一 一
1989 年度、 9 0 年度
「生活科」の教育内容・方法に関する研究(第 1 報)
A Study of Curricurm on New Subject Seikatuka" ( 1 )
木全清博(社会科教育) ・林正(健康) 村田昇(教育) ・秋山哲男(美術) 小田 豊(幼児教育)・児玉典子(心理) 木島温夫(技術科教育) ・東田充弘(理科教育)
松村京子(家庭科教育)
Kiyohiro KIMA T
A .
Tadasi HA Y ASI Noboru MURA TA .
Tetuo AKIY AMAYutaka ODA. Noriko KODAMA Haruo KONOSIMA. Mituhiro HIGASID
A .
Kiyoko M A TUMURA
1.新教科「生活科
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の研究課題と研究方法①
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二前科J
の設置と研究課題1989年の「教育職員免許法j と「小学校学育 指導法符iJの改訂に伴って、小学校教育におい て
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l刊↓」が新しく設l r i
された。小学校低学 年の 1. 2年生で、社会科・理科にかわる「生i ,~.科」の従業を行う必要がでてきた。 教員養成
学部においても
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!t二活科」に関する授業科目を 開講しなければならなくなったのである。1 ' 1 : .
活科jは戦後直後を除くと、戦後初めて 日延
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ーした教科である。しかしなカfら、この新し い教科については十分な教育現場の議論と討論 を断まえることなく、設置に向かつて準備がな されてきた。I '
f.i首科」設置をめぐる教育実践 J見場の反比、に、ある「よそよそしさJ I
しらけた」手同気が存在することは否定できない。実践現 場の緊急の必要よりも 上から"持ち込まれた
ことを現している。
さて、「生活科j とは、小学校低学年の子ど もに何を育てる教科なのか、どのような教育内 符・方法が適切なのか、学習指導要領で示され た「活動j内容の評価をどうするのかなど、多 くの点で検討を必要とすべき点があり、十分な 議論が必要である。また、「生活科」における
認識形成や実践的態度形成を考えるのに、現代 社会における「生活」とは何か、「生活
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をと らえる視点や観点とは何か、指導者側のまさに「生活認識
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生活そのものjの捉えかたこそ、鋭く問われてきている。
このように一教科を成立させるには、本来は 慎.flで十分な検討が必要である。小学校教育に
│勾わる研究者、実践者など関係する多くの人々 の慎重な検討をつうじて、低学年児童にとって 真に有意義な「生活認識
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生活意識J
をつか ませる教育内容・方法を構想すべきであろう。 ひとつの教科を成立させようということであ るから、目標一内容一方法一評価の一貫した教 育学的検討、具体的な教育内容一教材一教具や、授業形態・授業方法の教授方法論的検討、小学 生の心理学的特性の分析とりわけ低学年期の認 識や行動と生活意識の分析、そして教科の基礎 をなす 生活諸科学.. (それはどういうものか を含めて)の検討などは、さしあたっての研究 課題と考えられる。実践的な研究を進めていく
うえで明らかにしなければならないことは実に 多いのである。
上記のように考えると、教員養成学部におい ては、「生活科」の 教育法"・ 教材研究"へ の対応ということだけではなく、現実の小学校
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教育の全体において「生活認識jをどう形成す るのか、低学年の「生活認識jを育てる教育内 容・方法を原理的に考えなければならないだろ う。また、現にある各教科教育の理論と実践と の関わり合いをどうとらえるか、についても探 求しなければならなし、。教員養成学部の教育 学・心理学はじめ各教科教育の研究にあたるス タッフは、こうした課題に対して答えていく必 要があろう。
②「生活科
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の研究組織と研究方法滋賀大学教育学部では、 1989年7月6日に学 部内に「生活科jに関連する9つの専門分野の メンバーによる「生活科運営委員会jというプ ロジェクトチームを発足させた。このプロジェ クトチームは「生活科jの研究を進め、学部全 体として新教科「生活科jをどう受け入れてい くか、初等教員養成における「生活科jをどう 位置づけるか、どう実施していくかを検討する
ことになった。
「生活科
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の研究集団と担当する研究部門は、次のようである。
<r生活科
J
の全体構成と教科理論〉村田昇一一ー 全体構成及び道徳教育との関連 林 正 一 一 向 上 及 び 健 康 教 育 と の 関 連 木全清博一一向上及び社会科教育との関連 小田豊一一 向上及び幼児教育との関連 児玉典子一一同上及び子どもの発達との関連
<r生活科
J
の教材内容と教科教育〉秋山哲男一一教材内容及び図画工作との関連 木島温夫一一向上及び栽培園芸教育との関連 東田充弘一一同上及び理科教育との関連 松村京子一一向上及び家庭科教育との関連
「生活科jの研究を運営委員会では、当面次 のように 3年計画で構想した。
〈第l年次>(1989年度)
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生活科J
に関する基礎的資料(統合教科論、総合学習論、低学年教育論、低学年児童の心 理、こどもの生活意識)の収集
. I
生活科J
の先行実践(授業資料、教材資料、年間計画資料)の資料収集
〈第2年次>(1990年度)
・大学での「生活科
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の講義内容に関する研究 資料の作成. I
生 活 科J(
1、2年生)の授業実践プラン o oFh u
の検討(教材の実例集、授業記録方法論、子 どもの活動研究)
〈第3年次>(1991年度)
・大学での「生活科jの講義内容の検討 (講義 担当者の講義内容、学生向け「生活科」教材 資料集の作成)
. I
生 活 科J(
1、2年生)の実践事例の収集 と分析③「生活科jの研究経過
1989年度の第l年次の研究は、 12月まで4回 の研究会を実施した。第1回は7月6日、第2 回は9月14日、第3回は10月19日、第4同は12 月 6日に開催した。
第l・2回においては、「生活科jの設l官の 背京、文部省の学宵指導要領「生
