第 4 章 江蘇省の電子通信設備製造業の発展状況と動向
1. 産業の現状
江蘇省は長江デルタ経済区の北部に位置し、上海市に隣接し地理的には優位な位置にある。自 然資源は豊富で、電子通信設備製造業の発展に必要な物流・資金・情報に基礎的な条件を提供し ている。江蘇省の科学研究機関や研究者、技術市場の貿易額は全国上位に入っており、各種各層 の人的資源のレベルは高く、コストは比較的安価に抑えられており、電子通信設備製造業が必要 とする人材需要を満足させている。過去数年の発展を経て、江蘇省の電子通信設備製造業はすで に同省の経済成長や構造のレベルアップをもたらす支柱産業となっており、総合力を備えた戦略 的産業にもなっている。
2004年、江蘇省の電子通信設備製造業の一定規模(国有企業と年間売上高500 万元以上の非 国有企業)以上の工業企業は1,147社に上り、従業員総数は59万5,100人に達している。生産 総額は前年比58.1%増の4,105億1,200万元に達し、売上高は前年比44.8%増の4,068億7,600 万元に上っている。また、同業の輸出額は前年比89.9%増の2,695億2,400万元となった。2002 年から 04 年までに、江蘇省の電子通信設備製造業の工業生産総額の平均成長率(CAGR)は 70.1%、売上高は同71.2%となっている。
表 4−1 2002〜2004年江蘇省電子通信設備製造業の主な経済指標 2002年 2003年 2004年
企業数(社) 792 954 1147
工業生産額(億元) 1,418.97 2,595.77 4,105.12 新製品の生産額(億元) 407.49 383.06 475.28 売上高(億元) 1,387.84 2,810.59 4,068.76 輸出額(億元) 747.48 1,419.42 2,695.24
従業員数(万人) 29.06 47.21 59.51
注:売上高500万元以上の規模の企業を集計。工業生産額、売上高は当年度の値。
出典:江蘇省統計局、MIRU
産業構造から分析すると、現在、江蘇省の電子通信設備製造業は、電子コンピュータ製造業を 中心とし通信設備及び電子部品製造業が同時に発展している状況にあり、相対的に大まかに整備 された通信産業チェーンを形成している。04 年の電子コンピュータ製造業の売上高は産業全体 の 41.6%を占め、電子部品、電子加工部品、通信設備製造メーカーの売上高はそれぞれ全体の 20.5%、16.6%、10.1%を占めている。
売上高の増加から分析すると、04 年の電子加工部品、電子部品、電子コンピュータの各製造 業とその他の電子設備製造業の成長が比較的速くなっている。
表 4−2 2004年江蘇省電子通信設備製造業の産業構成(売上高ベース)
産業 売上高(億元) 電子通信設備製造業
全体に占める割合 2003年比
電子通信設備製造業(全体) 4,068.76 100% 44.8%
通信設備製造業 412.04 10.1% 19.4%
放送設備製造業 5.95 0.1% 24.5%
電子コンピュータ製造業 1,691.70 41.6% 44.6%
電子ユニット部品製造業 834.45 20.5% 46.3%
電子パーツ部品製造業 674.78 16.6% 66.3%
家庭用オーディオビジュアル設
備製造業 349.20 8.6% 32.0%
その他の電子設備製造業 101.72 2.5% 119.0%
注:売上高500万元以上の規模の企業を集計。売上高は当年度の値。
出典:江蘇省統計局、MIRU
現在、江蘇省の重点電子通信設備製品は基本的に多国籍企業の分業・協業システムに組み込ま れ、国際的なブランドを本土内で生産する OEM(相手先ブランドによる生産)受託方式で行わ れている。とりわけ、コンピュータの外部設備や電子部品、デジタルオーディオビジュアル(AV)
製品などの分野では比較的強い市場競争力を備えている。2004 年、江蘇省の主要電子通信製品 の生産量は大幅に増加した。電子部品や半導体加工備品の生産量はそれぞれ975億個と199億個 でそれぞれ前年比38.9%、47.4%の増加となった。集積回路(IP)の生産量は63億個で前年比 70.3%の増加となった。パソコンの生産台数は03年の516万部から115.3%増の1,111万台とな った。ディスプレーは前年比 68%増の 6,961 万台だった。通信・コンピュータ及びその部品を 代表とする投資的な製品の急速な発展が江蘇省を中国通信産業製造業の主要生産基地としてい る。
