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日本企業と環境効率

さて、以上は欧米を中心とした取組みを見てきた。日本において産業界はどのように環 境問題に取組み、環境効率はどのような意味を持つのだろうか。日本において成功した環 境規制はどのように機能したのだろうか。日本産業は環境問題の取組みに対してどのよう な課題を抱えているのだろうか。日本に焦点を当てて考察を行う。

1.日本産業界と環境問題の取り組み32

1992年のリオの地球サミットに向けて、91年は世界各地で地球環境問題に関する 提言やアピールがなされたが、日本の産業界もその重要性を認識して、経団連は90年に 発表した「地球環境問題に対する基本的見解」と「廃棄物対策の課題」を踏まえて「経団 連地球環境憲章」の策定を行った。

「経団連地球環境憲章」は、「基本理念」、環境問題に関する「経営方針」、社内体制など

1 1分野 2 4項目にわたって環境保全に企業が積極的に取り組む「行動指針」、あわせて「海 外進出に際しての10の環境配慮事項」から構成されている。

「経団連地球環境憲章」発表後、経団連の要請に基づき、多くの所属業界や会員企業を 中心に業界団体による憲章、行動指針の策定が行われた。特に、公害や環境問題に直接関 係の薄い個別企業でも、憲章、行動指針の策定に加えて、環境に関わる地球環境委員会な どの社内横断組織や地球環境部のような専門担当部署の設置が進んだ。9 6 年の経団連が会 員企業を対象に行ったアンケート調査によると、「経団連地球環境憲章」と同主旨の社内憲 章・指針等を制定している会員企業は 9 2 年調査時の 1 9 . 1%から 5 8 . 9%まで着実に増加し ている。

その後の経団連の取り組みとしては、92年に「経団連自然保護基金を設立」、93年には

B C S D 提唱による国際標準化機構が環境管理・監査の国際規格(I S O 1 4 0 0 0 シリーズ)策定

作業を開始したが、経団連を中心として I S O 1 4 0 0 0 に関わる第 1 回総会からメンバーを派 遣して策定作業に積極的に参加した。この活動は、9 6年 9月の国際規格の正式発行に結び つき、日本では同年10月に国内規格(JIS)となった。

また、9 7年の C O P3京都会議開催に向けて、9 6 年に「経団連環境アピール−2 1世紀の

環境保全に向けた経済界の自主行動宣言−」を発表し、会員団体にその具体的な目標と計

画の策定を要請した。

アピールの総論部分では「環境保全とその恵沢の次世代への継承は資源の浪費につなが る使い捨て文明を見なおし、持続可能な発展を実現しなければならない」としている。そ のキーワードとして、個人や組織の有り様としての「環境倫理」の再確認、技術力向上な ど経済性の改善を通じて環境負荷の低減を図る「エコ・エフィシエンシー(環境効率性)」 の実現、「自主的取り組み」の強化の3点を挙げている。

具体的取り組みとして、地球環境温暖化対策、循環型経済社会の構築、環境管理システ ムの構築と環境監査、海外事業展開にあたっての環境配慮の4つをあげている。

第 1 の地球温暖化対策については、エネルギー効率・炭素利用効率の改善等を基本方針 とし、世界最高の技術レベルを維持するとともに、利用可能な技術を途上国に移転する方 針の下、「産業毎の自主的行動計画の作成と定期的レビュー」、「化石燃料の利用効率の改 善と原子力利用の促進」等を打ち出している。

第 2 の循環型経済社会の構築では、「クリーナー・プロダクション」に努めるとともに、

旧来の ごみ の概念を改め、個別産業の域を超えて廃棄物を貴重な資源として位置付け るとの方針の下に、「ライフサイクル・アセスメントを活用した製品開発」、「業際間連携に よる廃棄物処理技術の開発」等に努めることとしている。

第 3 の構築環境管理システムの構築と環境監査では、I S O の環境管理監査規格を有力な 手段として積極的に活用することこととしている。

第 4 の海外事業展開にあたっての環境配慮事項では、海外における事業活動の多様化・

増大等に応じた環境配慮に一段と積極的に取り組むことを指摘している。

その経団連の要請に呼応して、9 7年に 3 7業種・1 3 8 団体が参加して「経団連環境自主行 動計画」を発表し、我が国の全産業レベルにおいて環境対策が着実に実施されることが打 ち出され、その成果を毎年レビューのうえ公表することになった。

