第三章 エコロジーとエコノミーの調和―環境制御システムの豊富化―
第五節 環境制御システムの豊富化の条件
率」は、環境問題に対応しない企業は将来的に競争力を失うことを示していることに意味 がある。企業による「環境効率」は、「環境高負荷随伴的な製品やサービス」をより「環境 低負荷随伴的な製品やサービス」を生み出す役割を果たしている。「環境低負荷随伴的な」
企業運営の役割を果たしている。その変革は、環境効率が競争力の源泉力となることを社 会規範として示すことによって企業が経営の中心課題に置くことで可能となる。
環境高負荷随伴型の「構造化された選択肢」への「通常の主体」への巻きこみ(生産者
+消費者)の状態は、地球環境問題の一般化によって、産業界や消費者に「再帰性」を与 えた。自己反省的・自己批判的態度を呼び起こした。グリーンコンシューマー運動や産業 界による環境効率の取り組みは、社会的ジレンマにおける受益圏と受苦圏の財の配分水準 を低減しようとする取組みである。より「環境低負荷随伴的な構造化された選択肢」を形 成するためには、市場機構を利用した環境制御システムが有効に機能するだろう。
しかしだからといって、社会的ジレンマが回避されたわけではない。あくまで「回避に 向けた軽減」であって社会的ジレンマが根本的に解決されるわけではない。つまり、「環境 低負荷随伴的な構造化された選択肢」となり、市場において環境配慮の質が高まったとし ても、量が増大すれば質を超えて環境悪化を引き起こす。「環境低負荷随伴的な構造化され た選択肢」の質の向上を超えないような量の規制が必要になる。
第五節 環境制御システムの豊富化の条件
以上のように、グリーンコンシューマー運動と産業界による環境問題への価値内面化は 環境制御システムおいてどのような意味を持つのか。環境制御システムと経済システムは より深く交錯するようになった。特に、市場メカニズムに対する環境制御システムの深ま りが言えるだろう。グリーンコンシューマー運動はまさにその通りの運動だが、産業界に おいて、環境問題に取り組むことなくして経済活動を行なうことができない状態になって いる。「環境効率」の概念は、資源の効率性を高めることで環境に配慮しなおかつ経済競争 力をつけるものとして、環境問題の取り組みと経済競争力のトレードオフを取り除くもし くは縮減することを示している。
グリーンコンシューマー運動は従来の政治システムではなく、市場メカニズムによって 環境制御システムが機能することを明らかにした。W B C S D や経団連の環境問題への取り 組みは、多くの企業に制約条件を設定する。これらの取り組みは、環境制御システムの豊 富化ということができる。
環境制御システムの豊富化の条件は何だろうか。まず第1に、地球環境問題の一般化に よって、あらゆる主体に共鳴作用が働いていることが挙げられる。このことによって、環 境制御システムでの制御主体が豊富化された。特に、経済システムの制御主体からの環境 制御システムにおける制御主体の豊富化がなされた。第2に、市場メカニズムを利用した
「投票」システムによる意志表明の場の機能が挙げられる。第1と第2の条件は切り離す ことができない。地球環境悪化の改善に向けた深い共鳴があってはじめてグリーンコンシ ューマー運動のような経済システムに組み込まれた消費者の多くを環境制御システムの制 御システムの主体に変えた。産業界においても自主的取組みを行うようになった。環境制
御システムと経済システムの交錯性が深化することによって、経済システムである市場メ カニズムを有効に利用することが可能になったといえる。そして、市場メカニズムに則っ て、効率的に環境問題の対処を行なうことが可能になった。
おわりに
21世紀は、環境問題解決に向けて市場経済を利用した取組みが盛んになるだろう。そ れは、産業の環境主義化といえる。政策は、企業活動を考慮しながら「命令と管理」では ない政策が豊富化されるだろう。消費者は、産業によって常に与えられる「構造化される 選択肢」を、多くの人へ情報提供発信を行うことによる購買行動の変化によってよりよい ものに改善することが可能である。環境問題は市場経済の自己調整機能によって行政・企 業・消費者に常にチェックされ改善され効率よく促進する。
しかし、このことは市場経済による環境問題の解決を意味しない。市場経済は常にパイ の拡大を求めるからである。市場経済は環境問題の解決にあたってあくまで「延命」機能 を効率的に行っているにすぎないのである。
【注】
1)Vallely,Bernadette,1992,”
THE GREEN CONSUMER:A EUROPEAN PERSPECTIVE
”Women&Environments
,Spring92,Vol.13,P3-4を参考にまとめる。この論文の著者であ るBernadette・VallelyはWomen’s Environmental Network(WEN)のディレクターである。彼女は『1 0 0 1 w a y t o s a v e t h e p l a n e t』( 1 9 9 0 , P E N G U I N B O O K S )の著者でもある。
2) WENに対する詳細な情報は団体のホームページ(http://www.wen.org.uk/)から得るこ
とができる。
3) John Elkington, Julia Hailes,1988,
THE GREENCONSUMER GUIDE
,GollanczPaperback
4) ここまでの説明はSustainAbility社のホームページ(http://www.sustainability.co.uk
/sustainability.htm)による情報をまとめたもの。
5) the Council on Economic Priorities,1991,
Shopping for a Better World 1991edition
,BALLANTINE BOOKS・NEW YORK
6) 『グッド・マネー』(リッチー・ローリー、1992、晶文社)p16‐17を参考にまとめた。
7) 同上、p250を参考。
8) 以上のCEPに関する内容は、同上、p22,252‐253を参考。
9) 以上のCEPに関する情報は団体のホームページ(http://www.cepnyc.org/index.htm) を参考。
10) 「アメリカ環境運動の分裂とその克服‐活動家から見た20年の変化‐」(ミカエル・
マックロスキー:R.E.ダンラップ/A.G.マーティング編、『現代アメリカの環境主義、
1993、ミネルヴァ書房)を参考にまとめた。
11) この項の内容はCEPのホームページ(http://www.cepnyc.org/index.htm)による情 報から構成した。
12) 各企業の評価はCEPのホームページのなかの「SBW Grades(http://www.cepnyc.