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の分析、「生活科
J
の教育内谷と各教科の教材との関連 の学習会を行った。第3・4回においては、附属小学校の1989年 6月の「生活科」の授業を VTRで視聴して検 討すると/11J時に、福島大学での 「生活科」へ の対応方針"を資料にして討論を行った。また、
研究メンバーが彦根市城東小学校の「生活科
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のプラン・実践記録を収集したり、東京の和光 小学校の「生活勉強jの実践記録を収集した。
このほか、全体のテキストとして2冊の本を もとにメンバー全員の研究を深めた。
・保田叡一編『自己認識 自己概念の教育
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(ミ ネ ル ヴ7書房 1987年)•
il~ ;jく毅四郎『合科・総合学習と生活科 J (繋 明書房 1989年)とくに、前者の検討会では 自己認識"の概 念について議論が深められた。「生活科」の心 理学的基礎として 自己認識"が主張されてい るが、 自己認識"の概念について梶田叡一氏 の論理と説明についての問題点が出された。子 どもの発達全体のなかで、幼児期から児童期へ の 自 己 中 心 性 " 概 念 を め ぐ る 問 題 は 、 ピ ア ジェ・ワロン・ヴィゴツキ一以来の重大な論争 点である。
幼児期の対象認識(自然認識・社会認識・人 間認識など)の発達との関係で自己認識をとら えることや、子どもの発達論研究の流れのなか に、子どもの認識発達と活動を正しく位置づけ て理解することが提起された。現実の「生活科j
の発達理論への批判と論争点を議論していくこ とが確認された。今後の研究会でも時間をとっ て検討していきたい問題であると思う。
今回の報告は、第1年次の一応のまとめとい うことで、次年度以降も逐次報告する予定であ る。以下に、各研究担当者によるそれぞれの分 野の研究を報告する。
(木全清博)
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生活科J
の内容構成をめぐる諸問題 (1) 低学年の社会認議の発達と「生活科J
①「社会科存廃論争
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の意味するもの 小学校の社会科教育は、低学年の 1・2年生 の扱い方をめぐって、戦後の40年の問に深刻な 論争を経験してきた。いわゆる「低学年社会科 存廃論争jといわれるものである。この低学年 社会科(以下、低杜と略す)の存続か廃止かを めぐる論争の基底には、子どもの社会認識の発 達のとらえ方の問題があった。低学年期のこどもの社会認識の発達をどうと らえ、それに対する教育実践をどう進めるのか という、 社会認識の発達と教育"をめぐる大 きな理論的実践的立場の違いがあった。しかも、
文部省対民間教育運動の対立"の観を呈して、
低社の存廃問題が鋭く問われたのであった。
この論争は1950年代後半から60年代後半まで 続けられた。論争は、文部省が「学習指導要領
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以外の低社実践を認めず、その発達論的根拠を 示さないままに終始したので、民間側から子ど もの社会認識の系統的発達と指導の観点から、
低社廃止が提起されたことに始まる。1960年代 の民間教育研究運動の「社会認識の系統」を求 める論議のなかでは、低学年の社会認識の発達 をどうとらえるかが、大きな問題とされたので ある。
その後、民間の実践はたんなる文部省の低杜 理論批判にとどまらず、独自の低社実践を提起 し、理論化していく方向をたとずっていった。 1970年代から80年代にかけて、民間側の独自の 低社実践が深まるなかで、低祉において育てる べき社会認識の内容や方法、社会認識の質的中 身が、少しづっ固められてきた。低社廃止より
も、低学年の子どもにふさわしい「社会認識の 基礎
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の形成一一豊かな生産や労働体験と認識、時間的 ・空間的認識の基礎づくり一ーのため に、低杜を充実させるべきことが主張され、民 間側の共通理解となってきた。低社の充実・発 展をめざす努力が、豊富で多様な実践報告と なって現れてきた。
こうした矢先に、低学年の社会科廃止が文部 省の側から出されたのである。将来の主権者と して必要な社会認識の基礎を低学年から積み上 げていく、人間と社会に対する対象認識と自己 との関わりをじっくり育てていく、こういった 課題に「生活科」が答えられるものであれば問 題はない。しかし、今回示された「生活科」の 内容は、あまりに「実用的生活作法
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生活技能」の表面的知識・態度の強調に偏っているのであ る。
戦後の社会科40年の歴史と「低社存廃論争j の教訓から学び、子どもの社会認識の発達を真 に保障する教育内容 ・方法が構想されなければ ならない。
②民間教育運動の低学年社会科実践
次に、戦後の民間教育運動の低学年社会科実 践の文献リストをあげてみよう。これらの分厚 い実践の蓄積をもとにして、低学年の社会認識 の発達を考え、子どもの「生活意識」をつくり かえるような「生活科
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実践を創造しなければ ならないと考える。l.石橋勝治『一年生の教室記録一社会科を中 心とした指導
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(社会書房 1949年)*民教協・民教の代表的実践。「のりもの
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おとうさん ・おかあさんj単元紹介。
2.土田茂範『村の一年生
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(新評論 1955年) 3.教科研社会科部会I
小学校社会科の授業j(国土社 1966年)
*教科研社会科一廃止論の低学年授業記録
4.山 本 典 人
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小 学 校 一 年 生J
(新日本新書 1970年)*歴史教育者協議会(歴教協)の実践者。「全 教科全生活
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をとおしての社会認識形成の実 践の典型。 60年代低社実践の集大成。5.同 『親と教師のための低学年社会科
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(地 歴社 1973年)*
1、2年生の全単元の実践所収。6. 向 編
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低 学 年 社 会 科 の 実 践J
(地歴社 1973年)nHd
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