表 4−3 2003〜2004年江蘇省主な電子通信製品の生産・販売状況
生産量 販売量
製品名 単位 2003 年
2004
年 前年度比 2003 年
2004
年 前年度比 携帯電話 万台 510 263 -48.4% 490 255 -48.0%
プログラム制御交換
機 万台 140 134 -4.3% 134 130 -3.0%
電話機 万台 230 254 10.4% 221 246 11.3%
カラーテレビ 万台 467 437 -6.4% 448 424 -5.4%
レコーダー 万台 102 99 -2.9% 98 96 -2.0%
オーディオコンポー
ネント 万台 144 107 -25.7% 138 104 -24.6%
VCD/DVD プレイヤ
ー 万台 925 980 5.9% 888 951 7.1%
電子コンピュータ 万台 516 1,111 115.3% 495 1,078 117.8%
ディスプレイ 万台 4,143 6,961 68.0% 3,977 6,752 69.8%
プリンター 万台 11 12 9.1% 11 12 9.1%
電子パーツ部品 億個 702 975 38.9% 674 946 40.4%
ブラウン管 万枚 604 624 3.3% 580 605 4.3%
ディスクリート 億個 135 199 47.4% 130 193 48.5%
集積回路 億個 37 63 70.3% 36 61 69.4%
注:売上高500万元以上の規模の企業を集計。
出典:江蘇省統計局、MIRU
2. 産業の特徴
2004年、江蘇省の電子通信設備製造業は以下のいくつかの特徴がある。
(1)売上増の勢いが強靱
電子通信設備製造業の売上高は前年比44.8%増の4,068億7,600万元で省全体の工業売上高の 16.7%を占めた。同製造業の利益と支払い税金の伸びと生産額・売上高の伸びは平行しており、
04年の利益総額は前年比65.2%増の133億5,000万元となり、生産効率の協調発展は良性な循 環構造を形成している。
(2)産業集積を基本的に構成
世界規模での情報産業の新たなステージに入り、長江デルタに資本が移転されるに伴って、江 蘇省の電子通信設備製造業は外部の条件と内部環境を良くするように発展させてきた。とりわけ 経済が比較的発達した江蘇省南部の電子通信設備製造業はその先進的な発展を遂げたといえる。
2004 年、江蘇省の電子通信関連プロジェクトを主とする通信産業園区(工業団地)には、蘇 州高新技術産業開発区(蘇州新区)、蘇州工業園区、南京江寧経済技術開発区、無錫新区、昆山 経済技術開発区、呉江経済技術開発区、南京珠江路科技園区、南京経済技術開発区の8つの情報 産業園区がある。こうした園区は中国電子通信設備製造業が集積した効果のある最良の地区とい え、同時に世界的なコンピュータ部品(例えばマウス、ディスプレー、メインボード、レーザー ディスクなど)や通信用光ファイバー製品の生産・研究開発・輸出基地となっている。
(3)外資と香港・マカオ・台湾資本が主体に
蘇州、南京、無錫は江蘇省の電子通信設備製造業の最も主要な生産都市となっている。このう ち、蘇州は省全体の電子通信設備製造業トップの絶対的な優位性を備えている。資本構成から見 ると、外資及び香港・マカオ・台湾資本が主導的な地位を占め、蘇州市が省全体の9割近くの外 資と香港・マカオ・台湾資本を導入している(表4-4)。
(4)大型企業の規模が拡大
2004年、江蘇省電子設備製造業の一定規模以上の企業数は1,147社に上り、このうち10社は 中国電子情報企業トップ100 社にランクインしている。企業数は前年と比べほぼ横ばいながら、
これら企業の売上高は前年比 12.8%の増加となり、全国の電子産業トップ 100 社全体の売上高 の 7.4%を占めた。このうち、南京熊猫電子集団有限公司は省内でトップとなり、売上高は 280 億元、輸出額は90億4,000万元に上った(表4-5)。
表 4−4 2004年、江蘇省内の各市の電子通信設備製造企業の売上高及び各種資本分布状況(%)
主な投資資本 地区 江蘇省全体の売上
高に占める割合 個人資本の割合 香港・マカオ・台
湾企業資本の割合 外資資本
江蘇省全体 100.00 100.00 100.00 100.00
蘇州市 65.57 21.77 78.80 76.47
そ の う ち :
昆山市 16.90 6.03 29.16 14.38
