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葉の老化が UVA 照射による vinblstine 蓄積に対して与える影響

第 4 章 赤色光の光強度、 UVA 強度、葉の老化が vinblastine 生産に与える影響

実験 3 葉の老化が UVA 照射による vinblstine 蓄積に対して与える影響

材料は第2章と同じ品種を用いた。育苗条件は第2章実験2と同じにした。

2. リーフディスクの作成

実験1と同様に赤色光下で栽培した播種63日後の株の第2、3、4葉対を収穫し、各葉位 から直径7 mm のリーフディスクを作成した。25枚のリーフディスクを蒸留水で満たした

直径86 mmのシャーレに浮かべた。このシャーレを葉位ごとに10枚作成した。

3. UVA照射処理

光処理区は150 μmol m-2 s-1の赤単色光(UVA (−))と5 W m-2のUVAに150 m-2 s-1の赤単

色光(UVA (+))の2試験区とした。光周期は明期16時間、暗期8時間とした。室温は23℃

とした。

4. サンプリング方法およびアルカロイド分析

サンプリングおよびアルカロイドの分析は実験3と同じように行った。

実験4 UVA光源との位置・高さ・角度がUVAの強度に与える影響

UV蛍光灯の中央から光源の長辺に対し垂直方向(x軸)に0、80および160 mm地点か ら垂直の栽培面をUVA測定点とした。x軸の各測定点から光源に向かって垂直方向(z軸)

に0、10、30、50、70、100 mm地点でUVA強度を測定した。UVメーターのセンサーは栽 培面に対して水平(0°)にして測定を行った。次に、x軸における各測定点の栽培面でUV メーターのセンサーの角度を栽培面に対して水平(0°)から、15°刻みで120°まで変化させ

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てUVA強度の測定を行った。UVA強度は3回測定を行い、平均値を求めた。

60 3 結果

実験1 異なる光強度の赤色光下で生育したニチニチソウに対するUVA照射がvinblastine 産に与える影響

Fig. 4-1に生育の結果を示した。すべて生育パラメーターは処理0日後と比べて処理5日

後で光強度に関係無く増加した。また、two-way ANOVAにおける処理日数のp値は0.01以 下で有意差が認められた。他方で、150 μmol m-2 s-1と比べて300 μmol m-2 s-1ですべての生育 パラメータの平均値は大きかったが、地上部および全葉新鮮重において有意差は認められ なかった(Fig. 4-1 AおよびB)。ただし、全葉乾物重のみ光強度のp値は0.05以下で有意差 が認められた。

Fig. 4-2 に全葉に含まれる各アルカロイド濃度の結果を示した。vindoline とcatharanthine

濃度は処理0日後と比べて処理5日後で光強度に関係無く減少傾向にあり、two-way ANOVA における処理日数のp値は0.05以下で有意差が認められた(Fig. 4-2 AおよびB)。他方で、

光強度間では処理0および5日後の両方で300 μmol m-2 s-1と比べて150 μmol m-2 s-1で高い 傾向にあったものの、有意差は認められなかった。第 2 章実験 2の結果と同じ傾向を示し たものの、アルカロイド濃度は試験区間での差が第4葉の結果より小さかった。

vinblastine濃度は、処理0日目には150、300 μmol m-2 s-1の両方で検出することが出来な かった(Fig. 4-2 C)。処理5日後は、300 μmol m-2 s-1と比べて150 μmol m-2 s-1でおよそ2倍 濃度が高かった。

Fig. 4-3に株あたりのアルカロイド収量の結果を示した。vindolineとcatharanthine収量は、

濃度差が生育差に比べて小さかったため、生育差の影響が大きく観察された(Fig. 4-3 Aお よび B)。そのため、処理 0 日と 5 日後を比較すると増加する傾向が見られた。two-way ANOVAにおける処理日数のvindolineおよびcatharanthine のp値は、それぞれ0.05以下お よび0.01以下で有意差が認められた。光強度間では、処理0日と5日後の両方で150 μmol m-2 s-1に比べて300 μmol m-2 s-1で高くなった。特にcatharanthine収量は、光強度における

two-way ANOVAのp値が0.05以下で有意な差が認められた。vinblastine収量は、処理5日

後の150と300 μmol m-2 s-1でほとんど差がなかった(Fig. 4-3 C)。総アルカロイド収量(Fig.

