5. 評価実験 49
5.3 環境光が動的に変化する状況での入力精度
環境光が動的に変化する状況での入力精度の評価を行った.前節と同様に,図 46に描画された入力目標軌跡と,システムが認識した指先点座標との距離から評 価を行う.参考文献[6]のように赤外線反射光を利用して指先,平面の3次元位 置推定を行う場合,環境光が動的に変化する環境では安定して入力作業が行えな い.ここでは,入力平面,ステレオカメラ内蔵HMDは固定とし,ライトを動か すことで環境光を動的に変化させながら,入力目標軌跡をなぞった.図49に環 境光が最も明るい状態,図50に環境光が最も暗い状態を示す.
図 49 環境光変化(明るい状態) 図 50 環境光変化(暗い状態)
図46の左側×印の右半分,右側の○印の左半分を入力目標軌跡として,環境 光を動的に変化させながら,入力作業を行った際の平均,中央値,分散を表3に 示す.
平均 中央値 分散 0.77 0.50 0.98
表 3 環境光が変化する状況での入力精度 単位[pixel]
環境光を動的に変化させながら,指先入力を行い,システムが認識した指先軌 跡を図51に示す.図中,燈色が入力目標軌跡から3pixel以内に存在する点,水
色が3pixel以上の誤差を示した点である.
図 51 環境光が変化する状況での入力結果
表3,図51から環境光が動的に変化する状況であっても,安定して入力操作が 行えることが確認できた.環境光がまったく変化しない環境はまれであり,この ように環境光が変化する状況であっても安定して入力操作が行えることで,様々 な環境下で本システムは使用可能である.
6. 結論
本研究では,赤外線反射光を利用したウェアラブル仮想タブレット[6]の環境の 変化に対してロバストではないといった問題点を指摘し,ステレオカメラを利用 して環境の変化にロバストなウェアラブル仮想タブレットを提案した.また,従 来,ステレオカメラのみを用いて,指先の3次元位置推定を行う手法は存在しな かったが,4.3節に示したように,「左右のカメラで得られた手のシルエットから 復元できる3次元指形状」と「指先モデルテンプレート」とのマッチングによっ てステレオカメラのみから指先の3次元位置を求める手法を考案した.
本研究の成果を以下にまとめる.
• 環境光が動的に変化する自然光の下で使用可能なウェアラブル仮想タブレッ トの提案
• ステレオカメラのみを使用しての指先3次元位置推定手法の考案
本研究では,ステレオカメラを利用したウェアラブル仮想タブレットの基礎シ ステムを構築したが,いくつかの課題が残った.
• 指先3次元位置計測精度:実験で示したように,入力の始点,終点では,指 先の奥行き方向の計測精度が悪いため,ユーザが意図しない点を接触点と して認識することがある.この誤認識は,指3次元平面の誤推定が原因で あり,指輪郭直線をよりロバストに求めるよう改良が必要がある.
• 登録モードでの登録作業にキーボード入力を必要とする:現在,登録モー ドで肌色の学習,仮想入力面の指定には,キーボードからの入力が必要と なっている.これは,肌色の学習ができていない状態では,手のシルエット を抜き出せないことが原因であり,自動的に肌色の学習を行う機能を付加 する必要がある.
• 処理速度の遅さ:本研究で提案したシステムで入力操作を行う場合,4.5[frame/s]
でしか動作しない.本システムで使用したHMDのようなビデオシースルー HMDは,計算機による処理が終わってからユーザに映像が提供されるため,
ウェアラブル仮想タブレットの操作には問題が無くても,背景が動く場合 には,ユーザに不快感を与える.より高いフレームレートでシステムが動 作することが望ましい.
上記の課題は,ステレオカメラを利用するウェアラブル仮想タブレットでは解 決できない問題ではない.ウェアラブルコンピュータへの応用を考えるにあたっ て,ウェアラブル仮想タブレットには大きな可能性がある.
謝辞
本研究を進めるにあたり,終始暖かい御指導,御助言を賜りました木戸出 正継 教授に深く感謝致します.副指導教官として適切なご助言を賜りました千原 國 宏 教授に深く感謝いたします.研究の方向性などについて御助言を賜りました 河野恭之 助教授に深く感謝致します.本研究で使用した手法のご助言を賜りまし た浮田 宗伯 助手に深く感謝いたします.浮田 宗伯 助手には,計算アルゴ リズム,コンピュータビジョンに関する丁寧で的確なご助言をはじめ,あらゆる ご支援を賜りました.ミーティング,研究生活を通じて,的確なご指摘,ご助言 を賜りました上野 敦志 助手に深く感謝いたします.ユーザの視点に立ってのご 助言を賜りました久米 出 助手に深く感謝致します.また,研究生活を共にし,御 支援を頂きました知能情報処理学講座の皆様に心から感謝致します.特に,コー ディング手法等,多岐に渡るご支援をいただいたSetalaphruk Vachirasuk君,満 月育久君に心から感謝いたします.そして,いつも暖かい心配りをしていただき ました知能情報処理学講座の谷村 優香里 秘書,CREST事務員の望月 博美 秘書に厚く御礼申し上げます.
本研究は,科学技術振興事業団(JST)の戦略的基礎研究推進事業(CREST)
「日常生活を拡張する着用指向情報パートナーの開発」による.
参考文献
[1] half keyboard. http://halfkeyboard.com/
[2] Lightglove. http://www.lightglove.com/
[3] Jun Rekimoto. GestureWrist and GesturePad. Unobtrusive Wearable Inter-action Devices. In ISWC 2001, 2001.
[4] 梶尾一郎,山本吉伸.コミュニケーションツールのための簡易型arシステム.
In WISS 2000,2000.
[5] 蔵田武志ほか.ハンドマウスとその応用:色情報と輪郭情報に基づく手の検出 と追跡映情学技報, VIS2001-103,Vol.25,No.85, pp.47-52 (2001)
[6] 寺部亮紘,浮田宗伯,河野恭之,木戸出正継. ウェアラブル仮想タブレット
〜赤外線照射カメラを利用した指先入力インタフェース〜 .画像の認識・理 解シンポジウム,InMIRU2002,2002.
[7] K. Oka, Y. Sato, and H. Koike, ”Real-time Tracking of Multiple Fingertips and Gesture Recognition for Augmented Desk Interface Systems,” in Proc. of 2002 IEEE International Conference on Automatic Face and Gesture Recog-nition (FG 2002), May 2002.
[8] 岩井 儀雄, 八木 康史, 谷内田 正彦: 単眼動画像からの手の3次元運動と位置 の推定;電子情報通信学会論文誌 Vol.J80-D-II No.1, pp.44-55, 1997.
[9] N.Shimada, Y.Shirai, Y.Kuno and J.Miura, ”3-D Pose Estimation and Model Refinement of An Articulated Object from A Monocular Image Sequence”, Proc. of The 3rd Conf.on Face and Gesture Recognition, pp.268–273,1998 [10] Etsuko Ueda, Yoshio Matsumoto, Masakazu Imai, Tsukasa Ogasawara,
”Hand Pose Estimation Using Multi-Viewpoint Silhouette Images” , Proceed-ings of 2001 IEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robots and Systems (IROS’2001), pp.1989-1996, Maui, USA, Oct 29-Nov 03, 2001.