南京市 17.09 16.76 4.57 9.04
無錫市 10.69 18.76 11.19 12.32
常州市 3.20 11.61 2.34 0.79
南通市 1.48 17.01 0.69 0.42
鎮江市 0.88 2.74 0.26 0.16
揚州市 0.65 6.39 1.65 0.74
徐州市 0.16 0.32 0.35 −
泰州市 0.14 1.09 0.07 0.03
塩城市 0.07 2.05 0.04 −
淮安市 0.03 1.15 0.04 −
連雲港市 0.03 0.28 0.01 0.03
宿遷市 − 0.07 − −
注:売上高500万元以上の規模の企業を集計。「-」=限りなく0に近い。
出典:江蘇省統計局、MIRU
表 4−5 2005年第19回中国電子情報トップ100企業にランクインした江蘇省企業
順位 会社名 売上高(億
元) 主な製品
8 南京熊猫電子集団有限公司 280.0 携帯電話、移動基地局、プログラ ム制御交換機、カラーテレビ 30 常州新科電子集団有限公司 72.9 カーエレクトロニクス、エアコン、
液晶カラーテレビ
35 南京華東電子集団 64.5 カラーブラウン管、エアコン、蛍 光灯
39 呉江永鼎集団有限公司 50.2 通信ケーブル、光通信ケーブル、
電力ケーブル
47 呉江亨通集団有限公司 36.5 通信ケーブル、光通信ケーブル、
光ファイバー、電力ケーブル 55 江蘇宏 電子信息集団有限公司 图 30.1 VCD/DVD プレイヤー、光ファイ
バー、電力ケーブル、通信機器 63 江蘇中天科技集団 24.8 光ファイバー、光ケーブル、特殊
光ケーブル
72 華潤微電子(控股)有限公司 21.0 集積回路、ディスクリートデバイ ス
89 江陰新潮科技集団有限公司 13.9 集積回路、ディスクリートデバイ ス、信号ランプ、電力メーター 99 江蘇紫金電子集団有限公司 12.6 電子コンピュータ周辺設備、プリ
ント基板、電力用保護機器 注:売上高は集団(グループ)全体の連結売上高の値。
出典:江蘇省信息産業庁、MIRU
(5)外向型経済が急速に発展
外向型経済は江蘇省電子情報産業の1つの大きな特徴となっている。経済のグローバル化によ り、中国は世界の製造業基地としての優勢が明らかになっている。2004 年、江蘇省の電子通信 設備製品の輸出は急速に伸び、省全体の電子通信設備製造業の輸出額は前年比89.9%の2,695億 2,400万元となり、省全体の輸出額の46.6%を占めた。
蘇州市や南京市など海外企業の投資が集中している地域の成長は比較的速く、こうしたことが江 蘇省の情報産業の貿易面での発展の牽引している。中国商務部が発表した 04年の輸出企業トッ プ200社のうち、江蘇省内の企業は43社がランクインした。このうち、江蘇省電子通信設備製 造業企業は35 社となり、前年より10 社増加し、全体の17.5%を占めた。ランクインした企業 のトップは、名碩電脳(蘇州)有限公司の5位だった。35社の04年の輸出総額は295億米ドル で、トップ200社全体の輸出額1,811億米ドルの16.3%を占めた。
地域別で見ると、35社の企業のうち蘇州市の企業は30社で、無錫2社、南京2社、常州1社 となった。102 位にランクインした江蘇新科電子集団有公司が中国本土企業であったのを除き、
ほかのランクイン企業はすべて外資企業か香港・マカオ・台湾企業だった(表4-6)。
表 4−6 2004年中国輸出トップ200企業にランクインした江蘇省企業
順 位 企 業 名 輸出額(米ドル)
5 名碩電脳(蘇州)有限公司 323,528 11 仁宝資訊工業(昆山)有限公司 242,051 12 明基電通信息技術有限公司 230,695 20 希捷国際科技(無錫)有限公司 174,205 22 友達光電(蘇州)有限公司 173,071 24 仁宝電子科技(昆山)有限公司 158,795 41 三星電子(蘇州)半導体有限公司 116,932 60 旭電(蘇州)科技有限公司 86,472 61 蘇州飛利浦消費電子有限公司 86,110 63 無錫夏普電子元器件有限公司 81,559 64 緯創資通(昆山)有限公司 79,535 69 南京LG同創彩色顕示系統有限責任公司 75,891 72 楽金飛利浦液晶顕示(南京)有限公司 72,648 87 蘇州三星電子液晶顕示器有限公司 62,623 89 志合電脳(蘇州工業園区)有限公司 62,169 90 仁宝電脳工業(中国)有限公司 61,238