4-3 D)は、vindolineおよびcatharanthine収量と0.9以上の強い相関を示しており、同じ傾向 にあった。

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実験2 UVA 照射強度が赤色光で生育したニチニチソウの葉におけるvinblastine 生産に与 える影響

vindoline およびcatharanthine濃度は、UVA 強度が高まるに従って低くなっており、それ

ぞれEquation 7および8に回帰された(Fig. 4-4 AおよびB)。UVA強度に対するvindoline

およびcatharanthine濃度の低下量は、UVA 強度が低いときに大きく、高いときは小さかっ

た。特に、vindolineでは顕著にその傾向が確認された。

vindoline concentration

= 13.4015

2.0746 +𝑥𝑥 (Equation 7)

catharanthine concentration

= 30.8377

4.5020 +𝑥𝑥 (Equation 8)

x:UVA強度(W m-2

vinblastine濃度は、vindolineやcatharanthineとは反対にUVA 強度の増加に従って、増加 しており、Equation 9の直線に回帰された(Fig. 4-4 C)。

vinblastine concentration = 48.482𝑥𝑥+ 3.452 (Equation 9)

x:UVA強度(W m-2

vindoline/catharantihne 比は、UVA 強度の増加に従って小さくなっており、Equation 10に 回帰された(Fig. 4-4 D)。

vindoline/catharathine ratio = 6.8174

10.1675 +𝑥𝑥 (Equation 10)

x:UVA強度(W m-2

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実験3 葉の老化がUVA照射によるvinblstine蓄積に対して与える影響

培養5日後のvindolineとcatharanthine濃度間には、r = 0.9569と高い相関を示した。UVA

(−)におけるvindoline濃度は第3葉で最も高く、第2葉と第4葉間には差がほとんど無かっ

た(Fig. 4-5 AおよびB)。UVA (+)では、第2葉で最も高く、上位葉になるに従って減少し

た。catharanthine濃度は、UVA (−)において第3葉で最も高く、次に第4葉、第2葉の順で

あった。UVA (+)のcatharanthine濃度は、vindolineと同じ傾向を示した。加えて、葉位に関

係無くUVA (−)のvindolineおよびcatharanthine濃度は、UVA (+)より高かった。

培養5日後のvinblastine濃度は、UVA (−)ではすべての葉位でほとんど変化が見られなか

った(Fig. 4-5 C)。他方で、UVA (+)では第4葉で最も高く、下位葉になるにつれvinblastine

濃度が減少する傾向が見られた。

vindoline/catharanthine比は、UVA の有無に関わらず第 4葉で他の葉位に比べて低かった

(Fig. 4-5 D)。また、すべての葉位でUVA (−)と比較してUVA (+)で低い傾向にあった。特

に、第4葉のUVA (−)とUVA (+)の差は大きかった。

実験4 UVA光源との位置・高さ・角度がUVAの強度に与える影響

Fig. 4-6に各測定点におけるUVA強度を示した。x軸160 mm地点では0 mm地点と比較

して栽培面(z軸0 mm)でUVA強度が約10 %低下した。z軸の値が大きくなると光源直 下(x軸0 mm)ではUVA強度が増加したが、x軸80および160 mmでは減少傾向が見ら れた。

測定時のセンサーの設置角度が大きくなるとx軸の測定点に関係なくUVA強度は低下し た。特に75°と90°の間で大きな差が見られた。また、x軸の各測定点におけるUVA強度の 範囲(最大値―最小値)は、0 mmで最も大きく、160 mmで最も小さかった。

63 4 考察

1. 葉の相互遮蔽がvinblastine生産に与える影響

UVA照射によって合成されるvinblastine量は、vindolineおよびcatharanthine濃度とUVA 強度によって決定されると考えられる。300 μmol m-2 s-1で栽培した株では葉数が多い傾向に あり、葉同士の重なりが、他の光強度に比べて多いと考えられた(Fig. 2-7)。そのため、300

μmol m-2 s-1で栽培された株の葉の相互遮蔽効果は大きいと考えられる。他方で、UVA強度

の低下はvinblastine濃度を著しく低下させた(Fig. 4-4 C)。この結果は、葉の相互遮蔽によ

りUVAが透過しない場合、下位葉ではほとんどvinblastineを蓄積しないことを示唆してい る。そのため、150と300 μmol m-2 s-1の試験区間でvindolineとcatharanthine濃度にほとんど 差が無いにも関わらず、vinblastine濃度には大きな差が表れたと考えられた(Fig. 4-2)。

2. vinblastineおよびMIA生産に最適な赤色光の光強度

赤色光の光強度は、株あたりのvinblastine収量にほとんど影響を与えなかった(Fig. 4-3)。

これは生育量の差と、vinblastine濃度差が釣りあったためである(Fig. 4-1 CおよびFig. 4-2 C)。しかし、エネルギーあたりのvinblastine生産量は、150 μmol m-2 s-1で高いため、150 μmol m-2 s-1での栽培のほうが vinblastine 生産には優れていると考えられた。また、vindoline と