org/sbwgrades.htm」から検索可能である。検索結果は以下の様に表示される。
13)『グリーンコンシューマーになる買物ガイド』(グリーンコンシューマー全国ネットワ ーク、1999、小学館)を参考にまとめたもの。
14) グリーンコンシューマー全国ネットワーク、1999『グリーンコンシューマーになる買 物ガイド』、小学館をまとめた。
15) 1999年度の舩橋研究室によるグリーンコンシューマー東京ネットヒアリングの際にい
ただいた資料(グリーンコンシューマー東京ネットの活動内容)を参照
16) 間宮洋介、1 9 9 9、『市場社会の思想史 「自由」をどう解釈するか』、中公新書、p 4・1 4
行目の文を引用した
17) 同上、p4‐6を引用
18) 小林一、「企業と環境主義」(三上富三郎、1992、『環境主義マーケティング』、日本能 率協会マネジメントセンター)p68‐72を参考にまとめたもの。
19)以上は、 同上、P73‐80を参考にまとめたもの。
20) リビノ・デシモン/フランク・ポポフ/WBCSD、『エコ・エフィシエンシーへの挑戦』
(1998、日科技連)、p1-9を参考にまとめたもの。
21) このセンテンスは、WBCSDのホームページ(http://wbcsd.ch/aboutus.htm)による New reports --Eco-efficiency. Creating more value with less impact (PDF November
2000)のforewordを参考にまとめた。
22) 注20)と同上、第一章を参考にまとめた。
23) 同上、p119、環境効率の完全な定義を引用。
24) 同上、第三章を参考にまとめた。
25) 同上、第一章と第七章を参考にまとめた。
26) マイケル・E・ポーター/クラース・ヴァン・リンデ、「環境主義がつくる21世紀の競争優 位」(『ダイアモンドハーバードレビュー』、1 9 9 6、a u g . - s e p t)p 1 0 3 - 1 1 8を参考にまと
めた。
27) この調査結果をまとめたものは、同上、p106の表1参照。
28) 同上、p113-114を参考にまとめた。
29) 同上、p112-113を参考にまとめた。
30) 注20)と同上。第五章を参考にまとめた。
31) 青柳雅、「欧州における産業界の環境問題への自主的取組み」(『月刊Keidanren』、
1996・10)p29-31を参照にまとめた。主要国の地球温暖化抑制のための代表的な自主
方策についてはp30の表を以下に参照。
32) 諸戸孝明、「地球環境時代の循環型社会構築に向けて‐環境ガバナンスと産業界‐」
(財団法人地球環境戦略研究機関編、『民間企業と環境ガバナンス』、2000、中央法規出 版)p224‐228を参考にまとめた。
33) 以上の「経団連環境アピール」については、加納時男、「21世紀の環境保全に向け、
自主行動を宣言 経団連環境アピールと産業ごとの自主的行動計画の策定」(『月刊
Keidanren』、1996・10)p19‐21を参考にまとめた。
34) マイケル・E・ポーター/竹内弘高、『日本の競争戦略』、2 0 0 0、ダイアモンド社、p 1 0 0 - 11 2
を参考にまとめた。
35) 注20)同上、p24を参照
36) 舩橋晴俊、「環境問題の未来と社会変動」(『講座社会学12 環境』、東京大学出版、
1998)
p197、21行目から引用。
37) ロータリー・コンプレッサーとは回転空気圧縮機のこと。転動圧縮機構をもった車両の
空気圧縮機。(日本規格協会、『JIS工業用語大辞典 第2版』、1987、日本規格協会か ら引用)
38) 注)34同上、p58、174、204、232、242を参考にまとめた。
39) 以上の省エネ法および省エネラべリング制度については資源エネルギー庁のホームペ ージ(http://www.enecho.go.jp/)の情報を参考にまとめた。
40) 注34)同上、p298-299を参考にまとめた。
41) 最終エネルギー消費の部門別増加率の情報は、省エネルギーセンターの「我が国の最 終エネルギー消費状況(http://www.eccj.or.jp/law/lawrev01/eng/eng09.html)」のホ
ームページの情報に依拠する。
42) 経団連のホームページの「経団連の主張」のなかのエネルギー・環境政策の「わが国 のエネルギーをめぐる情勢と課題−省エネルギー型社会の実現に向けて‐」
(http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/pol199/index.html)に依拠する。
43) 注36)同上、p191‐202を参考にまとめた。
44) 同上、p203‐215を参考にまとめた。
45) 同上、p210での実効的な解決を妨げている要因に即している。①は①、②は⑤に対応 する。
【参考文献】
青柳雅、1996、「欧州における産業界の環境問題への自主的取組み」、『月刊Keidanren』、
10月号、p29-31
大橋照枝、1994、『環境マーケティング戦略』、東洋経済新聞社 金子勝、1999、『市場』、岩波書店
加納時男、1996、「21世紀の環境保全に向け、自主行動を宣言 経団連環境アピールと産