以上のように、日本の産業界は経団連を中心に活動を開始し、産業界全体の方向性と考 え方を打ち出している。

「経団連環境アピール」のキーワードでは特に、「環境倫理」と「自主的取り組み」を重 要な点としている。環境倫理については、被害者と加害者が渾然一体となった環境問題へ の対策は、一人一人のライフスタイルを見直すことを避けてとおれないという視点から、

自主的取り組みは、規制緩和と行動改革によって自己責任原則に基づく自由で活力ある開 かれた社会が目指されている中で、環境問題解決にあたっても自主的取り組みこそ最も効 果的な方法という視点から重要な点とされている33

  環境効率に関しては、日本はエネルギー効率が既に世界的にトップレベルに達している ために、地球温暖化対策のエネルギー消費削減を、エネルギー効率による技術に頼るだけ では達成されないことを示している。これは、環境効率の限界をモデル的に示していると いえよう。詳細は次節でまとめる。

エネルギー効率が世界トップレベルに達している日本は、エネルギー効率を徹底化させ る企業モデルを作り上げた。環境効率の概念の中には、日本型企業の特徴といえるものが ある。例えば、全社的品質管理(T Q M)は日本が生み出した生産手法である。「環境効率」

という概念が成立する前から、日本の企業は「少ない資源で高い生産性」を目指していた。

日本型企業モデルと環境効率はどの面で親和性があるのだろうか、また、どの面で反発す

るのだろうか。また、日本の生活環境がどのように企業を拘束し、その結果が現れている のかを簡単にまとめたい。

2.日本型企業モデル 34

日本型企業モデルは、一連の生産手法、人事政策、組織とリーダーシップに対するアプ ローチ、および多角化の方法等から構成される。日本型モデルの特徴をまとめると以下の

10点にまとめることができる。

第 1 に、高品質と低コストである。日本型企業モデルは、卓越した品質と競合他社より 低いコストを同時に提供することができれば競争優位を得ることができるという信念に基 づいている。このアプローチの核心は、プロセスの改善であり、欠陥率、再作業、あるい は部品点数を削減することによって、コストを減少させるだけでなく、品質も同時に向上 させることができるというものである。標準化、大量生産、そして不必要な生産工程の削 除はコスト削減につながるばかりか品質が一定し、迅速な生産が可能であるという観点か らの非常に高いレベルの品質を実現する最良の方法であるという見識を日本企業は持って いた。

第 2 に幅広い製品ラインと付帯機能である。日本企業は、多数の機能を持った幅広い製 品ラインを提供することを追及した。通常、一連の標準的製品には幅広いオプションや多 くの付帯機能が組み込まれて販売した。開発の主眼は、多機能性、あるいはいくつもの機 能や特徴を一つの製品結合させることにあった。日本企業は数多くの新製品を次々と提供 し続け、その結果、製品のライフサイクルを劇的に短縮した。

第 3 にリーン生産である。リーン生産システムは、日本型企業モデルの中核的役割を果 たした。トヨタ自動車によって開拓されたリーン生産システムは、製品開発、生産、購買 を一つのトータルなシステムとして捉える。このシステムは他の多くの日本企業に採用さ れた。リーン生産システムは、内的な整合性を追及するシステムであるが、それを構成す る要素には以下のものが含まれる。

①全社的品質管理(TQC)

②継続的な改善または、いわゆる「カイゼン」

③ジャスト・イン・タイム(JIT)生産、もしくは在庫でなく需要に応じた生産

④製造工程を考慮した製品設計

⑤供給業者との緊密な関係

⑥フレキシブルな生産

⑦迅速なサイクルタイム

第4に資産としての従業員である、第5に終身雇用制、第6にコンセンサスによるリー ダーシップ、第7に強固な企業間ネットワーク、第8に長期目標、第9に高成長産業への 企業内多角化、第10に政府との密接な関係である。

3.日本型企業モデルと環境効率

環境効率のなかで特に日本型企業モデルと特に接点を持つのは、ストレッチ目標の設定 と実現に関する点と、ストレッチ目標の設定と実現、全社的品質管理(T Q C)の3点であ ろう。

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