6.3 実験結果
6.4.1 異なる厚さのマスクによる孔加工実験
96 6.4考察
97 図6.9にマスク(2枚)の任意パスにおけるマスク孔断面の顕微鏡写真を示す.マスク孔エッ ジ部は0パスで直角だが,パス数が増加するに従い径方向と鉛直方向へ摩耗が進展している ことが確認された.15パス時に鉛直方向への摩耗がCFRP孔端面まで到達し,それ以降は加 工孔入口が径方向へ速く拡がっていくと考えられる.
Fig. 6.10 Enlargement of hole diameters at entrance side by each number of passes
図6.10に各パスでの加工孔入口径の拡がり量を示す.拡がり量は,任意パスの孔入口径と 1パスの孔入口径との差を表す.グラフの傾きから,孔入口径の拡がり方は 3 ステージに分類 できる.マスク(2 枚)に注目すると,貫通点までは 7.9µm/パス,鉛直方向マスク摩耗の CFRP 孔端面到達点までは,4.8µm/パス,それ以降は 9.2µm/パスとなっており,順にステージ1・2・3 とする.
摩耗工程の模式図を図6.11に示す.ステージ1では孔が非貫通のため砥粒が孔内部で乱 反射し,マスク孔を拡げる.ステージ 2 では孔が貫通し,砥粒は乱反射せずに孔を通りすぎる ためマスク孔がステージ 1 ほど拡がらない.ステージ 3 では先述の通り,鉛直方向のマスク摩 耗がCFRPに到達しているため,どのステージよりも速くマスク孔が拡がると考える.
98 Fig. 6.11 Abrasion wears process of mask edge
これより,マスク(3 枚) のテーパ角が 5.26°と一番小さくなったのは,マスク厚が大きい程出 口径は小さくなること(図6.8)と,20パス直前までステージ2の状態だったため,入口径の拡が りが抑えられたためである.真円度について,孔入口はマスク孔の形状がそのまま転写される ため,パス数によらず一定である.孔出口は表6.3の14パスの出口写真のように円形でない形 状となるものもあるため,真円度は大きくなるが,パス数が増加するに従いマスク孔と同じ形状 の円形に近づき,0.1mm以内に収束する.これはCFRPが複合材で炭素繊維部と樹脂部で加 工進展に差が生じる[3]ためであると考える.故に,孔出口真円度はマスク厚によらず,パス数 を増加させることで小さくできる.
0 pass Stage 1(1-9passes) Stage 2(10-14 passes) Stage 3(15 passes) Mask
Compressed air and abrasives
99 6.4.2 マスク材に用いる各種板材へのブラスト加工実験
図 6.12 に各種板材の摩耗速度を示した.摩耗速度は 1 パス当たりの摩耗深さ変化量を表 す.
Fig. 6.12 Abrasion speed for each mask materials
定義から,摩耗速度が小さいほど耐摩耗性に優れる.本研究の目的は,従来のマスク
MS7100よりも摩耗の小さいマスクの開発のため,最も耐摩耗性に優れるプラスチックのグルー
プに注目した.高分子材料において弾性係数が小さい材料ほど損傷量が少ないという報告 [4]から,弾性係数と摩耗速度の関係を調べたが,良い相関が認められなかった.そこで,引 張特性の視点から破断伸びと摩耗速度の関係を調べたところ良い相関が得られた(図6.13).
破断伸びが大きいほど摩耗速度は小さくなることが分かった.これは破断伸びが大きいほど,
砥粒の衝突による材料の局部破壊に要するエネルギが大きくなるためだと考える.最小の摩 耗速度は UHPE の-0.0001µm/パスで,全く摩耗しなかった.これは砥粒の持つ運動エネルギ がUHPEの破壊エネルギにまで達していなかったためだと考える.これより,新マスクの材質に はUHPEのような破断伸びが大きい(400%程度)材料が適するといえる.
SUS304 A7075 A5052 C5191 PVC PETG PTFE UHPE MS7100 PMMA EPOXY
Abrasion speedμm/passes
100 Fig. 6.13 Relationship between abrasion speed and elongation at break