catharanthineを含めた総アルカロイドのエネルギーあたり生産量でも優れていた。

3. vinblastine生産に最適なUVAの光強度

本研究では、vinblastine濃度がUVA強度の増加に伴い線形に増加したことから、vinblastine 生産に最適なUVA強度は10 W m-2以上であると推定された(Fig. 4-4 C)。二量体MIA生合 成時のカップリング反応は、vindolineとcatharanthineが1:1で結合する反応のため、カッ プリング反応のみ生じる場合、vindoline/catharanthine比はUVA 強度に関わり無く変化しな いはずである。しかし、UVA強度の増加に伴いvindoline/catharanthine比は低下した(Fig. 4-4 D)。この結果は、二量体合成以外に利用される vindoline が、catharanthineと比較して相対 的に多いことを示している。化学量論上カップリング反応効率は、二量体MIA量に対して

vindolineとcatharanthine量が多いほうが高い。そのため、二量体合成以外に利用される量の

多いvindolineが、UVA強度増加に伴うvinblastine増加の限界を決定すると考えられる。そ

のため、高強度のUVA照射を行うには、UVA照射前のvindoline濃度を高める必要がある。

ただし、植物体のUVAに対する耐久度の問題もあるため、vinblastine合成に最適なUVA強

度はUVA照射前のvindoline濃度または植物の耐久性によって変化すると考えられた。

4. 葉の老化がUVA照射によるvinblastine生産に与える影響

UVA 照射によって合成される vinblastine 量は葉の老化度合いによって異なることが確認

された(Fig. 4-5 C)。そのため、vinblastine生産・蓄積能力は若い葉で最も高くなると考え

られた。catharanthineのトランスポーターであるCrTpt2の発現量は、若い上位葉と老化した

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下位葉を比較すると若い上位葉で多いことが確認されている(Yu and De Luca, 2013)。その ため、カップリング反応時に必要なトランスポーターも葉の老化の影響を受ける可能性が 高く、老化した葉ではカップリング反応に必要なvindolineとcatharanthineが輸送できない

ため、vinblastine濃度が低下したと考えられた。また、UVA (−)における第2葉のvindoline

およびcatharanthine濃度が第4葉とほとんど変わらないにも関わらず、UVA (+)では第2葉

のほうが第4葉より濃度が高かった(Fig. 4-5 AおよびB)。これは、vindolineとcatharanthine が輸送できず、カップリング反応に利用できなかったために生じたと考えられた。

他方、還元剤の量が3‘, 4’-anhydrovinblastineからvinblastineおよびleurosineへ変換される ときのそれぞれのアルカロイドへの変換率に影響を与えることが知られている。Hirata et al.

(1997)は、ニチニチソウの葉から抽出した粗抽出液に異なる濃度のNADHを添加後、UVA 照射を行いカップリング反応を起こしたところ、NADH濃度が低下するにつれleurosineが 多くなり、vinblastineは減少した。老化した葉は、若い葉に比べて酸化物量が多く、NADH などの還元剤が酸化物の消去に利用されるため、若い葉に比べ還元剤量が減少しているこ とが予想される。そのため、カップリング反応が起こったとして還元反応が起こらないため vinblastineに変換されない3‘, 4’-anhydrovinblastineが多くなったと考えられた。

5. 葉の形状や着生角度がvinblastine生産性に与える影響

UVA の強度は光源に対して水平・垂直方向との距離および角度によって大きく変化した

(Fig. 4-6)。そのため、本研究のようなUVA 光源が植物の直上かつ一定の間隔でしか設置

できない場合、株と光源の位置関係や葉の着生角度によって受光できるUVAの強度が大き く変化することが明らかになった。そのため、UVA を最も多く受光できる葉は、光源に対 して水平な葉であった。本研究で用いたタイタンを赤色光で栽培すると、葉が下向きに着生 し、上位葉でも光源に対する角度は水平ではなかった(Fig. 2-2)。UVA利用効率を高めるに は着生する葉が光源に対して水平な品種を選択することが重要であると考えられた。加え て、赤色光での栽培は多くの葉で葉巻を起こしていた(Fig. 2-2)特に、赤色光処理前に出葉 している第2、3葉は強い葉巻傾向が観察された。強い葉巻を起こすと葉面の大部分が、光 源に対して垂直になってしまうため、UVA受光効率が低下し、vinblastine生産性を低下させ ている可能性が考えられた。

6. UVA照射がvindolineの減少に及ぼす影響

ニチニチソウが catharanthine を蓄積する生態的機能の一つとして抗酸化物質様の働きを しているとの指摘がある。UVAや青色光により励起されたFMNは、一重項酸素などの酸化 力の強い物質を生成するため、励起状態のFMNが過度に細胞内に蓄積するのは好ましくな い。そのため、catharanthineは励起されたFMNに酸化され、その後分解またはvindolineと 結合し安定的な二量体になることで、細胞内の恒常性維持に寄与している可能性が示唆さ れている。Duangteraprecha et al.(1997)が行ったin vitro系での実験では、UVA強度が増加

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