、前記の3要件に関する判定のほかに、医療観察法によ る医療が必要と認めた場合には、入院による医療か入院によらない医療かを判定 するために、すなわち、対象者の精神症状、性格傾向、生活技能、家族状況等、

対象者の全体像を明らかにするために、鑑定は多職種チームで行われることが勧 められている。臨床心理技術者による心理検査等の評価、看護師による病状観察 報告、薬剤師による薬剤の反応性評価、さらに、作業療法士による評価、精神保 健福祉士からの対象者の生活環境や状況、家族についてなど社会復帰要因に関す る情報が鑑定書に記載され、共通評価項目の評価についてもチーム全体で議論の うえで確定される。入院か通院かの判定については、最終的には、鑑定医の責任

結果報告書が加わり、さらに、精神保健参与員の意見をききながら合議体が決定 を下すことになる。

 入院か通院かの判定においては、絶対的な判断基準はなく、対象者の病状とと もに、地域における支援体制の整備状況が影響を与える。あえて入院によらない 医療の適用基準をあげるとすれば、平成17年6月に司法精神医療等人材養成研 修企画委員会・医師部会が発表した適用基準では「入院による医療の必要性が無 く、かつ、対象者が医療の必要性を十分に認識し、通院医療に対する十分な同意 が得られる場合。ただし、この判断は慎重になされなければならない。」とある。

また、後述するが、入院医療における「社会復帰期の到達目標」や「退院申し立 て時の評価」等が参考となる。実際の判定では、比較的都市部で、デイケア、訪 問看護ステーション等が整備されている場合には、通院処遇を選択しやすい。ま た、本人の病状を見守ることができる家族が存在している場合や、夜間について も見守りが可能な居住施設の存在する場合には通院の可能性が高くなる。

 当初審判の結果、入院医療を経ずに直接に通院処遇となる場合が少なくない。

事例としては気分障害や物質使用障害が入院医療に比較して多い。地方裁判所に おける審判では、カンファレンスも含めて協議を繰り返した後に、決定をするわ

○医療観察法審判と通院処遇

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