5.3 実験結果
5.4.2 エロージョン摩耗量からみた加工効率の検討
図 5.13 に φ2.0 での各種砥粒における理想孔体積に対するエロージョン摩耗量の割合(%) をパスごとで示す(式(5.2)参照).WA#320,WA#600は一旦評価Aに入るが,パスの増加につ れてマスク摩耗が発生,それに伴いエロージョン摩耗量も増加し,その結果評価 C に入る.
WA#1200はエロージョン摩耗量が小さく,30パスでは評価Eにとどまった.WA#320,WA#600
においてグラフに変曲点が存在するのは,図5.3 の加工孔断面形状の観察結果と比較すると,
孔の貫通以前は深さおよび孔径方向ともにエロージョン摩耗が進展するが,貫通後は径方向 のみのエロージョン摩耗となり,エロージョン摩耗量の増加が小さくなるためと考えられる.
また,図 5.14にWA#320での理想孔体積(Vi)に対するエロージョン摩耗量(Vm)の割合をパ
スごとで示す.エロージョン摩耗量の割合は,10パスまではほぼマスク径の大きい順になり,増 加量は直線的になった.それ以降のパスでは,貫通した φ2.0 はエロージョン摩耗量の増加が 小さくなり,傾きが緩やかに変化した.
以上より,砥粒径や孔径が変化することにより,エロージョン摩耗に差が生じることが明らか になった.
83 Fig.5.13 Increase of erosion volume with respect to ideal volume of WA#320,WA#600 and WA#1200
Fig.5.14 Increase of erosion volume with respect to ideal volume of WA#320,
dia.2.0~dia.0.10 mm
84 Table 5.5 Relationships erosion volume and mechanical properties by WA#320,WA#600 and WA#1200
ここで,各種砥粒の密度,粒径から質量を算出し,エロージョン摩耗に影響を及ぼす一定時 間当たりのエロージョン摩耗量の違いを考える.10パス加工後の加工孔のエロージョン摩耗量 と各種砥粒の質量を表 5.5に示す.砥粒の質量 m(g)は,砥粒形状を球と仮定し,砥粒径をd (cm),密度をρ (g/cm3)としたとき,体積と密度の積としてm = 4/3×π(d / 2)3×ρで求めた.
次に,表 5.5 の加工孔のエロージョン摩耗量(実測値)と砥粒の質量(計算値)の間に差が生 じた原因を考察する.ここで,砥粒の運動エネルギはE = 1/2mv2(mは砥粒質量,vは砥粒速 度)の式で表される.今回使用したブラスト装置(ELP-1TR)は,砥粒を初速0 の状態から圧縮 空気によって加速させるが,この際質量が小さい方が加速されやすいものと考えられる.よっ て各粒子の加速後の速度をそれぞれv320, v600, v1200とすると,v320< v600< v1200であると考え られる.図5.15に示すように,vは砥粒が単位時間に通過する深さ方向の距離Lに比例すると したとき,一定時間にマスク径を通過する砥粒数NはN ∝v である.さらに,砥粒濃度を考え ると,WA#320と比較して平均粒径の小さいWA#600,WA#1200の方が同じマスク径に対して 衝突する単位面積あたりの砥粒数が多くなる(図 5.16).各粒子の単位面積当たりの衝突砥粒 数をそれぞれA320,A600,A1200とすると,単純計算でA600 = 4×A320,A1200 = 16×A320 となる.
以上より,各種砥粒における一定時間にマスク径を通過する砥粒数 N を式(5.4)~(5.6)に示 す.
Media
Erosion volume (mm3)
Specific gravity
Media diameter (µm)
Media mass (µg) Measured value
dia.2.0 10pass Physical property Physical
property Calculated value WA
#320 5.77 100% 3.9 100% 40 100% 0.131 100%
WA
#600 2.77 50%
3.9 - 20 - 0.016 13%
WA
#1200 0.351 6%
3.9 - 10 - 0.003 1.6%
85 (5.4)
(5.5)
(5.6)
Fig. 5.15 The difference of the abrasive grains number N which passes through the same mask size by v
Fig.5.16 Density of blast medias
Fig.5.17 Evaluation of optimum medias in processing hole diameter about hole accuracy 200 pieces
100 pieces 50 pieces
Diameter of medias Mask diameter
Mask diameter
Particle number Particle number
86 Fig.5.18 Evaluation of optimum medias in processing hole diameter about processing efficiency
これらの式より,一定時間に CFRP へ衝突する総砥粒数WA#320<WA#600<WA#1200 の順となり,
WA#600,WA#1200 のエロージョン摩耗量の比率の方が質量の比率と比較して大きくなったと考え
られる.